このすば ハード?モード   作:ひなたさん

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68話です。さあ、いってみよう。



68話

 

「おい、お前も戻ってきてるじゃねえか!」

 

「そうだよ!さっき偉そうにあたし達にツッコミしてたじゃん!斬り込み隊長でしょ!?行ってきてよ!」

 

「バカ言うんじゃねえよこの野郎!あれ完全にバレてるぞおい!どうすんの!?どうすんだこれ!?」

 

 くそ、やっぱこんなショボい感じじゃなくて、しっかりした変装をするべきだった。

 ダクネスには完全にバレてる。

 めぐみんは…わからんが、多分紅魔族は頭良いだろうからすぐバレる。

 ていうか何であいつらいるんだよ。

 

「よよよよよ、よーし!ここで怖気付いてもしょうがねえ!俺達には、この国の為にやるべき事があるんだ!」

 

「そ、そそそそうだね助手君!これはこの国の為で人には言えないけど、正しい行為だからね!」

 

「そ、そそそそそうだよ馬鹿野郎!この国の奴らってば、王女様がどちゃくそヤベエの付けてるの気付かねえんだもんなぁ!」

 

「そうそう!俺達が来なかったら危なかったですね!マジで!」

 

 めちゃくちゃ説明口調だけど、これならバレててもいけるだろ、いけるよな、いけ。

 

「行くぞ、お前ら!」

 

「うん!」

「おう!」

 

 バタン!と開け放ち、再び王女様の部屋へ入る。

 部屋の中央には先程同じく金髪碧眼の少女とそれを守るように立つダクネスとめぐみん。

 その三人に迫るようにして前方へ立つ女盗賊、メリッサがいた。

 

「勝手に入ってきたと思ったら勝手に出て行って、また勝手に入ってきましたよ!」

 

 めぐみんの言葉に若干恥ずかしくなったが、しょうがない。戦略的撤退だったのだ。

 

「…貴方達、やる気あるの?」

 

 メリッサの冷ややかな視線と呆れ顔が向けられるが、しょうがない。戦略的撤退だったのだから。

 

「お、おのれ、ぞ、賊共めぇ…こ、ここから先はこ、ここここのダスティネス家の」

 

「ダクネス見てください!あの女盗賊はともかく、こちらの義賊達は分かってますよ!格好良い仮面に黒装束です!」

 

 ダクネスにはおもくそバレてるが、あそこの紅魔族随一の天才にはバレてないらしい。

 ダクネスが棒読みで名乗っているのを邪魔してダクネスの服の裾を引っ張り、目を輝かせるめぐみん。

 ダクネスが剣を構えているのはメリッサの方で、こちらには向いていない。

 俺達に協力してくれるかもしれない。

 

「「『バインド』!」」

 

 考えることが同じだったのか、カズマとメリッサの拘束スキルがダクネスに二重にかかり、安心したような表情のあと恍惚とした表情に変わり、俺達とメリッサが同時に動こうとした時

 

「『セイクリッド・スペルブレイク』!」

 

 部屋の奥から魔法が放たれて、ダクネスを拘束していた縄が力を失い、床に落ちた。

 

「残念だったわね!あなた達が何しに来たのかなんて知らないけど、あなた達を捕らえれば、きっとまた高いお酒飲み放題よ!さあ、早くお縄につきなさいな!」

 

 部屋の奥から酒瓶を持って現れたのは駄女神ことアクア。

 カズマのパーティー勢揃いかよ。

 無駄に有能なのが腹立つ。

 

「二人とも、俺とお頭で駆け抜け様に…!」

 

「スティールだね!」

 

「俺はアイツだな?」

 

 俺はメリッサを顎で指した後、頷き合う。

 後ろからは大勢の足音が聞こえてくる。

 もうここにいるわけにもいかない。

 

「行くぞ!」

 

 カズマの号令で、俺達とメリッサ、そしてダクネスが動き出す。

 メリッサに俺とダクネスが向かっていく。

 二人掛かりならメリッサも止めることが出来るはず。

 ダクネスが放つ渾身の横薙ぎはメリッサに華麗に避けられ、そこへ向かった俺へと

 

「っっぶねえ!?」

 

 咄嗟に木刀でガードするが、ダクネスの両手剣の横薙ぎは力強く、軽く吹き飛ばされて床を転がる。

 受け身を取って、すぐ立ち上がるがもう遅い。

 三人が王女へと向かい、腕を突き出し

 

「『スティール』ッッ!!」

「「『スティール』ッッッ!!!」」

 

 三人のスティールが王女へと発動した。

 

 

 

 

 

「ふふ、ふふふ、あはははははは!」

 

 スティールが発動した後の静まり返ったこの室内に一人の女の高笑いが響き渡る。

 

「この前の借り、返させてもらったわ」

 

 メリッサの手に持ったものはネックレス。

 幸運値が高い二人が負けるはずがない。

 先にスティールを発動させたのが、メリッサだったみたいだ。

 素早く窓へと移動したメリッサは見せつけるようにネックレスを握り締め、胸元へと仕舞い込んだ。

 

「くそ、先輩に出来ねえ芸当だあれは!」

 

「ああ、これは完敗だな!」

 

「二人ともバカ言ってないで、取り戻」

 

「じゃあね、間抜けな盗賊団と護衛達!」

 

 メリッサは窓から身を躍らせ、外へ出る。

 やられた。

 そう思ったと同時に部屋へ多くの騎士達が入ってくる。

 

「まずい、今はとにかく撤退しよう!」

 

「ああ!」

 

「追いつくぞ、しっかり捕まっとけよ」

 

 近くに駆け寄ってきたカズマとクリスの腰を抱える。

 

「えっ!?」

「はっ!?」

 

 そのまま二人を抱えた状態で、テラスへと飛び出て、メリッサが飛び移っている屋根へと飛んだ。

 

 

 

「どわあああああああああああああ!!??」

「ふわあああああああああああああ!!??」

 

 ズドオオオン!!

 破壊音と共に降り立つ。

 二人を持ったまま、屋根を駆けて、次々と飛び移る。

 

「ぎゃあああああ!!??落とすなよ!?マジで落とさないでくれよ!!?」

「めちゃくちゃだよおおおお!!??危ない危ない!?お願い、しっかり掴んでてよ!?」

 

 二人が喚き散らして引っ付いてくるのを我慢して、メリッサへと迫る。

 メリッサも異変を感じたのか、振り返ると、信じられないものを見た顔になり、スピードを上げる。

 

 今の俺を舐めるなよ。

 今日ばかりはマジもんの狂戦士だ。

 

 スピードを更に上げて、メリッサとの差をグングン縮めていく。

 屋根を蹴り上げて、破壊しながら突き進む。

 

「先輩!仮面くん!今度は成功させろよ!」

 

「は!?な、何が!?」

「どういうこと!?」

 

「スティールだよ!!」

 

 二人が息を呑み、黙る。

 俺が近づいて距離に入るのを待っているらしい。

 もう少し!もう少し!!

 

 そろそろ追いつく、その瞬間メリッサが片手をこちらへ向けて、縄のようなものを持っていた。

 

「ごめん、二人とも!」

 

「へ?」

「ん?」

 

 咄嗟に二人を投げ飛ばした瞬間、

 

「『バインド』ッ!!」

 

 メリッサから拘束スキルが放たれて、俺が縄で拘束される。走れなくなった俺は盛大にすっ転び、屋根の上を転がった。

 転がりながら、見えた光景はクリスは綺麗に屋根の上を着地し、カズマがメリッサを巻き込み、屋根の上を転がっていた。

 

 

「い、てて……こ、んのっ!!」

 

 巻き付いた縄を腕を広げて思い切りぶち破る。邪魔な縄を放り投げながら、自分の体を確認し、立ち上がる。

 擦り傷やら打撲やらはあるが、体を動かした感じ、大事になっているところはない。

 二人が心配で先程メリッサがいた屋根まで飛び移ると、思ったより面倒なことになっていた。

 カズマは首を締められて、首にダガーを当てられ、カズマを人質にしたメリッサと、それに対峙するクリスがいた。

 

「あら、化け物さん。あなたもそれ以上近付くと大変なことになるわよ?」

 

「誰が化け物だこの野郎。そいつ殺したら、お前も活動し辛くなるんじゃないのか?」

 

「別に殺す以外にも手はあるわよ。ねえ、カ・ズ・マ?」

 

「はい、ボス」

 

 ………えっと…。

 

「……」

 

 カズマは拘束されているというのに、顔がだらしなく緩んでいる。

 クリスは呆れた顔で、メリッサとカズマを見ている。

 

「ねえ、何あれ?あいつ寝返ってない?」

 

「ん?寝返る?あたしはあんな胸を少し当てられただけで寝返るような仲間を持った覚えは無いよ」

 

 先程までの活躍無かったことにされてるよ。

 さて、どうしたものか。

 命の大事さで先程ブチ切れた俺にカズマごとメリッサをぶっ叩く様な非道な真似ができるわけ、できるわけ……。

 

 んー、出来るかも。

 別に俺の仲間でも家族でもないし、アクアがいるし、すぐ治るだろ。

 

「よし、カズマ。ちょっと痛いかもしれないけど、我慢しろよ」

 

「……えっ!?ちょ、ちょっと待て!?まさか!?」

 

「は?あなた正気?私が出来ないとでも思ってるの?」

 

「後輩くん、ナイスアイデア!二人ごとやっちゃおう!」

 

 クリスがサムズアップしてくる。

 二人でぶっ叩けばカズマも正気に戻るだろう。

 これもしょうがない。カズマが寝返るからな。

 

「ちょ、ちょっと待った!!今から俺がなんとかするから!」

 

 俺が本気でやるとわかったのか、カズマが慌てた様子だが、その状態から何とかすると言われてもな。

 

「カズマ、一大事だからな。すぐ楽にしてやる」

 

「行くよ、後輩くん!」

 

「マジで殺る気だ!?ま、待て!本当になんとかするから!」

 

「あ、あなた達マジなの!?」

 

 メリッサが驚きの声を上げる。

 俺とクリスが腰を落とし、すぐに

 

「お、『お前の物は俺の物。俺の物はお前の物。お前になーれ』っっ!!」

 

 カズマがそんなトンチンカンなことを叫んだ後、メリッサ達が光に包まれて、思わず全員が悲鳴のような声を出す。

 光がなくなり、二人を見るとカズマは解放されてへたり込んでいて、メリッサは自分の胸元へゴソゴソと手を突っ込んでいた。

 カズマは訳もわからないと言った顔で、辺りを見渡していて、メリッサは胸元からネックレスを取り出し

 

「ほら、クリス」

 

 クリスに投げて渡した。

 きょとんとした顔でクリスもそれをキャッチし、俺も訳もわからず、メリッサを見ていた。

 カズマが一連の流れを見た後、メリッサへと振り返る。

 

「あ、あ、あああなた!?ま、まさか!?」

 

「そうだよ。ネックレスの力で入れ替わった」

 

 カズマが女口調で話したと思えば、メリッサが男のようにぶっきらぼうに答える。

 そうか、だからメリッサがクリスにネックレスを渡したのか。

 というかあのトンチンカンな言葉に反応して入れ替わったのか?

 

「さっきはよくもグイグイ首締めてくれたな!今からお前の体を好き勝手にしてくれるわ!」

 

「い、いや!!やめなさい!私の体返しなさい!!」

 

「だあーっはっはっはっ!返したくても返せねえなあ!?残念だなあ!?あーええもみ心地ですわあ!」

 

「や、やめなさいよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 カズマの気持ち悪い女口調の叫びが辺りへ響き渡る。

 メリッサが自分の胸を揉みしだきながら、カズマから逃げ回るという不思議な光景を見せられた後

 

「えっと、じゃあ、そろそろ撤退しようか」

 

「お、おう」

 

 騒ぎを聞きつけた兵士達が集まってくるのを感じながら冷静に発言したクリスの一言で、俺達は城から撤退を始めた。

 

 

 

 翌朝。

 王都は城へ潜入した義賊の話で持ちきりになっていた。

 噂の義賊がたった三人で城へ乗り込み、王女からネックレスを強奪したのだから。

 昨日は魔剣の勇者のミツルギを始めとした腕利きの冒険者が多数泊まっていた日にこの三人はやり遂げたのだ。

 銀髪の少年と仮面の男、そして木刀の青年の犯行は瞬く間に噂となって広がっていき、王都は大変な賑わいを見せた。

 

 

 そして、俺達も大変な賑わいを見せている。

 

「ダ、ダダダクネス、お願いだよ落ち着いてええええええええっ!!頭割れちゃうううううううう!!」

「おい話を聞いてくれ!絶対仕方ないなって思うから!マジで!!お願いします聞いてくださいそれ以上はマジでやばいですううううう!!!」

 

 俺の前ではカズマとクリスがダクネスに頭のこめかみを鷲掴みにされていた。

 俺達はダクネスの呼び出しを受けて、宿の一室に入った瞬間この状態になったのだ。

 

「聞いてやろう!ああ、何から何まで聞いてやろう!あくまでこれは話を聞く前の準備運動だ!」

 

 怖。じゃあ俺ギャラもらって帰るから。

 そっと部屋から出ようとした時。

 

「おいこら、待てええ!!そいつも共犯だぞ!!」

「そうだよ!!ヒカルもちゃんと共犯です!!」

 

「おい何俺のこと売ってんだこの野郎!俺は仕方なく協力させられたんですよダクネスさん!」

 

「お前もあとで同じ目に合うから、覚悟しとけよ」

 

 怖。

 クリスに弱みを握られて、仕方なく協力してる設定を使う時が来たと思ったけど、あまり効果は無さそうだ。

 もうエリス様からの支援は無くなってるので、ダクネスの力に勝てそうにない。

 

「何ダクネスに媚び売ってんだよ!俺だってクリスに唆されましたー!主犯はクリスですう!!」

 

「はあああっ!?き、君達ってやつは!ほんといだだだだだた!ち、違うんだよダクネス聞いてよ!この二人だってノリノリだったんだよ!騒ぎが大きくなった時は逃げようって言ったんだよ!でも、助手君が今日やりたい!って!」

 

「何言ってんですか!俺なんて盗賊団の下っ端ですよ!そんなこと言えるわけないじゃないですか!」

 

「言ったでしょ!?それに三人しかいないのに下っ端も何もないじゃんか!」

 

 二人で醜く責任の押し付け合いを始めたので、また俺に飛び火しないように黙っていることにした。

 未だ頭を鷲掴みにされて、床に正座されてる二人にダクネスは今まで見た事ないぐらい怒った顔で話し始める。

 

「おい」

 

「「ひゃいっ!」」

 

「早く喋れ」

 

 俺達は全てをダクネスにゲロった。

 事情が事情で怒りつつもダクネスはわかってくれた。

 その後カズマが王女様からスティールしたものがヤバイ物だったり、宝物庫で盗んだ物がバレたりといろいろなことが明らかになった。

 ダクネスとカズマは城へ向かい、銀髪と黒髪が目立つという理由で俺とクリスはアクセルに帰ることになった。

 城へ行くことを嫌がるカズマを引き摺るようにして連れて行くダクネスを見送り、俺達は王都を出た。

 





前回の約半分の文字数になっております。
この後くっつける予定だったお話が思った以上に長くなったので、分けました。

最近は他の方の作品を読むことも多くなってきたんですけど、よく毎回毎回サブタイトルとか考えられるなぁと。
だって僕の場合、たまに後書き考えてる途中で寝落ちとかよくあることですからね。

というわけで次のお話のサブタイトルを考えるなら
『この変態女神に制裁を!』
ですかね。
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