このすば ハード?モード   作:ひなたさん

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61話です。さあ、いってみよう。



61話

「我が名はひろぽん!この里の長にして紅魔族を導く者……!!」

 

 族長のひろぽんさんはポーズを取り、雷と炎の魔法で自身の名乗りを演出する。

 見ている多くの紅魔族の人達が盛り上がる。

 俺にはそんな演出は出来ないが、名乗られたら、名乗り返さなければならない。

 

「お控えなすって」

 

 いつもの半身を引いた中腰姿勢の、右手のひらを見せて、名乗る。

 俺が名乗るのを察したのか、見ているみんなが黙り始める。

 

「手前、生国と発しまするは日本の生まれ。姓はシロガネ、名はヒカリ。人呼んでヒカルと発する冒険者でございます。

以後、面対お見知りおきの上、よろしくお願い申し上げます」

 

 ひろぽんさんが不敵に笑い、杖を構える。

 俺も木刀を構え、腰を落とす。

 

「「いざ、尋常に」」

 

 里中が静まり返る程、俺達二人の間には真剣な空気が流れていた。

 

 

「「勝負!!」」

 

 

 

 

 

 話は数日前まで遡る。

 それはゆんゆんの誕生日だといきなり告げられて、そのまま誕生日パーティーの会議を始めた時のこと。

 話し合いが終わり、あとは他の人も交えて後日にまた会議をしようということで、今回の話し合いは終了した。

 解散かと思った時、ひろぽんさんが今まで以上に真剣な顔で睨むように、話を切り出してくる。

 

「さて、もう一つ話がある」

 

「「?」」

 

 俺はどうしたのだろうか、なんて呑気に思っていたら、りんりんさんも首を傾げていた。

 

「君は言ったな?『娘を絶対に守ってみせる』と」

 

「はい。言いました」

 

 先日、ひろぽんさんに呼び出されて、二人で話し合いをしている時に、この人を落ち着ける為にも俺はそう言った。

 まあ、なんてりんりんさんが口に手を当てて、驚いている。

 

「『守る』と言うのであれば、その力を示してもらおう」

 

「お父さん、まさか…」

 

「君達が帰る日、ヒカル君。君には私と手合わせをしてもらおう」

 

 ひろぽんさんの目が紅く輝き始める。

 力を示せ、か。

 俺もただ口だけでそう言ったわけじゃない。

 俺はすぐに頷き、返事を出す。

 

「わかりました。よろしくお願いします」

 

「なっ、危険よ!二人とも、少し冷静に考えなおして!」

 

「なに、ただの手合わせだよ、お母さん。怪我はするかもしれないが、彼のパーティーにはアークプリーストの子がいる。死にはしないさ」

 

 そう言って、一層瞳の輝きが増す。

 

「ヒカル君が弱すぎなければ、な」

 

 ニヤリと笑い、俺を挑発してくる。

 挑発に乗るわけではないが、自分が言った言葉の責任は持つ。

 何より、この才能に溢れた種族の族長に、俺が今まで頑張ってきた努力がどこまで通用するか、試してみたい。

 

「はい。もちろん死ぬ気はありません」

 

「ヒカル君まで!…ああ、でもこのシチュエーション!すごく燃えてきたわ!」

 

 りんりんさんの目も紅く輝きだす。

 

「そうだろう、お母さん!ヒカル君、その日は良い手合わせになることを期待しているよ」

 

「これが、親の、母と父の宿命!!」

 

 二人の目がピカピカしていた。

 今更だが、本当に変な種族だなぁ。

 

 

 

 パーティーの翌朝。

 りんりんさんに今日の準備をしてきていいから、とパーティーの片付けを免除されて、今は一人で里の商業区に来ている。

 シルビアによって破壊された里だが、ほとんどが元通りに戻っていた。

 商業区はまるで何事も無かったかのように、商売を始めている。

 魔道具とかを買い足すから、とヒナに金を貰い、必要なものを買っていく。

 店を巡っていくと、どこもそこの人達から「今日は頑張れよ」とか応援の言葉を貰っているが、もしかして今日のことは里中に知れ渡っているのだろうか。

 

 鍛冶屋に着くと、俺が頼んだものが既に出来ていた。

 魔術師殺しと一体になったシルビアを防具として加工したもの。

 僅か数日しかなかったというのに、もう完成しているとは。

 

「どうだ?ぴったりのはずだが」

 

「マジでぴったりですよ。ありがとうございます」

 

「紅魔族随一の鍛冶屋だぞ?当然の仕事だ」

 

 左胸から左腕をすっぽりと覆うような鎧。

 メタリックで綺麗な銀色が輝いていた。

 これがシルビアから出来ていると思うと、なんとも言えない気分になってくるが、あまり防具に詳しくない俺でもこれは凄い防具だとわかる。

 

「こんなに早く仕上がるなんて、思ってませんでしたよ」

 

「今日は族長と里の英雄の大舞台だ。多少無理してでも完成させるのが、紅魔族随一の鍛冶屋だ」

 

 ニヤリと不敵に笑い、目を紅く輝かせる。

 

「ありがとうございます」

 

「ああ、勝てよ。若人」

 

「ええ、もちろんです」

 

 

 

 

 更に特別製の木刀を購入して、自身の部屋で準備をする。

 良い鎧だから全身分揃えたいが、揃えるには億単位の金が必要らしく、左腕分だけに妥協した。

 いくらなんでも俺が欲しいだけでそこまでの金は出せない。

 俺達が持っている金は、四人の共有しているものだしな。

 

 準備もほとんど終わり、もう少しで時間だ。

 約束の場所へ向かうことにした。

 

 

 この前シルビアの部下千人がゴミのように散らされた荒れ果てた里からそう遠くない場所。

 そこが今日の手合わせの場所だった。

 里から来る途中、誰にも会わないな、と思っていたが、多くの紅魔族の人集りが出来ていた。数は十を超えて百はいるだろう。

 今日の手合わせの話、どんだけ広まってんだよ。

 もうすでにひろぽんさんもここへ来ていたみたいだが、そのひろぽんさんの前にゆんゆんがいた。

 

「お父さん、一体これはどういうことよ!」

 

「彼と少し手合わせするだけだ。落ち着きなさい」

 

「落ち着けるわけないでしょ!?アークウィザードと狂戦士が戦うなんて相性が悪いし、そもそも上位職同士の人間が私闘をするなんて間違ってるわ!」

 

「本気で戦い合うわけじゃない。彼の実力を見せてもらうだけだ」

 

「シルビアとの戦いで見たでしょ!?ヒカルは私達のリーダーで実力も今は相当なものよ!少しでも手加減を間違えたら、お互いに大怪我するわよ!」

 

「ヒナギク君がいるじゃないか。それに、ほらヒカル君も木刀じゃないか」

 

 ひろぽんさんが俺を指差してくると、ゆんゆんは驚いた表情でこちらを振り向いたかと思えば、怒りの形相でズンズンとこちらへ向かってくる。

 ああ、やばい。今度は俺が怒られる。

 

「ヒカルもなにを考えてるのよ!少し実力が付いたからって調子に乗ってるんじゃないでしょうね!?」

 

 なかなか手厳しい意見だ。

 

「そうじゃない。ゆんゆんのリーダーとして俺の力を少し見てもらうだけだって。ひろぽんさんもゆんゆんのことが心配なんだよ。力の無い奴に娘を任せようなんて思わないだろ?」

 

「そ、それはそうかもしれないけど!」

 

「ゆんゆん。今まで一緒に頑張ってきた仲間として、信じてくれよ」

 

「……」

 

 迷った表情になるゆんゆん。

 りんりんさんが来て、ゆんゆんの手を引いて離れていく。

 それと入れ替わりで、ヒナとトリスターノが来た。

 

「あとでお説教だからね」

 

 そう言って俺に支援魔法をかけてくる。

 すでに族長夫妻から話を聞いていたのだろう。

 事前にルールとしてヒナからの支援魔法はありだと言われている。

 

「リーダー、私も少し思うところはありますが、応援しています」

 

「二人ともありがとよ」

 

 二人が人集りの方へ戻っていく。

 ゆんゆんが心配そうにこちらを見ていた。

 安心してくれ、という思いを込めて頷いてみたが、返ってきた反応は不機嫌な顔だった。

 

 正直言ってこの戦いは勝ち負けじゃない。

 俺の力を見てもらう面接みたいなものだ。

 

「事前に説明した通りだ。わかっているね?」

 

「はい。存じています」

 

 ルールとしては

 支援魔法、魔道具は有り。

 極力大怪我になる攻撃は避ける。

 相手を戦闘不能にさせるか、自ら敗北を認めたら、そこで戦闘は終了する。

 

 

 お互いに睨み合うような時間が数秒過ぎて、ひろぽんさんが高らかに名乗り始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

「「勝負!!」」

 

 地面を蹴るようにして踏み出す。

 支援魔法を貰った俺の脚力は、地面を少し砕いて、爆発的なスピードで飛ぶように真っ直ぐひろぽんさんへと向かっていく。

 余裕そうに構えているが、油断していないのは真剣な表情を見てわかる。

 そのスピードを殺しながら、左腕の魔法を弾く防具でガードしつつ、右手で地面へ木刀を突き立て、地面をガリガリと削りながらゴルフのスイングのようにして、砂埃と石をひろぽんさんへ飛ばす。

 

 砂埃でお互いが見えなくなり、すぐに姿勢を低くして、右へと回る。

 

「甘いぞ、ヒカル君。我に仇なす暗闇を晴らせ!『ブレード・オブ・ウインド』ッ!」

 

 一応、木刀でガードしていたが、その風の刃は頭上を通り過ぎた。

 余計な詠唱まで入れちゃって。

 そのおかげでひろぽんさんの位置が丸わかりだ。

 風の刃のせいで、砂埃が払われる前に姿勢が低い状態で、声が聞こえた方へと走る。

 もしもに備えて左腕で顔と上半身を守りながら、右腕の木刀で突きをすぐに出せる構えで、ひろぽんさんに近付く。

 ひろぽんさんに気付かれたが、もう遅い。

 俺の間合いだ。

 

「『ライト」

 

 俺の木刀の突きがひろぽんさんの右肩へ放たれる。

 

「ぐっ…!『ライトニング』ッ!」

 

 突かれた勢いを使いながら、俺から距離を取るように退がりながら、右手で持っている杖でそのまま魔法を撃ってきたが、狙いの定まってない魔法に当たることはなかった。

 突きを放ったところから、中段に構えた状態に戻り、相手の懐へ更に入るようにして、ひろぽんさんの杖目掛けて、振り上げる。

 俺の狙い通りに杖は弾かれるようにひろぽんさんの手から離れて上へと飛んでいく。

 

「やるじゃないか…っ!」

 

 痛みに顔を歪めながらも不敵に笑いながら、ひろぽんさんの右手が光っているのが見える。

 あれは、紅魔族の十八番。

 

「光の刃よ、紅の契約に従い現出せよ!『ライト・オブ・セイバー』ッッ!!」

 

「くっそ!」

 

 横に振り払うようにして放たれた光の刃をなんとか木刀と左腕でガードする。

 特別製の木刀で助かった。

 強度を極限に高めたこの木刀で無ければ、確実に斬られていた。

 ガードは出来たが、ひろぽんさんの一撃は凄まじく、思い切り吹き飛ばされる。

 受け身を取りながら、すぐにまた距離を詰める。

 光の刃が何度も振るわれながらも、避けて、避けて、捌いて、距離を詰める。

 ひろぽんさんも距離を取ろうとしていたが、俺が距離を詰める方が早い。とうとう俺の木刀と光の刃の鍔迫り合いになるまで追い込んだ。

 

「いいぞっ!やはりシルビアを相手に一人で前衛をしただけのことはある!」

 

「お褒めに預かり、光栄、ですっ!」

 

 更に木刀を押し込み、ひろぽんさんが下がる。

 ひろぽんさんが違う魔法を詠唱しようとしたその時、俺は木刀をぶん投げる。

 

「うおっ!?」

 

 予期せぬ攻撃に驚いたのか、咄嗟に詠唱をやめて、木刀を避ける。

 俺はその少しの時間で間合いへ入り込む。

 構えは誰かさんの得意なボクサースタイル。

 詠唱しながら下がるが、更にそれに追いつき、懐へ入る。

 勢いの乗った上に腰を使ったボディーブローがひろぽんさんへ突き刺さるようにして、打ち込まれる。

 

「っ!」

 

 ひろぽんさんの体がくの字に折れる。

 全力ではないが、それなりの一撃だったはずなのに、ひろぽんさんは詠唱を終わらせる。

 

「『ライト・オブ・セイバー』ッ!」

 

 ブンブンと次々に振るわれる光の刃を、体を振り、体を捌き、全て避けながら沈み込み、体のバネを活かしたアッパーを繰り出す。

 ひろぽんさんの顎へ直撃し、体が少し浮き上がる。

 もらった。

 そう思った時に見えたひろぽんさんの目はまだこちらを力強く睨んでいた。

 フラフラと下がりながら、手を高く掲げた右手と瞳はより一層輝きを増す。

 真っ直ぐに振り下ろす光の刃は先程までと比べ物にならない程の魔力が込められていて、地面が軽く割れていた。

 なんとか避けたが、あんなの直撃したら死ぬ。

 更に右手を左へ振りかぶり、俺が下へと避けるのを見越して、下段気味に右へと振り回す。

 それをひろぽんさんの方へ飛んで、避ける。

 

 そのままひろぽんさんの頭へ飛び付き、頭を両足で挟み込む。

 そのまま背中を地面に下ろすように股へと体を入れるようにして、旋回させた勢いと足の力を使い、半回転し、俺が上になりひろぽんさんの頭を地面へと叩きつけた。

 プロレス技の一種だが、頭のおかしい先輩達との遊びがこんなところで役に立つとは思わなかった。身体能力が上がったおかげでこんな技まで綺麗に繰り出せる様になった。

 動かなくなったひろぽんさんの上から退いて、確認すると気絶していた。

 

 立ち上がると大歓声が聞こえた。

 そういえばかなりの人数が見てたの忘れてた。

 ヒナが走って、ひろぽんさんへ回復魔法をかけてくれている。

 

「やったなゆんゆん!おめでとう!」

「これで里の英雄さんと堂々と付き合えるな!」

「これで親公認だ!」

 

 はい?

 

 ゆんゆんがそんな歓声を受けて、俺の方に来ようとしてた足が止まる。

 ゆんゆんの顔は赤くなっていて、今にも爆発しそうになっていた。

 

「え?え…?」

 

 そういえば、ゆんゆんの告白が里に広められてたな。

 そんな状態で俺と族長が手合わせするなんて言うもんだから、俺が認められるように戦いを挑んだみたいになってる…?

 戸惑ってる俺とゆんゆんを他所に、ゆんゆんコールが始まり、更に事態は収拾がつかなくなる。

 

「あ、あの!こ、ここここれはその!そういうのじゃなくて!そういう意味じゃ!」

 

 ゆんゆんが顔を真っ赤にして、盛り上がる人達に大声で言い訳してるが、聞こえるわけもなかった。

 りんりんさんが俺に近付いてきて、ニッコリと笑いかけてくる。

 

「娘をお願いしますね?彼氏さん」

 

 えっ。

 

 いつの間にか、親どころか里公認のカップルになっていた。

 

 俺達のことが影響したのか、しばらく男女の告白を公衆の面前でした上で、親との決闘をするというのが里で流行ることになった。

 

 

 

 ゆんゆんの大胆な紅魔族流の大告白。

 そして親に認められる為に戦った(と思われている)里の英雄。

 

 これは長い間、紅魔の里で語り継がれることになる。

 とある紅魔族随一の小説家が、これまでの流れにシルビア戦を交えて、それなりの脚色をして本にもなったこのお話は、数年後爆発的に売れて、広まることにもなった。

 ある意味伝説のような俺達のお話を

 

 

 『紅伝説』

 

 

 そう呼ばれることになる。

 それを俺達が知るのは、もう少し後のお話。

 




四章終了。
紅魔の里編は書きたいことばかりで、書き倒してたらドンドン楽しくなってしまいました。
紅魔の里編はどんどん書けてたので毎日投稿してましたが、これからはまた数日に一度の投稿に戻ります。ごめんなさい。

アンケートのご協力ありがとうございました。
ひとまず票が多い順からお話を作らせていただきます。
まずは五章一話はゆんゆんとのお話を書きます。
感想で割とツッコミをもらってますが、トリスターノもちゃんと活躍します。愛されてて嬉しい。
ちょっとだけネタバレですが、五章ラストはトリスターノが深く関わってくるでしょう。

最近真面目な話が多いですから、このすばらしい話を書いていきたいです。が、次はゆんゆんですから恋愛要素が強めかもしれません。
お楽しみに。

良ければ評価や感想よろしくお願いします。

あ。あと目次?のところにヒカル君のイメージ絵を置いてみました。
アナログで書いてから、デジタルで書き直して挫折しました。
中途半端な出来ですが、良ければ見ていってください。
絵の批判は受け付けておりませんので、あしからず。
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