このすば ハード?モード   作:ひなたさん

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58話です。さあ、いってみよう。



58話

 

 魔術師殺しと合体したシルビアの体は、魔法を弾く防具の素材として有効活用されるらしい。

 そしてその防具の一部を俺が買い取ることにした。

 魔法抵抗力の無い俺からしたら、魔法を弾く防具は多少無理してでも欲しい。

 少し大きな出費だったが、パーティーメンバーからも同意を得られた。

 シルビアの討伐報酬はカズマ達のパーティーと山分けになっているし、そこまで痛い出費というわけでもないが。

 

 破壊された紅魔の里は、とても人が住めるような場所ではなく、多くの住民が露頭に迷うことになった。

 なんてことはなく、ゴーレムやら何やらが復興作業を進めていて、三日そこらで元どおりだとか。

 

 流石ファンタジー。

 魔法が凄いのか、それとも紅魔族がおかしいだけなのか、俺には判断がつかない。

 だって、一番最初に出会った魔法使いが紅魔族だし。

 

 復興作業を手伝おうかと思ったが、これ以上お客人に里のことをやらせるわけにはいかないと言われたので、大人しくしていることにした。

 それでやることもない俺達は魔神の丘でカズマ達と一緒にピクニックをしてのんびりと過ごしていた。

 

 

 春の暖かい陽の光に当てられて、平和を満喫する。

 最初はゆんゆんがめぐみんに勝負を挑んだりしていたが、懲りたのか、それとも穏やかな陽の光に当てられたのか、いつの間にか普通に雑談をしていた。

 ヒナがアクアの多芸ぶりに目を丸くして、なんとか対抗しようとしていたり、トリスターノとダクネスが上品に雑談していたりしたのを見て平和な時間を過ごしていた。

 めぐみんが爆裂魔法を打ちに行くというので、暇な俺とゆんゆんもついて行くことにした。何よりここら辺だと護衛が必要だしな。

 

 

 意外と大変だった。

 俺とゆんゆんだけで対処するには難しいぐらい強いモンスターもいたが、カズマとの連携もあってなんとかなった。

 シルビアの部下のモンスターを何匹も倒したということもあり、ゆんゆんもレベルアップし、『テレポート』を覚えた。このおかげで、爆裂魔法を撃った後も難なく帰ってくることが出来た。

 今は里を通って、また魔神の丘に戻ろうとしているところだが

 

「あっ!『蒼き稲妻を背負う者』ゆんゆん!これからご飯食べに行くんだけど、一緒にどう?」

 

 ゆんゆんと同年代ぐらいに見える年の娘から、そんな声がかけられていた。

 ゆんゆんが顔を赤く染めて首を横に振って、行かないことを示すと「そっか、残念」と言って、笑って手を振って去っていった。

 

「……モテモテじゃないですか、『蒼き稲妻を背負う者』。食事ぐらい一緒に行けばいいじゃないですか」

 

「やめて!その名前で呼ばないで!なんで私あんなことを…!」

 

 ゆんゆんは泣きそうになりながら、両手で顔を覆っていた。

 今更後悔してもな。

 ゆんゆんは正しい行いをしたと思うけど。

 

「そうだぞ、『蒼き稲妻を背負う者』。今飯でも行っておけば、友達いっぱいかもしれないぞ」

 

「ヒカルまでやめてよ!ああ、もう…」

 

 紅魔の里の中で唯一の常識人なゆんゆんは里の中で腫れ物扱いされていたが、シルビア戦の姿を見た里のみんなから英雄的な扱いをされていた。

 その後も『雷鳴轟く者』とか『雷と絆を司る者』とかいろんな二つ名を付けられて、お誘いを受けていたが、全てを拒否していた。

 その度にめぐみんに茶化されて、ますますゆんゆんは顔を赤くしていた。

 なんだかんだで仲の良い二人を微笑ましく思いながらも、あることについて考えを巡らせていた。

 

 ゆんゆんの誕生日プレゼント。

 ピクニック中も一人でずっと考えていたが、それが全く思いつかないでいた。

 ゆんゆんの誕生日は明日。

 パーティーはその日の夜にサプライズで行われることになっている。

 もう目前にまで迫っているというのに、何も決められていない。

 俺が薄情なのか、それともゆんゆんなら何をあげても喜んでくれるという甘い考え故か。

 最初はドエロイ下着でも渡してウケを狙おうかと思ったが、どう考えてもゆんゆんだけじゃなくて、ゆんゆんのご両親にも魔法を撃ち込まれるだろう。

 

 明日はサプライズパーティーの準備の為に、ゆんゆんを王都に連れ出すことになっている。

 その時が勝負なのだが、そんな短期決戦で決着を

 

「久しぶりね!ゆんゆんとネタ魔法使い!元気してた?」

「あははははは!紅魔族随一の天才が、紅魔族随一のネタ魔法使いに!あんた、今里の噂になってるわよ!」

 

 ゆんゆんと同じ年くらいの二人組がいつの間にか現れ、めぐみんをいじっていた。

 いじられためぐみんはすぐに二人へと飛びかかっていた。

 めぐみんは爆裂魔法しか使えないが、それでも多くの敵を倒してきた。そのおかげでレベルは上がっていて、二人相手にも余裕そうに立ち向かっていた。

 二人が涙目になって離れた後、佇まいを直して、ゆんゆんへと話しかけていた。

 

「その、シルビアの時は格好よかったわよ。今まで変わった子だと思ってたけど、あんなところもあったのね」

「うん、正直見直した。ゆんゆん、格好良かったよ」

 

「ふにふらさん、どどんこさん…」

 

 あ、その名前聞いたことある気がする。

 ゆんゆんの里の友達だと言っていた時に出てきた名前だった気がする。

 まさか本当に実在していたとは。

 

「二人とも、どこか抜けてるから心配だったのよ」

「そうそう、めぐみんはすぐ喧嘩売るし、ゆんゆんは悪い男に引っかかりそうだし」

 

 そう言って笑顔を見せる二人。

 なんだ、ぼっちじゃねえじゃねえか。

 ゆんゆんは先程までの赤面ではなく、笑顔でこちらへと振り返ってきた。

 

「ヒカル、カズマさん、改めてご紹介します。ふにふらさんとどどんこさんです。私の、学生時代の…と、友達です!」

 

 嬉しそうに言ってくるゆんゆんに俺もなんだか嬉しくなる。

 俺とカズマも軽く自己紹介をした。

 紅魔の里は顔面偏差値が高い。

 カズマも緊張した様子で自己紹介していたが、何故だかふにふらさんとどどんこさんも緊張しているように見えた。

 

「おい、普段ちっとも出会いがない上に男がいなくて寂しいのはわかるが、『私の男』に色目を使うのはやめてもらおう」

 

 と、めぐみんが爆弾発言をした。

 

『!?』

 

 突然の言葉に、全員が固まる。

 

「お、おいお前何言って…!?なんだよ、あの夜の事本気だったのか!?」

 

『!?』

 

 えっ。なんかすごい進展してる。

 

「おいおい、なんだ赤飯か?」

 

「や、やめろよ!そ、そんなんじゃないから!」

 

 俺だけがそんな茶化した返事をしてると、どどんこさんとふにふらさんが狼狽えながら、めぐみんに話しかける。

 

「おおおおおお、男!?魔法にしか関心が無かったあんたが!?う、嘘よね!?男友達って意味よね!?」

「そそそ、そうよねー!?オシャレとかに無頓着なめぐみんがそんなわけないわよねー!?」

 

「カ、カズマさん?本当なんですか?め、めぐみんと、その」

 

「それに、そこの男もゆんゆんの男ですから、誘ったところで無駄ですよ」

 

 俺を指差して、更にめぐみんが爆弾を投下した。

 

「はあああああああああ!?ゆ、ゆゆゆゆゆんゆんゆんゆん!?本気!?あんたまで何冒険してんのよ!?」

「えっ、ちょ」

「嘘だよね!?嘘と言ってよゆんゆん!!なんでそんな冒険するようになっちゃったの!?どこまで冒険しちゃったの!?」

「だ、ちょっ、違うから!そんなんじゃ!そんなんじゃないからあああああああああああああ!!!」

 

 と叫んで走って逃げていくゆんゆんに二人が唖然とした後、少しだけ落ち着きを取り戻す。

 

「そ、そうよね…。ゆんゆんがそんなこと、あるわけ、その、ないですよね…?」

 

 恐る恐る俺に聞いてくる。

 俺がそうだ、と言う前に

 

「あるに決まってるじゃないですか。その男はゆんゆんの刺青の位置まで知ってるんですよ」

 

 た、確かに知ってるけど!

 

『!?』

 

 その言葉に二人は更に驚愕し、フラフラと後退る。

 まずい、変な誤解を早く解かないと。

 

「い、いや、ちょい待っ」

 

「ふっ…」

 

 勝ち誇ったように鼻で笑うめぐみんの姿を見て、

 

「お、男が出来たからなんだって言うのよおおおおおおおおおおおお!!!」

「悔しくなんかないから!!悔しくないからああああああああああああ!!!」

 

 二人が捨て台詞を吐いて、泣きながら走って行った。何度か呼び止めたが、聞こえなかったのか、止まってくれなかった。

 

「おいおい、なんだ赤飯か?」

 

 カズマがニヤニヤしながら、お返ししてくる。

 

「……俺のは完全に誤解だぞ」

 

 

 

 

 

 魔神の丘に戻ると、ゆんゆんが俺を見て顔を赤くして俯いたのが見えた。

 可哀想に。二つ名を付けられた挙句、完全なる誤解で俺と付き合ってることになってるのだ。

 もし誤解が広まったら、俺も協力しよう。

 

 とりあえず、今はプレゼント選びだ。

 マジで何にしよう。

 もういっそのこと明日王都に行った時に選んでもらおうかな。

 そうすればハズレは無いわけだし。

 でも、そうすると誕生日を何故知ってるかとかいう話になるし…。

 ああ、くそ。

 …というか俺なんでこんな必死になってんだ?

 恋人とかに送るものでも無いってのに。

 確かに世話になったけど、ハズレみたいなのを渡さなきゃ別によくね?

 大学生の時なんか友達に変なもの渡し渡されてって、よくやってたじゃないか。

 よし、決めた。明日王都に行った時に決めよう。ゆんゆんが物欲しそうにしてたら、それをこっそり買うとか、何も反応が無ければ、何か見繕う。これで行こう。

 

「ヒカル?どうしたの?」

 

「ん?」

 

 いつの間にかゆんゆんが前にいた。

 まだ少しだけ顔が赤い。

 

「どうした?」

 

「こっちのセリフよ。いきなり考えた顔で立ち止まったまま動かなくなるから心配したのよ」

 

「ああ、悪い悪い。少し考え事をな」

 

「そうなんだ。……それで、その、さっきはいきなり逃げてごめんなさい」

 

 わざわざペコリと頭を下げてくる。

 別に気にすることじゃない。

 

「悪いのはめぐみんだろ。気にすんなよ」

 

「うん。そうよね、もうめぐみんってば…」

 

 ぶつぶつと文句を言いつつも、なんとなく嬉しそうに見える。めぐみんと楽しく過ごしてるからだろう。

 そういえばねりまきちゃんが言ってた過去の百合百合しい二人って言うのも、もしかしたらマジのやつなのかもしれない。

 ただめぐみんがカズマとくっつく以上ゆんゆんはどうするのだろう。まさか略奪だろうか。

 

 そんなアホなことを考えてたら、前にゆんゆんが半眼でこちらを見ていた。

 

「ねえ、変なこと考えてるでしょ?」

 

「いや、なんでもない」

 

「…えっちなことでしょ」

 

「なんでだよ!俺といえばエロみたいな安直な考えはやめてくれませんかこの野郎!」

 

「…あるえとねりまき」

 

「すんませんしたっ!」

 

 すぐに頭を下げた。

 この話題を出されたら俺は謝るしかない。

 くそっ!酔ってるとはいえ、なんてことをやらかしたんだ俺は!

 

「…あるえは大人っぽいから少しわかるんだけど、ねりまきは何で手を出そうとしたの?」

 

「い、いや、その、本当に覚えてないんです…。勘弁してくれませんか?」

 

「…」

 

 疑ってるような目で見て来ても、マジで覚えてないんだよ。

 

「でも、あれよ?なんだかんだで俺も宿で話そうとしてただけかもしれな」

 

「は?」

 

「すんませんしたっ!」

 

 やめて、その目光らせるの。怖い。

 なんかその光ってるの見ると、何故だかすごい怖い。魔王軍幹部より怖い。

 

「…はあ。せっかくいろいろ話そうと思ってたのに…」

 

「わ、悪かったよ。なんだ?」

 

 俺としても早くこの話題から話を逸らしたい。

 マジで忘れて欲しい。

 一生言われ続けるのは嫌だ。

 

「少し散歩しながら…でもいい?」

 

 照れながら上目遣いでこちらを見てくる。

 これを断れる人はそういないと思う。

 

「ああ、いいよ」

 

 

 

 

 

 

「良い天気だな」

 

「うん。でも、紅魔の里はだいたい晴れてるよ」

 

「え?なんで?」

 

「魔法で晴れにしてるから」

 

「…それって普通なの?それとも紅魔族がおかしいの?」

 

「他の街のことはわからないけど、おかしいって言わないでよ」

 

 ちょっと拗ねたようにそう言ってくるゆんゆん。

 出会った時からすれば考えられない変化だ。

 

 俺達は魔神の丘を離れて、里の外周を歩いている。

 遠く離れても危ないし、ゆんゆんから外の景色が見たいと言われていたから、こうして里の外周を沿って散歩している。

 

「ゆんゆんが初めて会った魔法使いだから、これが普通なのかと思ってたけど、紅魔族って正直おかしいよ。なんで千単位の敵に対して数十人程度の里の人間で対処出来るんだよ」

 

「…そんなこと言われても知らないわよ。私だって生まれた時からこうなんだし」

 

 まあ、確かに。

 ゆんゆんにこんなこと言ってもしょうがなかったな。

 

 雑談をしながら里の外周を歩き続ける。

 そろそろ里の居住区の近くだ。

 俺達が戦って守ったところだから、見覚えがある。

 シルビアの手下が侵攻して来た時、柵やその周辺は壊れたはずだが、綺麗に直っていた。家があんな簡単に直っていくのだから当然と言えば当然だろうが。

 そんなことを思っていたら、急にゆんゆんが立ち止まる。

 何かあったのかと振り返ると、ゆんゆんは少し顔を赤くして、俺を真っ直ぐに見ていた。

 思えば、いつの間にこんな真っ直ぐな目をするようになったんだろう。何かの影響を受けたのだろうか。普段のゆんゆんであれば、俺達以外と会話する時に目を合わせないことはよくあることなのだが。

 

「ヒカル」

 

「どうした?」

 

「里の為に戦ってくれて、ありがとう」

 

 ああ、これが言いたかったのか。

 そんな風に言われると少し照れ臭い。

 

「ゆんゆんの故郷だしさ。たまたま俺がシルビアと戦えたってだけの話だから」

 

「それでもだよ。あのね、里の皆に変な呼ばれ方されて恥ずかしいけど、ヒカル達のことを知ってもらえたことがすごく嬉しいの。私の大切な友達がこんなに立派な人達なんだって。こんな素晴らしい仲間と冒険してるんだって、自慢出来るのがすごく幸せ」

 

 ゆんゆんは今までで一番幸せそうに微笑んでいた。

 そんなゆんゆんが見れたなら、俺も頑張ってよかったと素直にそう思う。

 

「こんな機会をくれて、ありがとう。こんなに幸せでいられるのはヒカルのおかげだから」

 

「お、大袈裟だな」

 

 ゆんゆんにこんなストレートに気持ちをぶつけられると、なんだか気恥ずかしい。

 

「大袈裟じゃないよ。ヒカルがいたからトリタンさんが来て、ヒナちゃんが仲間になったんだよ。だから、今の幸せはヒカルのおかげ」

 

「そうか?あいつらもぼっちだから、なんだかんだで集まってたんじゃないか?」

 

 ゆんゆんの真っ直ぐな目に耐えきれなくて、目を逸らす。空を見ると、綺麗な青空が広がっていた。

 

「トリタンさんは男友達欲しがってたし、ヒナちゃんはヒカルがいなかったら日替わりで違うパーティーを転々としてたと思う」

 

「ゆんゆんは?」

 

「…私は多分一人なんじゃないかな」

 

 そこでゆんゆんが少し俯くのが横目に見えた。

 

「なんでだよ。自己評価低すぎるぞ。やがては紅魔族の長となる者、だろ?」

 

「そうだけど、ううん。なんというか私はヒカルと会った時からそこまで変わってないから、そう思うの。こんなに仲間や友達といられるのはヒカルが私の元に来てくれたからだと思うから」

 

「俺どうこうはともかく、変わってないことなんかあるかよ。ゆんゆんは成長してる。俺達だけじゃなくてクリスやカズマ達みたいな友達が増えていってるだろ。知らない人に話しかけるとか苦手なことにも挑戦してるだろうが。ゆんゆんをバカにする奴はゆんゆんでも許さないぞこの野郎」

 

 そう、俺が許さない。

 努力して、頑張る奴をバカにする奴は俺が絶対に許さない。

 努力がどれだけ辛いか知っている。

 頑張ることを諦めてしまうこともある。

 それでも努力した。それでも頑張った。

 それは何よりも尊いものだと俺はそう思う。

 

 ゆんゆんの努力を、ゆんゆんの頑張りを、俺は知っている。だから、それをバカにする奴は誰だろうと、ゆんゆん自身でも許さない。

 それを聞いたゆんゆんはまた嬉しそうに微笑んだ。

 

「ありがとう。ヒカルのそういうところ大好き」

 

 好き、という言葉に反応したのか、鼓動が早くなる。顔が熱くなる。

 ど、どうした。ガキか、俺は。

 

「私達のことをいつも考えてくれて、見てくれて、大切に思ってくれているのが好き。私達のそばにいることを第一に考えてくれているのが好き。弱くても立ち向かう心の強さが好き。誰よりも大人で、子供っぽいところも好き」

 

「お、おい」

 

 こんなに言われて恥ずかしくないわけない。

 今日のゆんゆんはどうしたんだ。

 

「子供達に囲まれて慕われる姿が好き。みんなが落ち込んだりした時に冗談を言って滑ってるところも好き。くさい言葉を言うところも好き。私達のことを家族と同じくらい大切だって言ってくれたところが好き」

 

「…」

 

 あの、マジで恥ずかしいから、やめてほしいんですが…。

 

「その真っ直ぐな黒い瞳が好き」

 

 ゆんゆんの目は少しだけ紅く光っていた。

 もしかしたら言ってる自分も恥ずかしいのかもしれない。

 自分の胸に手を当てて、自身の心から思ったことをそのまま口に出してるかのような、そんな健気さ。

 ゆんゆんは一度、目を瞑ると、少し黙る。

 どうしたのかと思っていると、カッと目を見開き、ポーズを取る。

 

「我が名はゆんゆん!紅魔族随一の最高のアークウィザードにして、上級魔法を操る者!やがては紅魔族の長となる者!」

 

 その瞳は鮮やかな真紅の色に輝いていた。

 

「そして、シロガネヒカルを恋い慕う者!!」

 

「っ!」

 

 ゆんゆんの豪速球に反応が出来ずにいた。

 ゆんゆんの足は少し震えていて、目も顔も真っ赤だ。それでも俺に気持ちをぶつけて来た。

 やっぱり、ゆんゆんは成長してるじゃないか。俺が言うまでもないぐらいに。力強く。

 

「友達であるヒカルを混乱させてしまうのを承知で告白しました。でも、幸せをくれた貴方がやっぱり好きで、どうしても想いを伝えたかったんです」

 

 ゆんゆんの力強さに圧倒された俺は未だ口を開けずにいた。

 

「返事は、好きな時で構いません」

 

「え、でも」

 

 なんとか口から出た言葉は情けなくて、心の何処かで良かったなんて思ってる俺は、どう考えても女々しい馬鹿野郎だった。

 

「ヒカルを困らせてるのわかってるから。私以外にもヒナちゃんやトリタンさんだっているから」

 

 困ってなんかない。

 むしろ俺は嬉しくて。

 

「あと私はヒカルの好みの女性のタイプじゃないし…。その、ちゃんと考えた上で答えを出してほしいと思ってるから」

 

 心臓がドキドキとうるさくて、ゆんゆんの言葉が聞こえなくなりそうだった。

 うるさくて考えがまとまらない。

 

「ヒカル!紅魔族の長となる者として、あなたに私のことを好きだと言わせてみせます!だ、だから!」

 

 ゆんゆんの顔は耳まで真っ赤になっていて、瞳はギラギラに輝いていて、爆発でもするんじゃないかと思ってしまう程だ。

 

「え、えっと、その、あの、お、お、お返事ま、待ってるからあああああああああああ!!!」

 

「え、ちょ!?」

 

 ゆんゆんが里の入り口方面に全力疾走で逃げて行った。

 もう耐えきれなくなったらしい。

 俺も情けない話、足の裏がくっ付いたみたいに動かせないでいて、ゆんゆんを呼ぶぐらいしか出来なかった。

 

「まじか…」

 

 俺の口から、蚊でも飛んでるぐらいの小さな声が漏れた。

 尻餅をつくように、足の力が抜けて座り込んだ。呆然として、頭が動かなくて、感情が迷子だった。

 

 本当に、いつの間にあんな強くなったんだ。

 

 はあ、とため息をついて、そのまま草原に寝っ転がる。

 ふと視線を感じて左を見ると、柵の向こう側から幾つもの紅い瞳がこちらを見ていた。

 

「どわああああああああああああ!!!!」

 

 思わず飛び起きて、絶叫する。

 何人もの紅魔族がこちらを見ていた。

 

「やあ、色男」

 

 その内の一人がそんな風に俺に話しかけて来た。

 

「えっ、ちょ、こ、ここここれまでのことを」

 

「ずっと聞こえてたし、見てたよ」

 

「おいいいいいいいいいいい!!!いやいや、声かけてくださいよ!!なに観察してんすか!!」

 

 ツッコミを入れるが、その人はどこ吹く風で。

 

「何言ってるんだい?『雷鳴轟く者』ゆんゆんの一世一代の大告白を邪魔するわけにいかないじゃないか」

 

「いやいやいやいや!!そういう問題じゃないから!え、ちょ、どこから聞いてたんすか!?」

 

「そんなずっと聞いてたわけじゃないよ。柵の外から声が聞こえたから、一応見に行ったら里を守った二人が真剣に話し合ってたからね。見ている内にどんどんみんな集まって来ちゃってね。名乗りながら告白するところはみんなバッチリ見てたよ」

 

 公開処刑ならぬ公開告白じゃん!

 ゆんゆんがこれを知ったら紅魔の里歩けなくなるぞ!

 

「それにここは居住区だよ?ゆんゆんはここで告白するのは計算尽くだったに違いないよ!ここでわざとみんなに聞こえるように告白して、この男は私のものだと伝えたかったに違いないね!」

 

「どう考えても違うわああああああああ!!絶対わかってなかったよ!人に聞かれない為に外に連れ出したに決まってんだろうが!」

 

「いやあ、すごい告白だったね。まさかあのゆんゆんがあんな告白をするなんて…流石は紅魔族の長となる者だ!」

 

「変わり者のゆんゆんがあんな紅魔族らしい告白をするなんてね。しかも相手は里を守った男性だ!これは熱いね!」

 

「ゆんゆんの勇姿を里中に伝えなきゃ!」

「そうだな!俺も!」

「私も!友達に教えてあげなきゃ!」

 

「おいいいいいいいいい!!!やめてえ!!やめたげてえええええ!!」

 

 外側から柵をガクガクと揺らしながら言った俺の制止を聞かず、そのままワラワラと集団は散っていき、思い思いに先程までの光景をしゃべくり倒しに行った。

 

「あいつらマジかよ!!慈悲とかねえのか!どんな精神構造してんだ!」

 

 柵からツッコミを入れても誰も振り返らないで、走ってすごい勢いで話を広げてる者や、すでにご近所さんに話しかけてる奴もいる。

 

「はあああ…」

 

 重く長いため息をついて、そのまま柵にずるずると背中を擦らせて座り込んだ。

 見上げると、先程見た時と変わらず、里周辺の空は綺麗に晴れ渡っていた。

 今からゆんゆんの天気は荒れ狂うのかと思うと、思わずため息をついた。

 





ヒカル
優柔不断系ラブコメ主人公。
割と押しに弱い。
プレゼントが決まらない。

ゆんゆん
メインヒロインとして覚醒した女の子。
覚醒したはいいが、不幸な目に合うのは変わらない。
告白は出来たが、誕生日は伝えられなかった。

シルビアと対峙した時の名乗りや、今回の告白の名乗りは、今まで通してきた「お控えなすって」じゃないの?と思う方もいらっしゃるかもしれませんので、ここで説明を。
シルビアと対峙した時は、もちろん紅魔族族長の娘として前に立ったので、それは原作通りに紅魔族流の名乗りにしました。仲間もその紅魔族族長の娘の隣に立つ仲間として、その名乗りを使いました。
今回の告白は一人の女性としてのものだからです。
「お控えなすって」はヒカル達の「仲間」としての名乗りなので、この名乗りは告白としては不適切だと判断しました。
だから、ゆんゆんは一人の女性として、一人の紅魔族としてヒカルに紅魔族流の名乗りを使い、告白しました。

紅魔の里編なので、かなり出番が偏ってますね。
いや、でも一章とかメインヒロインなのに別行動で全然出番無かったりしたし、バランスいいのでは…?
次の章はヒナギクやトリスターノの話に入ったりします。
感想とか見る限り、意外とオリキャラのこの二人も気に入っていただけてるみたいで嬉しいです。頑張って活躍させます。

もしかしたら近々アンケートをやるかもしれませんので、よければご協力お願いします。
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