41話です。さあ、いってみよう。
「はあ、隣街ですか?」
「はい、シロガネさんのパーティーに調査を依頼させていただきたくて」
俺達の家にギルドの看板受付嬢のルナさんが来ている。俺達に直接クエストを依頼しに来たみたいだ。玄関で話を聞くのはお互いに寒いし、とりあえずリビングで話を聞くことにした。都合よくクリスを含めた全員がいる。
「なんでわざわざ僕達のパーティーに?」
「それなんですが…」
今は冬になったせいで俺達もだが冒険者のほとんどが引き籠り、ベルディア討伐の報酬金で懐が潤っていて仕事を受ける気が全く無い、というのが理由の一つ。それで俺達は報酬金を受け取ってないパーティーだということ、ヒナみたいに冒険者以外でも活動している人がいるパーティーだから声をかけやすかったというのも理由だそうだ。前もルーシーズゴーストのクエストを受けたしな。
一応色々な冒険者パーティーを当たってみたみたいだが、ダメだったらしい。
隣街のナトリ。
そこのギルドから救援要請が来た。詳細な状況把握の為に連絡を返してみても返事は無く、何が起こっているかわからないという不気味な状態だという。
その街を調査し、出来ることなら解決するのが今回の依頼の内容だ。
アクセルとナトリ、二つのギルドから報酬を出すので報酬金は弾むと言われているが…。
「…何もわかっていないのですね?」
「はい…。何度も連絡を試みているのですが…」
トリスターノが確認する。
「…放置するわけにもいかなそうだね」
「はい、その通りですね」
クリスとヒナがそう言うと、ルナさんの顔が明るくなる。
隣街だからって知らん顔が続けられるかわからないしな。
「とりあえず調査するだけでいいんですね?」
「はい!何かあればアクセルに戻ってきて報告して下さい」
調査だけでもいいと言ってるし、ヒナもクリスも受けてほしいみたいだったから、俺達はこの依頼を受けることにした。
これを受けるのはいいんだけど、今後面倒なクエストばっかり持ってこられたりしないだろうな。
話を聞いた翌日の早朝、俺達はアクセルを出て、隣街のナトリへと向かっている。
「クリスさんも来てくれるなんて。いいんですか?」
ヒナはご機嫌でスキップしそうなぐらい歩みが軽い。クリスが居候するようになってヒナから何度も聞いてるが、クリスはヒナの尊敬する人らしい。クリスはその話を聞く度に幸せそうな顔をしていた。
「あたしが催促したようなものだしね。でも盗賊としての腕は自信あるけど、そこまで役に立てるかわからないよ?」
「安心しろ。俺の方が役に立てるかわからん」
「それは胸を張って言うことじゃないよ…」
クリスが呆れた顔で返事してくる。
そう言われてもな。
レベルは頑張って上げているが、ステータスはなかなか上がらない。スキルはそれなりに揃ってきたが…強くなれてる実感は全くといっていいほど皆無だった。
周りは強くなっていってるんだけどな。
ゆんゆんはあと一歩でお待ちかねの上級魔法を覚えられる。
ヒナはアークプリーストでレベルを上げ辛いはずなのにモンスターを撲殺するせいで順調にレベルを上げている。ヒナも覚えたいスキルがあるとかで俺が倒そうとするモンスターも横取りする貪欲ぶり。
トリスターノはモンスターの弱点を的確に狙い撃つのと味方の援護で着実にレベルが上がっている。おかげで『テレポート』をもう少しで覚えられそうだ。
「今回は調査ですよ。強さは関係ありませんし、盗賊のスキルは確実に役に立ちますよ」
半日以上歩いて少しずつ口数が減ってきたせいか、おかげでよく聞こえた。
金属がぶつかり合うような音、叫ぶような怒声。
異変を感じた俺達は走って街へ向かうと、すでに近かったのか街の入り口が見えた。
街の入り口にモンスターが大挙して押しかけているのも。
先程聞こえてきたのは戦闘によって発生したものみたいだ。
「緊急事態みたいだね」
「調査の甲斐がありそうだな」
全員戦闘準備をしつつモンスターの大群へと走りながら指示を飛ばす。
「ヒナ、支援頼む!俺とヒナ、クリスで前衛!ゆんゆんの魔法をぶっ放したら戦闘開始だ!」
『了解!』
ゆんゆんの『ファイアーボール』がモンスターの大群のケツに打ち込まれて、大パニックになるが、そんなの知らん。構わず切り捨て殴り倒し、刺し殺す。
モンスターの種類は様々だが、相手にしたらマズイような強いモンスターはいない。
見たことのない種類のモンスターもいるが、何故かクリスとヒナが血相を変えてそれを優先して狩るせいで、どんなモンスターかわからない。相手したことないモンスターと戦闘するのは怖いし、ありがたいんだけど何を必死になってるんだ…。
パニック状態で逃げ腰のモンスターに負けるほど弱くない。
殺した人型モンスターが持っていた武器を奪って、ヒナの後ろに忍び寄っていたモンスターにぶん投げた武器とトリスターノの矢がモンスターの頭をぶち抜いた。
ヒナもそうだが、クリスもさっきからアホみたいに突っ込むせいで、二人とも背中がガラ空きで見てるこっちがヒヤヒヤする。
「ったく。トリスターノ!あの二人よく見といてくれよ!」
「了解です!」
何匹かは逃したが、トリスターノの弓やゆんゆんの魔法で大群のお掃除が終わった。
モンスターの大群がいなくなり、街の方が見えるようになって、というより戦ってる途中から見えてはいたが、街の入り口でモンスターを街に入れまいと戦っていた冒険者達が見えた。その冒険者達がこちらに来て、一人が代表で話しかけてきた。
「本当に助かった。俺はナトリの冒険者のジョットだ。あんた達が来なかったら街が攻め入られてたよ」
「アクセルからこの街の調査に来た冒険者のヒカルだ。この街のギルドから救援要請があったんだが…何があった?」
話しかけてきたやたら眩しい金の全身鎧に身を包んだ茶髪のボサボサ頭の高校生ぐらいの少年が俺の言葉を聞いて安堵の表情を浮かべる。
鎧が目立ちすぎてか、鎧が金ピカすぎて悪趣味全開なせいか鎧に着られているような印象だ。
「よかった。救援要請は間に合っていたか。今は街が機能していないからな…」
「どういうこった?」
話を聞くと予想以上に大変なことになっていた。今このナトリは魔王軍幹部の候補に名前が挙がっている魔物に攻められているらしい。
…今度は魔王軍幹部の候補か……。
まあ、それはさておき
その魔王軍幹部候補の名は『デモゴーゴン』
精神干渉を得意とした邪神の一種。
この邪神自体はあまり強くないのが原因で候補止まりではあるが、多くの冒険者や勇者候補がこのデモゴーゴンに殺されていて、懸賞金もかけられた大物モンスター。
冒険者に幻覚を見せて仲間割れを誘ったり、精神に干渉し相手の嫌いなイメージのものを見せたり、トラウマを呼び起こす。相手の精神を乗っ取り悪夢などに引き摺り込むなどのいやらしい戦い方をする。
デモゴーゴンはその能力を使い、街の住人ほとんどを悪夢に陥れた後、先程のように街にモンスターの大群を使い攻めてきているという。ギルドの職員も救援要請を送った後、悪夢に落ちてしまったせいでアクセルに詳細を送れなかったと。
デモゴーゴン自体が攻めてくれば、街はすぐに崩壊するがそうもいかないらしく、デモゴーゴンは街の住人のほぼ全員に悪夢を見せているせいで、力を使いすぎてあまり戦闘に参加出来ないというのと、デモゴーゴンの軍団は一度壊滅していて、デモゴーゴン自体も討伐手前まで追い込んだ時の傷でかなりの弱体化しているらしい。
そのせいで街に攻めてくるモンスターもあまり強くないモンスターばかりで、デモゴーゴン自身も攻めてこない。
街の住人もこのまま悪夢に囚われているままではいつか死んでしまう。それに今はこの街を攻め落とそうと躍起になり、デモゴーゴンの拠点のガードも疎かになっている上、デモゴーゴンは弱体化している。
攻めるなら今なんだが…とジョットは悔しそうに呟く。
だがジョット達は街を守らないと住人は殺され、街は崩壊する。
「じゃあ俺達が行くしかないな」
俺のパーティーのみんなは頷いてくる。
ジョットは意外なものを見る目でこちらを見たが、言い辛そうに聞いてくる。
「でも、あんた達は駆け出しだろう?危険だ」
「そこの女の子は紅魔族のアークウィザードだし、そこの小さいのはアークプリーストだ」
「!」
ジョット達は口を開けて呆けてる。
ゆんゆんは頷き、ヒナは「小さい」が気に入らなかったのか、不満そうだが胸を張った。
「そこの美少年は凄腕の盗賊。そこのイケメンは詳しくは言えないが国のお偉いさんに仕えてたやべえアーチャー」
「!?」
「美少年!?」
クリスがショックを受けたような顔で、トリスターノは苦笑しつつ頷いてくる。
「す、すごいな!そんなパーティーがアクセルにいたなんて!じゃ、じゃああんたは!?」
「俺?普通の剣士だな」
……。
「…え?なんかある流れじゃないのか?なんかのエピソードとか、どこかすごい生まれとか」
「ねえよ」
「…」
なんか不安全開な顔された。
しょうがねえだろ、何もないんだから。
「ねえ、美少年って」
「エピソードならあるじゃないですか。あの騎士王相手に一人で戦ったじゃないですか」
「はあ!?」
トリスターノが余計なこと言いやがった。
いや、それは
「一応上位悪魔討伐のパーティーにもいたよ」
「ええ!?」
ヒナ、それ俺は本当にいただけ。
やったのチクチク叩いて肋骨折られただけだから。ゆんゆんに目潰されただけだから。
「ねえ、あたしのこと美少年」
「是非ともあんたたちに討伐を頼みたい!!」
魔王軍幹部候補の討伐に行くことになった。
何故デモゴーゴンがこの街を執拗に狙ってくるかは理由があるらしい。
なんでも一月もしない最近のこと、この街に偶然居合わせたパーティーがデモゴーゴンを討伐手前まで追い込んだのを目の敵にしているらしい。
デモゴーゴンは元々この街を拠点にしようと計画していた。攻め入ってくるのを事前に知ったパーティーの面々は計画的にデモゴーゴンの軍団を潰して、あと一歩というところまでデモゴーゴンを追い詰めた。戦闘の最中、仲間がやられそうになったパーティーのリーダーが庇った。戦闘続行は困難になり、倒れた仲間を守りながら闘っている内に戦況は劣勢に変わって、撤退を余儀なくされた。デモゴーゴンは深手を負っていたものの完全に頭に血が上っていて、撤退中も攻撃の手は休まることは無く、一人また一人とパーティーのメンバーは倒されていき、残ったのは二人と
「この一匹か?」
「ああ、と言ってもこいつが何なのかは誰も知らないんだが…」
白い、というよりは白銀の美しい毛並みを持ち、この街の入り口近くに居座る中型犬のような生き物がそこにいた。
俺達が近付いても、こちらを見ることはなく、街の外をずっと見つめていた。
ジョットの推測だがパーティーのリーダーが主人だったみたいで、そいつが帰ってくるのを待っているらしい。
その犬みたいなののそばには皿に食事が置かれていたが、見向きもせず、飲み食いもしないまま帰ってきた時からボロボロな状態でずっと待っているらしい。
「他の残ったやつは?」
「この街に戻ってきた時にはすでにボロボロでな。今は療養中だ。それに悪夢も見ているみたいで目を覚まさない」
クリスがその犬に話しかけているが、全く見向きもしない。
「他に情報を知ってるやつは?」
「いや、いない。すまない」
「聞いただけだ。この状態でよくやってるよ。あんた等は何で悪夢を見てないんだ?」
「俺は多分鎧のおかげだと思う。他は悪夢を見たが、なんとか目を覚ました奴らだ。メンタルがタフな奴らだよ」
「そりゃすごいな。てか鎧?そのなんか眩しい?」
「そうだ。これはあんたに似た俺の友人の形見でな。見た目はアレだが、すげえ鎧なんだ」
「似たってことは、黒い髪に黒い目ってことか?」
「そうだ」
日本の冒険者が残した神器か。
クリスも同じことを思ったのか、俺を見ていた。
「とりあえず討伐の準備とアクセルのギルドへ通信が出来ればやっておきたい。案内してくれ」
強敵に挑む為の準備ともし応援が貰えるなら欲しい。その為にまずはギルドへと向かうことにした。
しばらくシリアス続きです。
隣町の名前は手抜きではありません。
艦これやってたらドロップで名取が出てきたからナトリになりました。
隣だからナトリになったわけではありません、はい。
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