さあ6話、いってみよう。
目が覚めると、見知らぬ天井だった。
なんて、お約束をしつつ。
異世界転生とは名ばかりのヘンテコベリーハードな冒険が始まったことは夢であって欲しかったが、そんなことはなかった。
「はあ……」
目覚めて早々ため息をついてしまった。
今日から冒険者として生きていくのに、どうにも気合が入らない。
俺が悪いんじゃなくてこの世界が悪いと思う。あとあの邪神。
シャワーを浴び終わってもまだ時間に余裕があるので、このままでいたら二度寝をかましそうになったので、散歩ついでに街のことを見て回ろうかなと部屋を出た。
「え、あ、おはようございます!」
もうゆんゆんが廊下にいた。
まさか起きて準備が出来次第ずっと待ってたりしてないだろうな。
「おはよう。随分と早いな」
「えへへ、パーティーを組むなんて初めてで、すぐに目が覚めちゃって。何があっても良いように準備してました!」
そうやって自然に笑顔でいれば本当に可愛い普通の女の子なんだがなぁ……。
俺の不安はどうにも晴れないままだ。
このままじゃお互いに暇だし、時間を前倒しにして進めることにした。ギルドは既に開いてるとのことなので、そこで朝飯を済ませ、どんなクエストを受けるかの相談だ。
ここまで来てようやく彼女はどもることなく普通に会話を始められるようになっていた。
やっとパーティーらしいことが出来る。
「ジャイアントトードはどうですか? 打撃は効きづらいですけど、剣なら問題なく倒せます。倒しやすくて剣を持ってれば飲み込まれる心配もないです」
ジャイアントトードって昨日の昼に食べたやつか。倒しやすくて食えるなんて最高じゃないか。どんなモンスターかも興味が出てきた。
そんなわけで即決。
お互いに準備が出来ているか確認する。
ゆんゆんは終始ニコニコしている。パーティーで初めてのクエストだからだろう。もう聞かなくてもわかる。
ぶっちゃけ俺も少し、いや滅茶苦茶舞い上がっている。
悪くない。むしろ良い。燃えてきたってやつだ。
まるで大会の試合前のような緊張感。
ステータスが低いだ、病人の方がマシだ、なんだかんだと言われたが、日本じゃ病気になることなんてほとんど無かったし、体力に自信もある。
ステータスとかいう数字なんかでそこまで差が出るとは思えない。少し数字化されてるだけだろう。
転生特典を貰ってないし、そこら辺のステータスもおかしく表示されてるなんてこともあり得る。
もしくはやっぱり貰っていて戦闘中に力を発揮するタイプの転生特典なのかもしれない。
街の案内とかでゆんゆんには世話になってしまった。ここらで借りは返しておくべきだろう。可愛い女の子に良いところを見せるのも悪くない。
昨日ゆんゆんの自己紹介にはまだ上級魔法は覚えてないとかなんとか言っていたし、負担はあまり掛けられない。俺がほとんど倒す勢いでやるしかあるまい。
◯依頼内容
街外れの平原地帯でジャイアントトード五体の討伐
さあ、やるぞ!
はい、お疲れ様でしたー。
いやー今日もキツかったっすねうん。
よし、ゆんゆんさんのお飲み物を用意しよう。
「え、えと、依頼達成の報告してきますね」
現在時刻は11時過ぎ。依頼の為ギルドを出たのは10時過ぎ。ほとんど移動にしか時間を使ってない。戦闘に使った時間は多分10分もない。
依頼達成の報告の為には冒険者カードのモンスターの討伐欄を確認する。ゆんゆんさんだけが報告に行ったということは……
つまりはそういうことだ。
何が中級魔法しか覚えてない、だ。
中級魔法で十分じゃないか。『ファイアーボール』の一撃であの巨大カエルは爆発四散した。それが五回起こった。
先程の戦闘内容はそんな感じだ。
俺が平原に着いて三歩も進まない内にクエストが終わったのだ。
ゆんゆんは自分の力のアピールが出来て、とても満足そうにしていた。
何に気を使ったのか、今日はすごく調子良いんです! パ、パーティーがいるからかな、なんて言ってたが、んなわけない。
俺は帰りの道中はそれはもうヨイショをしまくった。高校や大学時代の面倒な先輩に絡まれた事がこんなことに役立つなんて誰が思おうか。
『ステータス』『上位職』『アークウィザード』『中級魔法』全てを舐めていた。
実力差がありすぎる。
これは早急にお話ししなきゃいけない。
俺は昨日カエルの唐揚げなんかを食ってたことなんてすっかり忘れて、ゆんゆんさんのお水を用意した。
まずい、冷や汗が止まらない。
完全に舐めてたし、完全に粋ってた。
もう完全にパーティーでやっていく感じになってるが、確実についていける気がしない。
俺の剣の一振りと彼女の杖の一振りにどれだけの差があるのか、いちいち調べたくもないし知りたくもない。
どう上手く言えば傷付けずに済むか。
多分パーティーを断ったら、あの子の性格上かなりショックを受けそうだ。
考えがまとまらない内にゆんゆんさんが小走りでこちらへ戻ってくる。
そんな急がなくていいんですよ。もっと受付の方とお話しとかするとよいと思います。彼女は対面に座り
「お待たせしました。十二万五千エリスです。これ──」
「お水です、どうぞ!」
「え? あ、ありがとうございます?」
飲み終わって落ち着いたところで話を切り出そう、そうしよう。もう出たとこ勝負だ。
「ふう……で、これ報酬の──」
「あ、あの!」
報酬は受け取れない。俺は何もしてないんだから。意を決して話そうと切り出したところで
「お話し中、すみません」
俺らがいる机の横に誰かが立っていた。
その男は爽やかな笑顔を浮かべつつ、こちらを見ていた。
俺よりも身長は高く、綺麗な金色の髪に碧い瞳。顔立ちはかなり整っている。
所謂イケメンだ。ダメなところを探すのが難しいぐらいの。
そんなイケメンが笑顔を崩さず、俺らの方を見て紙をこちらに見せてくる。
それは───
パーティー募集の張り紙だった。
は? こいつマジか。
これ、この怪文書、いやマッチングアプリのプロフィール欄でこいつ───
「パーティー募集の張り紙を見て来ました」
あんなの見て来たのか!?!?
新キャラをやっと出せた。
今回はシロガネ君が現実を知る回です。
かわいそうに(他人事)
やりたい話も多いけど、歩みが遅い…。
エリス様にご登場してほしいんですけど、何話後かなぁ…。