このすば ハード?モード   作:ひなたさん

36 / 165

34話のアンケートから、この話は思いつきで作りました。
途中まで作って消そうかと思ったんですけど、消すに消せなくて投稿しました。

本当はバッドエンドになるところをエリス様が頑張ったみたいな感じです。




番外編『No』
番外編①


『No』の先のハッピーエンド①

 

 

 

 私達はあの後全員が離れ離れになった。

 

 ヒナちゃんはショックで心を病んでしまい、アークプリーストの力を使えなくなってしまって、実家へと戻っていった。

 トリタンさんはグレテンへと向かった。

 何度も止めたが、止まってくれることは無かった。

 その後のことは聞いていないけど、多分…。

 

 

 私もしばらくはショックで寝込んだり、部屋に閉じ籠ったりしていたが、めぐみん達に元気付けられてなんとか立ち直った。

 

 私は数少ない友達を失った。

 

 私はまた、ひとりぼっちへと戻った。

 

 見かねためぐみん達にパーティーに誘われたが、私にとってのパーティーは彼等であって、めぐみん達のパーティーではない。だから私は誰かのパーティーに本格的に入ることは無かった。

 

 一人で冒険者を続けたが、それは彼等の後を追おうとかそんなことは考えなかったし、紅魔族の長になることを諦めたつもりもない。

 

 効率が良い。一人ならレベルも上がりやすいし、お金も稼げた。

 いや、そうじゃなくて

 

 

 ただ単純に

 

 もう二度と

 

 

 もう二度と友達を失うあの苦しさや絶望を感じたくなかった。

 

 

 

 

 彼が死んで数年が経った。

 その数年はいろいろなことがあった。

 私もなんだかんだで魔王を倒すパーティーに入り、魔王を倒すことに成功した。

 

 そして私は紅魔族の長となった。

 

 苦労は絶えないが、なんとかやっていけている。忙しいのが悲しみを忘れさせてくれる。

 日々の苦労よりも親に結婚しろと言われる方が辛かった。

 

 

 そんなある日。

 家で仕事をしていると、血相を変えためぐみんが家にやって来た。

 めぐみんはカズマさんと結婚して、少しだけ丸くなったはずなのに、どうしたんだろう。

 私に合うや否や、手を引っ張って何処かへと向かっていく。

 

「ねえ、めぐみん。私結構忙しいから」

 

「いいから来なさい!ゆんゆんの為ですよ!」

 

 そんな感じで無理矢理連れて行かれる。

 溜息をつき、付いて行った。着いた場所は母校のレッドプリズン。

 少し待つように言われて、世間話しつつ待機した。

 そろそろもう一度問いただそうとしていると、授業が終わったのか子供達が正門から出てくる。

 めぐみんは注意深く子供達のことを見始める。

 

「めぐみん、その、変な趣味に目覚めたりとかしたんじゃないわよね?」

 

「違いますよ!私のことをなんだと思っているんですか!少し待ってなさい!」

 

 そんなことを言ってまた子供達を眺めるのを続けるめぐみん。

 こんな待つぐらいなら仕事をもう少しやってから来たかった…。

 

「あ!来ました!あの子!あの子を見てください!」

 

「もう…なに?」

 

 めぐみんが何度も何度も私の肩を叩き、一人の六から九歳ぐらいに見える男の子を指差して伝えてくる。

 

 その男の子は周りの子達と違って一人で帰っている。

 黒い髪に紅い瞳。紅魔族なら当然の特徴。紅い瞳はなんとなく少し黒い気がする。

 その子はどこか気怠げな表情で、見た目の年齢よりも大人っぽく、落ち着いた様な雰囲気を感じる。

 

 そんなことよりも何よりもあの子は

 

 私の友達、ヒカルにそっくりだった。

 

「今日カズマと買い物に出かけた帰りに、あの子が体育の授業かなんかで外に出ていた時に偶然発見したんです」

 

 めぐみんが何かを言っているが、まったく聞こえない。

 呼吸が止まって、心臓が早く鼓動を始める。

 夢?幻覚?ドッキリ?

 

「ほら、行きますよ」

 

 茫然としたままめぐみんに手を引かれて、男の子の元へと向かった。

 

 

 

「我が名はめぐみん!世界最強の魔法使いにして、魔王を超えし者!」

 

「はあ、どうも」

 

 男の子の元へと向かい、いきなり名乗り出ためぐみんに会釈して、そのままスルーしようとする男の子。

 そういえばヒカルはあまりめぐみんとは仲良くなかった気がする。

 

「ちょ!ちょっと待ちなさい!なにスルーしようとしてるんですか!貴方も紅魔族なら名乗り返してみなさい!」

 

 えー、と面倒臭そうな顔をする男の子。

 そんな表情もヒナちゃんに怒られてる時のヒカルそっくりで、ますます私は混乱する。

 

「我が名はヒカリ。あー、早く帰ってご飯の用意をしたい者」

 

 ヒ、カ…リ?

 こんなことあるはずがない。

 名前まで同じ?どう考えてもおかしい。

 私はとうとうおかしくなってしまったの?

 

「適当ですか!というか名前…。ゆんゆん、やっぱりこの子、ってゆんゆん!」

 

 めぐみんが呼びかけてきて、ようやく頭が動く。この子がヒカルなんてことあるわけない。ないだろうけど。

 男の子の目線に合わせてしゃがむ。

 

「ヒカリ君?その、私のこと知ってたりとかする?」

 

 ヒカリは首を傾げている。

 やっぱりわからないか。

 

「名前も知らないっす」

 

「そうですよ。紅魔族の長なんですから、しっかりしてください」

 

 う…やらなきゃダメよね。仕方ない。

 立ち上がりポーズをとって「我が名はゆんゆん!紅魔の里を統べる者!」といつもならそう言うのだが…。

 

 右半身を前に出し中腰になる。そして右手の平を見せてこう言う。

 

「お控えなすって」

 

「え、ゆんゆん…?」

 

「?」

 

 めぐみんもヒカリも困惑しているが、構わず続ける。

 

「手前、生国と発しまするは紅魔の生まれ、名はゆんゆんと申します。

この里の長をやらせていただいております。

以後、面対お見知りおきの上、よろしくお願い申し上げます」

 

 …うん。恥ずかしいけど、ちゃんと言えてよかった。

 

「ゆんゆん!その名乗りは一体!?」

 

 そういえばめぐみんの前では見せてなかった。うう、そう考えると恥ずかしさが増す。

 

「なんかかっこいいっす」

 

 めぐみんには変な反応されたけど、この子にはかっこ良く見えたらしい。

 それならよか

 

「自分の年齢考えずに道の往来で、こんな変な名乗りするとかすごいロックって感じるっす」

 

「バカにしてるの!?」

 

 確かに学校の前だけど!

 そもそもヒカルに教えられて…って、この子は違うんだった。

 ヒカリから面倒臭そうな表情は消えている。私たちに興味が出たのか、ちゃんとこちらを見て、話をしている。

 

「バカにしてないっす。特におっぱいを見せつけてくれるところが最高によかったっす」

 

「どこ見てるのよ!!変なところしか見てないじゃない!」

 

 私たちに興味があったわけじゃなかった!

 

「ところでお名前なんでしたっけ?」

 

「聞いてよ!なんで変なところばかり見て、肝心の名前聞いてないのよ!」

 

 完全に私たち個人に興味ない感じだこれ!

 

「紅魔族随一のおっぱいっていうのは聞こえたんですけど」

 

「言ってないわよ!というか一言もあってない!」

 

「おかしいっすね」

 

「おかしいのは君でしょ!?」

 

「いや、おかしいのはこんな場所であんな」

 

「あーもう!私はゆんゆん!よろしくね!」

 

 無理矢理終わらせた。

 これ以上恥ずかしい思いはしたくない。

 絶対この子はヒカルの生まれ変わりだ。こんな風にすぐいじりに来るし、割と欲望に素直なところもそっくり。

 すごく懐かしい気がして泣きそうになる。

 

「よろしくお願いします。すみません、そろそろ家帰ってご飯の準備がしたいので」

 

 と言って会釈して、また帰ろうとする。

 え、もうちょっと話しておきたい。

 

「ちょっと待ってください。ご飯の準備とか言ってますが、ご両親は?」

 

 と思ってたら、めぐみんが会話を続けてくれた。ナイスよ、めぐみん。

 

「共働きで王都にいます。帰ってくるのは夜なので自分で用意しないといけないっす」

 

 ならご飯を食べながら話を聞こう!

 この子にご飯を食べさせてあげて、更には話をして仲良くなれる。一石二鳥よ。

 

「そ、それなら私の家でご飯食べない?それとも何処かで食べに行く?」

 

 めぐみんも目を丸くしている。

 私も成長してご飯を誘うことも出来る様になったのよ。

 

「あんまり知らない人についていっちゃいけないって言われてるんで」

 

 え!?失敗!?

 すごく自然な流れでご飯に誘えたはずなのに!

 

「え、でもほら!私は族長だし!自己紹介もしたし、もう私たち友達みたいなものじゃない?」

 

「え、そうなんすか?」

 

 ヒカリが心底不思議そうに聞いてくる。

 え、ち、違うの?違わないわよね?

 

「あの、ゆんゆん?少し落ち着きましょう」

 

「え、落ち着いてるけど?」

 

「なお悪いですよ。ほらこの子も困惑してますし」

 

 めぐみんが何故か呆れたような顔をしてる。

 え、なんで?

 この年の男の子と接した事がないせいかな。

 全然わからない。

 

「でもヒカリ君、大変じゃない?お金の心配ならしなくて大丈夫よ。ちゃんと私は持ってるし、料理する方だって自信あるんだから」

 

「その、なんか誘拐みたいに見えるので、そろそろやめませんか?」

 

「ゆ、誘拐!?違うわよ!私はご飯に誘ってるだけで」

 

 なんて人聞の悪い。

 めぐみんの方を見て抗議の視線を送っていると、めぐみんが寄ってきて耳打ちしてくる。

 

「今日はこの辺にしましょう。ゆんゆんが急ぐ気持ちもわかりますが、周りに変に思われたくありませんし、ゆっくり仲良くなりましょう」

 

 た、確かに言われてみれば…。

 あれ以来、友達を作らないようになってから、更に人付き合いが不器用になったかもしれない。

 仕事とかで人に接するのは問題無いはずなのに。

 

「わ、わかったわ。でも一応一人で大丈夫かどうかだけ聞くわね?」

 

 めぐみんも頷いてくる。

 

「ヒカリ君、本当に一人でご飯準備出来る?大変なら私に頼ってくれてもいいのよ?」

 

「毎日やってるので大丈夫っす。では」

 

 ペコリと礼をしてから去っていく。

 あまり子供っぽくない感じだったなぁ。

 

 

 

 

 数日後の下校時刻。

 

「こんにちは、ストーカーで族長のおっぱいさん」

 

「ち、違うから!ていうかいい加減名前覚えてよ!」

 

 未だに名前を覚えてくれてなかった。

 

 あれから毎日、登校と下校時間に会うようにしていたのだが、何故だかストーカーと呼ばれるようになってしまった。

 ゆっくり仲良くなる作戦が…。

 

「ねえ、ゆんゆんだから。言ってみよう?」

 

「たゆんたゆん?」

 

「完全にバカにしたよね?怒っていいよね?」

 

「今日もご飯誘いに来たんですか?」

 

「誤魔化されないからね?ちゃんと謝らないと許さないからね?」

 

「俺の家ビンボーなので身代金とか用意出来ないのでやめた方がいいと思うんすけど」

 

「だから誘拐でもないから!」

 

 

 

 

 こんな感じで正直なところ仲良くなれてるか微妙なところ。

 本当に子供っぽくない子。

 

「学校はどう?楽しい?」

 

「普通っす」

 

 ………。

 

 会話…!会話が…!続かない!!

 

「え、えーっと、そうだ。なんか学校で流行ってるものとかないの?」

 

「学校で…?うーん」

 

 あ、もしかしたらこんな変な子だから私みたいに友達いないかもしれない。

 悪いことしたかも…。

 

「マイブームで良ければ」

 

「あ、うん。それでもいいわ」

 

 よ、よかった。杞憂で済んだ。

 

「俺のマイブームは毎日待ち伏せしてくるストーカーが話しかけてくるのを煙に巻くことですね」

 

「どんなマイブーム!?しかもそんなこと考えながら話してたの!?通りで話がまったく進まないと思った!っていうか私はストーカーじゃないから!」

 

「何言ってるんですか?」

 

「へ?」

 

「俺は別にゆんゆんさんとは言ってないですよ?」

 

 こ、この子供!嵌められた!

 しかもちゃんと名前覚えてるじゃない!

 少し嬉しくて、許しそうになる自分が憎い。

 ヒカリはニヤリと笑い、続けてくる。

 

「ストーカーって自覚あったんですね?」

 

 ぐっ!二日目あたりからそう呼ばれてたから反応してしまっただけだから。違うから。

 

「怖いなぁ…。学校の先生に相談しようかな」

 

「こんな時だけ子供ぶって!」

 

 どう言い返そうかと思っていたら

 

「どこに連れて行ってくれるんですか?」

 

「え?何が?」

 

 少し表情が柔らかくなったヒカリが問いかけてきたが、何のことか分からず、聞き返してしまった。

 

「ご飯誘いに来たんじゃないんですか?それとも本当に誘拐なんですか?」

 

「え、来てくれるの?」

 

 はい、と返事してくる。

 

「ふふ、実は照れてたんじゃないの?」

 

 ここぞとばかりにお返しにからかった。

 これくらいいいよね?

 

「さようなら、ストーカーの人」

 

「待って!?せめて族長!族長はつけて!」

 




他の視点で書くのきつい。
他視点の初めてがこの番外編なるとは。

ヒカリ君の喋り方に違和感しか感じないって?
流石にタメ口で話すのもアレなので、敬語にしました。

続きは書けるかわからないですけど、書けたら投稿します。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。