目が覚めると、そこは見知らぬ天井だった。
あれ?
エリス様のところにいないということは…。
俺、生きてる?
身体を起き上がらせる。
五体満足だ。身体も特に問題ない
というか泊まってた宿だ。全然見知ってたわ。
ゆんゆんとヒナが心配でいてくれたのかベッドに突っ伏して寝ていた。
トリスターノは!?
トリスターノが使っていたはずのベッドを見たら、トリスターノが寝ていた。よかった。残って戦ったのは無駄ではなかったのか。
心の底から安堵してため息が出る。
全員いて本当によかった。
なんで俺は生きてんだ?
騎士王にトドメを刺されたと思ったんだが…。
見逃された?それともこいつらが助けに来た?でも騎士王は束になっても勝てないぐらいの実力だって聞いてたから、その可能性は低い。みんなが起きたら聞いてみるか。
そんなことを考えていたら、ゆんゆんが目を擦らせながら起きてきた。
目が合ってぼーっとしている。
「おはよう」
「ぅぅん…おは、よぅ…!?」
そこからは大変だった。
わんわん泣きながら抱きついてきて、生きててよかったと何度も言ってきた。
おっふ…。結構なお手前で。
なんとか気にしないようにしながら、謝りつつ、泣き止んでくれるように頼んだが無理そうだった。
この影響でヒナやトリスターノも起きて、そこからまた騒がしくなった。
ヒナは泣きながら笑って俺にボディーブローをするという高等テクニックをしてくるし、トリスターノも少し泣いていた。
ようやく落ち着いた頃。
「そろそろすみません。私は彼と話があるのでお二人は少し外してもらってもいいですか?」
と女子二人へと話しかけながら、俺に弓を構えた。
俺達三人は状況が分からず固まる。
「え、えーっとトリタン?そのさ、流石に」
「う、うん。そうだよ、トリタンさんこれは」
ヒュンっと鋭く空気を切る音が聞こえて、俺の右耳を軽く掠って後ろの壁に矢が突き刺さった。
「外してくださいと言ったんです」
すでに次の矢を構えている。
二人は今までにないトリスターノの圧力に驚き、動けずにいる。
「ちょい部屋から出てくれ」
と俺も二人に声をかけたが心配なのか、なかなか出ていかないので、いいから出てけとゆんゆんのおっぱいにタッチしたら、ゆんゆんのビンタとヒナのボディーブローを食らった後、最低!と叫びながら二人はそのまま部屋を出て行った。
すでに満身創痍だが、トリスターノは弓を構えるのをやめない。
「貴方は本当に最低ですね」
「ぐぅぅ…みぞおちを的確に殴りやがって…。なんだよ。出て行くように言っても聞かないのが悪いだろ」
「それもありますが、私のお願いを聞いてくれなかったことです」
「余計なお世話だったってか?」
「ええ、本当に余計なお世話をしてくれやがりました」
「結構頑張ったんだぞ?これでも」
またヒュンっと鋭い音が聞こえて、今度は俺の左耳を掠って後ろの壁に矢が突き刺さる。
「そんな話はしてません」
「お前そういうキャラだっけ?」
「次は当てますよ?」
ニコニコして表情を変えない。
「お前ここに来て変なキャラ立てするんじゃないよ。何話だと思ってるんですかこのや」
また空気を切る音が聞こえた後にドスっと肉に何かを突き立てたような音が聞こえた。
トリスターノが矢を放った後にまた矢をつがえている。
下を見たら俺の右の太腿に矢が突き刺さっていた。
「ろおおおおおおおおおお!!!お前何すんだコラあああああああああ!!!」
「当てるって言ったじゃないですか。あはは」
「あはは、じゃねえんだよ!にこやかに仲間の足に何ぶち込んでんだこのヤロおおおお!!」
「仲間として友達としてのお願いを聞いてくれなかった貴方が悪い」
「バカか!仲間のこと見捨てられるかボケ!」
「死んだらどうするつもりなんですかこの野郎」
「だからって仲間が犠牲になります、はいそうですかになるわけねえだろうが!」
「じゃあ私のせいで友達が死んだことをずっと引きずって生きろと言うんですか?」
「そうだよ!」
再び空気を切る音が聞こえた。
今度は左の太腿に矢が突き刺さった。
「ぐっ!てめえ!」
「貴方の自己満足で私に苦しめと言ったんです。それぐらいは覚悟の上でしょう?」
「んなもん覚悟なんかするか!」
「いいかこの野郎!お前は俺の友達で仲間だ。お前がどんなに言おうが友達が死にそうなら助ける。どれだけ矢を撃たれようが、この先何があろうが絶対にこれは変えない」
「…」
「俺の行く道は俺が決めろ、お前が言った言葉だろうが!お前に決められる筋合いはないぞ!俺は友達の為に頑張れる人間だってことも言ったな!?そんな俺ならもちろん友達を見捨てるなんて出来ねえって、これもお前が言ったことだろ!」
「これでお前に認められた俺が頑張らねえわけにいかねえだろ」
ヒュンと風を切る音がまた聞こえて
右太腿に矢がもう一本突き刺さった。
「なんでだああああああああ!!!」
「あ、すみません。あまりのくさいセリフについ手が」
「つい手が、じゃねえんだよ!お前が言ったセリフだろうが!何してくれてんの!?お前のセリフなんだから責任持てや!」
「すみません。私は一流の弓兵ですが、自分に矢は打てないので貴方に打ちました」
「ざけんな!なに自慢しつつ、恥ずかしいの誤魔化そうとしてんの?恥ずかしかったんだろ!?お前が言ったくさいセリフを意外にも俺が覚えてたの恥ずかしかったんだろ!?」
左の太腿に矢が一本追加された。
「あああああああああ!!!」
「手が滑りました」
「やっぱり恥ずかしかったんだな!?もう誤魔化せんぞ!?やっぱりお前がくさ」
ドスドスッ!
右の太腿に二本矢が追加された。
「ああああああああああああああああ!!!」
「手がとても滑りました」
「二本も滑るかああああああ!!!」
ずっと叫んでたせいか、ヒナとゆんゆんが割って入ってきたせいで話は中断になった。
トリスターノのせいで俺の太腿が針の筵状態になり、矢を引き抜いて回復魔法をかけてもらうのだが。
「子供達の前では言葉遣いをしっかりする?」
「ざけんなこら!早く治せ!」
「暴れたら危険ですよ」
「お前のせいだろうが!」
「…セクハラはもうしない?」
「うるせえ!てめ!離せ!矢を掴んだまま待機するな!」
一本抜くごとに、一本分回復するごとに何故かこいつらの言うことを聞かないとやってくれないみたいになってる。
ゆんゆんが矢を抜く、ヒナが回復魔法。
トリスターノが俺を羽交い締めにして、連携して俺に言うことを聞かそうとしている。
「セクハラは本当にやめてほしいんだけど」
「わ、わかった!もう自分で抜くから!退け!離せ!」
ゆんゆんが逆に矢を押し込んできた。
「ああああああああ!!お前この!わかったよ!もうしないよ!」
それを聞いて嬉しそうにニッコリ笑いながら思い切り引き抜く。
怖。それならもう少し男に対して警戒心持ってくれ。
ゆんゆんの将来が変な方向にいかないか本当に心配だ。
「ぐっ!!あと二本か…!」
「ねえ?子供達の前では」
「うるせえ、ちびっ子!もういい!この街のプリーストのところに行く!離せ!」
「傷にさわりますよ」
「だからお前がつけた傷だよねえ!?何冷静に助言してますポジにいるんだよお前は!」
「ゆんゆんさん、その一本は私の願い事の分でお願いします」
「うん、いいよ」
「連携してんじゃねえ!」
「ねえ結構血出てるし、いろいろと汚れちゃうし、早めに言って欲しいんだけど」
「お前の手なんか借りるか!この町のプリーストのところに」
「トリタンさん、願い事はなに?」
「そうですねえ…」
「僕がいるのに他のプリーストのところに行く?ふざけないでよ」
「ふざけてんのはお前達だろうが!離せええええええええ!!!!」
「うるせえぞ!毎日なに騒いでんだあ!!」
あまりの騒々しさに宿の主人が乗り込んで来た。
「た、助けてくれ!」
宿の主人は数秒固まった後。
「何があったああああ!?お前さん、大丈夫か!?」
俺の太腿に矢が刺さって、一人は羽交い締めにして、二人は矢をどうにかしようとしてるが傍目から見てもどんな状況かわからないのだろう。だって当人の俺もよくわからないし。
「た、助け」
「安心してください。矢を抜いてるだけですので」
「いやいや、安心できねえよ!何があった!?てか何してんの!?どんな状況だよこれ!」
「おっちゃん!助けてくれえ!」
「これが僕達のパーティーの連携。絆です」
「いや、そこの兄ちゃんめちゃくちゃ俺に助け求めてるけど!?どんな絆ぁ!?」
「そ、そうです!私達はパーティーですから!絆ですから!何の問題もありません!」
「問題しか見えねえよ!?お前達どんなパーティーなの!?そこの紅魔の娘が矢突き刺してるように見えるんだけど!?というかなんで羽交い締めにしてんの!?」
「た、助けてくれえ!プリーストのところに」
「「「絆です」」」
「……あんまり騒ぐなよ」
「え、ちょ、まっ」
宿の主人はどうしていいか分からず、状況を理解できずにこの場を去ってしまった。何が絆だよ!最悪の絆だよ!
「……」
矢を全部抜いてもらって回復してもらったが、まるで有り難みを感じない。
話し合いは一旦中断となり、昼飯を食べ終わった後、先に聞きたいことを聞かせてもらった。
あの後、逃げ終わった三人は俺が残って戦っていることを知り、他の冒険者達に協力を仰ぎ再び教会へと戻った。そこには俺が倒れていたが騎士王はいなかったらしい。
倒れていることから死んでいるかと思いきや、息もある上に大した怪我もしてなかった為、その場で回復魔法を使い連れて帰ったという。
何故生き残った?
騎士王に見逃された?
まさかエリス様がなんかやったのか?
それとも本当に隠された力でもあったのか?
分からん。
あの騎士王が殺し損ねるなんて事あるはずがない。
そんな事を考え頭を捻っていると。
今度は俺が説明をする番だとみんながこちらを見てくる。
さて、じゃあ
「あ、そうだ!」
ヒナが遮って来た。なんだ?
「ずっと気になってたんだ。ヒカルの能力のこと教えてよ」
あー…。
「みんなを巻き込みかねないほどの能力って言ってたけど、めぐみんの爆裂魔法みたいにパーティーで協力すれば上手く活用できるかもしれないし」
ゆんゆんがそんな提案をして来るが、そうだったなー…。俺そんなこと言ってたなー…。
「確かにヒナさんの父親ほど強力ではないのに、ステータス低下があるのはおかしいと思っていたんです。教えてください。今のパーティーなら連携なんて簡単なはずです。それにあの騎士王を相手にできるほどの強力な力というのは大変興味があります」
うんうんと二人も頷いている。
やべえ、どうしよう。
正直生き残れるなんて思ってなかったし、マジでノープランだった。
みんなが期待した顔でこちらを注目してくる。
「で、でもほら、や、やっぱり危ないしさ…」
「安心して。僕達とならきっと大丈夫だよ」
大丈夫じゃない。俺が。
「私達を、パ、パーティーを信じて!」
まだパーティーを普通に言い切れないところがまたゆんゆんって感じがしていいんだけど、今はそんな場合ではない。
「わかった。言うよ。でも、あれだぞ?怒ったりするなよ?」
「怒るってなにさ。教えてもらうのに怒るわけないでしょ」
よし、言ったからな?
怒らないなら言おう。
「俺にそんな力があるわけないだろ」
全員が茫然としてこちらを見てくる。
『は?』
三人が綺麗にハモった。
息ぴったりじゃないか。パーティーのリーダーとして嬉しいぞ、うん。
「どういうこと?」
「嘘ついてお前らを逃した」
そこから三人に烈火の如く怒られた。
三人が同時にブチ切れてきたせいで正直何を言われたか全然聞き取らなかったが、多分俺の身を案じた言葉が聞こえた気がする。
俺は床に正座をさせられ、完全に三人に囲まれて説教タイムとなった。
ヒナはブチ切れモードの説教数時間コースもので今までで一番の勢いだった。
トリスターノは笑顔が消え去り、珍しく声を上げて切れてきた。
ゆんゆんは泣きそうになったり怒鳴ってきたりされたけど、だいたい聞こえなかった。
叩かれたり、弓に手をかけてきたりと危険な感じもしたが、普通に説教だけになった。そして俺をバカにする言葉も聞こえた気がするけど、聞かなかったことにした。
怒らないって言ったじゃん…。
一時間ほど経ち、俺の足が痺れて立てなくなった頃。
三人がようやく落ち着いてきたので、三人が逃げた後どうなったかを説明した。
トリスターノがたまに頭を抱えてたけど、まあ見なかったことにした。
「…本当にヒカルは素手同士の戦いなら強いね」
「いや、あれは俺が強いわけじゃなくて、運が良かっただけというか」
「…でも騎士王を地面にぶん投げたのは貴方ぐらいでしょうね…」
「やっぱりヒカルは武術の先生とかをやるべきなんじゃ…」
「おい、だいぶ前のやりとりをまたやらせる気か」
そんな話をしていると
「では、そろそろ私との話の再開と行きましょうか」
「また弓撃ってくるんじゃねえぞ」
「リーダー次第ですね」
ニコニコするな。
「弓は禁止。床が汚れちゃうよ」
「俺の心配をしろ」
「安心して。私がまた矢を抜いてあげるから」
「なんで撃たれる前提なの?全然安心出来ないよ。俺の身を案じてるのか傷付けたいのか、どっちなの?」
はあ…。
「トリスターノに聞きたいことがある。お前はなんでこっちの国に来た?」
「…私は確かに嘘をつきましたが、友達が欲しかったことは本当です」
「まだ理由があるとしたら人殺しをしたくなかった。魔王軍の味方をするのも嫌だったのです」
「グレテンは変わってしまった。私が護るべき国や王はあんなものではありませんでした。だから私はトリスタンとしてではなく、トリスターノとして生きることにしたんですよ」
「グレテンが元に戻れば、お前は帰りたいか?」
トリスターノは一瞬驚いた顔をしたが、またニコニコ顔に戻って、なんでもないことのように答える。
「いいえ。そもそも、私の居場所なんかもうグレテンにはありません。それに」
「貴方達がいますから。帰る気など少しもありません」
トリスターノは頭を下げて、言葉を続けた。
「リーダーには言っていましたが、お二人には隠していました。私のせいで大事な仲間がいなくなるところでした。本当に申し訳ありません。迷惑をかけたことも。秘密にしていたことも」
「リーダーに対して怒りましたが、私も相当バカな行動をしました。ですが、その」
「別にトリタンのこと怒ったりしないよ。ヒカルみたいに言うこと聞かないわけじゃないし」
いちいち俺を引き合いに出すな。
「私も自分のせいでみんなに迷惑かけたら似たようなことしちゃうと思うから、気にしないで。ヒカルみたいに変なことばっかりしてるわけじゃないし」
俺もみんなを守るために必死だったんだし、そんな感じでフォローしてくれてもよくない?
確かに死ぬのは怖いし、嫌だけど俺は一回死んでるわけだし、俺よりもみんな若いし才能ある奴らなんだし、そういう意味でもこいつらには生きてほしいんだけどなぁ。
それを言うわけにはいかないんだけど。
「ありがとうございます。その、迷惑をかけておいて大変恐縮なんですが…」
こいつ展開的にまた変なこと言うぞ。
三人に注目されて、言いづらそうに聞いてくる。
「私をパーティーに残してもらえないでしょうか?」
何言ってんだこいつ。
という顔を三人でしてしまった。
「…え?抜けるつもりだったの…?」
「逆に抜けるとして、他の二人が黙ってても僕の拳が黙ってないよ」
誰かこいつに脳筋以外の生き方を教えてやってくれ。俺は怖いし面倒だから嫌だ。
トリスターノは二人を見た後、俺を見てくる。
「なんだ?お前が勝手なこと言っただけで、別にリーダーの俺はやめることを認めたつもりはないぞ」
「…ありがとうございます」
何照れて笑ってんだ。
まったく…。
これだからイケメンは。
前回の終わりにアンケートの協力をしてくださった方、ありがとうございました。
続きを書かないわけではありませんでしたが、あんな演出ができるんじゃないかなと思ってやりました。
Noが多かった場合はシロガネ君は死亡して、他の三人が闇堕ちして終わろうかなと思いましたが、そんなことにはなりませんでした。
Yesの後の話しか書けてなかったので、よかった。
Noは先程のように一応話としては考えていたんですけどね。
これにて二章終了です。
三章は…また考えきれて無いので、二章の時と同じで日常回やって話に入っていく流れです。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
良ければ感想や評価などしていって下さると嬉しいです。