視点も変えてみました。
是非読んでってくださいな。
光を継ぐ者
背中を押されて、建物を飛び出す。すぐ後ろの先程までいた建物が壊れた。もう少しでペシャンコになるところだった。
だが、そんなことはどうでもいい。
後ろには僕の大事な人がいた。
彼に背中を押されて、なんとかこの遺跡を抜け出せた。
「ヒカリーーーーーーー!!!!!」
思わず絶叫した。
思い出すのはかつての友。冷たくなり、二度と目を覚さなくなった大事な人。
また?また僕は、守るどころか守られて
「『ライトオブセイバー』」
呪文が聞こえた直後、光の刃が地面を走る。
斬られて出来た部分から人が飛び出てきた。
その人物は華麗に着地し、一回転しながら立ち上がり、その勢いでマントは風に煽られたかのように広がる。
「我が名はヒカリ。紅魔族の希望の光。やがては」
飛び出てきた人物はまるで何事も無かったかのように煤だらけのマントを広げて淡々と名乗る。
「ゆんゆんの伴侶となる者」
三角帽子の唾を持ち、紅い瞳を光らせて澄ました顔で宣言するバカの姿を見て、自分の顔が引きつったのを感じた。安堵よりも怒りがこみ上げる。
「助けてくれたのは礼を言うけど、何してんの!!」
「何って、あるえ姉ちゃんが言ってた『人を助けた後に華麗に名乗る方法』を実践しただけだけど?」
「またあるえさん!?そんなことよりもっと安全にやってよ!心配し」
「安心しろ。全部計算してやった」
「あとでしばく!」
澄ました顔に睨み付けてもまるで何も変わらない。そんなことは今まで一緒にいてわかってるが、睨まずにはいられない。
どうしてこんな危険なことをするのか。
「ヒナギク!安心したのはわかるけど、そろそろここから離れよう!」
「そ、そうですね、クリスさん!」
クリスさんに言われて我に帰る。
そうだった!今はそんな場合じゃ
何かが割れるような音が聞こえて地響きが聞こえる。
何十メートルか先の地面が割れて、膨らみ始める。何かが出てこようとしている。
何か、ではない。
もう何が来るかを僕は知っている。
「やっぱり倒し切れてないか。あの変な兵器が直撃してなかったからかな」
ヒカリはまるで動じてない。
「ちょ!どうする!?」
「どうするも何も、壊さなきゃとか言ってたのはお前らだろうが。ここでやろう。ちょうど周りに何もないしな」
「う、嘘でしょ?あたし、あんなのに正面切って戦う自信ないんだけど…」
クリスさんが珍しく弱気だ。
僕も正直あんなの相手にどう戦えばいいか全くわからない。
「クリスならやれるよ。あいつの関節部分を狙ってくれ。ワイヤー使い切る勢いでな。動きが鈍ってきたところをツッキーと俺がやる」
「え、本気…?ツッキーが暴れるのに巻き込まれたら、あたし死んじゃうよ!?」
「…」
今まで全く会話に入ってこない中、ヒカリの近くで待機してる十代ぐらいの可愛い女の子がツッキーことツクヨ。
身長は僕よりも低いのに、僕よりも大きい大剣を引き摺りながら背中に背負っていて、全身鎧に腰に二振りのダガー。
肩にかからない程度の月のように綺麗な金髪に燃えるような紅い瞳が特徴のツッキーは会話に名前が出てきてるのに未だに沈黙を守っている。
「大丈夫」
「な、何か策があるんだね!?」
「俺は仲間を信じてる」
「無策じゃん!人任せじゃん!」
クリスさんが何時ぞやのカズマさんに下着を盗られた時みたいに涙目になって抗議をした後、ヒカリが何か言おうと口を開いたところで地面がまるで破裂したかのように、奴が地上に飛び出してきた。
超古代兵器、カクトウサイ二足歩行なんとかと言う音声が遺跡から聞こえたが名前は知らない。
ヒカリやクリスさんが言うにはあのデストロイヤーに匹敵する兵器だと聞いている。
見上げるほど大きい二足歩行の、まるで人型の兵器。人型ではあるが、肩には何かを背負い込むようにバカでかい砲身のようなものがあり、全身は人間に近いのに顔部分は人間というより獣の形だった。
目の部分は不気味に光り、口の部分が大きく開き、耳を覆いたくなるぐらいの咆哮のような爆音が響き渡った。
「クリス!足を潰せ!頼んだぞ!」
「うわああああああああ!!後で覚えておいてよ!!」
クリスさんがあんなヤケクソになってるところ初めて見た。
「最初から全力で行くぞ!やっちまえ、バーサーカー!!!」
その声に反応したツクヨがあの兵器に負けないぐらいの声で叫び、背中の大剣を軽々と構えて砲弾のように突っ込んでいった。
「ヒナは支援魔法。俺は後方から魔法を撃つ」
たった四人で結成された一つのパーティーと超古代兵器との決戦の火蓋が切って落とされた。
力勝負で言えば、今までで一番の強敵だったかもしれない。
ツッキーがバーサークして敵と凄まじい攻防をやり合ってる間に少しずつクリスさんが動きを鈍らせていく。魔力防御壁が邪魔だから解除してくれと平然と言い放つヒカリに怒りを覚えながらも、なんとかぶち破った後、関節ごとに柔らかい部分を僕の支援魔法で強化されたヒカリの『ライトオブセイバー』とツッキーで切り落としていってバラバラにした後、全部粉々になるまでツッキーが暴れた。
ついでに遺跡もバラバラになった。
「ねえ!?これ大丈夫かな!?またゆんゆんに怒られないかな!?」
「お前、結構余裕あるな」
ヒカリがツッコミを入れてくるけど、怒った時のゆんゆんはそれはもう恐ろしい。僕がお目付け役の分それはそれは怒るのだ。僕も頑張ってるのに…。
ツッキーがヒカリの方に頭を下げてくる。ツッキーは褒めて欲しい時にこうやって頭を押し付ける。ヒカリは雑に撫でてやると、満足そうに無表情で頷いていた。
「ただいまー」
大量のお土産を抱えて、ヒカリと一緒にゆんゆんのマイルームへと帰ってきた。
バレてませんようにと祈っていたが、どうだろうか。
ゆんゆんはヒカリの顔を見ると、嬉しそうに最高の笑顔を見せた。約一ヶ月ぶりの再会だ。きっと嬉しくて、あのことを知ってたとしても
「正座して?」
顔は笑顔だけど目が笑ってなかった。
「ほら!やっぱりバレてるよ!」
「落ち着け!まだどれがバレたかわからねえ!」
「どれ?」
ゆんゆんが変わらず笑顔のまま、可愛く首を傾げて問いかけてくる。
「ちょ!なんでいくつもやらかしたかのように言うの!?今回の旅はそこまでやらかしてないでしょ!?」
「うるせえ!まずは話しを」
「『ライトニング』」
俺とヒナが睨み合ってる間を電撃が駆け抜けて、後ろのドアに大穴が開いた。
どんな強敵にもこんな冷や汗をかいたことが無い。
「とりあえず正座して?」
「「はいぃ!」」
たっぷりと怒られた後の翌朝。
気持ち良いぐらいの晴天ではあるが、僕は寝不足だった。
何故寝不足かと言うと…うん、なんというかその隣の部屋がちょっと一晩中賑やかだったからだろう。
そろそろ起きる時間だし、起こす為にもゆんゆんの部屋の前に立つが…
『あ…あぅ……も、もう無理……もう、ほんとに』
『駄目。まだ足りない。もっと帰ってこないのが悪い』
『ご、ごめん……今度は、ちゃんと帰って、くるから、あっ!ぐっ!』
……まだしてたみたい。
自然とため息が出たけど、二人はそういう仲だから僕が何かを言うわけにはいかない。
僕は朝ごはんの準備をすることにした。
僕が朝ごはんを食べ終わる頃にようやく二人はリビングにやってきた。
ゆんゆんはご機嫌で元気あふれる様子だが、対照的にヒカリは寝不足が目に見えてわかるぐらいに疲労困憊のフラフラ状態だった。
「おはよう。今日はどうするの?」
今日はそのまま寝ることは分かってはいたが一応僕達のパーティーのリーダーであるヒカリに聞いておいた。おはようと挨拶が二人から帰ってきて、ヒカリから返事が来る。
「あ?ああ、今日はそのまま王都に戻って、ツッキー達に合流しよう」
「え?」
「ええっ?もう?」
僕も意外に思ったが、ヒカリは慌てたように話し始める。
「あ、ああ。だって二人待たせちゃってるしさ!な!?ヒナ!」
「う、うん。でもお昼ぐらいにギルドに僕達がいなかったら今日は休みだってわかってくれると思うよ?」
「そうよ。今日はゆっくりしたらどう?」
「い、いや!俺はパーティーのリーダーだからね!二人の為にもそんな無責任なことは出来ねえ!」
「ええ?でもよくあることだし」
「いいから!今日は戻るの!戻らないとダメなの!」
ヒカリは必死だった。何故かゆんゆんに見えないように僕にめちゃくちゃウインクしてくるのが気持ち悪い。
「まあ、そういうならいいけど」
僕は準備をしようと部屋に戻ろうとしてる間もゆんゆんがヒカリを呼び止めていた。
「はあ?今日は休み?」
「そうだよ。寝不足のせいで何も出来る気がしねえ」
あくびをしながら僕に何でもないことのように、言い放つ。
「じゃあ紅魔の里で休めばいいじゃん」
「え!?い、いや、その、だって多分寝られないし…」
「……ゆんゆんとちゃんと話し合って、そういうことしなよ」
「えっ!?お、おま、何聞き耳立ててんだよ!」
「何言ってんの!?そっちが一晩中うるさくしてたんでしょ!?」
「へ、へへへ変なこと言うなよ!お、おおお俺達はあれだよ!ま、魔法の練習してたんだよ!」
「どんな魔法だよ!ナニを生み出そうとしてたんだよ!この変態!」
「何の話だ!!お前こそ変態じゃねえか!何言ってくれてんの!?」
「はあ!?ていうか僕にそんなこと言って言いわけ!?ゆんゆんから逃げたこと、言いつけちゃうけど、いいの!?」
「てめえ、きたねえぞ!この絶壁!」
「誰が絶壁だよこの野郎!絶対言いつけてやる!」
「こんな感じだよ。ヒカリもヒカルもほんと滅茶苦茶だよ」
「ははは!私も自棄にならないで、もっと早くに戻ってくるべきでしたね」
「本当だよ。トリタンさんがいれば、もっと問題は起こらなかったはずだよ」
「なんだよ。言っておくけどな、俺が問題ばかり起こしてるわけじゃないぞ。お前ら全員しっかり問題起こしてるんだからな?」
トリタンが戻ってきて、トリタンが自分がいない間に何があったか聞きたいなんて言うから、思い出話をしている。
「何言ってるの?ヒカリが加減しないで全力でライトオブセイバーするかツッキーに頼るせいで、だいたい何かが壊れるんだよ。王都では『破壊の光』とか『紅魔の破壊神』とか『デストロイヤーよりデストロイヤー』とか言われるんだよ」
「ええ!?俺、そんなこと言われてんの!?」
「そうだよ!これを聞いたら少しは」
「いいじゃん!我が名はヒカリ!紅魔の里の希望と破壊の光!やがてはゆんゆんの伴侶となる者!これだ!今度からこれにする!」
マントを広げ、ドヤ顔で名乗るヒカリ。
紅魔の血をしっかりと継いでるみたいで、あるえさんやゆんゆんのお父さん達等の各所から影響を受けて、すっかり紅魔族らしくなっている。もしかしたら年頃のせいもあるかもしれない。
僕は呆れて頭を抱え、ため息をつく。
ヒカリに、いや、ヒカルに会ってからため息が多くなった気がする。
「あははは!本当に面白い方ですね。リーダーのようでリーダーではないんですね」
トリタンは笑いすぎて目尻に涙が浮かぶ。
「だから会った時から違うって言ってんだろうが。俺はヒカリだ。お前らの言うヒカルなんて知らんね」
「そうでした。失礼しました」
「このイケメン、腹立つな」
ああ、懐かしい。よくこんなことを言っていた。ゆんゆんも同じことを思ったのか、優しく微笑んでいた。
「で?お前はこれからどうするんだ?」
「パーティーに入れてください」
「お前、冒険者とか聞いたけど、ついてこれるのか?」
ヒカリはトリタンの話をたまに聞いてきてたから、トリタンのことは知ってるはずなのに、わざわざそんなことを言うのはおかしいはずだけど、ヒカリが試すように問いかける。
「大丈夫だよ。きっと弓の腕を見たら驚くよ」
「ええ、少しブランクがありますが、すぐに勘を取り戻してみせましょう」
「まあ、ついてこれるならいいんじゃねえの。クリスもツッキーも文句なんか言わないだろうし」
ふうん。
「あれ?クリスさんやツッキーに仲間が一人増えるんだけど、いいか?って聞いてなかった?」
「は、はあ!?な、なな何言ってんだ!?聞いてねえよ!」
ヒカリの顔が少し赤くなってる。
ヒカリのツンデレなんて見ても嬉しくない。まあ、ちょっと面白いけど。
「『結構イケメンだし、スキルを多様に扱う弓の名手だからさ。俺はいいと思って』」
「わあああああああああああ!!!!てめえ!!このまな板!聞いてやがったな!!」
「誰がまな板だこの野郎!!違うよ!クリスさんから聞いたんだよ!」
「あ、あいつ!」
「ありがとうございます。ヒカリさん」
「は、はあ?何にこやかにお礼言ってんだよ。違うっつってんだろうが。おいこら、何ニコニコしてんだ。全員で暖かい視線向けてくんな!やめろこの野郎!」
照れたヒカリがみんなに言い訳をしてる。
少し前まであり得なかった光景が広がっている。どんな奇跡が起こればこんなことになるんだろう。
少し気になるのはヒカルの記憶が無いはずのヒカリが何故トリタンのことを贔屓したのかが少し気になった。
グレテンに行く時も、騎士王との決戦の時もトリタンを考えていた。
ほんの少しだけ思い出したのか、それとも無意識なのか。
ヒカリと二人しかいないヒマなある日、僕は好奇心から聞いていた。
「あ?いや、別に。友達になったから気にかけてやっただけで」
「でも会う前から気にしてたよね?」
「……」
「言いたくないの?」
「いや、なんというか…うーん」
ヒカリは言い出しづらいのか、考えてるような顔つきで話し出した。
「気になったんだよ」
「なにが?」
「ヒカルのパーティーのことが」
「?」
「お前らが当然のようにヒカルヒカル言ってくるけど、俺は知らない。何も」
「……」
「ゆんゆんやヒナがそれだけ気にかける人がどんな人間か、知りたくなった。たまにお前らに聞いてたのはそういうことだ」
「でも、どうしてもわからないことがあった。それはヒカルの行動だ」
ヒカルの行動がわかる人なんて、そんないないと思うけど…。
「何故弱いくせに、勝てもしない戦いに向かって行った?自分が弱いことを誰よりも知っていたはずのヒカルが何故?死にたかったのか?」
「…」
「トリスターノの為って言ったって、限度があるだろ。死んだら終わりなんだぞ。なのに何故?」
「ずっとわからなかった。お前らに話を聞いても全然わからなかった。でも、冒険者をやって、パーティーのリーダーをやってる内になんとなくわかったんだ」
「仲間が、友達が大事だったって。それはお前らから聞いてわかってはいたけど、納得はしてなかった。だって俺は死にたくないし」
「それが普通だと思う」
「それでも守りたくて譲れないものだったんだって、お前らといてわかった」
「誰よりも弱かったヒカルが命を張った理由が今なら痛いほどわかる。失うぐらいなら死んだ方がマシだって思えるぐらい大事だったんだって」
「…」
「なんというか羨ましく思った。ヒカルやトリスターノが。そんな風に思い合える仲間がいるのが」
「俺はゆんゆんと友達になる時に言ったんだ。『俺はヒカルじゃないし、ヒカルにはなれない』って、俺はヒカルになりたいとも思ったことはない。でも、ヒカルみたいな男になりたいとは思った」
「ヒカルみたいに死にたいわけじゃないぞ?ただそんな生き方に少しだけ憧れた。それでヒカルやトリスターノのことがわかって、なんというか俺も守りたいって思ったんだよ。それはお前らもそうだけど、俺のパーティーもそうだし、ヒカルが守ったものを守りたいって純粋にそう思った」
「そっか。すごく嬉しいよ」
「別にお前の為じゃなくて、自分の為にだよ」
少し照れたようにヒカリがそう言ったのを見て、僕がここにいることは幸せで、今までしてきたことは間違いじゃなかったと心の底からそう思った。
「まあ、俺は壊してばっかだけどな」
「はあ…台無しだよ…」
まったくもう…。感動したのに…。
ヒカリは不敵に笑い、僕に向き直る。
「俺は他を壊してでもお前達を、大事なものを守り通す。ヒカルに出来なかったことをやってやる。何故なら俺はヒカルじゃないからだ」
三角帽子の唾を持ち、一回転ターンを決めながらポーズを決めた。マントは大きく広がり、華麗に舞う。
「我が名はヒカリ!!紅魔の里の希望と破壊の光!!やがてはゆんゆんの伴侶となる者!!」
高らかに名乗るヒカリ。
何度も聞いて正直聞き飽きたけど、この子の名乗りをこれからも聞き続ける。何故なら僕は
我が名はヒナギク。エリス教のアークプリーストにして、ヒカリの背中を守る者!
なんてね。
つ
づ
け