このすば ハード?モード   作:ひなたさん

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36話です。さあ、いってみよう。



3章 『家族』と『未練』
36話


36

 

 

「泊ーめーてー」

 

 俺が奇跡の生還を果たし、俺達がアクセルの家に帰ると部屋の前で待ってたクリスが声をかけてきた。

 

 俺達がアクセルに帰る道すがら軽く雪も降ってきて、一気に冬に入ったように感じる。

 クリスも馬小屋で過ごしているらしく、この寒さに堪えたのか、俺達を頼ることにしたらしい。

 もちろんクリスを入れてやると、クリスは大喜びで大きなリュックを持ってリビングに上がって行った。

 

「俺達は馬小屋じゃなくてよかったな」

 

「まったくです」

 

「誰かさんはみんなで暮らそうって言った時に馬小屋がいいとか言ってなかったかな?」

 

 ヒナが俺をじとーっと睨みながら言ってくる。

 違う宿が良いとも言ったがな。

 

「うう…」

 

 下着の話を思い出したのか、ゆんゆんが少し赤くなっている。

 

「さて、クリスの部屋はどうするか」

 

「あたしはリビングでも」

 

「だ、だめですよ!ここにはヒカルがいるんですよ!?」

 

 トリスターノもいるよ?

 

「そうですよ。ヒカルがいるんですし、危険ですよ」

 

 どういうことだ、この野郎。

 こいつらは知らないが、クリスの正体はアレだし、ヒナギク狂いだし、手を出しても殺られるだけでメリットが一つもない。

 

「安心しろ。俺の好みはおっぱいが大きい年上の女性だ」

 

「ここには誰一人いない」

 

 胸を張って言い張ったら、何故か全員に責めるような視線を向けられる。

 お前らも好き勝手言ってるんだから、これぐらい言ってもいいだろうが。

 

 

 

 話し合いの結果、クリスは女子二人の部屋を使うことになった。

 雑になるが、寝床は二つのベッドをくっつけて三人で寝てもらうことにした。ゆんゆんがお泊まり会みたいに感じてるのか嬉しそうにしている。

 

 今は夕飯を食べながら団欒の時を過ごしている。

 

「はあ?ベルディアを倒した?」

 

「そうなんだよ。カズマくん達がね」

 

 おいおい、マジか。

 俺が騎士王に殺されかけてる間に、後輩が幹部を倒しちまったよ。

 まーた俺は後輩に追い抜かれるのか。

 

「あ、あのもしかして倒したのって、あのアークプリーストじゃ」

 

「ん?そうだよ?」

 

 ヒナが信じられないと言った顔で、プルプル震えながら恐る恐る聞いている。

 クリスがまるで何でもないことのように答えるが、ヒナにとってはかなり重要らしく

 

「うがー!」

 

 叫び声をあげて、頭を抱えている。

 

「わ、どうしたの?」

 

「アクシズ教のプリーストに負けるのが嫌なんだと」

 

「あー…」

 

 クリスもなんだか複雑そうな顔してるが、ヒナみたいに対抗意識は持ってないらしく、悔しそうな顔とかはしていない。

 

「別に比べなくてもいいんじゃないかな?」

 

「うぅ…だ、だって」

 

 何故か俺の方を見た後に、クリスに向き直り話し始める。

 

「あの迷惑行為を繰り返す様な人達に僕の信仰が負けてるんですよ…?」

 

「負けてるわけじゃないと思うんだけど…」

 

「結果を見ると負けてるんです!」

 

 ヒナの頭はアダマンタイトより固いからな。

 この程度で自分の意見を変えたりしない。

 

「…せっかくやりたくないクエストまで受けたのに、僕は何も出来てないどころか、あっちはベルディアさんを浄化させるなんて…!クエスト受けなきゃよかった!」

 

「き、きっとヒナギクだって出来たはずだよ。落ち着こう?」

 

「そうだと、いいんですけど」

 

 ヒナはやっぱり納得してない様な顔で、そう言った。

 

 

 

 

 今日は移動もあって疲れたから、早々に解散して皆んな各自の部屋に戻って休むことになった。

 俺も少し疲れた。早々に休むことにしよう。

 なんて思っていたら扉をノックする音が聞こえた。どうぞーと答えるとクリスが入ってくる。

 

「どうした?泊まることは気にしないでいいぞ?お前のことパーティーに誘ったのは俺だからな」

 

「ううん、そんなわけにはいかないよ。本当にありがとうね」

 

「気にするなよ。大変なんだろ?」

 

「うん。で、ちょっと違う話もあって」

 

「違う話?」

 

 少し言いづらそうにクリスが話し始める。

 

「ベルディアが倒されたっていうのはさっき話したじゃない?」

 

「ああ、よくもあんなの倒したもんだ」

 

「でね、ベルディアの二つ名って知ってる?」

 

「なんだっけ、勇者殺しとかじゃなかったか?」

 

 なんかトリスターノが言ってた気がする。

 そういえばカズマは三億エリスもらえるのか、羨ましいな。

 

「あれ、知ってるんだ。そうなんだよ、ベルディアは多くの日本から来た勇者候補の人達を倒してきて、ついた二つ名が勇者殺しなんだよ」

 

 そういうことか。

 なんでそう呼ばれてるかまでは知らなかった。

 

「でね、ここからが本題なんだけど」

 

 

 多くの日本から来た勇者を倒してきたベルディアはその勇者から戦利品として武器やら装備品を回収していたらしい。

 その戦利品の中には当然日本から転生する際にもらえるチート武器や装備もあるらしく、それがベルディアの占拠していた城の中に一部ではあるが、置いてあるそうだ。

 このままでは悪い人や魔王軍に持ってかれて悪用されてしまう。

 

「だから、回収を手伝って欲しいんだ。泊まるのもお願いしておいて図々しいとは思ってるんだけど、あたしの事情をわかってくれてるのは君だけだし」

 

 そうか、確かに。

 ベルディアを倒そうと頑張った奴の装備が悪用されるなんて気持ちの良い話じゃないし、断る理由もないか。

 

「別にいいんだけど、俺は弱いからそこまで力になれるわけじゃないぞ?」

 

「え、そんなあっさり手伝ってくれるんだ」

 

「仲間になるかもしれない奴の頼みだしな」

 

「そっか、ありがとう」

 

 嬉しそうに微笑んでくるクリス。

 そんなやり取りをしてると、バタン!と大きな音を立てて俺の部屋の扉が開け放たれた。

 

「クリスさん!大丈夫ですか!?」

 

 俺とクリスが驚いてると、ヒナが俺とクリスの間に入り込んでくる。

 

「え、どうしたの?」

 

「お前驚かすんじゃねえよ」

 

「クリスさんがちょっとお礼を言ってくると言ってから、結構経ってますからね。きっとヒカルがいやらしいことを」

 

「なんでだよ!さっき俺の好み言っただろうが!」

 

「口ではなんとでも言えるよ!そ、それにヒカルは」

 

 先程までの勢いがなくなり、ゴニョゴニョ言って聞こえない。

 

「なんだよ?お前変な言いがかりするの本当にやめてくれよ」

 

「じゃ、じゃあ僕言っちゃうよ?言っちゃってもいいんだね!?」

 

 なんなんだこいつは。

 いつにも増して様子がおかしいぞ。

 

「ク、クリスさんのこと、す、好きなんでしょ!!?」

 

「ええっ!?」

「はあ?」

 

 ヒナが顔を赤くし、クリスもなんだか少し赤くなって俺に確認するように見てくる。

 

「いきなり何言ってんだこの野郎」

 

「ふん!誤魔化せると思わないでよ!名探偵ヒナギクにはまるっと全てお見通しだよ!」

 

 迷探偵の間違いだろ。

 そういえば、こいつにコ◯ンとか自称美人巨乳マジシャンとかの話を聞かせたことがあったから、それの影響を受けてるのかもしれない。

 

「どこにそんなフラグあったんだよ」

 

「ふふ、最初は小さな疑問だったよ。だけど、それもつまり積もれば大きな疑問へと変わるのだよ、ワガソン君」

 

 ワトソンだ馬鹿。

 ドヤ顔腹立つな。

 

「え、えーっと、その小さな疑問って?」

 

 勿体ぶった話し方をするせいか、クリスが早めに聞いてくる。

 

「ええ、まずはそこから説明しましょう」

 

 何なりきってんだこいつ。

 

「まずはいつの間にかクリスさんとヒカルが知り合いになっている点」

 

「だからそれは」

 

「まずここで怪しい。超怪しい」

 

「なんでだよ!」

 

「ヒカルなんかがクリスさんと仲良くなるなんておかしいでしょ?」

 

「おかしいのはお前の頭だろうが!探偵ヅラしたこと謝れ!全世界の探偵に謝れ!」

 

「クリスさん、ヒカルとの出会った時の話を聞かせてもらっても?」

 

「おい、スルーすんな」

 

「えー、最近いろいろあったからなぁ。確かヒカルがギルドの掲示板で一人眺めてたから声かけて一緒にクエスト受けたんだったと思うけど」

 

 おう、確かそうだよ。

 

「はい、ここで怪しい!」

 

「おいこら!お前なんなのさっきから!」

 

「話を聞くと言って教会にヒカルを連れてきた日と、その出会いの出来事があった日は同じ日ですよね?」

 

「そうだよ?」

 

「これで証明されたようなものだよ、ワガソン君」

 

 ワトソンだよ!ってか俺は別にワトソンじゃねえよ!

 

「だって、その日にヒカルはパーティーのお休みの日にしてたんだから!」

 

 渾身のドヤ顔である。

 

「え、それがなんで?」

 

「だってヒカルがわざわざお休みの日にクエストを受けるわけがないのです!」

 

「はっ!」

 

「はっ!じゃねえよ!納得するな!」

 

「僕の推理、いやここまで来たら状況説明と言っても過言ではないでしょう」

 

「過言でしかないわ!」

 

「まずヒカルは愚かにもクリスさんのことをどこかで見て一目惚れした。そして、どうにか、お、お近付きになろうとした!」

 

 いちいちディスってくるのも腹立つけど、お近付きぐらいで恥ずかしがるな。

 

「そしてパーティーのみんなを休みにして、クリスさんの優しさにつけ込み、一人でクエストを悩むフリをして声をかけてもらおうとした!」

 

「あーだからそれは」

 

 ゆんゆんやトリスターノとレベル差を縮めたかったから、休みの日も頑張りたかった、なんて恥ずかしくて言えない。

 

「それは見事に成功。クエストに一緒に言って仲良くなった後、いやらしいヒカルは相談があると言って二人きりの時間を作ったんだよ!」

 

「誰がいやらしいんだよこの野郎!推理っていうか言いがかりでしかないわ!」

 

「えーっと、その日はそんな話じゃなくてね」

 

 クリスも俺の能力について話していた時のことだから言いづらそうだ。

 

「もしも本当にいやらしい話じゃなかったとしても、ヒカルがわざわざ教会に行くなんてありえないんです。だって僕が誘っても全然来なかったし」

 

「お前その時冒険者やめさせようとしてた時だろ。行かねーよ。」

 

「では、何もなかったと?休みの日にわざわざクエストを受けて、仲良くなり、二人きりで教会に行っても何もなかったと?」

 

「ねえよ」

 

「はあ…」

 

 両手を広げて、やれやれとでも言いたげだ。

 くっ!こいつ!マジで煽ってんのか!?

 

「良いでしょう。では、その二人の出会いの日のことは置いておきましょう」

 

「疑問は」

 

「それだけじゃないわ!」

 

「ゆんゆん!?」

 

 ヒナが入ってきた時のまま開け放たれた扉からゆんゆんまで部屋に入ってきて話し始める。

 

「みんなでパーティーをした時のこと覚えてる?」

 

 先程の話よりかは比較的最近の話だ。

 

「二人で買い出しに行った時のことよ」

 

 あの時まだ殺伐とした雰囲気で買い出ししてた気がするんだけど。

 

「ヒカルはあまりお酒が好きじゃないと言っていた。それに私達も飲むような人はいない。それなのに、なんであんな大量のお酒を買ったのか」

 

 クリスが足りないって

 

「それはお酒好きなクリスさんの気を引きたかったからよ!」

 

「な、なんだってー!?」

 

 おい、クリス、少し楽しんできてるだろ。

 

「おかしいと思ったのはそれだけじゃありません」

 

「トリスターノ!?」

 

 トリスターノまで入ってき、って全員集まってきたよ!なんなんだよこいつら!

 

「私がおかしいと思ったのは」

 

「おかしいのはお前達の感性だと思うんだけど」

 

「今まで自分からパーティー募集や勧誘をしてこなかったリーダーが自分からパーティーに誘うなんておかしすぎます」

 

「だからダクネスがカズマのパーティーに入って独り身だったから声かけただけだよ」

 

「ええ、表向きの理由はしっかり説明がつきますね」

 

 どんだけ疑われてんの?

 

「ですが本当の目的はクリスさんをパーティーに入れて更に仲良くなる為だったのです!」

 

「な、なんだってー!?」

 

 トリスターノとクリス、お前達絶対この状況を楽しんでるだろ。

 

「更にもう一つあるよ!」

 

 ヒナがまた話し始める。

 

「僕が寝てしまった後、なぜクリスさんにわざわざ僕を運ぶように言ったのか、説明が出来る?」

 

 それは、うーん。

 クリスが今まで楽しんでたのが嘘みたいに顔が引きつる。

 

「クリスが一番しっかりしてるから」

 

「そんな曖昧な言い訳で誤魔化せると思ってるのかい、ワガソン君!」

 

 ワトソンだボケ。

 どうしたものか…。

 はあ、仕方ない。

 

「では、Ms.ホームズ。俺がクリスのことを別に異性として好きでもない決定的な証拠を突き付けよう」

 

『!?』

 

 全員がまるで予想してなかったかのように固まる。

 

「何故ならば」

 

 俺もやられたように勿体ぶった話し方をさせてもらう。

 ごくり、と誰かが固唾を呑む音が聞こえた。

 

「クリスには」

 

 全員が俺に何を言う気だと注目している。

 

「好きな人がいるからだ」

 

 ………。

 

『ええええええっ!!??』

 

 少し経ってから俺以外の全員から驚きの声があがった。

 それを聞いた瞬間クリスは焦り、他の三人は俺にもう用など無いと言わんばかりに背を向けてクリスに向き直る。

 

「だ、誰なんですか!?クリスさんにちゃんと相応わしい人ですか!?」

 

「えっ!?いや、あの」

 

 お、鏡見てこい。

 

「わ、私も聞きたいです!是非話してください!」

 

「あ、いや、これはその」

 

「私達一同、力になりますよ!」

 

「い、いいって!っていうかヒカル!なんてこと言うのさーー!!」

 

 お前も楽しんでたからな。

 俺も楽しませてもらうぞ。

 

 

 

 

 あれから質問責めにされたクリスは興味津々の女子二人に女子部屋に連行されていった。

 

 

「ところでクリスさんが好きな人がいたところで、リーダーがクリスさんを好きじゃない理由にはならないのでは?」

 

 勘のいい変態は嫌いだよ。

 

 じゃなくて

 

「だから本当に好きじゃないって。どうせ俺がなんか言ってもお前ら聞かなかっただろ?」

 

「まあ、そうですね。なんとかこじ付けようとしてました」

 

 この変態、いつか覚えてろよ。

 

 

 

 

 

 

「起きて」

 

 いつもの如くベッドから引き摺り出される。

 全然寝た気がしなくて目を開けるとまだ外は少し暗かった。

 

「おはよう」

 

 ヒナとクリスが俺を見て、少し小さな声で挨拶してくる。

 

「おはよう、おやすみ」

 

 まだ暗いのに冗談じゃない。

 挨拶してベッドに戻ろうとするとヒナに首根っこを掴まれた。

 

「朝早くからごめんね。もうベルディアの城に向かいたいんだよ」

 

 は?早すぎるだろ。

 そもそもヒナがいる前で何バラしてんだ。

 

「エリス様の神託だから、僕たちがやらなきゃだよ」

 

 なるほど、そう説明してヒナにも協力してもらうことにしたのか。

 それなら俺があまり戦力にならなくても良さそうだし、安心だ。

 

「にしても早すぎるだろ」

 

「そんなことないよ。昨日ベルディアが倒されたばかりだけど、多分今日のお昼には調査隊が結成されて向かうはずだよ」

 

「魔王軍も回収に来るかもしれないし、偶然入り込んだ人に持ってかれるなんてこともあるかもしれないんだ。頼むよ」

 

「エリス様に選ばれた僕たちがやるしかないんだよ、さあ起きて」

 

 クリスが少し照れてるような表情をしてる。

 俺は別に選ばれたわけじゃないんだけど…。

 

 

 

 

 

 

 どこから用意したのかわからんが、リアカーまで準備して俺達はまだ暗い中、ベルディアが占拠していた城へと向かった。

 冬眠に入ったせいか道中モンスターに襲われることなく、雪も積もったりしてなかったので、あっさりと城に着いた。

 

 でかい城だ。

 千葉にある東京なんとかランドを思い出すな。

 この中を探すなら、もう昨日の段階からやるべきだったんじゃ…。

 それを指摘すると

 

「大丈夫。盗賊のスキルには宝感知っていう便利なものがあるからね。探すことに関してはあたしに任せてよ」

 

「それを運び出すのは?」

 

「君の役目だよ」

 

「ヒナは?」

 

「あたしのサポートかな」

 

 絶対近くにいて欲しいだけだろ。

 

 

 

 

 

 トリスターノも盗賊のスキルを持ってたし、かなり便利に見えるな。

 

 順調すぎるくらいに神器の回収は終わった。

 罠感知や宝感知で次々と進んでいくクリスに、まだ少し残っていたアンデッドモンスターを浄化させるヒナ、神器を持ってリアカーまで走る俺。

 

 俺だけ地味だって?今更だろ?

 そんなこんなであっさり終了した。

 

 人が三、四人は入りそうなリアカーが埋まるほど、神器はこの城に隠されていた。

 これが一部でしかないというのが、ベルディアの恐ろしいところだ。

 考えても仕方ないが、一体何人の人間がやられたのだろう。

 

 一応、神器じゃないお宝もリアカーに載せられるだけ載せた。

 

「ヒカル、ヒナギク。本当にありがとう。助かったよ」

 

「いえ、僕は協力が出来るなんて光栄です」

 

「はいよ。外も明るくなってきたし、そろそろ行こう」

 

「あ、待って。残ったお宝だけど、全部持っていくわけにはいかないけど、多少持っていけるぐらいは持っていっていいよ」

 

「え、いいんですか?」

 

「これぐらいはしないとね」

 

 少しイタズラっぽい顔でそう言って来たので、お言葉に甘えてポケットに無理がない程度に入れて持っていくことにした。

 

「それだけ?意外だね」

 

「欲張るとロクなことにならないからな」

 

「ニホンの心。ザンシンだね」

 

 全然違う。

 あはは、と頬かいて苦笑するクリスがヒナギクを呼んで、何かを懐から取り出した。

 

「ヒナギク、君に預けるものがあるんだ」

 

「預けるもの?」

 

 取り出したものは指輪だった。

 特になんの装飾もない銀の指輪。

 

「『聖女の指輪』これを君に預ける」

 

「…」

 

 口を開けて固まるヒナ。

 数秒経って言葉の意味を理解して

 

「あ、ああああ預かるなんてそんな、そんなの預かれません!」

 

「これはエリス様からお願いされたことなんだ。受け取ってくれないとあたしが怒られちゃうよ」

 

「え、ええっ、で、でも」

 

「ほら左手出して」

 

「は、はい!」

 

 緊張した面持ちで左手を出すヒナに左手をとって、左手の薬指に指輪を通すクリス。

 っておい。

 

「あ、あの、そ、そこは」

 

 ヒナギクもわかってるみたいで顔を赤くしている。

 

「あ、あははは!も、もう冗談なのにツッコミ入れてくれないから焦ったよ!」

 

「え、あ、そうですよね!ぼ、僕びっくりしましたよ!」

 

 嘘つけ。目がマジだったぞ。

 ちゃっかりヒナを自分のものにしようとしてたぞこの変態女神。

 

 左手の中指に指輪を通し、クリスが説明し始める。

 

「その指輪は不浄のものを許さない聖なる指輪。もし不浄な存在に近付けば指輪が光ったり熱を持ったりして知らせてくれるよ」

 

「神器なのか?」

 

「一応ね。他に強力な力はないんだけど、不浄な存在に対してだけ力を発揮する指輪なんだ」

 

「その光だけで、弱い不浄の存在なら消せるかもしれないよ。あと少し幸運になるかもね」

 

 少しお茶目な感じで言ってるクリスに対し、ヒナは指輪を感極まったように眺めている。

 

「ヒカルには申し訳ないんだけど」

 

「いいよ。それを扱えるのはヒナぐらいなんじゃないか?」

 

「お、よく気付いたね。ヒナギクほどの信仰心が無いとこの指輪は扱えないんだ。他の人が指に通しても全く意味のないものだろうね」

 

「勘だけどな」

 

「僕、嬉しいです」

 

 指輪を左手ごと大事そうに抱き込むようにして呟いた。

 

「持ち帰りたい」

 

「え?」

 

 クリスが真顔でいきなり変なことを言い始めたのには流石に気付いたヒナ。

 

「あ、いや、なんでもない!さ、そろそろ帰ろう」

 

 

 

 

 アクセル付近までついて、リアカーを引っ張ったクリスとは別れた。

 多分あの神器をどうにかするのだろう。

 

「ねえ、クリスさんのことどこまで知ってるの?」

 

「どこまでって、なんだよ」

 

「…だって、先に協力を持ちかけたのはヒカルなんでしょ?」

 

「たまたまだろ。泊まらせてくれるお礼のついでみたいな感じだったし」

 

「ほんとかなぁ」

 

 疑わし気にこちらを見てくる。

 

「ねえ、ヒカルは本当にエリス様の使いとかじゃないの?なんで手伝ったの?」

 

「そんなことないって言ったのはヒナだろ。あと事情を知ってるし、断る理由がないからだよ」

 

「…」

 

 何かを考え始めるヒナ。

 

「ほ、本当にクリスさんのこと好きってわけじゃないんだね?」

 

 少し頬を染めながら聞いてくる。

 しつこいな。

 

「異性として好きかって聞かれたら、好きではないな。」

 

「ふうん」

 

「聞いておいてなんなんだよお前は。なんかあるのか?」

 

「べ、別に?」

 

 目を逸らして誤魔化す。

 

「人に質問ばかりしといてお前は答えないのか?」

 

「う、だって、わからないんだもん」

 

「何が?」

 

「よくわからないんだもん」

 

「だから何がだよ」

 

「わからないのがわからないの!」

 

「なんでキレてんだ!?」

 

「……この気持ちがわからないんだもん…」

 

 そういえばこいつは良い人間と女神に囲まれて育てられてきたから知らないことだらけだったな。

 

「わかるようになるまで頑張りたまえ」

 

「…なんで上から目線なのかわからないけど、頑張るよ」

 

「お前みたいな天才がもがき苦しむのを近くで見させてもらおう」

 

「…性格悪い」

 

「成長が悪いより、いいんじゃないか?」

 

「……」

 

「え、ちょ、無言で襲いかかってくるな!悪かった!胸のこと気にしてたんだな!?」

 

「誰も胸のことなんて言ってないんだよこの野郎!」

 




番外編のゆんゆん視点に慣れてきたせいか、ヒカル視点に違和感を感じる…。
変なところあったら教えてください…。

指輪はオリジナルです。
名前は適当です。

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