このすば ハード?モード   作:ひなたさん

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60話です。さあ、いってみよう。



60話

 

 

 結構高い買い物をした。

 ヒナに渡されたプレゼント用のお金と小遣いでギリギリ買えた。

 真ん中に紅魔族の瞳のような、透き通るように紅い宝石に似た石が付けられた、指周りが黒色のまるで紅魔族用に作られた指輪。

 装備者の魔力や攻撃魔法の威力を高めるもので、その指輪に魔力を通すと、多少ではあるが魔法抵抗力を強めることが出来るらしい。

 

 俺の考え方が悪いのかもしれないが、指輪を要求された時、正直な話をすると若干怖くなった。

 ゆんゆんにとって、お付き合い=結婚なのだろうか。

 この前プロポーズされた時はいきなりすぎて動転して受け入れてしまったけど、すぐ結婚はやっぱり難しいと思う。

 結婚が嫌と言うわけではなくて、いきなりそこまで話が飛躍すると、紅魔族の恐ろしさを知った今だと少しだけ躊躇してしまうところがあるし、それ以上に色々ね、体の相性とかね、いろいろお互いをわかってからだと思う、うん。

 恐る恐る話を聞いていくと、ヒナみたいに指輪をネックレスにしてるのが少し羨ましかったとか。

 

 よかった。変な意味とかじゃなくて。

 俺が邪なだけだったか。

 チェーンに通してネックレスにして首からかける。そして俺に似合ってるかどうか聞いてくる。

 もちろん、と返すと、嬉しそうに微笑んだ。

 

 

 昼になって、合流場所まで戻ると、満足そうにしているクリスといつものイケメンスマイルのトリスターノに、耳まで顔を真っ赤にしたヒナが短いスカートを手で抑えていた。

 ヒナが俺を見るや否や近付いて来る。

 

「なんですぐに追いかけて来てくれなかったのさ!ヒカルがクリスさんを止めてくれれば、僕こんな格好しなくて済んだのに!」

 

 何故か俺がめちゃくちゃ怒られた。

 

「いきなりなんだこの野郎。クリスに着させられたのか?」

 

「そうだよ!僕はずっと着せ替え人形だったんだよ!ヒカルのせいで!」

 

「だから何で俺のせいなんだよこの野郎。まあ似合ってるし、いいんじゃないか?」

 

「っ、そ、そういう問題じゃないんだよばかやろぅ…」

 

 今のヒナの格好を説明すると、あれだ。

 所々に赤い線が入ってる黒を基調としたセーラー服を着てる。白い襟に胸元の赤いネクタイが特徴的だ。

 年齢的に考えれば、俺のいた世界ならヒナもこれを着ててもおかしくないし、実際違和感も無い。

 短いスカートが気になってしょうがないのか、内股でずっとスカートから手を離さない。

 

「ヒカルは僕の後ろ立たないでね」

 

「は?なんで?ゴルゴ気分かこの野郎」

 

「ごるご?覗かれたら嫌だもん」

 

「金出されても覗かないから安心しろ」

 

「しばき倒す」

 

 俺達が取っ組み合いになるところを三人が止めてくる。

 これから観光なんだから、と説得されて王都を周ることになった。

 

 

 

「プレゼントは買えましたか?」

 

 王都の観光中、トリスターノがこっそり俺に話しかけて来た。

 

「ああ、買えたよ。ゆんゆんから今日が誕生日だって言われちまってな。そのまま欲しいものを聞いて買ったよ」

 

 ほう、とさも興味深そうにトリスターノが呟く。これだけで絵になるの本当腹立つな。

 これだからイケメンは。

 

「何を要求されたんですか?」

 

「…装備すると魔力や魔法が強くなる装備品だよ」

 

「なるほど、婚約指輪ですか」

 

「何言ってんだ馬鹿野郎。お前指輪ってわかってて聞いただろ」

 

「いいえ。リーダーがはぐらかすので」

 

 ニッコリのイケメン君を軽く小突く。

 大袈裟に痛そうにするな。

 先に歩こうとすると、呼び止められる。

 

「リーダー」

 

「なんだ?」

 

「貴方が考えて選んだ道なら、私はそれを応援します。胸を張って進んでください」

 

「……わかってるよ。何故なら俺はお前の友達だからな」

 

 照れ臭そうに笑うトリスターノより先に歩くと、すぐに追い付いてくる。

 

「ちなみに私達はプレゼントを買ってすでにテレポートで送りました。本来なら三人で協力してリーダーのプレゼントを買う時間を作ろうという話になっていたのですが」

 

「そうか。クリスは今日のアレに誘ったのか?」

 

「はい。是非参加したいと」

 

「酒は飲ませるなって言っておいてくれ」

 

「ご自身でお願いします」

 

 また小突いてやると、また大袈裟に痛がり始めた。

 

 

 

 

 

「写真撮るだけでこんな金取られるのか」

 

「何言ってるの?魔道具カメラだよ?」

 

「そうだよ、高級品だよ?」

 

「はいはい、そうでした」

 

 懐に写真を仕舞いながら、テキトーに遇らう。

 相変わらずよくわからない世界だ。

 魔法が発達してるからって何でもかんでも上手くいくわけじゃないのは、今までで分かっていたが、日本の常識を引きずる俺からすると変な気にもなる。

 まあ、でも高い金を払う価値はある。

 写真に写るのは好きじゃないが、こういう思い出は嫌いじゃない。

 ゆんゆんが幸せそうに眺める写真には、表情の死んだ俺にいつものトリスターノ、恥ずかしがるヒナに抱きつくクリス、そして満面の笑みのゆんゆんが写っている。

 時間稼ぎの為に来た王都だったが、こんなに良い顔をしてくれるならよかった。

 

 いつかはこの写真を見て、懐かしがる日が来るのだろうか。

 もし、もしも、そんな日が来るのだとしたら、その日はずっとずっと後になりますように。

 

 

 王都巡りもそれなりにして、戻る時間になった。

 帰りはゆんゆんのテレポートで帰ってきて、家に戻ると、ゆんゆんが部屋に戻ったのを確認してから、準備が出来てるか確認する。

 準備が出来てるか、と言われれば出来てるのだが、思ったよりめちゃくちゃになっていた。

 ケーキが半分無くなっていたり、料理にすでに手をつけていたり、みんなからのゆんゆんのプレゼントでタワーを作っていたり、飾り付けが潰れてたりしていた。

 多分カズマ達のせいだろう。

 もうしょうがないから、このまま呼んでくるように族長夫妻から言われて、ゆんゆんの部屋へと向かう。

 昨日の今日のせいで、なんか緊張してしまう。

 ノックをして一回出て来てくれ、と言うと、すぐにゆんゆんが顔を見せる。

 なんとなく期待しているような顔に見える。

 

「どうしたの?」

 

「今日の夕飯を断った理由を教えに来た」

 

「え、う、うん。」

 

 きょとんとした表情のゆんゆんの手を引っ張り、大広間へと向かう。

 

「え、えっ、ねえ、教えてくれるんじゃないの?」

 

「すぐにわかるよ」

 

 大広間の前に来て、開けるように言う。

 戸惑った顔で、素直にゆっくりと開くと

 

『誕生日おめでとう!!ゆんゆん!!』

 

 みんなが揃えて、ゆんゆんを出迎える。

 クラッカーやら魔法の何やらで、ゆんゆんがびくりと震えて、その光景に固まる。

 信じられないように周りを見た後に、俺へと振り返る。

 

「誕生日おめでとう」

 

 そう伝えると、ゆんゆんは涙を流し、わんわん泣き始めた。

 きっと、夢にまで見た光景。

 それがようやく現実になったのだから、当然と言えば当然だ。

 俺が泣いてる背中を押して、心配してくるみんなの前に連れて行く。

 泣きながらも、律儀にお礼を言うゆんゆん。

 そして、慰めてくるみんなを振り切り、俺の元へと走って俺の胸元に抱きついて来る。

 慌てる俺に、

 

「やっぱり私の幸せは、ヒカルのおかげだよ」

 

 ゆんゆんは涙でぐしゃぐしゃになった、それでも最高の笑顔でそう言った。

 

 

 

 ゆんゆんが挨拶回りで今日来てくれた人にペコペコとお礼を言っているのが見える。

 遠くから眺めてる俺に、皿にケーキやら肉やらを大量に乗せてバクバクと頬張るめぐみんが来た。

 

「なんだ?お前が一人で俺のところに来るなんて珍しいじゃねえか」

 

「私も来たくて来たわけではありませんよ」

 

 失礼だなこの野郎、貴方もですよ、と言い合い、二人でゆんゆんを眺めていると

 

「…あの子を頼みましたよ」

 

「あ?」

 

「ゆんゆんを頼むと言ったんです」

 

「随分と今更だな」

 

「ええ。貴方のことを認めていませんでしたから」

 

 一発屋のくせに、と口に出かけたが、言わなかった。

 

「そうかい。やっと認めてくれたのか?ゆんゆんの『ライバル』さんよ」

 

「魔王軍幹部のシルビア相手にあんな立ち回りを見せたのですから、多少は認めましょう。まあ、トドメを刺したのは私ですが」

 

「一言多いんだよこの野郎。誰が頑張ったおかげでトドメを刺せたと思ってんだ」

 

 少し睨み合うようなそんな時間が過ぎる。

 それで、はあ、とため息を吐いためぐみんが

 

「喧嘩をしに来たわけではありません。多少強くなった貴方ならようやくあの子を任せられると思ったので話をしに来たのです」

 

「いちいち喧嘩に発展しそうになることを言うのはお前だろうが」

 

「任せられないような男だったのは事実のはずです。力も弱ければ、知識も無い。あるのは根性ぐらい。仲間におんぶに抱っこの男に私の『ライバル』を任せられるとでも?」

 

 心底腹立つが、全て事実だ。

 

「ゆんゆんに何かあれば、すぐに爆裂魔法を打ち込んでやろうかと思っていましたが、どうやら本当に根性だけはあったみたいですね」

 

「…」

 

「貴方にゆんゆんを任せます。ですが」

 

 俺に向き直り、その目を爛々と紅く光らせる。

 

「あの子を悲しませたら、タダじゃ済みませんよ」

 

「いつも泣かせてるお前が言えるセリフじゃねえよなあ」

 

「紅魔族は怒らせるとどうなるか、わかっていますね?それとも怖気付きましたか?」

 

「んなわけあるかよ。ゆんゆんは俺の友達であり、仲間であり、家族だ。悲しませたりなんかしねえよ」

 

「言いましたね?その言葉よく覚えておいてください」

 

 そう言って満足したのか、またバクバクと食べながら背を向けて去っていった。

 

「随分と『ライバル』思いなことで」

 

 そう独り言を漏らした時、

 

「悪いな。あいつ悪気は無いと思うから、許してやってくれ」

 

 カズマが来た。

 

「知ってるよ。てか見てたのか?」

 

「ああ、ちょっと雰囲気悪いから心配でな」

 

 こいつも本当面倒見が良いな。

 あの面子をまとめるぐらいだ、これくらいは出来ないといけないのだろう。

 

「にしてもあんな言い方は無いよな。友達や仲間思いなのはいいんだけどさ」

 

「まあ、似たような奴と付き合ったことあるから、特になんとも思ってねえよ」

 

「そうか?それならいいんだけど。でもなー。俺としては弱い日本人同士、親近感があったんだけどなー。なんで上位職になっちまうかな」

 

「お前な…」

 

「なんだよ。俺としては肩身が狭くなるというか…」

 

「お前は頭脳担当だろ。俺は頭良くないし、少しぐらい強くなったっていいだろ」

 

「ヒカルって、ちゃんと俺のことわかってくれてるよな。そう、俺は参謀のカズマさんだ」

 

 キメ顔みたいなのを見せてくる。

 そこまで調子乗られると、ちょっとイラッと来るんだけど。

 

「そう、お前は参謀だ。狡い手を使って」

 

「おい、狡いとか言うなよ」

 

「ちゃんと褒めてるだろうが。あいつらをまとめてはいるが、俺は前衛だからな。俺とお前じゃ役割が違うってことだ。他の街だとわからんが、アクセルじゃ余程新人じゃない限りお前を舐めてかかる奴はいないだろ?」

 

「ま、まあな。なんかヒカルに褒められて良い気分だ。また一緒に飲もうな」

 

「おう、また飲もうぜ」

 

 カズマが去っていった。

 トリスターノが女性陣に囲まれているのが見える。どどんこさんやふにふらさんもいる。

 ねりまきちゃんまで顔を赤くしちゃって…。

 なんか寝取られた気分だ。これだからイケメンは。

 

 

「やあ、ドS先生。隅に一人でいて何してるんだい?」

「ドS先生。シルビア戦は凄かったな。是非また一緒に戦いたい」

 

「うわ、エリス教三銃士だ」

 

 俺のところへ来たのはエリス教三銃士。

 クリス、ダクネス、ヒナ。

 

「なにそのさんじゅうしって?ていうか、うわって何さ」

 

「一人ぼっちで何してるんだい?ゆんゆん待ち?」

 

「違えよ。さっきまでカズマとかいたよ」

 

「クリス、からかってやるな。ゆんゆんを待ってるに決まってるじゃないか」

 

 そう言ってニヤニヤしだす二人と不機嫌そうなヒナ。

 

「違えつってんだろ。王都巡りが疲れたんだよ」

 

「ふうーん。ねえ、二人でどこ行ってたの?」

 

 クリスが目を輝かせて興味津々に聞いてくる。

 

「クリス、そういうのは聞いてやるな。…聞きたくなる気持ちもわかるが」

 

 そう言いつつ、ダクネスも興味ありそうにこちらが何を話すか見てくる。

 少し遠くにカズマとあるえちゃんが喧嘩しているのをめぐみんが止めているのが見えた。何やってんだあいつら。

 

「変なことしてないだろうね?」

 

 ヒナが睨みながら俺にそう言ってくる。

 

「してねえよ。雑貨屋でいろいろ買ったり、喫茶店行ったりしたぐらいだ」

 

「ふうーん?」

 

 ヒナが疑わしげな目で見てくる。

 

「お前のマグカップとかも買ったから、ゆんゆんにお礼言っとけよ」

 

「え、そうなの?僕がプレゼント貰っちゃった。どうしよう」

 

「そういうのもいいんじゃないかな。お互いに大事に思ってる証拠だよ」

 

 そうクリスがフォローしてくる。

 たまには良いこと言うな。

 出来ればずっとその状態でいてくれ。

 

「そうだな。この四人はなんというか理想の四人という感じがするな。思い思われ、お互いを大事にしているのが見ていてわかる」

 

 ダクネスもちょっと真面目モードだ。

 出来ればずっとその状態でいてくれ。

 

「えへへ。そう言っていただけて嬉しいです」

 

 エリス教三銃士と雑談していたら、族長夫妻がお礼を言いに来た。

 どうやらこの二人もお礼をして周ってるらしい。親バカだな、そういう人は嫌いじゃないけど。

 

「明日の夕方にアクセルに帰るんだったな?」

 

「はい、そうです」

 

「では、お昼に…わかっているね?」

 

「もちろんです」

 

 族長のひろぽんさんに言われて、頷く。

 他の四人が首を傾げていたが、そのまま俺の肩に手をポンと置いた後に去っていく。

 

「何か約束があるの?」

 

「ああ、ちょっとな」

 

 

 

 

 

 サプライズパーティー終盤。

 ほとんどの人が帰り、残っているのは俺達のパーティーやクリスにカズマ達のパーティーぐらいだ。

 

「ふう…」

 

「お疲れ様、ゆんゆん。楽しむ暇もないぐらい大変だったね」

 

 挨拶して回って、帰る人にもいちいち挨拶に行って、結局パーティーを楽しんでるのか微妙なところだった。

 

「ううん。本当に楽しかったよ。みんな、本当にありがとう。私、わたし…」

 

 また目をうるうるとさせて、泣きそうになるゆんゆん。

 

「まだ涙出るのかお前は」

 

「だってぇ…」

 

「もうゆんゆんをいじめないでよ。楽しんでもらえてよかったよ」

 

 そう言ってまた泣き始めたゆんゆんを抱きしめて、少し貰い泣きをしているヒナ。

 微笑ましい光景に、そっとしてやることにした。

 りんりんさんが片付け始めたのを見て、俺もそれを手伝うことにした。トリスターノも付いてくる。

 ダクネスとカズマもやり始めたので、お客さんだからしなくていいと言ったが、やらせてくれと言われてしまった。

 

 今日はきっと最高の思い出になっただろう。

 今日に負けない思い出をこれからもこいつらと作っていこう。

 





アンケートのご協力ありがとうございます。
ゆんゆんの圧倒的な勢いにびっくり。
あとは本編突入以外のキャラの選択肢が拮抗してる状態ですね。

時系列を確認すると、確かカズマ達が魔王を倒すのが、この紅魔の里編の約九か月後なんですよね。あと何話続くんだこれ。
頑張って最後まで書きたい。最後までやった上で番外編とかやってみたい。

次回紅魔の里編、最終話。
前半真面目、後半ギャグ。……予定。
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