このすば ハード?モード   作:ひなたさん

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49話です。さあ、いってみよう。



49話

 

「お小遣いください」

 

「ダメです」

 

「…」

「…」

「…」

「…」

 

 とある日の昼下がり。

 我が家は沈黙に包まれた。

 

「まあ俺も頻度が高いとは思ってるけど、約二億あるんだし、少しぐらいよくない?」

 

「ヒカルだけ使いすぎ」

 

「お前らが使わなすぎなんだよ!二億とかいう大金を手に入れて、ここまで変わらない生活するか普通!?」

 

 二億を手に入れる前から、小金持ちパーティーなのに、全く生活が変わってない。少し飯が豪華になったりしたぐらい。

 相変わらず節制がどうだとヒナに怒られることも珍しくない。

 

「確かにお金はあるけど、世の中何があるか分からないんだよ?カズマさん達をよく見てみなよ」

 

「いや、あいつら引き合いに出すなよ!三日後にはどうなってるかわからない連中だぞ!?」

 

 今あいつらは湯治でアルカンレティアとかいう温泉街に行ってるらしい。

 俺らも行こうぜ、と言ったら俺以外の全員から反対されたせいで行けなかった。

 詳しくは教えてくれなかったが、アクアを御神体と崇めるアクシズ教の総本山だとか。

 

「とにかくお小遣いは来月までダメです」

 

「金は使わないと意味ないだろ?お金を使わないと経済は回らないんだぞ」

 

「そんな安っぽい言葉で動くと思ったら大間違いだよ」

 

「マジでお前らが使わなすぎなだけだって!真面目なのは良いことだけど、良い子ちゃんすぎるのも良くないと思うぞ!」

 

「ヒカルが悪い子なだけです」

 

「それは違うだろ!お前らが遊ばなすぎるんだよ!トリスターノは馬小屋の主人やハーレムとばっかり交流して、他のやつと喋ってるのほとんど見たことないし!」

 

「ハーレムじゃありません」

 

 ツッコミは律儀に入れてきた。

 

「ゆんゆんは最近やっとカズマ達の屋敷に遊びに行くようになったけど、それ以外はほとんど変わってないし!」

 

「うん!私もやっと友達が増えたの!いつも果物の詰め合わせとか持っていくんだけど、みんな良い人で遠慮して」

 

 なんか嬉しそうな顔で語り始めたけど、そうじゃない。

 前の水晶で見た時の一人で誕生日パーティーしてる時の机は俺達にカズマ達合わせてもまだ埋まらないぞ。もっと増やして。

 

「ヒナ、お前は毎日毎日アホみたいに教会だなんだとあくせく働きやがって!他のプリーストが少し迷惑に思ってるのがわかんねえのか!」

 

 これはマジである。

 そもそもこの街のプリーストは拝金主義で実力もほとんど無く、そこまで活動的でもなかったのだが、ヒナの登場によりそれは変わった。

 未だ子供に見えるプリーストの最上級職のアークプリーストがほぼ無給でバカみたいに教会等に貢献するせいで、良い歳したプリースト達は自分達の立場が無くなるのを恐れて、がっつり働くようになった。

 ただそれも限度がある。

 クエストや俺達と過ごす日以外はほとんど足を運んでくるヒナを見て流石にドン引きしてるのがプリーストの現状。

 子供に負けるわけには!と意地を張ってるが、いい加減勘弁してくれと俺にクレームが来た。

 エリス教会の奴らとも仲良くやってるから俺に言ったのだろうが、どんなにヒナを止めても最終的に気付いたらいなくなっている。もちろん教会にヒナがいたのは言うまでもない。

 こいつは回遊魚か社畜の生まれ変わりなんだと思う。

 

「なっ!?そ、そんなこと思われてないもん!毎日来てくれてありがとう、でもたまには遊びに行ってきてもいいんだよ、って気遣ってくれるぐらい仲良いもん!」

 

「それ遠回しに休めって言ってんだよこのアンポンタン!お前のせいで他のプリーストも休むタイミングわからなくなってんだよ!」

 

「あ、あんぽんたん!?別に僕は強要してないよ!なんで僕が怒られるの!?」

 

「たまにはお前は休め!ってか遊べ!」

 

「あ、遊べって言われても…何していいかわかんないし…」

 

 こいつ、マジもんの社畜かよ。

 仕事が趣味ですって言って、将来的に仕事と結婚すれば?とか言われちゃうやつだよ。まあこいつにはエリス様がいるから大丈夫だろうけど。

 ゆんゆんが目を輝かせてボードゲームを手に取り、俺の視界に入るようにチラチラ見せてくるのはスルーしよう。

 

「お前中身は残念脳筋ボクサーでも、顔はいいんだからオシャレとかしろよ。ゆんゆんと服買いに行ったりとかしてさ」

 

「…どうせ僕なんかには似合わないもん。僕まだ男の子に間違われることあるし」

 

「なんでここでネガティブ!?いつもの自信満々はどうした!?大丈夫だって!可愛いから!自信持てよ!」

 

「え…う、うん」

 

 俯いてるし、まだ自信無いみたいだ。

 俺に保証されたところで自信持てるわけないか。どうしたもんか。

 

「男に間違われるんだろ?男に見えないようにスカートでも履けよ」

 

「……え?」

 

「スカート履けよ」

 

「え?」

 

「スカート履けっつってんの」

 

「はあ!?あんなの無理だよ!絶対無理!」

 

「はあ?なんで?」

 

「あんな腰に布巻いてるだけの状態で外歩けるわけないでしょ!!」

 

「ええっ!?」

 

 ヒナの酷い言い草にゆんゆんがショックを受けてる。なんという流れ弾。

 

「なんで世の中のスカート履いた女性全員に喧嘩売ってんだお前は。というかお前が言った腰に布巻いただけの奴がそこにいるんだけど?」

 

「変態扱いしないでよ!これぐらい普通よ!……ふ、普通よね?」

 

「自信無くしてんじゃねーよ。まあそんな短いの履いてるのはぶっちゃけどうかと思うがスカート履くこと自体は普通だろ」

 

「えっ」

 

「絶対無理!ぶっちゃけ、ゆんゆんみたいなスカートは絶対無理!」

 

「えっ」

 

「ゆんゆんのスカートみたいな際どいやつじゃなくて、もっと膝下何センチとかのやつにしろよ」

 

「えっ」

 

「ええっ!?いやだよ!」

 

「だいたいお前は服のサイズが合ってねえでそのままにしてるから変だったんだよ。いつまでも丈折り曲げてブカブカなままだから子供に見られるんだ。決まり、今日はこいつの服買いに行くぞ。ほら、いつまでも膝抱えてないでゆんゆんも支度しろ。トリスターノもだ」

 

「御意」

 

「際どくないもん…変態じゃないもん…」

 

「なんでこうなるのおおおおおお!?!?」

 

 

 

 

 

「ズ、ズボン……ズボンがいい」

 

 二時間ほど店員さんとゆんゆんに着せ替え人形にされたヒナはすでに疲労困憊状態だ。

 買ったものをそのまま着て外に出た時から赤面し、スカートを押さえてうわ言のように呟いている。

 トリスターノと俺は荷物持ちだ。両手が塞がるぐらいにはヒナとゆんゆんの服を買った。

 

 ヒナが着てるのはフードが付いた白のワンピース。シンプルなデザインだが、ヒナには似合っている。

 髪は肩にもかからないぐらい短いが髪型は後ろでまとめて尻尾みたいになっている。前髪を明るい黄緑色の髪留めをしていて、女の子らしさが出ている。

 一応その髪留めは俺が選んだんだが、言ったら多分外すだろうから言わないでおく。

 年相応の可愛らしさになったじゃないか。

 これでまず男に間違われることは無いだろう。

 

 スカートの丈も長めにして、こいつの要望にもある程度応えてるんだが。

 

「ほれ、挨拶回りするぞ」

 

「嫌だよ!こんなスースーする格好でどこ行くのさ!?おかしいよ!」

 

「ゆんゆんみたいに短くないから大丈夫だって。いちいち押さえてなくても捲れないし、見る気もないから安心しろ」

 

「喧嘩売ってるの!?見られたくないけど、腹立つよ!あとこれ、捲れちゃったら全部見えちゃうんだよ!?ゆんゆん以上の変態になっちゃうよ!」

 

「ねえ、なんでいちいち私のこと言うの…?そんなに変?さっきの店の店員さんに勇気出して確認してもらったんだけど、可愛らしい格好ですねって褒められたんだけど…」

 

「とにかく今日はお前のオシャレの特訓だ。せっかくオシャレしたんだ、まずは慣れる為にいろんなところ歩き回って、見せびらかしつつ軽く挨拶しようや」

 

「嫌だってば!も、もういいよ!お小遣い欲しいんだよね!?お小遣いあげる!あげるから帰ろうよ!」

 

「いらん。ほら、行くぞ」

 

「いやー!なんで!?お小遣い欲しいって話がなんでこうなったの!?どうして!?」

 

「まあまあ、ヒナさん本当にお似合いですよ。確かに今回はリーダーがかなり強引ですけど、オシャレするというのは大人の女性として必要だと思いますよ」

 

 トリスターノがフォローしてるけど、マジで可愛くなった。

 今のこいつの格好をバカにするやつは絶対に許さん。これが父性ってやつだろうか。

 

「うぅ…でも、こんなのおかしいよ。ヒカルがお小遣いくれないからって、僕を辱める為にこんなことしてるんだよ絶対そうだよ」

 

「違うわ。俺のことなんだと思ってんだよ」

 

「変態ドSぐーたら男」

 

「次はギルドに行くぞ」

 

 ヒナをグイグイ引っ張っていく。

 ギルドの冒険者達に見せて、からかってもらえ。

 

「いやああああああああ!!!ごめんなさい!嘘です!ドSぐらいしか思ってません!変態はたまにしか思ってません!」

 

「思ってんだろうが!カズマがいなくてよかったじゃねーか!パンツ盗られないからな!」

 

「ごめんなさい!ギルドはイヤ!絶対バカにされるもん!ギルドは勘弁してください!」

 

 こいつのステータスが強すぎて全然引っ張れねえ!これだからステータス世界は!

 

「ヒ、ヒカル。ギルドはやめてあげなよ。無理矢理はかわいそうだよ」

 

「このお子ちゃまはいつも猪突猛進なのに、男に少し間違われたぐらいでヘタれるんだから、今日は周りに可愛い可愛い言ってもらって少しは自信つけてこい!」

 

「無理!恥ずかしくて死んじゃうよ!」

 

「死ぬわけねえだろうが!ギルドが終わったら教会だからな!」

 

「無理だよぉ!!」

 

 

 

 

 

 ギルドでバカ騒ぎが起こることは珍しくないが、今回はかなりの大騒ぎだ。

 最初はルナさんに挨拶して、ヒナを見せたらルナさんが可愛いとベタ褒めし、ギルドの女性職員が集まってきた。その後騒ぎを聞きつけた冒険者が続々と集まり、今やアイドルみたいなことになってる。いや、マスコットだろうか。

 

『ヒーナギク!ヒーナギク!ヒーナギク!』

 

「ヒナギクちゃん可愛いぞー!」

「ヒナギクちゃん天使ー!」

「私のヒナギクこっち向いてー!」

「ヒナギクちゃん似合ってるよー!」

 

 ヒナギクコールが巻き起こり、この日この時のギルドはヒナギク一色に染め上がった。

 その歓声を上げてる中に、羽衣を着た冒険者とは思えないような中身が残念そうな絶世の美女がいたような気がするけど、それは絶対に気のせいだろう。俺は知らない。何も見ていない。

 

 

 そんなライブ会場みたいな雰囲気に耐えきれなくなったヒナは俺達を引っ張り外へと出た。

 次は教会へと向かっているのだが、めちゃくちゃヒナに睨まれている。

 

「なんだよ?めちゃくちゃ褒められてたじゃねえか。これで男扱いするようなやつはいなくなるだろ」

 

「…そういう問題じゃないでしょ」

 

「なんだよこの野郎。まだ心配なのか?まだ男扱いしてくるやつがいたら俺も一緒にしばいてやるからいい加減に機嫌直せよ」

 

「だから、違うってば…」

 

 何しおらしくなってんだ。いつもの猪突猛進ぶりはどうした。

 

 こいつはまだ子供だが、男扱いされるのはなんとなく俺も良い気はしない。

 男と言われて自信を無くしてると思ってたんだけど、違ったのか。

 少しは自信が付くと思って、今日はこうして引き摺り回してみたんだが、ダメだっただろうか。

 

 結局は自分がどう思うか、だから俺が何かやったところでヒナ自身が納得しなければ、何もならない。

 もっと周りみたいに褒めてやるべきだっただろうか。

 

 

 教会に着いた俺達はプリースト達や隣の孤児院から出て来た子供達にヒナをお披露目をして、その後ヒナが揉みくちゃにされてるのを眺めていた。

 この教会のプリーストのアンナが近付いてきて俺の肩をバシバシ叩きながら、よくやったと言われた。

 別にお前の為じゃねえよ。

 

「これで少しは女らしくなればいいんだがな」

 

「ヒナちゃんは女の子らしいでしょ。あんなに可愛いじゃない」

 

「そうですよ。失礼です」

 

「ズボン履いて、孤児院の子供達と一緒に遊んで泥だらけになったり、モンスター相手に殴りかかったり、挙げ句の果てには冒険者に喧嘩売られてボコボコにするのが女らしいって?」

 

「そ、そういうのじゃないから」

 

「そうですよ。見てください。可愛らしい姿じゃないですか」

 

「おまわりさーん!」

 

「ちょ!なんでですか!?」

 

「ロリコンが出てきたからな。忠告しとくけど、手出したら死ぬよりも酷い目に合うからな」

 

「ロリコンじゃありません!…ふふ、わかっていますよ」

 

「なんだその笑みは?気持ち悪い」

 

 これだからイケメンは。

 俺は言ったからな。逃げられない空間に閉じ込められて神秘的な大剣を振り回してくるヤベエ奴に追いかけ回されたいなら止めないけどな。

 

「って、どうしたゆんゆん?」

 

「別に。なんでもない」

 

 なんか不機嫌っぽい。

 トリスターノの変態な話題はあまり好きじゃないのかもしれない。これはトリスターノのせいだな間違いない。

 

 どうにか違う話題がないものかと探していたら、ヒナがスカートを押さえながら早歩きで俺に近付き、掴みかかってきた。

 

「も、もういいよね!?帰ろう!?」

 

「まだに決まってんだろうが馬鹿野郎」

 

 ヒナは大熱でも出てるんじゃないかぐらいの真っ赤っかの顔で恥ずかしさ故か目尻に涙が浮かんでいた。

 

「はあ!?ぼ、僕もう無理!!さっきあの子達にスカートの中見られたんだよ!?」

 

「おいお前らー!何色だったー?」

 

「ドSせんせー、s」

 

「わあああああああああああああ!!!!このバカ!変態!最低!」

 

 ドスッ!ドスッ!ドスッ!

 

「ごはあっ!」

 

 バカ、変態、最低に合わせてボディーブローを打ち込まれて、堪らず膝を着いた。

 相変わらずの馬鹿力だ。

 そういうところだぞお前。

 

「も、もう帰る!もう満足したでしょ!?」

 

「まだだよ」

 

 足に力が入らなかったのでスカートを掴んで止めた。

 

「わあああああああ!!どこ掴んでんのさ!!」

 

「あと一ヶ所だ。付き合いな」

 

 

 

 

 

「ほれ、見せてこい」

 

「本当にバカなの!?こんな格好見せられるわけないでしょ!?」

 

 ここは教会内。祭壇まで行こうとして、扉近くから動かないでいるヒナに声をかけたらまた怒られた。

 

「エリス様の御前ですよ。お静かに」

 

「こ、この…っ!いつもはそんなの絶対気にしないくせに…っ!」

 

 まあ、エリス様に見せてこいと言ったら怒られてるのが今の状況。

 さっき変なのがギルドに降りてきてた気がするけど、あれは別人。異論は認めない。

 

 今はみんなに出払ってもらって、トリスターノやゆんゆんも外で待ってもらっている。

 

「ほら、前行ってお祈りだか黙祷だかしてこい。それできっとお前の晴れ姿を見てもらえるだろ」

 

「エ、エリス様は神様なんだよ!?いちいちこんな格好見てくれるわけないでしょ!?ていうか普通の服でしょ!」

 

 いちいち見にきてたぞ。

 …いや、あれは別人だったわ。

 

「いいから。とにかく行ってこい。これが終わったら帰るぞ」

 

「……後で覚えておいてよ」

 

 捨て台詞を吐いた後、素直に祭壇の方へとゆっくり歩いて、跪き祈りを捧げた。

 

「良い仕事をしてくれました。今回のことは世界を救う偉業に並ぶ功績です」

 

「何言ってんですか?あといきなり隣に出てくるのやめてほしいんですけど」

 

 何故か俺の隣にいるエリス様。

 嬉しそうに微笑んでいた女神様だが、俺の雑な対応に腹を立てたのか、不満げに膨れっ面になった。

 

「むぅ…せっかく褒めてるのに、邪険に扱うのやめてほしいです。私、神様なんですよ?」

 

「知ってますよ。ほら、早く行ってやってくださいよ」

 

 ヒナを指差して、行くように伝える。

 もうこの神様の中身がわかってるから、今更神聖視なんてしない。

 

「ふっ、今会ってしまったら私がどうなってしまうか、わからないんですか?」

 

「なんでドヤ顔で誇らしげ?アホなこと言ってないで」

 

「ええええええええええええええっ!!!!」

 

 いつの間にかこちらを向いていたヒナが驚きの声を上げた後、口をパクパクしながら固まっていた。

 

「お久しぶりです、ヒナギク。元気に」

 

「申し訳ありません、エリス様!!」

 

 そう言いながら俺をエリス様から引き離し、俺の頭を押さえながら引っ張り、ヒナと同じように跪く格好になった。

 

「本当に何やってるの!?なんで神様と同じ目線で話してるの!?頭おかしいの!?」

 

 唾を飛ばしながら俺にブチ切れてくる。

 

「いいのですよ、ヒナギク。彼とは知らない仲ではありませんから」

 

「なっ!?ヒカルなんかが本当に!?」

 

 いちいちディスるのやめろ。

 またギルドに連れてってやろうか。

 

「はい。ヒナギク、もっとお顔を見せてください。元気にしていましたか」

 

 そこから二人が話しているのをただ静かに聞いていた。

 エリス様も元々気にしていたみたいだが、ヒナギクに仕事ばかりではなく、もっと自分のために行動したり、遊んだりしなさい、と助言していた。

 緊張しているヒナにエリス様は柔らかく微笑みながら、まるで女神の様に話しかけていた。

 

 あ、女神だったわ。

 

「ヒナギク。貴女は彼を更生したいのでしょう。ですが言うだけ言っても彼は従ってくれません。彼を更生し、救う。そのためにも見聞を広げ、多くのことを経験しなさい。貴女ならきっとやり遂げられるはずです」

 

 なんで俺の話?更生なんかしなくていいし、そもそも更生される様な人間じゃないんだけど。

 

「は、はい!エリス様、ありがとうございます!」

 

「では、私は戻ります。陰ながら二人の安全を祈っています」

 

「ありがとうございます、エリス様!」

 

「ありがとうございます」

 

 お礼言っとかないとヒナに怒られそうだから言っておいた。

 

「ああ、それとヒナギク。その格好大変可愛らしいですよ」

 

「えっ、あ、ええっ!」

 

 去り際にそんな言葉を残して、スッと消えていってしまった。

 そんな女神ムーブが出来るなんて…まるでエリス様じゃないみたいだ。

 

「ヒカル…僕、夢見てるのかな」

 

 夢か現か、確認する方法は一つしかあるまい。

 思い切り頬をつねってやると、余程痛かったのか思い切り俺の手をはたき落としながら文句を言うヒナ。

 

「いだだだだだ!!何すんのさ!」

 

「現実ってわかったか?そろそろ行くぞ。みんな待ってるから」

 

「う、うん。あ、待った!ちょっとだけ待って!」

 

「なんだよ。言っとくが今のはさっきのボディーブローのお返しみたいなもんだ」

 

「そうじゃなくて、え、えっとね…?」

 

「なんだ?トイレか?早く行ってこいよ」

 

「デリカシー!デリカシーなさすぎ!!だから、そうじゃなくて!」

 

「んだよこの野郎」

 

「今日はその、ありがとう、ね?」

 

 照れながらもなんとか笑顔でお礼を言ったヒナは誰よりも可愛く見えた。

 

 女神エリスに褒められて、すっかり自信がついたのか、それからのヒナはオシャレに気を使うようになった。

 なんでも一番のお気に入りは髪留めらしく、クエストに行く時も毎日つけるようになった。

 結局良いところをあの女神様に全部持ってかれたわけだ。

 らしくないことはするもんじゃないってことかね。

 

 

 

 

「起きてください!今日はいっぱいお礼の品を持ってきましたよ!」

 

 数日後の深夜。

 弾む様にご機嫌の声色をした女神様に叩き起こされた。

 

「…なんですかもう」

 

「見てください!焼き増ししてきましたよ!なんて可愛らしい姿なんでしょう!」

 

 写真を大量に持って、俺の顔に押し付けて見せてくる。いや、見えねえよ。

 

「はあ、それがお礼ですか?」

 

「はい!」

 

 満面の笑みのエリス様。

 幸せそうで何より。

 

「いりません。帰ってください」

 

「ええっ!?」

 





ヒカル
オンオフはしっかりする男。
何が言いたいかと言うと、クエストとかの活動中は真面目にやるが、休みや普段の生活はゆるくやっていきたいと思っている。
他二人の育ちが良いということもあり、ヒカルの生活態度と比べて見た結果、ヒナギクはヒカルを「ぐーたら」と言っている。
ぶっちゃけヒナギクが厳しすぎる。
お小遣いを貰う交渉が上手くいかなかったので良い機会だし、今回の件でサキュバスサービスをやめようと思っている。
思っただけ。割引券は良い文明。

ゆんゆん
今回の騒動の一番の被害者。
お気に入りの服を何故かディスられた。
ヒカル的には冒険者やってて動き回るんだし、もうちょい見えなそうなの履いたら?という気持ち。
普通に冒険者でもっと際どい服装の人達は結構いる。
最近カズマ達の屋敷へ遊びに行く様になった。
ヒナギクとしては目標にしている女性のスタイルだが、ゆんゆんみたいなスタイルになっても、あのスカートの短さは無いと思っている。

トリスターノ
自称変態でもロリコンでもストーカーでもない普通の男。
一人でトリスターノが用事があると出かけて行く時は、だいたい馬小屋の主人やロリハーレムに会いに行くことを指している。
最近の趣味は男の親友が誰を選ぶのか見守ること。
今回の騒動の感想は
「こいつは面白くなってきましたよ!」

ヒナギク
成長が遅く、中性的な顔立ちをしている。それで男の子に間違われることも多く、いじられることもあったことから、自身の容姿に自信を持てず、オシャレから逃げていた女の子。
サイズの大きい服を着て、将来に胸を膨らませているが、エリス様に今のヒナギクは「完成された姿」と思われているので物理的に膨らむことも成長することもない。
いつも自身を律し、自分にも周りにも厳しい生活を心がけている。それ故にヒカルとぶつかることも多い。
エリス様に可愛いと言われて、すっかり自信がついた。

女神エリス
オチ担当。
今回はかなり女神が出来たと思いこんでいる。

最近は他の方の作品を読みに行くことも多くなって、後書きの書き方をパク…オマージュさせていただきました。
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