7話です。さあ、いってみよう。
前回のあらすじ
マッチングした。
「パーティー募集の張り紙を見て来ました。まだ募集はしてますか?」
こいつマジか?
あの募集で来るなんて絶対ロクでもない奴だぞ。
……いや、俺は受付のお姉さんからの紹介だから。
違うからね、マジで。
とりあえずゆんゆんの方を見て確認してみると、挙動不審モードに早変わりしていた。
昨日のゆんゆんだ、これは面倒だぞ。
ゆんゆんが答えない為、しょうがない。
「ああ、まだ募集しているよ」
俺が代わりに答えることにする。
いつまでも答えないゆんゆんのせいで待たされたイケメンは安堵したような表情を浮かべ
た時にいきなりゆんゆんが立ち上がる。
二人して驚いていると、スタスタと歩き出し、俺の隣へ着席した。
そして今まで座っていた俺の対面側の席へ手を向け
「ど、どうぞ」
と、イケメンに着席を促した。
ゆんゆんさん、お願いだからもう少し落ち着いて行動してくれ。挙動不審さがMAX状態なんだけど。イケメンさんも苦笑になり始めてるから。
「ありがとうございます」
席につこうとして背後が見え、腰に弓と矢筒を装備しているのが見えた。
「はじめまして、私トリスターノと申します」
え、と、トリス?
なかなか言いづらい名前だな、この世界では普通なのか? と思ったら、ゆんゆんも同じような表情をしていた。
まあ、ゆんゆんの名前もアレだけどな。口には絶対に出さないけど。
「ふふふ、私の名前言いづらいですよね。みんなに言われます」
俺たちの表情を知ってか知らずか、そう言い出すトリスターノ。
「なので私のことはトリタンと可愛く呼んでいただければと思います」
い、いや流石にそんな
「と、トリタンさん、よろしくお願いします!」
……呼ぶのか。
トリスターノも呼ばれるとは思ってなかったのか驚いている。そして次はあなたの番ですよと言わんばかりにこちらを見てくる。
「絶対に呼ばんぞ」
大袈裟に残念そうにするトリスターノ。
おい、イケメンだからって調子乗るんじゃないぞ。
え、呼ばないの!? みたいな表情をやめろ、ゆんゆん。
「俺はシロガネ ヒカル。職業は剣士。まだレベル1だ。よろしくな」
俺が自己紹介して、漸く自己紹介するタイミングだと気付いた彼女はまた
「私ゆんゆんと申します職業はアークウィザードですが魔法はまだ中級魔法しか使えませんごめんなさいでも大丈夫ですすぐに上級魔法だって覚えますから」
昨日と同じく捲し立てるようにして自己紹介をするゆんゆん。
それテンプレなの? 確実に変えた方がいいよ。
「はい、よろしくお願いします」
表情を崩さず、礼をするトリスターノ。
あの自己紹介を聞いてノーリアクションとは……こいつ、やるな。
「職業は冒険者です。元はアーチャーだったんですけど、色々なスキルを覚えてみたくて冒険者に変えました」
???
意味がわからん。ランクダウンしてないか?
「冒険者の職業の人はすべてのスキルを覚える事が出来るんです。覚える為には教えてもらったりしなきゃいけないんですけど」
ゆんゆんが俺の表情を見てたのか、説明をしてくれる。
え、すごいじゃん冒険者。冒険者にすればよかった。
「まあ専門職に比べてスキルポイント高く払わなきゃいけなかったりするので、メリットだけではないですけどね」
トリスターノが補足してくれる。
この世界はどこまでも不親切を貫き通したいらしい。
「私の紹介は以上ですね。すみません、あまり特技とか無くて。冗談とか人を笑わせる才に長けていればよかったのですが、故郷の友人に冗談のセンスが無いと言われてから言わないようにしているんです」
「わ、わかります。私もあまり冗談とかは得意じゃなくて……」
ええっ!? ゆんゆんに冗談を言う相手いたの!?
……頑張って言うのを堪えた。
というか流れに流されて来たけど、俺はパーティーを抜けようとしてたんだけど……。
どうしよう、言うタイミングがなくなっちまった。
流石にトリスターノに任せて、はいさようならが出来るほど恩知らずじゃない。
トリスターノは悪いところが見つからないぐらいのイケメンだが、あの怪文書でパーティーに入りたいなんて流石にいくら何でも怪しすぎる。
どうしたものか……などと考え込んでいたら二人が俺のことを見つめていた。
え? なんだ?
「私はパーティーに入ってもいいですか?」
え? 何故俺に聞く?
ゆんゆんの方に向くと首を傾げてくる。
「ゆんゆんさん?」
「え、はい?」
「彼はどうなんだい?」
「え、はい。問題無いと思います!」
何故俺を通して言うんだ。
「あー……これからよろしくな。トリスターノ」
パーティーメンバーが増えた。
結局俺はパーティーを抜けることもなく、トリスターノの前ということもあり報酬の半分も貰ってしまった。
トリスターノが信用出来る奴と判断出来た時に多分俺はパーティーを抜けるだろうし、そのタイミングにでも返そう。
トリスターノは今日はやる事があるとかでまた明日の朝会うことになった。
もう一つクエストを受けたいところだったが、俺はまた宿の問題がある。
格安の宿か馬小屋のスペースを借りられるところを探さなくては……。ということで今日は解散しようと話をしたのだが……。
「え……ち、違う宿に行っちゃうんですか……?」
少し後ろ髪を引かれる思いだが、情けない話経済的にしんどい。申し訳ないけど、今日からは……
「お金を出すのでまた同じ場所に泊まりませんか!? 今日だけでいいですから!」
なんなら毎日でも! とか抜かしてるけど、それは流石に無い。
というか誘い方が最悪すぎる。お金出すからお願いします、だなんて仲間や友達なら余計に動いてくれないぞ。
まだやりたい事リストが……。とか言ってるけど、あれか。手帳になんか書いてたやつか。
ゆんゆんには世話になっちゃってるからな。今日だけならまだなんとかなるかな……。
じゃあ今日だけな。あとお金もいらないから、と言うと不安そうだが嬉しそうな顔をするゆんゆんだった。
なんでこんな育ち方しちゃったんかね、この娘は……。
昼飯を食べ終わり、宿のことも解決してしまったので、どうしようかと二人で話していたら何故だかギルド内が騒がしかった。
エリス教のアークプリーストがどうとか聞こえるが、なんだ?
騒ぎの中心にいるのはどこからどう見ても子供。
話を聞いてると中学生ぐらいに見えるあの子はアークプリーストらしく、ギルド内にいた冒険者達がパーティーの勧誘に必死になってるせいで揉みくちゃにされてるみたいだ。
「すごいですね。アークプリーストなんて希少なのに、あんな小さな子がアークプリーストなんて」
ゆんゆんが驚いているが、そうなのか?
そういえば昨日の募集の張り紙のほとんどにプリーストの募集が書いてあったな。
更に上位職となると皆喉から手が出るくらい欲しいのだろう。
そんな存在ならウチのパーティーにも是非入ってもらいたいが、アークウィザードのゆんゆんならともかく、レベル1剣士の俺に元アーチャーで怪しさ満載の冒険者トリスターノじゃ望み薄だろう。
まあパーティー勧誘は無理でも仲良くなっておくぐらいはした方がいいかもな、アークプリーストさんならなんかあった時に助けてくれるかもしれない。
「え、仲良くなるなんて、そんな難しいことどうやって……?」
…………アークプリーストさま、どうかこの娘を導いてあげてください。