確認はしてますが、誤字があったらすみません。
67話です。さあ、いってみよう。
クリスの自棄酒に付き合った数日後の夜。
みんなと就寝の挨拶をして部屋に戻ると、まるで当然のように俺の部屋の椅子に座るエリス様がいた。
俺が来るのを待っていて暇だったのか、本を開いた状態で持っている。
「あ、お邪魔してます」
「邪魔しないでください」
今日はトリスターノと二人でクエストに行った帰りに、デッドボールとかいう人を余裕で超える巨大ダンゴムシの大群に襲われて酷い目にあったのだ。
俺の刀もトリスターノの弓矢も効かない相手になす術無く、トリスターノの『テレポート』が無ければ、もう少しでゴロゴロ転がってくるダンゴムシに轢かれているところだった。
そんなこんなで俺は大変疲れているから、この神様の相手はしたくない。
しかもヒナと会えなくて面倒さが増していることだろうから余計にだ。
そんな俺の表情と言葉で気分を悪くしたのか、ムッとした表情になるエリス様。
「……上司である私にそんな態度を取っていいんですか?天界に来た時に大変な目に合いますよ」
「誰が上司ですか。まだ俺は普通の人間ですよ」
「どうでしょうね。もしかしたら早めに天界でお仕事する事になるかもしれませんよ?具体的には」
「今日は何ですか?今日は真面目に疲れてるんですよ。ヒナなら最近機嫌良いし、そろそろ会ってみたらどうです?」
「本当ですか!?なら、明後日にここに来ますので……って、違いますよ!そんな話ではありません!」
「はあ…ヒナの話じゃないとしたらなんですか?エリス様ってヒナ以外のこと話せるんですか?」
「そろそろ天罰を落としますよ?地味〜に嫌なやつを。トイレに駆け込んだら、いつも誰かが入ってたり、入れても紙が無かったり」
本当に地味だ。でもそれは嫌だな。
「はいはい、すみませんでした。早速お話しを聞きますよ」
「素直にそう言えばいいのです。私の部下として自覚を持ってくださいね」
「それは違う」
未来はそうなのかもしれないが、今は絶対に違う。このままだとマジで部下にされそうだ。抗い続けなければ。
この前メリッサが言っていた『王都のとんでもない効果を持ったお宝』の話だ。
そのお宝は、ある言葉に反応して発動する魔道具…ではなく神器。効果は相手と自分の体を入れ替えるというもの。
その入れ替わりは短時間しか効果は無いが、体を入れ替えている最中に片方が死ぬと、元に戻らなくなるらしい。
使い方によっては、何度も体を入れ替えることによって永遠の命が得られる。
そんな神器を誰かがこの国の王族へと贈り、そして今その贈られた神器を持っているのが第一王女だという。
誰が贈りつけたかはわからないが、この国の最高責任者の体を狙っていることだけはわかる。もしこの神器を使用された場合、この国の一大事になる可能性がある。
更にここにメリッサが加わってくる。
メリッサにこの神器を奪うように依頼した人物がいるらしい。
依頼をするぐらいだから、きっとその神器の使い方を知っているはずだ。
使い方を知っていて、欲しがるということはロクな使い方はしないだろう。
そんな人間に渡すわけにいかない。
王族の元に置いておくわけにも、誰かの手に渡すわけにもいかない最悪の神器。
それを奪う。
「それを貴方にも協力していただきたいのです」
「……」
大それた話が俺に回ってきたもんだ。
にしても、ファンタジーって本当に何でもありなんだな。
俺がそんなことを考えて黙っていると、何か勘違いしたのか説得するように話しを続けるエリス様。
「このことは貴方も無関係というわけにもいかないでしょう。もしこの国が崩壊すれば」
「協力ならしてもいいんですけど」
「貴方もただでは……え?協力してくれるんですか?そんなあっさり?」
「そんな緊急事態なら出来るだけ協力したいんですけど、俺の職業ご存知ですよね?王都に忍び込んで宝物を取るなんて出来ないと思うんですけど」
「…そ、そうですよね。普通これを聞いたら手伝ってくれますよね…。こほん、職業については問題ありません。どちらかというと狂戦士としての能力を必要としています」
「え、ただの物理アタッカーですよ?」
「はい。貴方のその腕っぷしが必要です。対人戦に慣れていて、身体能力に優れた貴方の力を貸してください」
そんな褒められるとは思わなかった。
なんだか照れるな。
「ま、まあお役に立てるなら、お手伝いしますよ」
「ありがとうございます。ついに私の部下としての自覚が」
「それはありません」
「何でですかっ!?」
いつもの覗き…じゃなくて神の力で、メリッサの動向を観察した結果、明日の夜に王城へ潜入するらしい。
クリスの体で今もう一人の協力者を説得しているらしく、それ以外にも多くの準備がいる為、俺達もメリッサとほぼ同時刻に王城へ潜入することになった。
今日はこのまま休んで、俺も明日王都へ来るように言ってエリス様は天界に戻って行った。
明日の昼に王都へ移動し、エリス様が用意した宿の一室で待機と最後の準備を行い、夜にクリスともう一人の協力者と合流し、王城へ潜入し、例の神器を奪う。
俺は警備の人間を無力化したり、もしもの為の戦力や陽動で城の警備を撹乱するのが役割だ。
今回はエリス様からの依頼ということで、今回の作戦中は支援魔法を貰い、『ムードメーカー』のデメリットも消してくれるらしい。これで戦力として役に立てるだろう。
見つかることが無ければ、俺はただ同行するだけになるが。
翌日、ヒマしてたうちのパーティーメンバーから色々と誘われたが、今日は予定があると適当に話して王都へと向かった。
昼間王都に着いた俺はそのままエリス様が用意した宿に向かうことにした。
向かう途中にトリスターノと出会った時は肝を冷やした。
にこやかに挨拶してきやがって、まさかついてきたのかと思えば、今日は王都で新調した弓を受け取りに来たらしい。
俺もゆんゆんへのプレゼントがあると言って誤魔化してその場を離れた。
…後で買わなきゃだな。
今回は身元が特定されるとまずいので、俺が普段使っている装備は使えない。
エリス様が用意した全身黒づくめの忍者みたいな服で口元を隠せば、とりあえずは身元がすぐバレるようなことはないだろう。
今回の装備はこの前紅魔の里で購入した木刀のみだ。
人殺しが目的ではないので、もしもの為に非殺傷の武器を持っていく。この強度を高めた木刀なら万が一戦闘になってもなんとかなる。
まさかこの木刀をこんな早く使う時が来るとは思わなかった。というかもう出番など無いと思っていた。
そして夜、王都のとある路地裏で俺達は闇に紛れて合流していた。
「よーし、三人で力を合わせていこう!」
「協力者ってカズマか。まあ俺よりは適任…かな」
エリス様が言っていたもう一人の協力者はカズマだった。
カズマが覚えているスキルは盗賊系のものが多いから、俺よりこの作戦に向いているだろう。というか俺のことカズマには言ってなかったのか。
「カズマ君ってば全然話を聞いてくれないからさ。さっき説得に成功したんだ」
確かに厄介事を嫌がるカズマだと説得に時間がかかりそうだ。
「あんなヤバイ神器なんて聞いてなかったからな。それとアイリスの為だ」
「なるほどな」
「ヒカルこそ何でいるんだよ?この神器に全く関係ないだろ?それともクリスに弱みでも握られてるのか?」
「ちょっとカズマ君!それだとまるであたしが悪人みたいじゃん!ヒカルはね」
「よくわかったな、カズマ。正解だ」
「ええっ!?ちょっと!?」
説得に時間がかかった話や先程までのやりとりを見た感じ、カズマはクリスの正体を知らない気がする。今からその話をするのも面倒だし、知られるのも良くないと判断して、話を合わせたのだが、お気に召さなかったのかクリスは頬を膨らませている。
クリスに耳打ちしてそのことを知らせても、他にも言い方はあったでしょ、なんて言われるが考えるのも面倒だし、カズマもそこまで詮索しないだろうから、そのまま行くことにした。
今の俺達は誰かに見られれば確実に通報されるだろうというほど怪しい格好をしている。
真っ黒な忍者のような動きやすい服装に、正体を隠す為カズマはバニルさんの仮面なんか付けてる。
今回の俺達の目的は、城に潜入して王女様の神器を奪うこと。
俺の役割は用心棒、盗る役では無いのでそこまで詳しく聞いていないが、例の神器はネックレスの形をしているらしい。
クリスとカズマがどっちが盗賊として上か、みたいな話をし始めて、潜入する以上、普通の名前を呼ぶわけにもいかず、お互いの呼び方で揉め始めたのを聞き流していた。
数分後ようやく呼び方が決まったと思ったら、今度は俺の呼び方をどうするか、という話になった。
好きにしてくれ、と答えたら
「よし、助手君、後輩君。準備はいいかな?」
「俺は大丈夫だ。ドSはどうだ?」
「おいこら、なんだその呼び方は?」
聞き捨てならない呼ばれ方したぞ。
「え?好きにしろって言っただろ?じゃあ、サディストか?」
「どっちも同じじゃねえか!しかもどう考えても悪意があるだろうが!お前もし敵に囲まれた時にその呼び方するつもりか!?」
「ヒカルの印象って言ったらドSだろ。あの酔っ払って絡んで来た奴の両肩の関節外したりした時のこととか今でも語り草になってるぞ」
「あれはあいつが悪いんだろうが。普段は優しいだろ?」
「え、あーうん」
「なんだこの野郎。文句あるなら聞くぞ」
「逆になんて呼んで欲しいんだよ。特に無いならこれでいいんじゃないか?」
「あたしもそれでいいと思うよ。あたしは後輩君って呼ぶから、ヒカルはあたしのこと先輩って呼ぶんだよ?わかった?」
「クリスの方もなんか嫌なんだけど…」
「というか何で先輩後輩なんだ?お前ら二人の関係が謎なんだよな。この際だから教えてくれよ」
「さあ、なんだろうね」
「なんだろうな、俺が知りたい」
「お前らなんなんだよ…」
命を狙われたと思ったら、数日後に自棄酒に付き合わされて、今となっては面倒事に巻き込まれている…本当にこの関係はなんなんだろうな…。
今日の俺はエリス様に支援を貰い、能力のデメリットも無くなったせいで、今まで荷物をもっていたのを下ろしたような開放感があり、体が羽のように軽い。
もし陽動の為に好き勝手暴れろ、と言われたら確実にやり遂げられる気がするぐらい力に溢れている。
少しだけ暴れるのを期待してしまっている自分がいる。最近平和な日々で少し退屈していたのかもしれない。
あと不謹慎かもしれないが、この状況を少し楽しんでしまっている。
自分から暴れるつもりもないし、きっと潜入は得意だ。俺メタ◯ギア大好きだし。
それに幸運の女神が付いてるんだ。
まさか見つかって王城大パニックとかにはならんだろ。
「向こうだ!!侵入者は向こうに逃げたぞ!」
「侵入者は三人だ!これ以上先に行かせるな!」
「HQ!HQ!こちらパトロール、敵襲だ!」
「了解!増援を送る、敵を殲滅せよ!」
兵士達の罵声が飛び交う中、俺達三人は必死になって城内を走り回っていた。
「おいいいいいいいい!!!仮面くんお前何してくれてんだああああああ!!」
「いや、ちょ、ちょっと待て!仮面くんって俺か!?」
「お前以外に誰がいんだ!?いらねえトラップに引っかかりやがって!」
「いやいやいやいや!あれは強力なトラップだったぞ!この俺がこうも簡単に…!」
「助手君!キミには色々と話があるからね!何でこんなフリーダムなのさ!!」
「お頭!ドS!ここは喧嘩してる場合じゃありません!まずはここを切り抜けないと!」
「お前が言うなああああ!!」
「キミが言うなああああ!!」
城への潜入は驚くほどスムーズだった。
流石幸運の女神がついてると違うな、と心の底から思ったものだ。
カズマはしばらく王城に滞在していたらしく、城の造りを把握している彼の先導で王城への潜入が始まった。
暗視もできるカズマに解錠ができるクリス。潜入の流れは完璧で、今日は俺の出番は無いだろうと感じていた。
暗視で先導するカズマは安全に潜入を進めてくれるのはいいが、何度かクリスにセクハラを働いたりするせいで、警備兵に怪しまれることもあったが、『潜伏』スキルのおかげで見つかることはなかった。
神様に何てことを、と聖職者でもない俺ですら思ってしまったが、カズマはクリスの正体を知らない。クリスの前だし、一応カズマを止めはしたが、その程度で止まるわけもなかった。
王城の最上階にある王女様の部屋に向かおうとした時、クリスがこの城の宝物庫も確認したいと言い出した。
実は王都には神器がもう一つあるらしく、それがあるかの確認で、大して時間もかからないということで宝物庫へと向かった。
カズマ曰く、見張りはいないが、その分その宝物庫には強力な結界がかけられていて、罠も多く存在しているとか。
クリスは『結界殺し』というものを取り出して、結界を無効化し、二人は『罠感知』を発動しつつ中を探索し始めた。
俺は盗賊ではないので、特に役に立てるわけでもないので、外で待機することにした。
待機し始めて数分後、驚き飛び上がるほどの警報が城内に鳴り響いた。
二人が慌てて出て来て、事情を聞くとカズマがとある宝物に目が眩み、思わず手に取ったらしい。
「『クリエイト・ウォーター』!『フリーズ』!」
カズマのいつもの狡いコンボで後ろの廊下を凍らせていく。
「助手君って便利だね」
「お頭達も手伝ってくれよ!」
クリスが何か見直した、みたいな顔してるけど、この事態を招いたのはこいつだぞ。
前方に盾持ちの兵士が三人構えているのが見える。
この道はちょうど一本道で、後ろはカズマが先程退路を無くしたばかりだ。
「おい、後ろ凍らせちまったぞ!どうすんだ!」
「押し通る!」
「はあ!?何言ってんの!?」
クリス達の制止の声を振り切り、そのまま駆ける。
前で待ち受ける盾持ちの兵士三人の正面から木刀で突くように押していく。
今の俺は正真正銘の狂戦士。
エリス様からの支援を得て、いつも以上の力を出せる。
三人が盾で踏ん張ってくるが、難なく三人をそのまま木刀で押していき、壁へと叩きつけた。
「ええええええっ!?ヒカ、ドS!お前そんな強かったのか!?」
カズマから驚きの声が上がる。
「今日は絶好調なんだよ」
「そういう問題なのか!?」
それよりもこの状況はまずい。
「なあ、このあとどうすんだ?城の中がめちゃくちゃ明るくなってるし、どう考えても盗みに入れる状況じゃないぞ?」
「…そうだね。今回は諦めるしかないかな」
俺もクリスの意見に賛成だったから、頷いて賛成の意を伝えると
「ま、待ってくれ!出来れば今日中になんとかしたい!明日には王都から追い出されるんだよ!」
カズマは焦った調子で続行を提案してきた。
カズマならこの状況なら真っ先に逃げたがる筈だが…。
「お前この状況でどうするんだよ。俺があいつら相手に時間稼ぎしても、せいぜい逃げる時間ぐらいしか稼げないぞ」
「そうだよ。ヒカルがいても真正面からじゃすぐ捕まっちゃうよ。それになんかカズマ君らしくないよ」
カズマがそれを聞いて、押し黙る。
目をつぶって、拳を握り、何も出来なかったという無力感のせいか辛そうな表情だ。
本当にカズマらしくない。
普通ならこんな事に自分から首を突っ込むような奴じゃない。
それがどうしたのだろう。
そんなことを考えていると、人が集まってくる音がそこかしこで聞こえ始める。
もう少しで囲まれてしまう。
「二人とも、ここは引き揚げよう!時間はかかるかもしれないけど、必ずあたしがなんとかするから!」
「二人とも…俺さ……」
クリスの撤退の声を受けて、カズマは目を見開く。
彼の表情は覚悟を決めた男の顔をしていた。
「俺、たった今から本気出すわ」
「退けこの野郎おおおおおおおおお!!!」
木刀で邪魔する兵士達をなぎ倒す。
「オラオラァ!銀髪盗賊団のお通りだ!痛い目にあいたくなかったら退くんだよこらあああああああ!!」
「助手君!?いつの間に名前が決まったの!?大事になってきたし、大声でその団名みたいなの呼ばないでよ!」
本気を出すと宣言したカズマは、その宣言に恥じない活躍ぶりを見せた。
何時ぞやにウィズさんから教えてもらった『ドレインタッチ』で兵士達の体力と魔力を奪い取り、『バインド』で拘束して無力化していく。拘束した相手や俺が倒した兵士からまた魔力を奪い、また他の兵士を拘束していく。半永久的に繰り返すことが出来る戦い方。恐ろしいことする奴だ。
俺はカズマが相手に出来なそうな重装備の奴を倒し、クリスは『ワイヤートラップ』で追手が来れないように道を塞いだ。
「お頭!ドS!最上階への階段は、そこを右だぜい!」
「え、うん、わかった!ていうか雰囲気!口調とかも全然違うよ!?どうしちゃったの!?」
「仮面くんの邪魔してやるな!きっと今の状態の方が仮面くんは強いぞ」
「その通り!ドS、わかってるじゃねえか!」
不敵に笑い、並走するカズマに困惑気味のクリス。
この状態のカズマなら多分なんとかやれそうな気がする。
「凄腕の賊だ!冒険者共を呼んでこい!!」
「単独で向かうな!相手は恐ろしく凄腕だ!殺しに来る気は無いみたいだが、決して油断するなよ!」
「『クリエイト・アース』からの『ウインド・ブレス』!」
「ぐあああああああっ!?小賢しい真似をっ!」
俺が木刀で手をぶっ叩き、武器を落としてやると、そのままカズマは『ドレインタッチ』で無力化と魔力の補充をする。
「ねえ!?やっぱり銀髪盗賊団はやめよう!あたしが主犯格みたいだよ!仮面盗賊団にしようよ!」
「俺だって主犯格は嫌ですよ。これからも頑張ってくださいよ。お、か、し、ら」
「こんな大騒ぎになるはずじゃなかったのに、今後は銀髪ってだけで疑われちゃうじゃんか!っていうかさっきから助手君が使ってるスキルは何!?」
「おい、魔法使い職が来たぞ!クリス、頼んだ!」
新しく立ち塞がる兵士達の中にローブ姿に杖を持っているのが一人いたのを確認し、すぐにクリスに報告する。
「あーもう!任されたよ!『スキル・バインド』!」
ローブ姿の兵士が魔法を発動させようとしても不発し戸惑う兵士をカズマ達に任せて、俺は他の兵士に木刀を振るい、無力化していく。
「またやられた!あいつは一体なんなんだ!」
「冒険者はまだ来ないのか!?」
「それが…先程出された高い酒をここぞとばかりに飲みまくり、ほとんどが酔い潰れてまして…」
「冒険者はこれだから!」
「あの木刀の男を止めろぉ!まずはあいつを潰せ!止まらなくなるぞ!」
そこら中で怒声や悲鳴が聞こえる中、俺達は止まることなく走り抜ける。
「本来なら消費魔力の大きいバインドは連発出来ないはずなのに、何故っ!?」
「マナタイトを取り出す様子もないぞ!どうなってるんだ!」
「紅魔族か、それに匹敵するほどの魔力を持っているのでは!?」
カズマの『ドレインタッチ』で兵士達は大混乱していた。
触れるだけで相手を無力化していき、『バインド』で相手を拘束していく。
それが余程恐ろしい相手に見えるのだろう。
「あの木刀の男はなんだ!?凄まじい馬鹿力だぞ!?」
「騎士団の中で一番の筋力ステータスを持つ奴が一瞬で盾ごと吹き飛ばされたぞ!」
「木刀で盾を叩き壊したぞ!あれは本当に人間か!?」
木刀で暴れる俺もどうやら恐怖の対象らしい。悪いが絶好調すぎて加減が難しい。何人か腕やら足の骨を折ってしまっているが、後でプリーストとかに回復してもらってくれ。どうせ魔法ですぐ治るんだろ。
そして、やっと俺達は
「まずいぞ!最上階にはアイリス様がっ……!?」
最上階へ到達した。
「『ワイヤートラップ』!『ワイヤートラップ』!『ワイヤートラップ』!」
クリスが階段の入り口に、ワイヤーを張りまくった。これでしばらくは追手は来ないだろう。
「ふぅ…これでしばらくは誰も来れないね!さあ、あとは」
「あとは君達を捕らえて、ゆっくりと侵入した目的を聞き出すだけだね。噂の義賊なのかな?」
声が聞こえた方向に振り向くと、完全武装の冒険者。
俺の恩人であるミツルギが立っていた。
「自分達で退路を断つとはな。侵入者共め、逃げられんぞ」
険しい表情をした、白を基調としたスーツのようなデザインの騎士然とした女性と魔法使いのような出で立ちの女性。
更に何故かこの状況にそぐわない遠巻きにこちらを見守る貴族。
そして多くの騎士がそこにいた。
マジか。そこら辺の奴等を相手にするのはいいが、ミツルギは相手にしたくない。
最近は会うことも出来なかったから恩返しも出来てないってのに、まさかこんなところで出会うとは。
「ど、どうしよう…。流石にこの数を相手にするのは無理があるよ!」
上擦った声で、俺達だけに聞こえるように囁く。
見回した感じ、一人ぐらいしか魔法使い職はいないみたいだ。
俺が全力で暴れる時間が来たかもしれない。
ミツルギだけが気がかりだが…。
ミツルギを先頭に騎士の集団がこちらへとゆっくり距離を詰めてくる。
もう決着が付いた気でいるのか、貴族達も面白がって、さも楽しそうにこちらを眺めている。
「クレアさん。あの仮面の男と木刀の男はかなりの強敵だと聞きました。あいつらは僕が取り押さえますので、騎士団の方々はあの銀髪の少年をお願いします」
「ねえ、二人とも。今男呼ばわりされてるんだけど、あたしってそんなに男の子っぽい?」
「原因はお頭のスレンダーボディのせいでしょうね。…お頭、いじけてないでしっかりしてください」
「はっきり言ってやるなよこの野郎。もうちょっとこう、ぼかしてやれよ。先輩も正体がバレにくいと思えば気が楽になるだろ。傷付いてないで構えろ」
「…う、うん。そうだね…」
明らかに落ち込んだクリスを横目に木刀を構える。
それを見たミツルギも魔剣を構える。
俺がミツルギを足止めしてる内に、二人が
「二人とも、こういう時は一番強い奴を倒してビビらせるんです。絶好調のこの俺が、あのスカしたイケメンを瞬殺して、そのまま三人で突っ切りましょう」
カズマが声量を落とさず、そのまま作戦を喋った。
それを聞いたミツルギも流石に呆れてるというか顔が引きつっている。
「き、聞こえてるよ君。スカしたイケメンって僕のことかな?っていうか瞬殺、ね。随分と舐められたものだね。いいだろう、僕も本気を…」
ミツルギが言い終わる前にカズマが手をミツルギへと向ける。
それを見たミツルギはどっしりと腰を落として柄に手を添えて、居合い抜きのような構えになる。
魔剣を『スティール』で奪えれば、俺がミツルギを無力化できる。
それなら確かに瞬殺出来るが
「その仕草は『スティール』かな?僕はある男に負けてからスティール対策は万全だよ。大人しく」
「『フリーズ』」
カズマが使ったのは凍結魔法。しかもいつもの初級魔法だ。
ミツルギは何かの牽制かと考えたのか、構えを変えずにそのまま動かず、警戒したままだ。
その後なんの構えもせずにゆっくりとカズマはミツルギへと近付いていく。
止める間もなく、剣が振られるかと思えば、ツバと鞘の部分が凍りつき、魔剣が抜けなくなっていた。
驚愕の表情を浮かべたミツルギの顔の鼻と口部分を鷲掴みにしたカズマは
「『クリエイト・ウォーター』」
「がぼっ!?」
「『フリーズ』」
鼻と口を凍結されてビクンと震えたミツルギは、喉を押さえて膝をつく。
周りが悲鳴を上げる中、カズマが高らかに勝利宣告をするように話し始める。
「今すぐ解凍すれば窒息することは無いだろう!この男より強いやつがいるならかかってこい!……二人とも、今だ、行くぞ!」
「この先がアイリスの部屋だ。お頭、ここに」
王女様の部屋まであともう少しだが、最悪の行為をしたカズマに口を出さずにはいられなかった。
「おい、仮面くん。あれはシャレになってねえんじゃねえのか?」
「ワイヤートラップを…って、しょうがねえだろ。今は一大事なんだか」
「そういう問題じゃねえんだよこの野郎」
思わず胸倉を掴み、壁へと押し込んだ。
恩人に酷いことをされた怒りもあるが、命を軽く見るカズマに腹が立って仕方がなかった。
「ちょ、ちょっと!後輩君、気持ちはわかるけど、後にしようよ!?」
「黙ってろ」
止めるクリスを黙らせる。
今はこれが優先だ。
「……えっと、あのー、マジで怒ってる?」
なるべく冷静に話しかけてはいるが、俺が本気で怒っているのを感じたのか、カズマが少し顔色を悪くして、恐る恐る聞いてくる。
「てめえ、殺しちまったらどうすんだ?確かに今は一大事だが、それにしたって限度があるだろうが。それにまだ他にも手はあったんじゃねえのか?」
「…そ、れは、その、ごめん。ちょっと俺」
「何者だ!!貴様、どこから入ってきた!!」
カズマが謝りきる前に力強い声が響き渡る。
その声が聞こえてきたのは、今から入ろうとしていた王女様の部屋だった。
俺達は顔を見合わせ、すぐに部屋に入る。
部屋の中央付近には金髪碧眼の少女とその少女を守るように立つダクネスとめぐみんが驚きの表情でこちらを見ていて、その三人へ迫ろうとしているのは、黒づくめの服に顔を隠した女性の姿が。
「あら、意外と早いわね。城中で大騒ぎしてるおかげで入りやすかったわ。銀髪盗賊団の方達」
メリッサだ。
声やスタイルでわかる。
先に入られたみたいだが、まだ盗られてな
パタン。
後ろで扉が閉まった音がして、見回すとクリスとカズマが部屋の中にいなかった。
「おいいいいいい!!お前ら何やってんだ!!遊んでる場合じゃねえだろうが!」
「ち、ちがっ…!?だ、だだだだただってさ!」
「お、おおおおお頭!一度二人で冷静になりましょう!」
「そ、そうだね、助手君!それがいい!そうしよう!」
俺が急いで扉を開けて、隠れた二人にツッコミを入れると、二人は動揺していて、話にならない。
先程まで真剣な雰囲気だったというのに、どうしたんだ。俺だけでもメリッサに対抗しようと思い、振り返るとダクネスの顔が思い切り引き攣っていた。
「お、おい…!お、おおおおお前達は…!」
俺もそっと部屋を出ることにした。
話を切るタイミングがなかなか無くて、めちゃくちゃ文字数が多くなってしまった。10470文字ですって。いつもの倍ぐらいですね。
反動で次の話めちゃくちゃ文字数少なくなるかもしれません。
今回は原作のお話にヒカルとメリッサを出してみました。
逃げ回る時にヒカルが壁をぶち抜いたりとか、メリッサも追いかけまされてるのを合流して四人で兵士に追われたり、なんてことも考えたのですが、文字数の都合によりカットです。てか書き上げられねえ…。
なんかお気に入りとかめちゃくちゃ増えててビビってたら、ランキングに入っていたのですね。嬉しすぎて文字で喜びを伝えきれないぐらいです。とにかく、ありがとうございます。
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お気に入り、評価、感想、ありがとうございます。
大変励みになります。
これからも頑張りますので、今後ともよろしくお願いします。