62話です。さあ、いってみよう。
62話
ゆんゆんは告白したことが里中の噂になってることを知って、泣き叫びながら、トリスターノにテレポートをお願いして、挨拶もあまり出来ないまま、俺達はアクセルに戻ってきた。
すぐにそのまま閉じこもるゆんゆんを尻目に、俺は不機嫌なヒナに説教をこれでもかとされた後、トリスターノにニヤニヤされた。
説教された後、何故里の人達があんなに盛り上がってたのか、ゆんゆんが閉じこもってる理由とかを説明することになった。
ヒナはそれを聞くと、驚愕の表情に変わり
「ゆんゆん!大丈夫!?どこで頭ぶつけたの!?」
そう言って急いで部屋に入っていった。
なんだこの野郎。俺を好きになるとか正気じゃねえってかこら。あいつマジで失礼だぞ。
「で、どうされるんですか?」
トリスターノはニコニコしつつも、目は真剣だった。
「そのさ、変なこと言うけど、俺はゆんゆんのことが好きだけど、お前らも大事だ」
「そうでしょうね」
「お前らとの関係を壊すぐらいなら…」
「急いては事を仕損じる、と言いますから、まだ答えを出さなくてもいいんじゃないですか?」
トリスターノは優しく微笑みながら、そんなことを言ってくる。
「だけどよ。それは、なんというか不誠実っていうか」
「でも、それでゆんゆんさんが諦めるとは思えませんよ?里中に認められたんですから、今まで以上に堂々とリーダーにアタックしてくると思いますよ」
確かに告白が断られたからって、お互いの気持ちが綺麗に終わるわけじゃないから、それはそうなんだけど…。
俺が悩み始めたのを見てか、ニヤニヤし始める。
「お前、楽しんでるだろ」
「人の恋愛ほど面白いものはありませんからね。特に貴方のは」
「こんの…。てか何で俺限定なんだよ」
「そのわかってないところとか特に」
ああ、もう。話して少し楽になったけど、話すべきじゃなかったかもな。
これだからイケメンは。
それから数日後。
デモゴーゴンとシルビア討伐の事を聞いた王族から食事に誘われたが断ったり、教会や孤児院の手伝いをしたりと平和な日々が続いた。
「リーダー。また王族から手紙が来てますよ」
「はあ?断っただろ?」
「日程を調整して、どうにか参加出来ないか?と書かれてます」
「またダクネスに返事書いてもらうか」
「では、私はこのままダクネスさんのところへ行って、事情を説明してきます」
「ああ、頼んだ」
これからヒナは教会、俺は孤児院で子供達の指導、ゆんゆんは予定無し、とみんなバラバラの日だ。
「ゆんゆん、片付け頼んだ」
「うん。いってらっしゃい」
「行ってきます」
『ドS先生、ありがとうございましたー!』
「誰がドS先生だこの野郎。昼飯食ってこーい」
『はーい!』
ワラワラと孤児院の施設に向かう子供達を眺めてると、くいくいとズボンが引っ張られる。
「ドSせんせ、ドMせんせー来てるよ?」
物静かなタイプの女の子のシェリーが指を指す方にはゆんゆんが大きな弁当箱を抱えて立っていた。目が合うと嬉しそうに微笑み、手を振ってくる。
「シェリー、ありがとう。ちょっと行ってくるよ。お前もご飯食べてこい」
「うん…」
ゆんゆんの元へと向かうと、ご飯を一緒に食べようと誘われて快諾した。
春の日差しが少し暑く感じた俺達は、木陰でゆんゆんが作ってくれた弁当を食べていた。
「美味しい?」
「ああ。ゆんゆんが作った飯が不味かったことなんか無いしな」
「ふふ、嬉しい」
一度部屋に閉じこもっていたゆんゆんだったが、開き直ったのか、すぐに元のゆんゆんに戻った。
王都の時のような積極的なゆんゆんに。
「これ初めて作ったんだけど、どうかな」
「お、そうなのか」
「うん。はい、あーん」
わっつ?
フォークに刺して、手を添えて俺の口元まで持ってくる。
え、そ、そんな、まじ?
「あーん?」
ゆんゆんは不安そうな表情ではあるが、ゆんゆんの紅い瞳は俺をしっかりと見ていた。
口を開くと、ゆっくり俺の口に入れられる。
あじがわかりません。
「美味しい?」
「あ、ああ、うん」
それになんとか答えて、目を逸らした。
その先には興味津々に俺達を見てる子供達の姿があった。
「え、ちょ、お前ら…!?」
『お構いなく』
「構うわ!!見せ物じゃねえんだよ馬鹿野郎!ほら、あっち行け!しっしっ!」
「ドSせんせーが照れたー!」
「コンカツ成功だ、やったね、せんせー!」
「ドSのくせに攻められてるぜー!」
「デレ期到来ー!」
「ドMせんせーが大胆です。現場からは以上です」
「ドSが良いようにやられてていいのかよー!」
「アンナせんせー!ドSせんせーがあーんしてもらってましたー!」
「おいいいいいいいいい!!!お前ら、好き勝手言ってんじゃねえぞこらあああああ!!」
今日の子供達の指導が終わってもなお元気な子供達を施設へと引っ張って連れて行った後、孤児院の空き地スペースの隅からずっと見ていたゆんゆんに話しかける。
「ゆんゆん、今日ずっといたけど、退屈じゃなかったか?」
「うん。ヒカルが子供達に囲まれて楽しそうに笑ってるの好きだし」
別に楽しそうになんてしてねえよ。
あのヤンチャ共を相手にするのは大変なんだよ馬鹿野郎。
そんないつも出てくるはずの言葉が出て来なかった。
ゆんゆんがこんなに感情をぶつけてくるから。
今はちょうど誰もいない。良い機会だ。
ゆんゆんに返事を出すよりも、まずは俺のことを話すべきだ。
「ゆんゆん、話したいことが…あるんだ」
「…はい」
緊張した面持ちでゆんゆんは頷いてきた。
「ざっと、こんな感じだ」
「……その、ごめん。少し整理させて」
「ああ、いくらでもしてくれ」
ゆんゆんが俺に真っ直ぐに全力でぶつかって来た。
それなら俺もそれに応えなきゃいけない。
俺の全て、全てに近いことを話した。
違う世界から来たこととか。
もしゆんゆんと付き合うことになるとして、俺が何も話さないまま、ゆんゆんの気持ちを受け入れるのは、なんとなく違う気がした。
ゆんゆんを混乱させてしまっているが、それでも俺は知ってほしかった。
「…つまり、ヒカルは一回死んじゃって、こことは違う世界から来た?」
「そうだ。死んだら、神様がいた。色々あって詳細は省くけど、魔王軍が人をバンバン殺してて、それを救う為にその世界に行って欲しいって頼まれて、こっちの世界に来た」
こんなこと普通は信じてくれないだろう。
だけど、ゆんゆんは真剣に俺の話を聞いてくれていた。
「…だから、普通は知ってるようなことも知らなかった?」
「ああ、俺が元いた世界は魔法もモンスターもいなかったから」
「……なんで、そんな聞く限りは平和な世界で死んじゃったの?」
「事故だよ。トラック…って言ってもわからないよな。まあ、馬車ぐらいのサイズの岩が落ちて来て、俺が潰れて死んだとでも思ってくれ」
「…私が前にニホンに帰るのかって聞いた時に変な言い方してたのは、こういうことだったのね」
「そうだな。親が死んだんじゃなくて、俺が死んで、もうニホンに戻れないから、嘘つきながら答えた。悪かったよ」
「それは全然いいんだけど、何でもっと早くに言ってくれなかったの?私達のこと信じてなかったの?」
そんなことを言われるとは思わなかった。
まるで責めるように俺を軽く睨んでくる。
「それは、ほら、どう考えても変な話だろ?俺も上手く説明出来る自信がなかったし」
「それはそうかもしれないけど、私に言ってくれれば、ヒカルがこの世界のことについて知らないことをフォローとか出来たと思うし、何より信用されてないみたいで嫌」
拗ねた顔で俺を見てくる。
「わ、悪かったよ。もし信用されなかった時のこと考えると怖かったんだよ。許してくれ」
「…あと、それを何で私だけに言うの?みんなに言っても信じてくれると思うよ」
「ゆんゆんだけに言うのは、告白されたから隠し事はしたくなかったってのと、一番長い付き合いだからっていうのもある。あとは…」
「あとは?」
「ヒナにまだ、日本のことを伝えたくない」
「っ!そ、そっか、じゃあヒナちゃんはニホンには」
「どうやっても行けない。あいつの憧れを壊すのはしたくない。いつか伝えなきゃいけないんだけどな」
「…」
悲しげな表情になるゆんゆん。
ヒナの一番の女友達として複雑なのだろう。
まあ、もし日本に行けるとしても、あの変態女神が全力で阻止してくるだろうが。
「だいたいはわかってくれたか?俺のことは多分こんな感じだと思う」
「うん。少し違う世界のことについてとかまた聞きたい話はあるけど、だいたいわかったよ」
「あっさり信じてくれたな。いいのか?」
「好きな人が言ってることだもん。信じるわ。それにヒカルはこんな時に嘘付くような人じゃないし」
「そ、そうか。ありがとう」
「うん。ヒカルも私のこと信じて話してくれてありがとう」
ニッコリと笑うゆんゆん。
最近のゆんゆんは明るくなった。
それが俺にはまた魅力的な女性に見えて仕方がなかった。
だ、だめだ。そろそろ帰ろ
「じゃあ、告白の返事は?」
俺に近付いて、俺の目を近くで見つめてくる。
不意打ちで、その紅い瞳を近くで見てしまう。
今の俺はその紅い瞳がどうしても苦手だった。見ると、落ち着かなくなる。心臓の鼓動が早鐘を打って、考えがまとまらなくなる。
「っ、あ、その、さ。」
「うん」
そうだ。自分で言っただろう。
不誠実だ、と。
嫌われてでも言うしかない。
俺の思っていることを。
「ゆんゆんの気持ち、すごい嬉しい。俺はずっと情けないところ見せてたし、異性として好かれるなんて思ってなかったから」
「…」
「俺も、ゆんゆんのことが好きだ」
「!」
ゆんゆんの目が見開き、嬉しそうな表情に変わる。
「でも、それと同じくらいパーティーが、家族が大事だ」
ゆんゆんは真剣な表情へと変わり、さらに言葉を待つ。
「俺はあの三人がいないと、ダメだ。ゆんゆん達が生きがいなんだ。変なこと言ってるのはわかってる。それでも、俺はこの関係が崩れるなら、ゆんゆんとは付き合えない」
言っちまった。
俺が思ってること全て。
「…わかったわ」
固唾を飲んで、何を言われてもいいように覚悟した。
「四人の関係が壊れないように付き合えばいいのね?」
「えっ」
「言われなくても私だって同じ気持ちよ?ヒカルのこと大好きだけど、トリタンさんやヒナちゃんだって大事だもの」
「い、いや、でも、いいのか?」
「家族との時間は必要でしょ?私だってそれぐらいは我慢ぐらいできるわよ」
ふふん、と胸を張ってそう言ってくる。
俺が呆気に取られてると、ゆんゆんがまた距離を詰めてくる。
「…でも、たまにはちゃんと恋人らしいこともしたいから、その時は、その、お願いします」
「は、はい」
ゆんゆんは思った以上に力強くて、たくましかった。
その日の夜。
俺は夢を見た。
十年後に行った時のことをなぞる様な夢。
俺に現実を思い知らせる様な、そんな夢。
「ごめんで済むわけないでしょ!私、言ったじゃない!一人で行かないでって!どうして!どうして行っちゃったのよ!」
「ごめんじゃないわよ!ごめんで、ごめんなんかで済むわけ…」
「当たり前でしょ!一回死んで別の世界から来たとか言って無茶しすぎよ!なんでいつも私たちを心配させるのよ!」
「最初は少し信じられなかったけど、その、だ、大事な人が真剣に言った言葉だし、何より今までのヒカルが物を知らなすぎるもの。それで信じられたの」
「私のこと何だと思ってるのよ!子供扱いしないでよ!そ、そうだ!とにかくヒカルは街の外に出る時は一人で出て行っちゃダメ!これは絶対に守って!あと自分の身を大事にすること!それから!」
「わかってないから言ってるの!ヒカルのせいでみんな悲しんでるのよ!私だってもうどうしていいか分からなくて…」
「お願い、本当に無茶しないで。ヒカルには生きてて欲しいの」
成長したゆんゆんの必死な声。
悲痛な表情。泣いて潤んだ紅い瞳。
恋人が出来て舞い上がった俺を、叩き落とすように鮮明に思い出す。
俺の中でのゆんゆんへの意識が変わってしまった、あの感触すらも。
起きた時には、俺は泣いていた。
そうだった。俺は、
十年後には、あいつらと一緒にいられないんだ。
これ四章の延長戦じゃねえか。
さらっと王族のお食事会のお誘いを断りました。
さて、お次の話はアンケートの票の多さ順でヒナギクですね。
いろいろ書きたい話は浮かんでるのですが、まだ決まりきってません。