39話です。さあ、いってみよう。
やっと俺の監禁生活が終わった。
「しゃくほー。もう悪いことしちゃダメだよ」
もう事情を知っているクリスは出てきた俺をからかってくる。
「やかましいんだよこの野郎。ほら、今日の分の本はどうした?」
「また入れられたいの?」
軽口を叩くとゆんゆんの冷たい目とツッコミが飛んできた。
「ねえ、僕が用意した綺麗な言葉遣いの本読んでないの?」
「読んでない」
「なんでさ!」
読むわけねえだろ。
「あはは。でもさ、ヒナギク。ヒカルがすごい丁寧な話し方したら逆に気持ち悪くない?」
「た、確かに…」
こいつら、いつもいつも好き勝手言いやがって。
というか俺は変態女神と言えどエリス様には一応ちゃんとした話し方してるぞ。気持ち悪いと思ってんのか?
「お勤めご苦労様です。考え直していただけましたか?」
「…一応な」
「一応?」
ヒナが鋭く反応してくる。
面倒なやつだな。
「今回のことは悪かったよ。反省した」
それを聞いてみんな安心したような表情をする。
「俺ももう死にに行くような真似はしない」
「だけど先に言っておく。俺はもう家族もいない。欲しいものも持っておきたいものも無い。
でも、大事で守りたいものが一つだけある。
お前たちだ」
みんなが驚いた様な衝撃を受けた様な顔をしていて、クリスだけ少し辛そうな顔をしていた。
「今回の騎士王みたいに過去の身内だろうが、一人の責任でどんな状況に陥ろうが、一人で抱え込むな。一人で解決しようとするな。それをお前たち全員約束するなら、俺も約束する」
「約束するよ」
「約束する」
「約束します」
「わかった。約束だ」
「良いパーティーだね」
見てたクリスがそう言って微笑んでくる。
「いつでも歓迎するぞ?」
「ありがとう。でももうちょっと待ってて?」
「ああ」
「ああ!?てめえらが俺をペット扱いしてくれたんだろうが!あれぐらいいいだろうが!」
「だからってエリス様に聞こえてないとはいえ、変なこと言うのはおかしいでしょ!い、い、いやらしいとか!最低だよ!」
俺とヒナは監禁中にあった不満をぶつけ合っていた。
ゆんゆんが割って入ろうとするが、関係ない。
「ちょっと!落ち着いてよ!?なんで喧嘩してるの!?数分前まですごい友情のシーンだったよ!?」
「変な本も渡してきやがって!舐めすぎなんだよ!お前より約十年生きてんだよこっちは!」
「へぇー!?それで!?それで十年!!?」
「しばき倒すぞこの野郎!!」
「できるもんならやってみろこの野郎!!」
「落ち着いてってば!」
俺とヒナの凄まじいメンチの切り合いに頑張って止めようとするゆんゆんに
「お前も変な本渡してんじゃねえよ!友達の本ってなんだ!?」
「ええっ!?次は私!?」
「ゆんゆんも何大人ぶって仲裁しようとしてるのさ!ちょ、ちょっと成長してるからってさ!」
「ええっ!?しかもそれ私怨なんじゃ」
「そうだよ!おっぱいが少し大きいからって、大人ぶってんじゃねえよ!」
「なっ!?人のこと勝手言うからには覚悟は出来てるの!?紅魔族は売られた喧嘩は買うわよ!?」
「私怨って何さ!胸が大きいと動きも遅いんだね!?」
「喧嘩買ったわぁ!」
「上等だこらぁ!」
取っ組み合いが始まる。
ぐっ!やはり純粋な力勝負では分が悪い!
「…良いパーティーだったね」
「過去形にするのやめてください…」
クリスとトリスターノの言葉が虚しく部屋に響いた。
冬の寒さが厳しくなってきたある日。
クリスは住まわせて貰ってるから家事をやると言って聞かなかったので、今日は負担してもらっている。
みんな止めたが、多分クリスの気が済まないんだろう。やらせてやることにした。
神様にやらせるのも正直どうかと思ったが、本人の意思だからな。
俺は少し魔道具について知りたかったので、勉強ついでに買い物に行くと言ったら、まさか全員着いてきた。
何か良い魔道具がないものか。
「やっぱり高いな」
「うん。考えちゃうよね」
「買うなら春になってからにしない?まだ何があるかわからないし」
「そうですね。生活に必要なものが出てくるかもしれません」
そう言って何件か回ってみてはいるが、便利ではあるが値段的に厳しいものが多い。
「『テレポート』のスクロールは何個か持っておきたいな」
「そうだね」
「次私が覚えるスキルは『テレポート』にしましょうか?」
「それいいね!」
「俺も良いとは思うけど、お前はそれでいいのか?」
「ええ、便利なスキルですし」
「やったね。これでどこかクエストとか旅行とかに行っても帰りは楽できるよ!」
「旅行!?」
ゆんゆんがめちゃくちゃ反応してるのは置いておいて。
ふと次の魔道具店を探しながら、前を見るとカズマと駄目神が店に入ってくのが見えた。
二人だけか、珍しいな。
そう思いながら、二人が入って行った店の前まで来ると、看板には『ウィズ魔道具店』と書いてあった。
「ここも見ていくか」
「…なんか指輪が熱いような…」
ヒナがなんか言ってたが、そのまま気にせず入っていった。
「い、いらっしゃいませぇ!」
店に入ると、元気というか必死な感じの挨拶が聞こえてきた。
店のレジ方向にアクアが色々と豊満な女性の胸倉を掴んで揺すっているのが見えて、そのアクアに鞘がついたままの剣を振りかぶってるカズマがいた。
「何やってんのお前ら」
そう言って、他の三人が俺に続いて入ってきた時
「あ、熱い!熱い熱い!!」
ヒナが叫んだかと思うと、懐から指輪を取り出した。
クリスから貰った指輪だ。
結局ヒナは指輪を指に嵌めないで、チェーンネックレスにして首にかけている。
理由としては殴った時に傷付いたりしたら嫌だからと言っていたが、それを聞いたクリスの顔といったらなんとも悔しそうだった。
で、その指輪が眩しいぐらいに輝いている。
「きゃあああああああああ!!!痛い痛い!」
今度はアクアが胸倉を掴んでいた色々と豊満な女性が叫び始めた。
あーもうめちゃくちゃだよ。
確か不浄な存在を許さない指輪とか言ってたが、まさか。
「みんな、下がって!あれはモンスターだよ!」
ヒナが指輪をはめて、いつものファイティングポーズをとり前に出た。
「そうよ!こいつはリッチー!みんなで協力して倒しいたいっ!!」
アクアが話し始めたところをカズマがずっと振りかぶっていた鞘付きの剣をアクアに振り下ろして、こちらを向いてくる。
「あー、これはな」
カズマの説明によると、その色々と豊満な女性はウィズ。
アンデッドモンスターの最高峰に位置する存在『リッチー』というモンスターらしい。
長い時を経た大魔法使いが、魔道の奥義により人の身体を捨て去った、ノーライフキングと呼ばれるアンデッドの王。
強い未練や恨みで自然にアンデッドになってしまったモンスターとは違い、自らの意思で自然の摂理に反し、神の敵対者になった存在。
その超大物のモンスターが今、街の店の中に居ると。
そのウィズさんとやらはリッチーというモンスターではあるが、人間には絶対に危害を加えないどころか、墓地で彷徨っている霊を天に還すこともしているらしく、その時にカズマ達は知り合ったという。
「だ、だから、その眩しい指輪をしまって、構えを解いてほしいんだけど」
カズマがそう言ってるが、ヒナはウィズさんを睨みつけたまま、動かない。
「言う通りにしてやれ」
「…僕の前から出ないでね」
そう俺達に警告して、ようやく構えを解いて指輪をしまった。
「なあ、上位悪魔だったり騎士王だったりリッチーだったり、ロクなやつがいない気がするんだけど、呪われてるのか?」
そう軽口を叩いても、トリスターノぐらいしか苦笑してくれない。
ヒナは未だに敵意、というか殺意をガンガン送ってる。
「ここの店の人がリッチーだってことは知らなかったけど、少し前に私がここで買い物したことあるからカズマさんが言ってたことは本当だと思うよ」
ゆんゆんがそう言って、やっとヒナは殺意を出すのをやめた。
「そうだよ、何がアンデッドの王リッチーだよ。こっちはぼっちの女王ボッチーだぞ?なあ、ゆんゆん?」
「ボッチー!?ぼっちじゃないから!」
ゆんゆんがショックを受けた顔でこっちを見て、ツッコミを入れてくる。
「だいたいな、そっちはたかがリッチー一人じゃねえか。こっちはボクシングのミニムネ級世界王者、ボッチーもいるんだぞ?二人だ、どうだ、参ったかこのやろおおおおおお!!??」
ヒナの軽めのボディーブローが俺の腹に突き刺さり、思わず膝をついた。
すると、すかさずトリスターノが俺の近くに跪く。
「私には?私には無いんですか!?」
なんで必死なんだよ。
「お前?考え付かないな、ぼっちの王様、ぼっちーでいいよ」
「それはシロガネさんでしょう。私は騎士のぼっちがいいです。」
「じゃあお前、円卓のぼっちな」
「 …それは昔を思い出すのでやめてください」
「…ごめん。」
俺は珍しくトリスターノに謝った。
面倒なのでヒナはゆんゆんと一緒に店の外で待機してもらった。
ある程度見て回ったら俺もすぐに出よう。
「すんませんね、迷惑かけて」
「い、いえ、そんな。私が悪いですから」
自分で言いながら落ち込んでいくのを見ると、本当にモンスターとは思えない。
そこから俺とトリスターノは自己紹介をした後、店内にどんな魔道具があるか見て周り、カズマはリッチーのスキルを教えてもらっていた。
カズマは何処を目指してるんだ…?
「…リッチーのスキルを覚えるとは…」
「お前も『死の宣告』持ってるだろうが」
「あ、最近使ってないので忘れてました」
こいつ…。
「なあ、リッチーってさ、ウィズさんを見る限り普通の人間にしか見えないんだけど、子供とか産めるのか?」
その話をした途端トリスターノがドン引きしたような顔になる。
「…いや、無理だと思いますけど、何を考えてその質問をしたか聞いても?」
「ウィズさん、綺麗じゃん。是非お近付きに」
「ヒナさんに殺されますよ…」
確かに。
店内を見て回ったが、変な魔道具が多い。
効果を聞くだけだと強力なものだが、デメリットもあって、どれもなかなか使えたもんじゃない。
「この爆発するポーション、お前の矢の先につけるとかどうよ?」
「…ちょっと持ち運びが怖いですが、試してみる価値はありそうですね」
そこから俺とトリスターノにカズマとアクアで話を聞いていたが、このウィズさんはまさかの魔王軍幹部だということが判明した。
絶句してる俺とトリスターノとは対照的にアクアが倒そうとするのをカズマが止めていた。
ただ魔王軍幹部と言っても、結界の維持しかしてないらしく、悪さもしてないことから懸賞金もかかっていないとか。
心だけは人間のつもりだと言うウィズさんをどうにも敵には思えず、俺とトリスターノも討伐しないことに決めた。
ふと視線を感じて、振り返ると窓から鬼の形相のヒナがこちらを見ていた。
買うにしてもまたの機会にすることにして、カズマ達に挨拶して店を出た。
「どう討伐する!?正直気は乗らないけど、あのアークプリーストと協力してもいいと思って」
「しねえよ」
「なんでっ!?」
うるさいヒナを引っ張って家に帰ることにした。
三章のラストについて悩んでる部分があるのと、私自身が忙しくなるので、しばらく投稿出来ません。
申し訳ないです。
アンケートにご協力していただき、ありがとうございます。
ヒナギク一番人気ですね。まあアンケート中の唯一の女の子ですしね。
きっとどこかの女神様がほくそ笑んでいることでしょう。
ヒナギク視点のお話しも出来ればやりたいです。
現状ヒカルとトリスターノはまさかの同票ですね。
偶然かもしれませんが、なんか仲良い感じになってて好きです。
またアンケートがあればご協力いただければと思います。