このすば ハード?モード   作:ひなたさん

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47話です。さあ、いってみよう。



47話

 ウィズさんの店から帰ったその日の夜。

 深夜を回り、いつもならとっくに寝ている時間なのに俺はギンギンに起きていた。

 寝ようとはしている。というか寝たい。

 寝たいのだが…。

 目を瞑ると思い出してしまう。

 十年後のゆんゆんを。あの感触を。

 

 あれはどういう意味だったんだろう。

 

 死ぬ前の俺はもしかしてゆんゆんと付き合ったりとかしてたのだろうか?

 それとも『死ぬな』という意味を込めて…?

 別れを惜しんで?

 

 もう今更わかりようがないのに、ずっと頭の中を駆け巡る。

 どうやったって確認のしようがない。

 あの魔道具はどうやら使い捨てだったらしく、一度俺に対して効果を発動した後、綺麗さっぱり消えていたらしい。

 その魔道具の弁償を巡って小さな争いが起きたが、今はそんなことはどうでもいい。

 

 いや、ここまで話したことも正直どうでもいいことだ。

 ぶっちゃけ、クソほどどうでもいい。

 

 キスの意味なんて、どうでもいい。

 

 ただ

 

 ただもう一度だけ、あの大人ゆんゆんに会いたかった。

 

 いや、嘘だ。

 もう一度だけなんて冗談じゃない。

 もう一度会って、告白して一生添い遂げたい。

 

 俺の気持ちはそこまで来ていた。

 キスされたからじゃない。

 

 ただあの大人ゆんゆんがめちゃくちゃドストライクで魅力的だったのだ。

 

 俺の好みは年上のナイスバディーな女性。

 十年後のゆんゆんは今の俺から見たら年上。

 はいクリア。

 ナイスバディーかどうかは今の年齢の時から見ても分かるし、抱きついて来た時にはとても体感させていただいた。

 はいオッケー。

 髪型も長すぎず、短すぎない女性らしさのある髪型。

 はいグレート。

 化粧もしっかり覚えていて、さらに綺麗になっていた。

 はい完璧。

 

 

 ストラーイク!!

 色んな意味でドストラーーイク!!!

 

 

 完全に堕ちた。

 堕とされたのだ。

 あのコミュ症闇深ぼっちのゆんゆんに、この俺が…。

 

 会いたい。震えるぐらいに。

 だがもう会えない。

 

 叶わない恋とか笑

 勝手に震えてろ笑笑

 

 そんな風に思っていたはずなのに。

 まさか当事者になるなんて。

 この気持ちを忘れるまで、俺はずっとこんな苦しいままなのか。

 

 

 恋したと同時に失恋をした。

 俺は今そんな状態だった。

 

「ぐうおおおおおおおおううううううううあおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ…」

 

 どうしようもなくて、ベッドの中で身悶える。

 

「ヒ、ヒカル?大丈夫?」

 

「へ?」

 

 突然声が聞こえて布団から顔を出すと、紅い瞳と目が合った。

 寝るからだろう髪は下ろしていて、少し大人っぽ…

 

 

「どわああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

 

「きゃあああああああああああ!!!な、何っ!?どうしたのっ!?」

 

「な、ななななな何してんだこのやろおおおおおおおおおお!!!」

 

「ええっ!?そ、その勝手に入ったのは謝るけど、苦しんでるような声が聞こえてきたから…」

 

「なに髪下ろしてんだこらああああああああああああああああああああ!!!」

 

「ええええええええっ!!??なんでっ!?なんでそんな怒られるのっ!?」

 

「てめえええええ!!その髪下ろした状態で近付いてみろ!爆発するぞこらああああああああああああああ!!」

 

「何がっ!?何がどうして爆発するの!?どういうことなの!?」

 

「いいのか!?俺はやると言ったらやるぞ!やっちまうぞこの野郎!!」

 

「え、ええっ!?ね、ねえ、本当に謝るから一回落ち着いてよ」

 

「壁際まで下がった後、壁の方を向いて両手で髪を括った状態で俺の方を向いて話しかけろ!!いいな!?」

 

「え…う、うん。わかった」

 

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 

「なんでそんな疲れてるの…?」

 

 途中からゆんゆんを見ないように、布団をかぶっていたので見えてはいないが気配が遠かったので多分言う通りにしているはず。していなければ爆発するだけだ。

 

「こう?これでいい?」

 

 恐る恐る布団から顔を出すと、少し照れながら、両手でおさげのように手でまとめて持っていた。いつもの髪型に近い。

 ふぅ、落ち着いた。

 

「よし、ゆっくり近付いてこい。ゆっくりだぞ?わかってんだろうな?」

 

「な、何が?今日はいつにも増して変だよ…」

 

 ゆっくり近付いて来たゆんゆん。

 よし、これなら大丈夫だ。

 

「よ、よし、止まれ。何用か貴様」

 

「口調が全然違うんだけど……。どうしたの?さっきも言ったけど、苦しそうな声が聞こえたから、入ってきたの」

 

「ふっ、言っておくが、まだ爆発の危険性はあるからな。油断したらドカンだ」

 

「だから何が爆発するの?どうしちゃったの?」

 

「爆発したら俺どころか貴様の命は無い。わかってるだろうな?」

 

「全然わからないんだけど…」

 

「これで貴様もこの状況にわかってもらえただろう。俺がどうなってもいいなら、好きにするがいい。俺を解放したくば、俺の要求に答えろ」

 

「ねえ、全然わかってないよ。ヒカル、どうしちゃったの?」

 

「よし、目を瞑れ。そしておっぱいを差し出し、『胸を触ってください』と」

 

「調子に乗ると怒るよ」

 

 手を離し、怒りを露わにしたゆんゆんだが、ゆんゆんの怒りはどうでもいい。

 手を離したことが問題だ。

 

「ぎゃあああああああああああああ!!!!」

 

「いい加減にしないと怒られ」

 

「うるさああああああああああい!!!」

 

 ヒナが蹴破るようにして、俺の部屋に入ってくる。

 

「さっきからうるさいよ!!何時だと思って」

 

「ヒナああああああああ!!!助けてえええええええ!!」

 

「「ええっ!?」」

 

 驚く二人をガン無視して、ベッドから飛び出し、ヒナに縋り付くようにして助けを求めた。

 

「ゆんゆんが、ゆんゆんがぁ…!」

 

「え、ええっ!?」

 

「ゆ、ゆんゆん、何があったかわからないけど、やりすぎはよくないと思うよ?」

 

「何もしてないよっ!?」

 

「ヒカル、どうしたの?落ち着いて?よしよし」

 

「ゆんゆんが、ゆんゆんがいじめる…」

 

「いじめてないよっ!?何言ってるの!?」

 

「ゆんゆん、いじめはよくないと思うな」

 

「だから何もしてないってば!」

 

 

 

 

 

 

「最近はリーダーの様子がおかしいですね」

 

 夕飯を食べ終わるや否や、すぐさま自分の部屋へ引き篭もった彼を横目に、皆の気持ちを代弁した。

 

「ヒカルはいつもおかしいんだけど、最近はいつにも増して変よ」

 

 辛辣な意見がゆんゆんさんから出てきた。

 彼女はたまに毒舌になる。それぐらいの調子で話せば、アクセルやナトリの冒険者ともお友達になれたでしょうに。

 

 閑話休題。

 

 

「昨夜はおかしいどころじゃなかったですよ。僕にすがり付いて来て大変でした」

 

「ふうん、それ後で詳しく聞いていい?」

 

 ヒナさんは大変だったと言う割に嬉しそうだ。

 クリスさんの雰囲気がおかしくなったのはスルーしましょう。

 触らぬ神に祟りなし。

 

 おかしい…私悪いことしてないのに…とゆんゆんさんが呟いてるが…。

 

「昨夜は確かに騒がしかったですね。私はリーダーの部屋からゆんゆんさんの声が聞こえてきたので、お二人がすんごいことをしてるのかと思って、黙って聞き耳を立ててたのですが」

 

「何してるんですかっ!?ていうかすんごいことってなんですかっ!?」

 

 この女性に囲まれた状態で言えるわけが無い。

 

「それで?何かヒカルの様子がおかしいことに心当たり無いの?」

 

「数日前にウィズさんのお店に寄った時からおかしい…と思う」

 

「何かおかしなことがありませんでしたか?」

 

「えっと、私とめぐみんで勝負した時にあまり知られたくない過去を見られたりしたけど…もしかしてそれだったりするかな?」

 

「具体的には?」

 

「えっ」

 

 ヒナさんが特攻した。

 知られたくないって言ってるのに…。

 

「えっ、えっと、そのめぐみんと勝負したのが『仲良くなる水晶』ってやつで、それは恥ずかしい過去の記録を見せる水晶だったの。私が、一人でバースデーパーティーをしてるのとか、芝居しながら一人二役でチェスしてるのとか、友達作りのために悪魔」

 

「もういいです!もういいですから!」

 

 思ったより酷かった。

 ゆんゆんさんが遠い目をして、どんどん感情がなくなっていったのが、ちょっとしたホラーだった。

 

「ご、ごめんなさい…」

 

「ヒナギクは気になったこと何でも聞いちゃダメだよ」

 

「はい…、反省します…。でもヒカルがそんなことであんなに様子がおかしくなるかな?」

 

「そんなこと…」

 

 またゆんゆんさんがダメージを受けてるけど、ここで踏み込んだら確実に引き摺り込まれる。

 話を進めましょう。

 

「他には何かありませんでしたか?」

 

「あとは十年後に行く魔道具っていうのがあって」

 

「「それだ!」」

「それです!」

 

 三人にいきなり大声で言われたせいで、ゆんゆんさんがビクついた。

 何故それを先に言わなかったのか。

 

「でも、十年後に行った後も少しぼーっとしてたぐらいで特に何も無かったって言ってたから…」

 

「絶対何かありましたね」

「確実にあったね」

「何かあったに違いないよ」

 

「そもそもそんな魔道具聞いたことないんだけど…詳しく教えてくれない?」

 

「はい。と言っても私もめぐみんと勝負してた後に話してたので、あまり知らないんですけど、十年後の自分と十分間入れ替わるというものらしくて」

 

「そんなものが…」

 

 聞いたことが無い。

 二人もそんな表情だ。

 

 話を聞くと、アクアさんが転んでしまい、間違えてその魔道具をリーダーにぶつけてしまった時に、魔道具が起動してしまいリーダーは消えてしまった。

 十分経った時に戻ってきたら、『いきなり戻ってきたからびっくりした』と言っていた。

 未来で会ったのはゆんゆんさんとウィズさん、それにウィズさんの店の店員さんの三人だと言っていたらしい。

 

「消えちゃったの?十年後の自分と入れ替わるんだよね?」

 

「うん。でも、ウィズさんも使い方が分からなくて、ずっと置き物になってたから、もしかしたら効果が間違ってたのかもしれないって」

 

 …嫌な想像をしてしまった。

 でも彼がおかしくなる原因としては考えられないものではない。

 

「…その効果が間違っていないとしたら?」

 

「どういうこと?」

 

 

「十年後の彼が、生きていない。ということです」

 

 

 私の言葉に全員が沈黙し、そんなことがあるわけないと言っているように表情が強張った。

 

「彼が亡くなっているとしたら…入れ替わるはずの人がいなければ、リーダーが十年後に行くだけです」

 

「そ、そんな…」

 

「十年後の状況はわかりません。言い方は悪いですが、リーダーは弱いですからね。死んでいてもおかしくありません。」

 

「ほ、本当に言い方悪いね…」

 

 クリスさんからツッコミが来るが、ゆんゆんさんやヒナさんは私の言葉をわかってくれていた。

 

「ぼーっとしていたのも、ヒカルは自分が死んでしまうことを知ってショックを受けていたから?」

 

「はい、そうかもしれません。もしくは、」

 

 私かヒナさんが死んでしまったのではないか。そう続けてしまいそうになり、慌てて黙った。

 

「どうしたの?」

 

「い、いえ…」

 

 その方がリーダーはショックを受けそうだな、とそう思ってしまった。自惚れかもしれないが。

 

「案外ヒカルのことだから、ゆんゆんの大人の魅力にやられちゃったんじゃない?」

 

「え、えええっ!!?」

 

 クリスさんが空気が良くないのを考えてか、茶目っ気たっぷりに言ってくる。

 ゆんゆんさんは瞳と顔が同じ色になってしまった。

 

「ふぅん…まあ、ヒカルが会えたのはこの中でゆんゆんだけだもんね。そんなこともあるかもね」

 

 ヒナさんが不貞腐れてしまった。

 リーダーが誰を選ぶか本当に面白くな、ってこんなこと考えてる場合じゃなかった。

 

「確かにありえない話じゃないですね」

 

「でしょ?」

 

「ヒカルだもんね」

 

 そう言って三人で笑い合う。

 ゆんゆんさんは未だに赤いままだけど。

 

「というかヒカル本人に聞いてみればいいんじゃない?トリタンが」

 

 えっ。

 

「そうだね、トリタンが聞きに行こう」

 

 えっ。

 

「お願いします、トリタンさん」

 

 えっ。

 

「何故当然のように…?」

 

「こういうのは男友達の方が聞きやすいんじゃないかな?」

 

 …確かに。

 彼の一番の男友達で親友である私が行くしかないでしょうね。

 華麗に聞き出してみせましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「え、何お前。いきなりどうした?」

 

「いえ、最近はリーダーがすぐ部屋に閉じこもってしまうので、みんなで心配していたのですよ。何かあるなら是非私に」

 

「ご遠慮します」

 

「ちょ!」

 

 ガシィッ!

 

 扉を少し開けて話していたリーダーがすぐに閉めようとしてきたので、扉を掴んで止めようとしたが

 

「いだだだだだだだだだだだだ!!」

 

 構わず閉めようとするリーダー。

 

「大丈夫か?ちょっと待ってろよ。すぐ挟まってる指切り落としてやるからな」

 

「いや、優しさの方向が迷子!!部屋に入れてくれればいいじゃないですか!」

 

「切り落としたら、ヒナにつけてもらってくれ」

 

「いや、切り落とす前提で話しを続けないでくださいよ!男同士の熱い語り合いしましょうよ!」

 

「余計嫌になったんだけど」

 

「ちょ、本当に痛いです!部屋に入れてくださいって!」

 

「待ってろ、今楽にしてやるからな」

 

「だから優しさの方向性違いますよ!全力で扉閉じようとするのやめてくださいマジで!」

 

 

 

 

 

「跡になってるじゃないですか…」

 

「変態が部屋に入ろうとしてたから、つい…」

 

「ついってなんですか!あと変態じゃありません!」

 

「で、なんだっけ。指切り落とすんだっけ?」

 

「違いますよ!それ先程のやりとりです!」

 

「いくらヒナがいてすぐ治せるからって、そういう自分の趣味?快楽?に真っ直ぐすぎるのもどうかと思うんだよね」

 

「なんで私が切られたがってるみたいになってるんですか!ダクネスさんじゃないんですよ!」

 

「同じ金髪の変態同士仲良くしろよ。よくないぞ、そういうの」

 

「変態じゃありません!!話が全く進みませんよ!」

 

「話って何だよ。報酬金の使い道とか?お前エッチなお店とか知らない?そろそろ自分へのご褒美があってもいいぐらい頑張ってると思うんだよね」

 

「報酬金の使い道の話もしてもいいですけど、そんなお店は知りませんよ。」

 

「はあ…まあお前はもうハーレムいるしな。知るわけないか」

 

「あの、本当にあの子たちは違いますから。あと孤児院に近付くの禁止って言うの本当にやめていただけませんか?」

 

「断る」

 

「はあ…」

 

 リーダーは私だけ孤児院に近付くことを禁止にしているのだ。何故かクリスさんもそれに賛同してるから、リーダーの言いがかりが真実みたいになってしまっている。

 

「そろそろ話していただけませんか?真剣に」

 

「…そうだな」

 

 先程からずっとどうでもいいと言わんばかりに興味無い顔をしてたが、ようやく真剣な表情になってくれる。切れ長の目が私を真っ直ぐに見つめていた。

 

「最近のオカズはウィズさんだな。あと最近街で見かけた獣人の母性の塊みたいな性格でおっぱいも大き」

 

「いや、そんな話でもないですよ!!?何語り出してんですか!?」

 

 え、違うの?みたいな顔するのやめてほしい。

 

「男同士の熱い語り合いって言うから」

 

「違いますよ!だから!すぐ部屋に引きこもってしまうじゃないですか!それを何とか解決したくて来たんです!」

 

「あー、それね。なんていうか、うん」

 

「十年後に行った時に何があったんですか?」

 

 リーダーが驚いた顔をしているが、畳み掛けよう。これ以上ボケられると面倒だ。文字数的にも。

 

「私達の間に何かあったんですか?それとも十年後のゆんゆんさんに惚れてしまったとか?」

 

 

「はあああああああ!?そ、そそそそそそんなことないし!!?なな何言ってくれてんのこの野郎!!」

 

 ……。

 

「やめてくんない!?変な言いがかりやめてほしいですわ!!」

 

 あ…(察し)

 

「惚れちゃったんですね?」

 

「ちっげええよ!何でそうなっちゃうかなあ!これだから年頃の奴等が集まると大変だよ!すぐ何でもかんでも恋バナとか下ネタに繋げようとすんだよ!」

 

「その下ネタはリーダーに言われたくないんですけど…」

 

「やかましいんだよこの野郎!わかったよ!明日から普通にリビングにいればいいんだろ!?別に惚れてないけどね全然!」

 

「そういえば十年後のゆんゆんさんは今のリーダーから見たら年上ですね」

 

「ぬっ!!」

 

「今のゆんゆんさんを見ると、十年後のゆんゆんさんは相当スタイルが良いのでは?」

 

「うっ!!」

 

「なるほど。リーダーの好み通りですね」

 

「………そうかもしれないね」

 

「あと昨夜面白いことが聞こえてきましたね。『何で髪を下ろしてるんだ』と」

 

「…」

 

「十年後のゆんゆんさんは今みたいに髪をまとめているのではなく、髪を下ろしてると」

 

「…」

 

「…なるほど。では惚れちゃった以外に何かないんですか?」

 

「ねえよ」

 

 意外と素直だが、本当だろうか。

 

 にしても、これはリーダーが誰を選ぶか、決まってしまったようなものだ。

 

「ゆんゆんさんを見ると意識してしまうと」

 

「……まあ、そんなところだ。会いたくてしょうがないんだよ」

 

「ん?」

 

「あ?」

 

 …。

 

「ゆんゆんさんに惚れちゃったんですよね?」

 

「ああ。十年後のゆんゆんにな」

 

「んん?」

 

「ああ?」

 

「今のゆんゆんさんは?」

 

「え?今のゆんゆんは違うけど?」

 

 ……。

 

「……ええ?」

 

「なんだ?」

 

「え、だって将来的に見たら、今のゆんゆんさんの成長した姿ですよ?」

 

「そうだな?」

 

「じゃあ今のゆんゆんさんのことを好きになるんじゃ」

 

「いや、今のゆんゆんは違うだろ。何言ってんの?」

 

「じゃあ何故髪を下ろすと動揺していたんですか?」

 

「失恋中に似た奴に会うと動揺するだろ」

 

「いや、似たっていうか、その人ですよね」

 

「そうだけど、俺の中では別っていうか…」

 

「どうしても年上じゃないとダメなんですか?」

 

「そういうわけじゃないんだけど、あのスーパーゆんゆんを見たら無理だな」

 

 スーパーって。

 

「ええと、失恋ってことは諦めてるんですか?」

 

「だってもう会えないからな」

 

「……」

 

 じゃあ今のゆんゆんさんでいいのでは?

 そう言っても多分また同じ様なことを繰り返し話すことになる。

 

「まあ悪かったよ。もうちょいで心の整理がつきそうだからさ。しばらくは好きにさせてくれ。迷惑をかけるつもりは無い」

 

「いえ、ただ心配だっただけですから。わかりました。リーダーを信じますよ?」

 

「ああ、ありがとな」

 

「これでリーダーの好感度が上がりましたね。そろそろトリタンと呼んで」

 

「それは嫌」

 

 みんなは割と呼んでくれるのに…。

 

 

 その後全員に事情を説明した。

 私と同じ様に全員ハテナ状態だったが、これに関しては彼の心の問題なので、無理矢理納得してもらった。

 一番複雑な顔をしていたのはゆんゆんさんだった。

 

 

 その後彼女の頑張りというかささやかな抵抗で髪を下ろした姿で一日過ごしたりする努力が見られたが、リーダーがそれを見て悲鳴を上げて椅子から転げ落ちたりして、リーダーの引き籠りが悪化しただけだった。

 

 まだ誰を選ぶか、わからないかもしれない。

 

 私はそんな期待を胸にこれからも彼等をそっと見守るのでした。

 





これはラブコメですね、間違いない。

お気に入り、感想ありがとうございます。
モチベに繋がります。
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