このすば ハード?モード   作:ひなたさん

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30話です。さあ、いってみよう。



30話

 

 

 俺がゆんゆんにしばかれた数日後。

 ベルディアの話は知れ渡り、クエストも受けられず予定も無く、珍しく全員が暇を持て余していた。

 

 ゆんゆんが水を得た魚のようにボードゲームに誘ってくるが俺達はぶっちゃけ飽きたし、ゆんゆんの知力が無駄に高いせいで勝てないしであまり乗り気ではない。

 

 今日はみんなで買い出しでも行くか?と提案すると、ゆんゆん以外が賛成して準備を始めた。

 

 

 

 クエストの時に使う消耗品を買い溜めした。

 スクロールとやらも買いたかったが、あれは物によってはかなりの値段らしく簡単に買えるものではないとか。

 紅魔の里だともう少し安く買えるんだけどね、とゆんゆんが言っていたので聞いてみると、紅魔の里で作っているものだからとか言っている。

 紅魔の里で作られた魔道具は一種のブランド品の様に扱われていて高価なものが多いらしい。

 

 紅魔族って本当に頭おかしくない?

 魔法使いの天才達で戦闘もアホ強いし、戦わなくても金稼ぎにも困らないときた。

 来世は紅魔族の人間でお願いします、エリス様。

 

 

 

 少し保存食を買いすぎたので、部屋に戻って荷物を置いたら

 

 

『緊急! 緊急! 全冒険者の皆さんは、直ちに武装し、戦闘態勢で街の正門に集まってくださいっ!』

 

 というあのキャベツの時に聞こえた街中に響く大音量のアナウンスが聞こえた。

 またキャベツか?また稼がせてもらおうと思ってみんなに声をかけようとしたら、みんな不思議そうな顔をしてる。

 

「なんだ?どうした?」

 

「いえ、このアナウンスは…」

 

「なんだよ?キャベツじゃねえのか?」

 

「多分違うよ。何が起こったかわからないからとりあえず準備はしっかりして行こう」

 

 ヒナの言葉に全員が頷き、準備を始めた。

 

 

 

 正門に集まるとそこは異様な雰囲気に包まれていた。

 人の波で見えないが何かがいるらしく、冒険者達は立ち尽くしている。

 人の少ない方の横側へ行くと、ようやく何がいるかが見えた。

 

 首から上がない馬に乗り、同じく首から上がなく全身を鎧に包んだ漆黒の騎士がそこにいた。

 よく見ると小脇に自らの首らしきものを抱えており、背中には人の手で扱えるか分からない様な大剣を携えていた。

 

 なんとも不気味な姿に凄まじいまでの威圧感。

 こんなモンスターが近くにいるなんて聞いたことない。

 

 ヒナがその姿を見た瞬間、小さな悲鳴の様な声を上げて俺の背中に隠れた。

 なんだ?こいつが怖がるなんて珍しすぎるぞ。

 

 静かにそのモンスターが喋り出す。

 

「俺は先日この近くの城に越してきた魔王軍の幹部の者だが」

 

 魔王軍の幹部!?

 なんでこんなところに!?

 

 あれはデュラハンかっ!?という誰かの声が聞こえた。

 ゲームとかで聞いたことはあるが、俺は詳しくない。ボスとかで見たことがあるような…多分強かった気がする。

 

 

「まままま、毎日毎日毎日毎日っ!!おお、俺の城に、毎日欠かさず爆裂魔法撃ち込んでくる大馬鹿者は、誰だあああああああーっ!!」

 

 魔王軍幹部さんは突然ブチ切れた。

 

 爆裂魔法?

 そんなの一人しかいないじゃん。

 

 そんなことを考えていたらヒナが服を引っ張ってくる。なんだよ?と顔を向けると門の方を指差して付いてくるように指示してくる。

 ゆんゆんもトリスターノもそれを見ていたらしく、来たばかりなのに、また街の中へと戻ってきた。

 

「なんだよ、どうした?怖いのか?」

 

「違うよ!い、いや、少し怖いけど」

 

 お?珍しいこともあるもんだ。

 こいつが怖いとか言ってるのは初めて見た。

 こいつが部屋に勝手に入ってこない様にデュラハンの絵でも部屋の扉に飾っておこうかな。

 などとバカなことを考えているとトリスターノが当然聞いてくる。

 

「どうしたのですか?ヒナさんらしくないというか」

 

「そうだよ、どうしたの?」

 

「その…実は」

 

「僕のお父さんは元魔王軍の幹部なんだけど」

 

 あ?

 

 みんな目が点になった。

 

「それで」

 

「いや、待て。お前のお父さんはニホンから来たんだよな?」

 

「え?うん、そうだけど?」

 

「そうだけど?じゃねえよ。なんで魔王軍になってんだよ。逆に倒す側だろうが」

 

「えっと、最初は倒す側だったんだけど、裏切りとか色々あって魔王軍の幹部になったんだけど」

 

 色々ありすぎだよ、何言ってんだ。

 

「お母さんに惚れたお父さんが魔王軍を勝手にやめて、邪魔してくる全てをバッタバッタとなぎ倒して」

 

 えぇ…。

 お前のお父さんやばすぎるんだけど…破天荒すぎるでしょ。

 

「お母さんと結婚して僕が生まれたんだけど」

 

「あ、魔王軍の幹部だったのは僕が生まれる前の話だから安心して!」

 

 うん、まあそれは良くないけどいいとして。

 

「じゃあなんで隠れたんだよ?」

 

「そのお父さんが勝手にやめたことはそれはもう魔王軍側もよく思ってなくて」

 

 それどころじゃないでしょ。殺意マシマシでしょ。

 

「何回かもう一度戻る様に説得しに来たり、殺しにきたりした時に何回かベルディアさんと会ってて」

 

 ベルディア「さん」とか言い始めたけど。

 

「僕が会うともしかしたらってこともあるかもだし、お父さんの事もあるし、なるべく会わない様にした方がいい…かもしれないっていうか」

 

 こ、こいつマジか…。

 ここに来て変な設定出してきやがった…!

 

「じゃあお前どうすんだよ」

 

「多分、多分なんだけど、ベルディアさんは爆裂魔法がどうとか言ってたし、ただ注意しに来ただけだと思うんだ。あの人は変な人だけど元騎士で騎士道を重んじる人だったから、わざわざこの弱い人達しかいない街の人間に手を出す人じゃない。はず」

 

「だ、だから戦闘が始まるまでは僕はあまり目立ちたくない…です」

 

 二人に視線を合わせると、ゆんゆんは理解が追いついてない顔をしていて、トリスターノも複雑そうな顔をしていたが、頷いてきた。

 

「わかった。戦闘が始まるまでは俺の背中とかに隠れてろ」

 

「うん。ごめんね…」

 

 また正門前に戻ると、ベルディアに一人で対峙していためぐみんを庇ってダクネスが死の宣告を受けていた。

 トリスターノを見て確認すると、頷いてきた。トリスターノも覚えている「死の宣告」のスキル、あれをダクネスが受けてしまった。

 

 その後、カズマ一行とベルディアの漫才の様なやりとりがあった後、ベルディアはそれ以外何することもなく去っていった。

 

 なんでこいつらは死にそうな状況なのにワーワーうるさいんだ。

 一応ダクネスと一度組んだこともあり、心配だった俺はダクネスに近付いていき声を掛けようとしたところで、駄目神が死の宣告の呪いをあっさり解いてしまった。

 

 流石腐っても神…だが心配したってのにあまりのアホらしさに声をかけることもなく、回れ右をして買い物に戻ろうと言って自分のパーティーを引き連れて街に戻っていった。

 後ろでは

 

「あの呪いをあっさり解いた…!?人間技じゃないよ…!どうなってるのっ!?」

 

 とヒナが軽く半狂乱になっていたが無視して歩いた。

 

 人間じゃないし、それ。

 

 

 

 

「ねえ!知ってるんでしょ!?あのアークプリーストのこと!」

 

 食料の買い出し中にヒナに面倒な絡まれ方をされていた。

 

「カズマのパーティーメンバーだよ」

 

「それは知ってるよ!」

 

 先程までの背中に隠れてた可愛い誰かさんは何処へやら…今ではいつもの元気な大きい子供の姿だ。

 

「あんなのおかしいもん!ぼ、僕だってもちろん呪いは解けるよ!頑張れば絶対出来る!でもあんな一瞬でベルディアさんの呪いを解くなんて絶対におかしい!」

 

「うるせえな。知らねえって」

 

「絶対嘘!絶対ヒカルは知ってる!知ってる顔してた!」

 

 先程からずっとうるさい。

 アクシズ教のアークプリーストに負けるなんて…!といつにも増してうるさいし、機嫌が悪い。

 

 俺は会ったことが無いのだが、ホースト騒動の時にアクシズ教のプリーストが現れ、数々の迷惑行為をしていったとかで、ヒナはアクシズ教徒を目の敵にしていた。

 そのせいでアクシズ教と聞くだけでヒナは苦々しい表情に変わり、不機嫌になる。

 しかも実力が負けているとなるとそれはもう悔しくて悔しくてしょうがないらしく、ずっと地団駄を踏んでいる。

 

「絶対ヒカル関係の人でしょ!そうなんでしょ!」

 

「おい、俺をあんなのと一緒にするな」

 

「ほら!やっぱり知ってるじゃない!」

 

 うざったいし、面倒なのでゲロった。

 アクシズ教のアークプリーストで名前はアクアだと伝えると、落ち着くどころか更に機嫌は悪くなる。

 

「神の名を騙るアークプリーストなんかに僕が負けてるって言うの!?」

 

 俺に掴みかからんばかりに迫って叫んでる。

 悔し涙さえ浮かべ、唇を噛んでいる。

 

「本当に神様なんじゃねえの?」

 

「僕のことバカにしてるのっ!?」

 

 もう知らん。

 

 

 

 

 たまには初心に戻ってギルドで夕飯なんてどうですか?なんてトリスターノに言われて、夕飯はギルドで食べることになった。

 

 買い物が終わり、ヒナは落ち着くどころか今度は落ち込んでいた。

 どこまでも面倒臭いなコイツは。

 

 ギルドに入るとルナさんに声を掛けられた。

 

「どうしたんですか?」

 

「実はシロガネさんのパーティーに受けてほしいクエストがありまして」

 

「魔王軍幹部を倒せとか言わないですよね?」

 

「それも是非ともお願いしたいのですが、別件です」

 

 

 聞くとアークプリーストが必要なクエストだとか。

 隣国近くにある町の外れで廃墟と化した教会にゴーストがいると。

 その教会はエリス教でもアクシズ教のものでもなく、今はもう名前すら忘れ去られたマイナーな宗教の教会で、そこにいるゴーストはそのマイナーな神様の最後の信仰者だった。

 この世界の神様は信仰心を力としているので、信者がいなくなることが神様自身も消えることと同じだという。

 その教会にいるゴーストは敬虔なる信徒であったそうで、自分が崇める神を消すまいと死してなお祈りを続けているらしい。

 そのゴーストを祓うのが今回のクエストの目的だ。

 

 だがそれを聞いて、いつもはアンデッドや悪魔の類を許さないヒナも嫌そうな顔をする。

 聞けば、ゴーストに成り下がってもなお祈り続ける信仰心と献身をする者を祓うというのは、同じ聖職者として抵抗があるらしい。

 

 その教会のゴーストは今まで特に害は無く、このゴーストの厄介さもあって討伐されることは無かったのだが、今は教会近くで良くない噂があるとか。

 神隠しのような人が消える事件が起きていて、元々ゴースト討伐のクエストは出ていたのだが、事件に巻き込まれた親族の人達がクエストを更に出し、アークプリーストがいるこの街にまで回ってきたという。

 

 このゴーストの厄介なところは元聖職者のせいで神聖魔法に対する強い耐性を持つこと。

 そんな存在を祓うには力を持ったアークプリーストでなければならない為、こうして話が俺達に、というかヒナに回ってきたわけだ。

 

 ルナさんが説明を聞き、表情が曇り続けるヒナ。

 

 ルナさんも受けてほしいみたいでなんとか説得を続けているが、ヒナは首を縦に振らない。

 

「ヒナが決めていいぞ。お前が決めたことなら間違いはないだろうよ」

 

 俺は受けようが、受けなかろうがどっちでもいい。言い方は悪いが、気が進まないならやるべきではない、気がする。

 

「……少し考えさせてください」

 

 保留だが、やっと口を開いた。

 

 

 

 

 

 夕飯も珍しく表情が暗いまま無言でずっと二人前の唐揚げ定食を食べるヒナ。

 

 コイツが二人前しか食べないなんて…。

 どうしたものか。

 

「ヒナちゃん、ヒカルも言ってた通りヒナちゃんがやりたくないならやらなくていいと思うよ」

 

「うん…」

 

 相変わらず上の空だな。

 食べ終わったトリスターノが口を開く。

 

「ゴースト以外にも隣国のグレテンは今は危険な国ですし、あまり近付くのは良くないかと」

 

 危険?というか

 グレテンってなんか聞いたことあるような…。

 

「なんで危険なんだ?」

 

「魔王軍に味方する国だからです」

 

 え、そんな国があるのか。

 

「グレテンはベルセルクに並ぶ武力を誇る国です。国の規模ではベルセルクには敵いませんが、戦力に関しては引けを取りません」

 

「グレテンは魔王軍との出撃以外では人間側に干渉してくることはほぼありませんので、グレテン軍と遭遇する可能性は低いですけど、用心するに越したことはありません」

 

 最近余裕が出てきて色々と勉強中だが、そうか。他の国のことも勉強しなきゃいけないのか…。知力低めなんだぞ俺は。

 

「だってよ。気が進まないならやめとけ。俺が断ってきてやろうか?」

 

「明日の朝には答え出すから待って」

 

 少しイラついてるようなそんな表情。

 まったく真面目ちゃんは大変だ。

 

 そんなことを考えてるとカズマ一行がギルドに入ってきた。

 アクアを見たからか、ヒナの表情が強張る。

 

 手を上げてカズマ達に挨拶した時にアクアが俺に話しかけてくる。

 

「あんた、少し来なさい」

 

「なんだよ?」

 

 いいから、と俺を引っ張り少し離れた位置に来てから話し出す。

 

「あの子、何者?」

 

「ヒナのことか?」

 

「ひな?あの日本人の小さい子よ」

 

「あれはこっちに来た日本人の子供だよ」

 

「ふぅーん…」

 

 じろじろとヒナを観察している。

 それに気付いたヒナが睨み付けている。

 

「え、なんかすごい怒ってるんですけど」

 

「アクシズ教徒が嫌いなんだと」

 

「なんでよ!私の子達は確かに変わった子達が多いけど、良い子達ばかりなんだから!」

 

「知らねえよ。で、なんだよ?」

 

「あ、そうだった」

 

 こいつ一瞬で呼び出した理由を忘れてるけど大丈夫なのか?

 

「あの子、本当に日本人の子供?貴方は知らないかもしれないけど『神聖』っていう普通生きてる人間が持ってるはずがないものをあの子が持ってるんだけど、何か知らない?」

 

 …エリス様がどうこう言うのは流石にまずいだろうしな。

 

「知らん」

 

「そう。あの子、私のような神と同じような存在になるかもしれない子だから大事にしてあげなさい」

 

「神とかなんとか知らねえけど、そのつもりだよ」

 

「ならいいわ。じゃあね」

 

 少し女神面をして、そのままカズマ達の元へと向かって行こうとして途中で頭からズッコケる駄目神。わんわん泣きながらカズマの元へとまた向かっていった。

 

 神様って人材不足なのかな。

 

 

 話が終わってヒナ達の元へと戻ると、ヒナが怒った様子でいきなり口を開いた。

 

「何話してたの?」

 

「世間話だよ」

 

 こいつに話すわけにいかないしな。

 

「じゃあなんで僕達の方見てたの?」

 

「俺のパーティーメンバーを紹介してたんだよ」

 

「…」

 

 すごい睨み付けてくるが、何も言わんぞ。

 ゆんゆんもトリスターノもなんか気まずい感じだ。

 

「決めた」

 

「あ?」

 

 みんなハテナ状態だ。

 

「クエスト受けます」

 

「は?」

 

「受けます」

 

「いや、お前朝って」

 

「受けるのっ!」

 

 

 ムキになったヒナの一声で俺達は例のクエストへ行くことになった。

 

 

 後になって思うが、止めておけばよかったのに。

 





祝30回!!

まさかこんな続けられるとは…。
読んでくださる方々がいたおかげです。
感想や評価、お気に入りも本当にありがとうございます。
何度か自信がなくなってやめようかと思ったんですが、なんとか続けて来られました。

色々とまたオリジナル要素をぶっ込んで、さらにオリジナル展開して行きますが、今後とも読んでいただけると嬉しいです。
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