このすば ハード?モード   作:ひなたさん

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38話です。さあ、いってみよう。



38話

 

 

「ふはははは!!貴様らの運命はここに決した」

 

「なん…だ…とっ!?」

 

「バカな!そこに置くなど自殺行為だ!」

 

「だがそこに置けば、他の全員も置けなくなる。くっ!私の計算が外れたとはっ!」

 

「これで終わりだ!」

 

 パチリと無慈悲にパズルは置かれる。

 これで他に誰も置くことが出来なければ、先行プレイヤーの彼が勝利となる。

 だがもう…

 

「…そこに君が置くのを待っていたんだ」

 

 一人が計算通りと言わんばかりにニヤリと不敵に笑う。

 

「貴様!まさか!」

 

「そうさ!これを返せるのは僕だけさ!この一手に全てを賭ける!」

 

「や、やめろおおおおお!」

 

 彼へのトドメの一撃。パズルはカチリと

 

 

 

 

「って虚しいわ!なんでやってんだよ!」

 

 ボードゲームのルールブックを叩きつけた。

 

「何が演じてみるのも面白いと思うわ、だよ!ただただ辛いわ!いっそ何もしない方がマシだよ!」

 

 あーもう片付けよう。

 ヒマ過ぎてアホになってるのかもしれない。

 

 

 ゆんゆんって何でこう変な方向に突っ走るかな。内面はまあまあ普通なんだから、もう少し自信を持ってほしい。

 

 というか対戦型が多い。

 別に対戦型じゃなくてよくない?協力型のボードゲームにすればいいじゃん。

 そうすればゆんゆんの無駄に高い知力を知っている他の人も気軽に誘えるのに。

 

 まあ何で対戦型ばかりかは容易に想像がつくのだが…。 

 

 

 たまには俺が買ってきて、それで全員で遊んでみるか。それならきっと協力型の楽しさもわかるだろう。

 今思えば俺と初めてクエストに行った時、カエルを一人で倒していた。協力の仕方がわからなかったのかもしれない。

 

 ボードゲームどこに売ってるかな。

 

 

 

 

 

 二日目に貰った本も半分読み終わってしまった。

 

 この生活も意外と良いのかもしれない。

 結構この世界の知識も頭に叩き込めた気がする。

 

 一つ気に入らないのは絵本の他に二冊ほど子供用の本が入っていること。

 いくらなんでもバカにしすぎだろ。選んだのは絶対ヒナだ。

 

 ベルゼルグの歴史書は結構面白かった。

 選んだのは多分トリスターノだろう。この前一緒に本屋行ったしな。

 あいつはちゃんと周り見てるからプレゼント選びとか得意そうだ。変態だけど。

 

 読むだけで友達ができる禁断の魔導書とか紅魔族についての本は確実にゆんゆんだろう。

 友達がどうとかは申し訳ないけど、読まないぞ。

 紅魔族についての本を読むとゆんゆんがやべえ種族なんだっていうのがよくわかる。

 ゆんゆんはなるべく怒らせないようにしよう。なるべく。

 

 

 

 しばらくしてるとノックされて返事をすると三人がご飯を持ってきた。

 トリスターノがトレーにご飯を乗せて運び、二人がボディーガードのようにディーフェンスディーフェンスしてる。

 

 本読んでたら夕飯の時間か。

 本を読んでたまに身体動かして、ダル絡みして眠くなったら寝る生活をしてるせいで体内時計はぶっ壊れてる。

 

「ありがとう。そこの机に置いておいてくれ」

 

「わかりました」

 

 俺はこの本の区切りの良いところまで行ったら食べよう。

 と思ったらゆんゆんとヒナが何か言いたげにこちらを見てくる。

 

「どうした?」

 

「…いや、いきなり大人しくなったから…」

 

「毎回ご飯持って来るたびに外に出ようとしてたのに…」

 

「今はこの本優先だ」

 

 この世界に来た当初は命の危険や金稼ぎ、その他生活時間等で、ただ必死に生きることしか出来なかった。

 だが今はこうして時間にも金銭的にも余裕が出来て勉強する時間がある。しかも外は危険ときたもんだ。それなら少しでも知識を入れておくべきだろう。

 

 最初は余裕がなかったけど、俺もいつまでも人に教えてもらってばかりじゃないのだ。

 まあ、これからもわからないことがあったらすぐ聞くけど。

 ネットとか無いんだ、これぐらい許してくれ。

 

「何か企んでるの?」

 

 ヒナがじとーっとした目でこちらを見てくるが、本当に人のことをなんだと思ってるんだ?

 

「企んでない。あとお前、変な子供用の本買ってくるなよ」

 

「変な本なんて買ってないよ?ちゃんと教育に役立つ本を買ってきたんだよ?」

 

 お前に教育される覚えはない。

 この本や絵本は後で孤児院に寄付しよう。

 

「トリスターノ、歴史書ありがとう。助かるよ」

 

「気に入っていただけたようで何よりです」

 

 恭しく礼をするだけで絵になるから腹立つ。

 これだからイケメンは。

 

「ゆんゆんは…その、友達系の本はやめてくれ」

 

「え?う、うん。紅魔族の本はどうだった?」

 

「それは参考になった。ありがとう」

 

 嬉しそうに笑うゆんゆん。

 そういえば第一次くさい大戦の時にヒナのことは聞くくせに自分のことは聞いてこないとかなんとか言ってたし、紅魔族について色々と知って欲しかったのかもしれない。

 

「…一応本は買ってきてあげるけど、ちゃんと反省するんだよ、わかった?」

 

 お母さんかお前は。

 とりあえずわかったと返事しておこう。本は読みたいけど、いい加減明日には出たいし。

 

 

 

 

 夕飯も食べ終わり、少し体を動かした後、三人に待機されながらシャワーを浴びた後にストレッチをしている。

 時刻は夜十時を回った頃、控えめなノックが聞こえてきた。

 飯の時くらいしか俺の部屋に来ないはずなんだけどなと疑問に思いながらどうぞー、と答えるとゆんゆんが部屋に入って来た。

 一人で。

 

 え、俺のこと監禁してるのに、何故一人?

 扉を閉めるとロックと魔法をかけたけど、それは俺を閉じ込める為にやってるんだよな?

 なんか怖いんだけど。

 

「えっと、その少し話がしたくて」

 

「お、おう。いいけど」

 

 なんかそんなモジモジされると身構えちゃうんだけど、どうしたんだよ。

 

「まずは謝りたくて」

 

 ハテナ状態だったが、すぐに察した。

 この部屋に閉じ込めたこと、そして自分が気絶して大事な場面で役に立てなかったことに関して謝られた。

 部屋に閉じ込めたことに関してはともかく、ゆんゆんが足を引っ張ったからなんて思ってもないし、言うのも許さんとだけ答えた。

 少し申し訳なさそうだったが、照れたように笑い、すぐに真剣な表情に変わる。

 

 でも、どうしても。強引な手段を使ってでも俺に理解して欲しかったと語った。

 

「私は気絶してたから聞いた話しか知らないけど、ヒカルの行動は危険で褒められたものじゃないと思う」

 

 …まあ、それは

 

「でも昨日も言った通りヒカルが立派だったとも思ってるの。それは多分みんなそう思ってる」

 

「ヒカルは一番弱いのに、それでも友達の為仲間の為って言って、魔王と肩を並べる様な存在に向かって行くなんて誰にも出来ないことだと思うから」

 

 知らなかったからです…。

 知ってたら多分無理じゃないかな…うん。

 

「立派だよ?立派だけど怖かった。ヒカルがいなくなるのも怖い。もうしないでって言っても聞かないで、また同じことがあれば平気で自分を犠牲にしようとするのが怖いよ」

 

「ヒカルが私達のこと大事に思ってくれてるのは知ってる。でも私も、私達もヒカルのこと大事に思ってるんだよ?」

 

 それは、うん、知ってる、んだけど。

 

「他の冒険者の人達に協力してもらって、教会に引き返してる時、頭の中ごちゃごちゃで」

 

「最悪な想像ばかり頭の中で飛び交って、心臓が潰れるかと思った。不気味なぐらい静かな教会に着いて、いろんな神様にお願いしたのよ。どうか私の友達が生きてますようにって」

 

「扉を開けたら、すぐに倒れたヒカルを見つけて、最悪な想像が現実になったと思って、それから、なんというか」

 

「多分絶望したって言うのかな。私は友達の為に何も出来なかった…って」

 

「そのあと調べたら生きてることがわかって、安心したけど」

 

 泣きそうな顔になって、俺の目を見て訴えかけてくる。

 

「どれだけ心配したかわかる?友達を失ったと思うのがどれだけ辛いかわかる?」

 

 紅い瞳が潤んで、俺に問いかけてくる。

 

「みんなといるのは楽しいけど、こんな思いするぐらいなら一人でいた方がマシだとすら思った」

 

 …意地張ったばかりにまた最低なことしちゃったな。

 

「嫌だよ、友達が…ヒカルがいなくなるの」

 

 俺に近づいて来て、右手を両手で包み込む様にして握った。

 

「なんで無茶するの?今回のことは仕方ないにしてもなんで同じことしようとするの?なんで私にこんな酷い思いさせるのよ…」

 

「悪魔の時もそう。それに最近知ったけど、私達には休みって言っておきながら自分はクエストに行ったりすることもそう、無茶ばかり」

 

 やべ、ヒナが余計なこと言うからバレた。

 

「どうしたらわかってくれるか、三人で話し合ったけど全く分からなくて…一つ考えが浮かんだの」

 

 なんだ?

 

「ヒカルは死にたがってるんじゃないかって」

 

 そんな風に見えたのかな。

 死にたがってるやつを放置するわけないか。

 

「何故わざわざ遠いニホンからこっちに来て冒険者なんてやりに来たのか、それは誰も知らないところでひっそりと死のうとしてたから」

 

 …え、いや、違いますけど…。

 

「そうすると少しだけ納得いくよね。何があったかわからないけど、自棄になって…。無茶ばかりなのもそうだし、エリス様に会ったことがあるって言うのも」

 

 なんでここでエリス様??

 

「死のうとしてるヒカルをエリス様が助けた。その時に会って、ヒナちゃんのこと聞いたりしたんじゃないかな」

 

 すげえ設定思い付くな。

 

「冒険者をやってる理由は正直わからない。ヒカルはあまり話せないことが多いし、能力のこともあるからエリス様の話に関わるからだと思ったんだけど、どう?違う?」

 

「違う」

 

「そう。やっぱり違う…ええっ!?違うの!?」

 

「全部違う」

 

「全部!?どこからどこまで!?」

 

「なんか三人で話し合って勝手に俺の設定考え始めたあたりから」

 

「せ、設定とかじゃないから!ヒカルが話さないから、あくまで」

 

 先程の超絶真剣な雰囲気はどこに行ったのか。

 顔を真っ赤にして、さっきの俺の設定考察してたのをめちゃくちゃ言い訳してる。

 

 どうしようかな。

 ゆんゆんには言っておくべきだろうか。

 いつかは言うべきなんだろうが…。

 

「あーゆんゆん、それくらいでいいからさ」

 

「な、何が!?だ、だからね!?これは三人で話し合ったことであって」

 

「無茶をする理由っていうかさ」

 

 そんな感じで話し始めたら、驚くぐらい冷静に聞く姿勢になった。

 

「やっぱりゆんゆん達には生きてて欲しいっていうか…ほらみんな俺より少し若いし、才能あるしさ。あとは」

 

「もうお前たちしか大事なものが無いんだよ。家族もいなければ、何か手元に持っておきたい物もない」

 

「…」

 

 辛そうな表情をさせてしまった。

 あとは…信じてもらえるかはわからないけど。

 

「その、俺は今からめちゃくちゃ変なこと言う。信じるも信じないもゆんゆん次第だ」

 

 コクリと頷いてくる。

 よし、言うからな。

 

「俺は一回死んでるからさ」

 

 首を傾げて訝しんでる様な表情のゆんゆん。

 何かの比喩とかだと思ってるのかな。

 

「俺はなんというかズルしてるんだよ、色々と」

 

 生き返らせてもらったこともそうだし、俺には全く効果はないけど特殊能力も貰ってるし。

 

「それに俺は年長者だし、リーダーだからさ。弱くてなかなか力になれない分やれることはやりたいんだよ」

 

「…」

 

「でも、今回のは確かに迷惑かけて心配もかけた。本当に悪かったよ」

 

「わかってくれたの?」

 

「ああ」

 

「本当に?」

 

 ああ、と再び返事をして頷いた。

 最近絶対聞き返す様になった気がする。

 

「わかったわ。じゃあ明日には出られるように二人に言ってみるね。あと」

 

 なんだよ。

 

「迷惑とか力になってないなんて思ってないから、もうそんなこと言わないで。二人もそう思ってるから」

 

 怒ったような拗ねたような表情でそう言った。

 …こんなこと言わせちまうとは。

 今回は俺が全面的に悪かったな。本当に反省しよう。

 

「わかってくれて良かった。安心した」

 

「悪かったよ。あと、ありがとな」

 

「うん」

 

 本当に良い娘だな。

 こんな娘に「大事な友達」だって言われたんだったな。

 

「じゃあ、そろそろ」

 

「待った」

 

「どうしたの?」

 

「いや、怒られて終わるのも嫌だからな。もう少し話に付き合ってくれ」

 

「…うん。いいよ」

 

 嬉しそうな可愛い笑顔を俺に見せてくれた。

 

 

 

 

 

「そういえばトリタンさんに国に帰るのかって聞いたじゃない?」

 

 いくつか話題を話し終えて、思い出したかのように聞いてくる。

 

「ああ、それが?」

 

「そのさ、ヒカルもいつかはニホンに帰るのかなって」

 

 …あー。

 

「いや、帰らないかな」

 

「何か理由があるの?」

 

「うーん、帰るところがないっていうか、もう親にも会えないしな」

 

「…その、さっきも言ってたね、ごめんなさい」

 

 謝らせてしまった。多分亡くなったと思ってるんだろう。

 亡くなったのは俺だ。って自分で言っててよくわからないセリフだな。

 

「あーなんていうか亡くなったとかじゃなくてさ」

 

「…疎遠になったとか?」

 

「あーそれに近い感じかな」

 

 ダメだ…。気利かせたくなかったけど、何も思い浮かばなかった。

 

「そうなんだ…」

 

 また暗い表情になっちゃったな。

 本当ダメだな、俺は。

 

「じゃ、じゃあさ、もし、もしなんだけどね」

 

 今度は少し顔が赤い。

 

「もし、このパーティーも解散して行くところが無ければ、紅魔の里に来ない?」

 

「紅魔の里に?」

 

「う、うん。どこにも行くところが無ければ」

 

 マジで良い娘だな。

 パーティー解散した後のことまで考えてくれるなんてな。

 

「これは俺の偏見なんだけど、そういうところって他所から来た奴は受け入れてもらえないイメージなんだけど」

 

「え、そ、そんな事ないわ。大丈夫よ」

 

「本当かぁ?」

 

「ええ、だって」

 

「私が族長になるんだもの!」

 

 …ふふ。

 

「それならダメそうだな」

 

「そうよ、ダメ…ってなんでよ!」

 

「えぇ…俺が行ったら俺と一緒にゆんゆんもハブられたりしない?大丈夫?」

 

「し、し、しなぃ…わよ?」

 

「……」

 

「だ、大丈夫だから!族長として、そんなことがないって誓うわ!」

 

「…そうか。じゃあ何かあったら、ゆんゆんに頼むかな」

 

「うん。私に任せて」

 

「可愛い子紹介してくれな」

 

「……やっぱり来ないで」

 

「ええっ!?」

 





主人公監禁しておいて日常ってどういうことやねん、とツッコミを受けたので、次回から日常回です。
言われてから気付きました。本当監禁が日常とかやば。

三章からは少し短めになると思います。
どんどん話進まないと。
だってこれ未だにデストロイヤー倒してませんからね。
あとネタバレですが、デストロイヤー戦に参加しません。

50話までには四章を始めたい。始めたい(願望)
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