今回ももちろんシリアスです。
『No』の先のハッピーエンド⑤
「ゆんゆん!助けて!」
「わあああああ!!な、何よ!?ど、どうしたの!?」
書類仕事の「休憩」中にヒカリが仕事部屋に勢いよく入ってくる。
「ちょっと隠れさせて!」
「え!?ちょ、ちょっと待って!!い、今は待って!」
「急いでるんだ!ヒナがどこか行くまでだから!」
ヒカリがズンズンと私が座ってる方に来る。
ま、まずい。今は来られるのは本当にまずい。
「ほ、本当にダメ!ここ以外にして!」
「大丈夫!仕事してていいから」
そう言って仕事に使うワイドデスクの足を入れるスペースに入ろうとしてくる。
今はダメ!本当にダメ!
「ん?ゆんゆんなんで下着を下ろしてるの?」
「こ、こここここれは、その、そう、ちょっと汗をかいたから!って!見ないでよ!」
「え!?そうなの?ごめん。でも今は俺の身が危ないから協力してって、なんでこんな足元に水滴が落ちてんの?何してたの?」
「え!?あ、えっと、こ、これは、その、あ、汗よ!」
「にしては他の部分が汗かいてないように見えるけど…」
「き、気のせい!気のせいだから!」
「?」
まあ、いいかと言いながらそこに入って身を隠すヒカリ。
それと同時に扉が勢いよく開け放たれる。
鬼の形相をしたヒナちゃんだ。
「ゆんゆん!ヒカリ来なかった!?」
「え!?き、来てないけど、どうしたの?」
「え、あ、そのヒカリとまた組み手してたんだけど」
「またやってたの?二人ともステータス高いんだし、大怪我になりかねないんだからやめてよ」
「う、ごめん。でも僕もまたスキルが使えるようになってきたからさ」
「だからって、わざわざ怪我するようなことしないでよ…。まあ、いいわ。で、どうしたの?」
「あ、うん。その二人で組み合った時に、そのぼ、僕の胸にヒカリが倒れてきちゃって」
「ふうん…」
「じ、事故だからね?僕は全然気にしてなかったんだけど、普通謝るよね?こういう状況だったら普通謝るよね!?」
「まあ、そうだと思うけど」
「そしたら!顔を上げた後に鼻で笑って来たんだよ!?どう思う!?」
「あー…最低だね」
そして怒りを現しながら私の方に近付いてくる。
え、ちょ、こっちに来るのは
「でね!最初は僕も怒らないで注意したんだよ?こういう時は男性からちゃんと謝るんだよ?って!そしたら、なんて、って…なんでゆんゆんそんな変な体勢なの?」
私は今、足を入れるスペースに足を入れるわけにいかないので、体は前を向いているが、足は横にしている変な体勢だった。
「あーこれは」
最初は眉を寄せて訝しんでいただけだったヒナちゃんだが、何かに気付き机を回ってこちら側に来ようとしている。
「あ、ちょ、ちょっと待って!」
そして見てしまった。
下着を脱ぎかけた私に机の足を入れるスペースに広がる水滴とヒカリの姿を。
口をパクパクとして茫然としていたが、どんどん顔が真っ赤になっていき、先程以上の怒りの表情を浮かべる。
「ち、違うよ?これは確かに変な風に見えるかもしれないけど、ちが」
「二人とも!!!!!正座!!!!!!」
家どころか近所にまで聞こえる怒鳴り声が響き渡った。
「じゃあ変なことはしてないんだね?」
「してません…」
「なんだよ、変なことって」
羞恥心で顔が熱い。
まさかこんな恥をかくなんて…。
「で?ヒカリは僕に言うことあるよね?言ってごらん?」
「ん?ああ、顔が潰れるかと思ったよ」
「しばき倒す」
「来るならこい、し、しまったあ!足が痺れああああああああああああ!!!」
いつもの様に喧嘩をしている。
いや、今は喧嘩というか一方的にヒカリがやられてるけど。
ヒナちゃんとの再会から三年ほど過ぎた。
あの後のヒナちゃんの行動力たるや凄まじく、あれから一週間もしないうちに紅魔の里に移り住むことになって、その時の宣言通り、ヒカリのご両親に許可をもらい、ヒカリに色々と教育をしている。のだが
「お前の胸が小さいのは誰のせいだあああ!?俺のせいじゃないだろこの野郎おおお!!」
「そういうことを言うから怒ってんだよこの野郎!!」
ご覧の通り、いつも取っ組み合いに発展してる。あまり変わってないというかヒナちゃんが無理矢理教育をしようとするからヒカリが反発していつもこうなる。
というかますます悪い方向に行ってる気がする。
でもヒナちゃんは変われた。
あの暗いまま俯いてるような状態ではなく、私達がパーティーを組んでいる時のような性格に戻った。
ヒカリは歳を重ねていくごとにヒカルに似ていっているような気がする。ヒカルとしての記憶は何も無いらしいのだが。
ヒカリはもう学校を卒業する。
今期の首席で卒業らしい。私も勉強を教えた甲斐があった。
ヒカリは早く学校を卒業したいと言っていた。親の為にもお金を稼げるようになりたいと言って勉強を頑張っていた。
首席でほぼ卒業間違いなしと聞いた時にご両親がわざわざお礼に来た時は驚いたが、まあ私も勉強を教えた後にたのしま、なんでもない。
ヒカリは卒業後、冒険者になる。
他にも色々道はあるんじゃないかと提案してみたが、外の世界を見てみたいと言われてしまい、何も言えなくなった。
私は…。
正直に言えば行って欲しくない。
私は族長として、かつてのパーティーのようについて行くわけにはいかない。
悪いイメージが浮かぶ。
ヒカルが帰らぬ人になったように、ヒカリもそうならないとは限らない。
ヒカルみたいにステータスが弱いわけじゃないから、そう簡単に死ぬわけがないし、ヒナちゃんがついていってくれるから、大丈夫だとは思うけど、不安は消えない。
今やヒカリは私やヒナちゃんだけでなく、あるえやカズマさん達、多くの紅魔の里の人に好かれている。
ヒカリが死んでしまったら、今度こそ私やヒナちゃんは…。
いや、そうじゃない。
周りの人がどうとかじゃなくて
純粋にそばにいてほしい。
だって
私の、大好きな人だから。
実は私は
ショタコンだったのだ。
衝撃的な新事実。
ただ、勘違いしないでほしい。
ヒカリだから好きになった。
それだけは確実で、子供なら誰でもいいわけではない。
もう紅魔族随一のショタコンだとか、歴代の中で最悪の族長とでもなんとでも呼ばれてもいい。それぐらい甘んじて受ける。
それぐらい好きで、大切な存在。
ただヒカルに似ていたから好きになったのかどうかは正直わからない。
一つの要因ではあるかもしれないけど、わからない。
あと外に行ったら、もしかしたらヒカリの心が変わってしまうかもしれない。
それも怖い。
違う人を好きになってしまったら、どうしていいかわからない。
そんなことがあれば多分二度と外に出られないように閉じ込めてしまうかもしれない。
私とヒカリは、なんというか許婚のような関係で、本当に恋人とかそういう関係かと言われると微妙で。
ヒカリはまだ子供だからわからないだろうと思って、告白みたいなのはしていない。
いつかはしたいし、されたいけど。
ヒナちゃんは私達の関係を知っている。
あまり良い顔はしてくれなかったけど、わかってくれている。
ただやりすぎると怒る。さっきみたいに。
距離感的にはちゃんとそんな関係だとは思う。
私がいろいろと要望を出しても、ヒカリはしっかり応えてくれるし。……何を要望してるかはちょっと口には出せないけど。
「このプレートアーマー野郎!退け!」
「その曲がり曲がった性根叩き直してあげるよこの野郎!」
そしてそんな日常を過ごしていたら、あっという間にヒカリが里を出る日になった。
今はみんなテレポート屋の前でヒカリを見送ろうと集まっている。
ヒカリの格好はなんというかすごいカオスな状態だった。
めぐみんからは三角帽子。
カズマさんからはカタナと言われる剣。
あるえからは眼帯とスクロールを一つ。
ヒカリの両親からは魔道具をいくつかと紅魔族のお守り。
私の両親からは仕込み杖という、杖としても使えるし、中から刃物が出てくるというもの。
私からはテレポートのスクロールと多めのポーションに少量のマナタイトが含まれた魔力を肩代わりしてくれるネックレスにあとは
「渡しすぎですよ!もう持つだけで苦労してるじゃないですか!」
「ええっ!?」
めぐみんから指摘が入るけど、これでもかなり厳選したのに…。
「あの、ポーションは僕も一緒にいるから大丈夫だと思うよ?」
ヒナちゃんがそう言ってくるけど、もし別行動を取った時に何かあったらどうするの?
「これはマナタイトまで入ってるのかい?ちょっと愛情が重過ぎるんじゃないかな」
あるえが変なこと言ってくる。
これぐらい普通でしょ?何言ってるの?
「ゆんゆん、また戻ってくるから、その時にでもさ」
ヒカリまでそんなこと言ってくる。
確かに荷物になるから、しょうがないか。
「じゃあまた貯めとくね」
「えっ、いや、今ある分だけでいいから」
え?なんで?
ヒカリとヒナちゃんは二人で来てくれた人達に挨拶しに行ってしまった。
はあ…。どうしよう…。
明日から休憩の膝枕も無いし、お菓子も食べさせてくれない。
私は明日からどうやってお菓子を食べればいいんだろう。
「はあ…」
ため息が出てしまう。
「ゆんゆん、心配なのはわかるけど、僕もいるからさ」
いつの間にか挨拶が終わったのか、ヒナちゃんが私の元へ来ていた。
「…うん。でも心配なのはヒカリだけじゃなくてヒナちゃんもだからね?」
「うん。ありがとう」
ヒナちゃんが下がって、ヒカリが私の前に来る。
「…気をつけてね」
「わかってる。またすぐに帰ってくるよ」
うう…これ以上喋ると行かないでとか言いそうになる、けどまだ話していたいし、えーっと
そんなあれこれ考えていると、ヒカリが背を向けてテレポート屋に向かってしまう。
ああ…行ってしまう…。
もっと言うことをしっかり考えておけばよかった。
そういえば言いたいことが言えなくて友達が出来なかった頃と何も変わってないのかもしれない。
大切な人なのに、もっと気の利いたことが言えるようになっていれば
「何しょぼくれてんだこの野郎」
「へ?」
自責の念でいっぱいになっていると、いつの間にかヒカリが戻ってきていた。
「すぐ帰ってくるってば。テレポート覚えたらすぐだし」
「う、うん。わかってるわよ」
「はあ…。俺頑張ってくるからさ、応援してくれ」
ため息つきつつ、真剣な表情でそう言ってくる。
「…うん。応援もお祈りもするよ」
そしてヒカリは三角帽子を取り、私に近付いて来る。
私はその時はもっと良い事が言えない自分が嫌いになってきて全く気付いてなかった。
ヒカリは私の首に手を回したあたりで、正気に戻り、理解が追い付かずに固まる。
三角帽子で周りのみんなに見えないようにして顔を近づけ、
唇に柔らかい感触がした。
………………へ?
『おおおおおおおおお!!?』
みんなが歓声を上げたあたりで頭が動き出す。
ヒカリは三角帽子をまた被り直しながら、またテレポート屋に向かい始める。
振り返ったヒカリと顔を真っ赤にしたヒナちゃんがこっちを見ていた。
ヒカリはまるでイタズラを成功させたような笑顔を見せる。
顔が熱い。
鼓動が速くて、嬉しいのに、みんなの前にいるせいでどんな顔をしていいか、わからない。
というか自分が今どんな顔をしてるか、わからない。
「いってきます」
子供らしいような、ヒカリらしいような
大人らしいような、ヒカルらしいような
そんな大人な技をどこで覚えたんだとか
こんな、明日から会えないのに生殺しにするような真似をするなんて、とかいろいろな考えが頭を巡って
でもなんとなくだけど、なんとなくヒカリはちゃんと帰ってくるような安心感を感じた。
気の利いたことは相変わらず言えないけれど
これだけは言わなきゃいけない。
「いってらっしゃい」
私はやっと笑顔で送り出せた。
「あの子達は何やってんのよおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」
私は激怒した。
必ず、かの邪智暴虐のバカ二人をしばかねばならぬと決意した。
私には状況がわからぬ。
だが確実にしばかねばならぬ、そう考えていた。
ヒカリが冒険者になって三年が過ぎた。
出発の日から数ヶ月はまともに帰ってくることは無かったが、その後は『テレポート』を覚えて何度も帰ってくるようになった。
それはいい。それは、うん、嬉しかった。
会うたびにヒカリは大人になっていって、毎回会うのが楽しみで
って、そんなことは今はどうでもいい。
何故私が怒っているか、それは
女性ばかりに囲まれたパーティーにいることでも、大怪我をしたことでも、テレポートを覚えたくせになかなか帰ってこないとか、いつもいつもヒナちゃんから報告されるヒカリが胸の大きい女性ばかり目で追っていることでもない。
いや、正直これも怒ってるけど。
ヒカルとパーティー組んだ時は男女比率よかったのに、他は全員女の子って、それはいつでも間違いが起こりかねないじゃない!?
怪我したら、怒る。当然怒る。ヒナちゃんが治しても怒る。ヒナちゃんにも怒る。
というかテレポート覚えたなら一週間に一回ぐらい帰ってきてもいいでしょ!?何やってるのよ!絶対浮気!浮気よ!というかなんでほいほいほいほい他の女の子の胸見てるのよ!これは厳密な調査が必要!まずは身体に聞きだして
って、今はそうじゃない。そうじゃなかった。
あの子達バカ二人、いや、あのバカパーティーは今や凄腕のパーティーになっている。
なっているのだが。
難しいクエストもなんだかんだでクリアしているが、だいたい問題を起こす。
例えばそれは
超古代遺跡の調査。
遺跡の調査に乗り出したバカ達は、遺跡奥に眠る超古代兵器を発見する。
ヒカリが遺跡にあった言葉とかを何故か理解して仕掛けをいじっていると、超古代兵器は動き出した。
聞くところによると、その超古代兵器はあのデストロイヤーに匹敵する兵器だったらしく、止めなければ甚大な被害を出しかねないと判断したバカ達は兵器を止めるか、破壊をすることに決めた。
バカ達は持ち前のスキルやら何やらと遺跡にあった別の武器や兵器で対抗し、兵器の破壊に成功した。
ここまではいい。そもそもそんな危ないところに行くなんてとか、もっと応援とか呼んで安全に対処してほしいとか思うけど、まあ良くはないけど、いい。
兵器の破壊に成功したが、超古代遺跡の破壊にも成功した。
最早更地でそこに本当に遺跡があったのかどうか疑わしくなるレベルに綺麗に破壊したらしい。
ギルドや国からそれはもう怒られた。
私が。
何で私!?やったのあの子達でしょ!?
確かにそのパーティーのリーダーは紅魔族だけど、何で私!?
帰ってきたバカ達をすぐに正座をさせて説教を開始したが、誰が悪いとかヒカリが悪いとかいやいやヒナが悪いとまるで話にならない為、全員に怒る羽目になった。
数ヶ月後にバカ達はまたやらかすことになる。
国境付近にクエストに出かけていたバカ達は馬車が山賊に取り囲まれていることを発見して、助け始める。
山賊はもちろん倒す、というか全滅させて、当然問題を起こすバカ達は馬車も破壊した。
一応山賊を倒して助けたことから、感謝はされるが、馬車を破壊した以上、乗っていた人たちを護衛して送り届けることになった。
その乗っていた人たちが違う国の王族の人たちだと気付いたのは後だったらしいが、その国の王族の人たちが感謝の意味を込めてバカ達を食事に呼んだのだが、
これに返事をしないどころか、行きもしなかった。
これはもう国際問題になりかけて、族長の私が呼び出しの連絡が来て私が頭を抱えていると、そんな私を見かねたのか父が解決してくると言って、王都に向かっていった。
族長として恥ずかしく感じていた私だったが、一時間もしないで帰ってきた父にどうだったかと聞くと
「ん?そんなことで呼び出すな、と言ってきたよ」
心臓が潰れるかと思った。
ま、まじですか?と聞くと
「紅魔族は王だろうが魔王だろうが屈しない種族だぞ?当たり前だろう?ヒカリ君は本当に立派になったものだ、はっはっはっ!」
などと訳の分からないことを言い始めたので、いろいろと考えるのをやめた。
帰ってきたバカ達に何があったかは言うまでもない。
私はヒカリに三日間私を満足させなければ、冒険には行かせないと罰を出した。
三日後フラフラしてまた冒険にでたヒカリだったが、私が悪いわけではない。ヒカリ達が悪い。
あとでまた精力増強のポーションを買っておかないといけない。
その他にも邪神の復活を阻止したり、やれ神獣だやれドラゴンだやれ突然変異のモンスターだ話しの途中だがワイバーンだとかを、倒しながら破壊の限りを尽くしたヒカリ達。
そして今回はなんと
グレテン王国に喧嘩を売った。
魔王軍が倒れて未だに敵対関係にある国に、たった一つのパーティーが喧嘩を売った。
ヒカルのことが頭を過る。
私達のパーティーのリーダーであり、希望だった彼の冷たくなった体を思い出す。
私が騒いでたのを聞きつけた父が
「なるほど、それは一大事だ。ヒマな里の連中に声をかけて、みんなで応援に行こう。弁当とか持って」
ピクニック気分!?嘘でしょ!?
もう居ても立っても居られなくなった私は父に仕事を任せて、私が行くことにした。
それを聞きつけためぐみんやカズマさんが付いてきてくれると言ってくれて、偶然居合わせたダクネスさんやアクアさんも来てくれることになった。
魔王討伐を思い出す。
これならきっと大丈夫。
助け出せる。待ってて、ヒカリ!
「これがッ!!トリスターノの分だッ!!!このやろおおおおおおおおおおおお!!!!」
ヒカリの拳が騎士王の顔面に突き刺さらんばかりにぶち当たり、地面ごと殴り込んだ。
その後騎士王は立つことは出来ず、立っていたのはヒカリだけだった。
…えぇ…。
私達が着いた時にはヒカリは騎士王との一騎討ちをしていた。
お互いの魔力が果て、剣と槍の勝負も決着がつかず、お互いボロボロになって肉弾戦へと持ち込んだ末、ヒカリは戦闘において無敗の騎士王に勝利した。
そこからはもう何が起こったか正確にはわかっていない。
それを見届けた円卓の騎士やグレテン王国軍はすぐに戦闘態勢に入り、私達やヒカリのパーティーとの戦いになるかと思いきや、そこに紅魔の里のみんなが現れ、更にはヒカリのパーティーの縁のある人たちが現れる。
全員が戦闘態勢に入り
「アッセンブル」
ヒカリの一声で全面戦争が起こるかに思えたが、起き上がった騎士王がそれを止め、ベルゼルグに降伏を宣言した。
もうめちゃくちゃで、訳もわからず、なんとか状況が落ち着いた時にヒカリが私の元へ来た。
やりきった顔で。
「俺…」
私は怒りと心配と安心でなんと表現していいかわからない感情で気付けば、ヒカリをビンタしていた。
そこから私達は喧嘩、というか私が一方的にヒカリに怒って
話し合っても埒が明かず、もう知らないと後ろを向いたら
気まずそうな顔で一人の痩せこけた金髪碧眼の男が立っていた。
というかトリタンさんが立っていた。
『え?』
そこにいるトリタンさんを知っている全員が間抜けな声を出した。
「えっと、あの、すみません。恥ずかしながら生きてました」
信じられなくて、ヒナちゃんを見ると、同じくそう考えたのか目が合った。
仲間が生きていた。
トリタンさんを知っている人達はトリタンさんの元へ駆け寄り、再会を喜び合った。
「あの、喜んでくれてるのは本当に嬉しいのですが、彼を紹介していただけませんか?」
彼、と呼んでいる視線の先にはヒカリがいた。
そうだ、紹介しなきゃ
「お前がトリスターノか?イケメンだな、腹立つ」
「……ふふふ、もしかしてアンデッドにでもなって記憶が飛んでしまったんですか?」
ヒカリがヒカルみたいなことを言った。
笑顔を崩さないで、ヒカリを見つめてそんな軽口を叩いた。
「お前こそアンデッドじゃないだろうな?」
「違いますよ。先程までこの世に未練なんてありませんでしたから」
トリタンさんの目尻に涙が浮かんでいる。
「あのね、」
私が説明しようとすると、ヒカリが遮ってくる。
「言っておくけど、俺はヒカルじゃないぞ、そこら辺勘違いするなよこの野郎」
「どう見てもリーダーに見えますが、そうですね…あの人が騎士王に勝てる訳もなければ、実は紅魔族だったなんて設定聞いてませんしね」
「そんなのどうでもいいんだよ。おい、そろそろ答えろよ」
『?』
みんな訳もわからず、黙った。
「お前がトリスターノか?」
そんなのもうわかりきって
「そうでした。聞かれていましたね。貴方とは初対面ですから、自己紹介をさせていただきます」
トリタンさんは右半身を軽く前に出し、中腰姿勢になり、右の手のひらをヒカリに見せて、
ああ、もうそんな
「お控えなすって」
そんな懐かしい
「手前、生まれも育ちもグレテン、騎士として生き、闘争の中に身を置いていましたが、友を求めて旅に出ました。その旅の中、仲間や友に、命を救われ、」
ボロボロとトリタンさんの表情が崩れていく。
私もヒナちゃんも。
「…ふ、復讐の道を進む中、友に救われた命、どうしても捨てきれず、恥ずかしながら、戻って参りました」
ヒカリは一切表情を変えず、トリタンさんを真剣に見つめていた。
「円卓の騎士、トリスタン、ぼっちと色々と呼ばれてきましたが、全て捨ててきました。
シロガネヒカル率いる、パーティー、メンバーの、トリスターノと、申します。
失礼ながら、お手前は?」
ヒカリは呆れた表情になり
「長えんだよこの野郎。まったく。それ知らないんだよな、勉強しとけばよかったよ」
そんなこと言いながら、同じポーズを取った。それがまた、ひどく懐かしい。
「我が名はヒカリ!紅魔族の希望の光!ゆんゆんの伴侶となる者!やがては」
「…いや、今からお前の友達になる者だ」
「……っ…い、いいんですか?わた、し、なんかと」
「うるせえんだよこの野郎。はいか?いいえか?」
「…っ、はい!」
ヒカリは新たな友達と仲間を手に入れた。
私達はもうあのパーティーには戻れないし、ヒカルも帰って来れないけれど、これは一つの幸せなカタチだと思う。
「おい、トリスターノ。俺の娘に近付くなって言っただろうが」
「酷いですよっ!私もたかいたかいしてみたいです!」
「ほうら、バカな男二人は置いて、僕といましょうねー」
「誰がバカだ。お前の方が脳味噌も胸も筋肉で出来てるだろうが」
「む、胸は流石に言い過ぎですよ…」
「なるほどね!二人が僕をなんて思ってるか、よーくわかったよ!ゆんゆん!この子は預けるよ」
娘を私に預け、腕をまくり二人にズンズン近付いていくヒナちゃん。
「ほら、見たことか!やっぱり筋肉で出来てるじゃねうわああああ、走ってくるな!!」
「うわ!ちょ!私も巻き込まないでくださいよ!」
「トリタンも同罪だよこの野郎!!」
「ええっ!?」
いつまでも変わらないみんなにため息が出てしまうが、なんというか安心する。
みんなそれぞれの生活があるから、ずっと一緒にはいられないけど、こうしてたまにみんなで集まって、相変わらずのやりとりをしてる。
「はあ…はあ…ゆんゆん匿ってくれ」
「もう、どうせ見つかるわよ?」
息を切らしたヒカリが私の元へとやってくる。おおかたトリタンさんを囮に使ったに違いない。
「いいんだよ。ゆんゆん」
「なに?」
「愛してる」
「うん、私も」
これはどこにでもあるような平凡だけど、確かな幸せのカタチ。
えんだああああああああいやああああああああ
はい、番外編に最後までお付き合いくださり、本当にありがとうございます。
今回もシリアスでしたね間違いありません。
本編より気合入ってね?って?なんか色々考えついたらこんなんなりました。
ゆんゆんをどうしても幸せにしてあげたくて、つい。
トリスターノは出ない予定だったんですけど、ハッピーエンドと言ってるからにはやっぱり出ないとなあと思ったら、いつもよりすげえ文字数になりましたとさ。
前回の後書きにストーリーの補足みたいなの出すかもとか言いましたが、良い終わりに出来たし、野暮ってもんですよね。私のメモのフォルダにそっとしまっておきます。
なんか本編に戻り辛いですけど、次からまた本編投稿していきます。
よければ感想とか頂けると嬉しいです。