4話です。さあ、いってみよう。
案内してもらった女の子の元へと向かっていく。こちら側からだと後ろ姿しか見れない。
食事中だろうか。机に向かって何かしている。
少しアレだが、わざと通り過ぎて前からどんな人か確認しつつ声をかけてみよう。
さあてどんな人かな。通りすぎてから振り返り彼女のことを確認する。
この世界に来てから綺麗な女性ばかり見ているが、この子もまた美人な女の子だった。
ローブを纏っていてまさに魔法使いといった感じで、リボンで束ねられた黒髪が親しみ深さを感じる。
まだ顔に幼さが残っているが、確かあの変な募集の紙には16歳と書かれていたな。
全体的にスラリとした体型で、どことなく大人しめの顔立ちをしている。
日本の学校にいれば学級委員長とかをやってそうな優等生の印象。
それよりもなによりも目を引くのは、
でかい。
いや、違う。そうだけど、そうじゃない。
目が綺麗な紅い色をしている。
そんな綺麗な女の子が───
全集中して三角形のトランプの山を作ろうとしていた。
まるで戦闘さながらの真剣さ。
トランプの山はついに三段を迎えていた。
いや、声掛けづらいわ。
本当にパーティー募集してんのアレ。さっきのおっさんみたいなオチじゃないだろうな。
深呼吸して、トランプの三段目を置き終わるのを待ってから、俺は遂に声をかけた。
「あのーすみません。パーティー募集の張り紙を……」
グンと勢いよく少女の首がこちらに向く。
まるでホラーゲームの捕まったらゲームオーバーなタイプの敵役と目が合ったぐらいのプレッシャー。右足が無意識に半歩下がってしまった。周れ右しそうになったのを耐えた俺を誰か褒めてほしい。
紅い視線が突き刺さんばかりにこちらを真っ直ぐに見て、すぐに周りを見始める。
他に誰もいないことを確認してから最後にもう一度こちらを見始め、わたし? とばかりに自分を指差して確認してくる。
勢いが良すぎて少しビビったが今更引くわけにいかない。そうだと頷いた瞬間、椅子を蹴飛ばさんばかりに立ち上がり、その勢いでトランプの山は崩れ落ちた。
「わ、私ゆんゆんと申します職業はアークウィザードですが魔法はまだ中級魔法しか使えませんごめんなさいでも大丈夫ですすぐに上級魔法だって覚えますから!!」
と、一気に捲し立ててきた。
ギルド内に響き渡り、一気に注目が向く。それに気付いたゆんゆん? さんは自分の目と同じぐらいに顔を真っ赤にしていた。
丁寧に自己紹介されたんだし、俺も応えるべきだろう。
「えっと、シロガネヒカルと申します。職業は剣士。今日冒険者を始めたばかりなんだけど……」
「ふ、不束者ですが、よ、よろしくお願いします!!」
え、いや、ちょ……
「や、やっと、やっと私にもパーティーメンバーが……っ!」
自己紹介しただけでパーティーが結成されてしまった。
とりあえず落ち着いてもらったところで、食事でもしながら話でも、と誘ったところ。
「一緒に食事!? い、いいんですか!? 本当に!?」
……遠回しに断ってるのかと思ったが、ここで引くのは色々と問題がありそうなので、俺は頷いた。
この少女は余程孤独な生活をしてきたのだろうか。
文化や環境が違えばもちろん食も変わる。
ジャイアントトードの唐揚げ定食か……。
トードってなんだっけ?
なんか聞いたことあるような無いような。料金設定も他のメニューに比べて安めだし、これにしよう。
街並みは中世でも唐揚げとかあるなら食事面も安心か。ちなみに味も問題無かった。
食事も終わり、なんとかゆんゆんさんも落ち着いてきたので話を始めよう。
落ち着いてきてはいるが、ずっと目が泳いでたり何か口を開いたり閉じたりと終始挙動不審だったが。
「それでパーティーの話なんだけど……」
「は、はい! よろしくお願いします!」
姿勢を一瞬で正し、膝へ手を置く。
まるで俺が面接官みたいだ。俺が面接される側のはずなんだけど……。
「……俺、今日冒険者になったばかりで知らないことも多い状態だけど、本当にパーティーに入って」
「何も問題ありません! 私もまだ中級魔法しか覚えてませんし、パーティーを組んでクエストを受けたこともありませんから!」
…………色々疑問も尽きないけど、やってみないとわからないこともあるわけで。
「じゃあ、よろしくお願いします」
「こ、こちらこそ! よろしくお願いします!」
問題は起きてから解決するしかない。なら行動するのみだろう。
お互いに礼をしてパーティーの結成が改めて決まったのだった。
今日中にやらなきゃいけないこともあるし、明日にクエストを受けようという話をしたら、ゆんゆんさんの表情が何故か緊張が増したような顔になり、挙動不審さが増す。
「あ、明日ですか!? そ、それってもしかして……わたし何かしてはいけないことをしてしまいましたか!?」
「???」
この娘の言ってることはよくわからないことが多い。もしかして今日じゃないとダメだったかな。
もしかして今日クエストを受けないと、何か困ることがあるのか? 金銭的な問題とか。
俺も余裕があるわけじゃないけど、装備を揃えたりする準備や宿の問題がある。
そのことを伝えると挙動不審さがなくなった。
パーティーにはなれたが前途多難かもしれない。
「それでしたら、その、一緒に着いて行ってもいいですか!? お邪魔とかじゃなければ……」
そういえば街のこと全く知らないんだった。
色々と教えてもらいたいし、迷惑とかじゃなければ、こちらこそ是非お願いしたいと伝えると、ゆんゆんさんは目をキラキラとさせて言った。
「っ! ……ま、任せてください! わたし結構詳しいですから!」
なんとも嬉しそうな顔だ。
そんな表情をされたら悪い気はしないが、どう考えても立場が逆なんだよな。
ギルドを出て街のことなどを聞きつつ、必要なものを調達する。
問題無く調達出来たが、やはり金銭面に不安がある。明日は確実にクエストを受けなければ数日で所持金が尽きてしまう。
この冒険はどうやらハードモードらしい。
難易度変更はどこで出来るか教えてくれ。ベリーイージーに設定変更させて欲しい。
ハードといえばこの娘とのコミュニケーションもだいぶハードだ。
話す度にどもるし、常に挙動不審。ふと目が合った時は顔を赤くし俯き始める。何かを話そうとするが、すぐに黙り相手が話そうとするのを待つ。
話しかけた時は割と答えてきてくれるから、まだいいかもしれないが、パーティーメンバーとしてはだいぶ不安だ。
この女の子がパーティーメンバーを募集しても、なかなか来ないのは恐らくこの態度が原因だろう。
他にも大きな問題があるかもしれないが……。
そうじゃないと今までパーティーメンバーを募集しても来なかったことに説明がつかない。
この娘ほど可愛くて、性格良さそうな娘はそうそういない。
先程ギルドにいた時に見たが女性の冒険者も珍しくないみたいだ。
他に問題があるとしたら、この街の男性全員が下半身に問題でも抱えているか、もしくは目にビー玉でも入っているのか。
過去に問題でも起こして去勢でもされてしまったんだろうか。
なんて、そんなアホなことを考えつつ、宿も決めた。
冒険者はあまり稼げる職業じゃない為、馬小屋のスペースを借りて寝ることも珍しくないのだが、流石に今日だけは普通の宿を取ることにした。
明日から本気出す。
その為に英気を養うのだ。決して馬小屋が嫌だったわけじゃない。
次からやっとクエストに出れます。
シロガネ達のパーティーは四人を予定していますが、揃うのに何話かかることやら……。
ゆんゆんの年齢が少し変わっていますが、13歳ぐらいの違う子をパーティーに入れたいなと思い、少し変えさせていただきました。