このすば ハード?モード   作:ひなたさん

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73話です。さあ、いってみよう。



6章 『覚醒』と『責任』
73話


 

73話

 

 

「一つ聞いてもいいですか?」

 

「え、いやだけど」

 

「……先程までは聞き辛かったんですけど、遠慮なく聞かせていただきます。ゆんゆんさんと上手くいってないんですか?」

 

「いや、別にこの前の喧嘩はそういうんじゃないっていうか、俺がやり過ぎただけだから関係ないぞ?」

 

「そうではなくてですね、付き合う前とあまり変わってない気がしまして」

 

「何言ってんだお前。女が出来たからって、男が簡単に変わると思ったら大間違いなんだよ馬鹿野郎」

 

「いえ、そうでもなくて。お二人の時間が少ないのではないかと思ったんですよ。もしかしたら私達に遠慮してるのかな、と」

 

「大きなお世話だこの野郎。あと遠慮もしてねえよ。なるべくゆんゆんの要望には答えるけど、これぐらいでいいんだよ」

 

 人前でベタベタするようなバカップルをするほど浮かれてるわけでもない。

 二人きりの時なら話は別だが。

 

 こいつには俺達の関係は気にしなくていいと言ってあるんだが、こんな話をして来るということはやっぱり気になってしまうのだろうか。

 

「意外と冷静ですね。女性にデレデレになるかと思ってました」

 

「あのな、俺にどんなイメージを抱いてるのか知らないけど、一応お前らより年上なの。落ち着いた大人の男なんだよ」

 

「……大人の男性なら暴走してやり過ぎたりしないのでは?」

 

「やかましい。てかお前の聞きたいことって、そんなことかよ。いつものストーカー癖で知り尽くしてるのかと思った」

 

「リーダーこそ私にどんなイメージを抱いてるんですか!……少し心配してたというのに」

 

 どんなイメージってお前……。

 にしてもそんなに気にすることかね。

 まあ女がいるからってキース達みたいに嫉妬やら何やらの感情をぶつけてこないだけいいか。

 こいつはハーレムがいるせいか落ち着いてはいるのだが、俺達のことを気にし過ぎな気がする。

 こいつもおかしな属性をてんこ盛りにしてはいるものの良い奴だからな。

 

「わかったわかった。心配してくれてありがとよ。なんだかんだでちゃんとやるから安心しろ」

 

 手をふりふり振って、遇らうようにそう言うと、トリスターノは意外にも頷いてきた。

 

「確かにリーダーなら、なんとかしそうですけどね」

 

「そんな感じで信じてくれ。喧嘩しつつも仲良くやるさ」

 

「いや、喧嘩するんですか」

 

 呆れたような声がトリスターノから返ってくる。

 

「するに決まってんだろ。どの規模であれ、喧嘩ぐらい出来ないようなら別れた方がいいぞ」

 

「なんか年上っぽくなってきましたね」

 

「ぽいじゃなくて年上だろうが。これは俺もよく見てきたからわかるんだけど、男側もまだガキンチョの年ならわからなくもないけど、アホみたいに人前でもイチャイチャして女の言うことばかり聞いて早々に結婚だなんだとか言ってる奴ほど、すぐ別れんだよ」

 

「あー…」

 

 トリスターノが何とも言えない顔になっているが続ける。

 

「人の気持ちなんか簡単に変わるんだよ。お互いの理想と現実とのすり合わせして、それでも好きだ、こいつと一緒にいたい、ってなって初めて結婚考えるんだよ。それをお前、たかが付き合った程度で口に出すから後で笑い者にされたり、別れたショックで立ち直れなくなったりするの」

 

「……あの、失礼ですけど、めちゃくちゃ詳しくないですか?」

 

「日本にいた時の同期とか後輩にいたんだよそういうの。付き合えて嬉しいのはわかるけど、実際は付き合ってからが大変なんだよ」

 

「あーまあ、確かに」

 

「だろ?よく物語とかで付き合うまでのものを描いて、告白して成功してハッピーエンド、ここからは皆さんのご想像にお任せします的なのがあるけど、現実だったらあんなのすぐ別れてるから」

 

「いや、そこまで言います!?というか、いろんなところに喧嘩売りすぎでは!?」

 

「実際付き合うまでのやりとりは良いものだよ?お互いの駆け引きとか、ドキドキして面白いんだろうよ。でもな、八割九割は物語みたいに上手くいかないってのを早めに知るべきなんだって。世の中ハードモードなんだよこの野郎」

 

「そうですね。でも憧れとか男女のアレコレの感情ってなかなかコントロール出来るものじゃないと思いますよ」

 

 それはまあ、確かに。

 かくいう俺も過去に少しでも浮かれなかったかと聞かれると、それは無い。

 

「すり合わせの時に痛い目を見て、現実を知るぐらいしか私達は勉強する手段が無いのかもしれませんね」

 

 両手を広げてやれやれと言わんばかりに首を振るトリスターノ。

 

「めんどくせえ生き物だなぁ……って、お前がわざわざ俺の部屋に来て話に来たことってこれなのか?ヒマなの?」

 

「違いますよ。この前言った相談事についてですよ」

 

「勝負の時に言ってたやつか。そういやそれを話す前に何でクリスとヒナの仲が悪いことを聞いてきたんだ?何か関係あるのか?」

 

「相談事とは何も関係ありませんよ。ただ」

 

 勿体ぶるように、そこで切ってからニッコリと笑う。

 何だこのイケメン。腹立つ。

 

「リーダーが王都でゆんゆんさんのプレゼントを買いに行ってた日の夜に、クリスさんとカズマさんと王城で何をされてたのかな、と」

 

 

 …………は?

 

 

 突然出て来た話題に思考が止まる。

 こ、こいつ、まさか

 

「その事を聞こうと思っていたのですが、流石に仲が悪い状態の人の名前が出る話題はよろしくないなと思い、やめました。本当は二人の前で聞こうと思っていたのですがね」

 

 心底残念そうに語るトリスターノ。

 

「お、お前、まさかあの日にストーカーしてたのか!?」

 

 というかあいつらにバラそうとしてたのか!?

 性格悪いぞ、こいつ!

 

「人聞きが悪いですよ。リーダーがこそこそ宿に入って行ったのを見て、気になって待っていたら怪しい格好でお二人と合流したので、これはと思い付いて行っただけです」

 

「それストーカー!!どこからどう考えても完全無欠にストーカーだろうが!お前まさか全部見てたのか!?知ってんのか!?」

 

「知らないから聞こうとしてるんじゃないですか。アクセルの街ではそこまで話題になってないので、お二人は知らないでしょうね。王都ではあの日から大混乱。銀髪の少年と仮面の少年、そして木刀の青年たった三人で魔剣の勇者と王都の警備兵を相手にして、ほぼ無傷で王女のお宝を奪ったのですから」

 

「おいこら、どこまで見てたんだよ!」

 

「だから知らないんですって。外から見ても状況がわからなかったので聞こうとしてるんですよ」

 

 知ってる以上、隠し通せる気もしないし全部話すか。

 こいつのことだから、わざわざ口外したりしないと思うし。

 

「あれはな」

 

 とりあえず全部話した。

 話し終わったあと、トリスターノはそんなことだろうと思いました、と感想をこぼした。

 

「マジで危険なものなんだ。国がやられたら俺達だって危ないからな」

 

「わかりました。そこまで重要な事なら口外しませんよ。ですが」

 

 そう言ってからトリスターノは目付きを鋭くして、真剣な表情へと変わる。

 

「あまり危険な事は控えてください。あと次からは私達にも相談してください。リーダーは私達のリーダーなんですから」

 

 ……一歩間違えばこいつらに二度と会えないことになるところだったからな。

 また心配させてしまった。

 

「悪かったよ。王城に潜入なんて二度とやるつもり無いから安心してくれ」

 

「当然ですよ。二人に言い辛いことなら親友の私がいますからね」

 

 ウインクなんかするな。

 気持ち悪い。

 

「はいはい、わかりました。何かあったらお前に言うよ」

 

「ええ。お願いします」

 

 というかトリスターノに手伝ってもらえばよかったかもしれない。

 こいつのスキル構成はカズマ寄りで万能型だし……って、こいつの金髪碧眼は目立つからダメか。疑われる可能性が少しでもあるなら避けたい。

 何はともあれ厄介事が起きたらトリスターノも巻き込むことにしよう。

 

「で、相談事は?」

 

「そうですねぇ……」

 

 また勿体ぶった溜めのある話し方をするトリスターノ。

 遠くを見るような目で、憂いを帯びた表情になる。

 ため息のような短い息を吐き、言う気になったのか、真剣な表情になった。

 

 

 

 

「私が人を殺したら…どう思いますか?」

 

 

 

「え、お前なに?まだステーキ奢らせたの根に持ってんの?」

 

「違いますよ!そんな理由で殺すのも嫌ですし、殺されるのも嫌ですよ!」

 

 トリスターノのイケメンマジ顔が一瞬で崩れた。

 他にこいつに恨まれるようなこと他に何かあったっけ。

 俺が思い出そうとしてると、トリスターノが呆れたようにため息をつく。

 これだけで絵になるから腹立つ。

 これだからイケメンは。

 

「なんだこの野郎。お前アレだろ、俺がクリスにトリスターノはロリコンとかバラしたヤツだろ」

 

「……それはそれで根に持ってますけど、違います」

 

「根に持ってんのかよ」

 

 俺が思わず呟いた後、またトリスターノがマジ顔になった。

 

「じゃあ誰だよ?俺以外にお前にそんな恨まれるようなことした奴いたっけ?」

 

「あの、自覚あるならやめてほしいんですけど…」

 

「賭けに勝ったのは俺だからな」

 

「……正直その勝負も納得してませんが…」

 

 余程弓の勝負を邪魔されたのが嫌だったらしい。

 こいつのアイデンティティの一つだし、かなりの自信があるみたいだからな。

 俺はもちろんトリスターノの事だから、弓の向こうの木に絶対に当てるだろうと確信していた。

 だから俺が負けないように、わざわざ明確な勝利条件だけを出して、他のルールの話をしなかったのだ。

 誰かさんを見習って狡いやり方をしてみて、勝負に勝ったのだがこいつの不評も買ったらしい。

 今度からはこいつの弓のこだわりみたいなのは邪魔しないでおいてやろう。

 

「それはさておき、話の続きです」

 

「殺すって誰だよ?」

 

「円卓の、騎士です」

 

 トリスターノが少し重い口調でその名を口にした。

 

 円卓の騎士。

 

 かつてトリスターノが所属したグレテンの王国騎士団。

 俺が元いた世界では、それは創作のものだったが、この世界には実在していた。

 こいつの弓の腕前も円卓の騎士の「トリスタン」としてのものだ。

 そして、円卓の騎士と言えば、あの時の事を思い出す。

 ルーシーズゴーストを討伐しに行った時に、突然現れた金髪碧眼の全身鎧の女性。

 騎士王アルトリウス。

 最初は化け物染みた冷酷な王という印象だったが、話してみるとアホな王様だという事がわかり、なんとか素手の闘いに持ち込み勝てそうではあったのだが、基礎ステータスの弱い俺が純粋な力勝負で勝てるわけもなく、俺は騎士王に負けた。

 負けたはずなのだが、何故か生きている。

 どうして生きているのか、今もわからない。

 あの時死んでいたかもしれないと考えると、少し寒気がした。

 それを悟られないように、俺は思ったままを話す。

 

「お前は人を殺したくないから、こっちに来たんだろうが。本末転倒だろ」

 

「それは、そうですが」

 

「それともなんだ?殺したいのか?」

 

「それは違います!」

 

 トリスターノのはっきりとした否定。

 いきなりの大声に驚いていると、トリスターノがハッとした顔になり、すみませんと謝ってくる。

 

「じゃあ殺さなくていいだろ」

 

「……そう、簡単な話ではないのです」

 

 そう言ってトリスターノは俯いた。

 なんだってんだ、急に。

 

「アクセルの街にいると平和だと思いませんか?」

 

「ああ、思うな」

 

「アクセルはすごい街ですよ。ここまで平和な街は他に王都ぐらいじゃないですかね」

 

「……」

 

「他の街は、こんな平和じゃありません。子供一人、いいえ特に訓練をしていない大人を一人街の外に出したらどうなると思います?普通死ぬんです。モンスターに殺されます。平和なこの街も外では大いにあり得る話です」

 

「それがなんだよ」

 

「この国は戦争中なんです。魔王軍と。それにグレテン王国と。それに外には野生のモンスターが大勢です」

 

 それはこの世界に来る前から知ってる。

 あの水の女神に聞いて、ここへノコノコ転生してきたのだから。

 グレテン王国の話は後からだが。

 

「リーダーにはベルゼルグ王国の歴史書を渡しましたよね?」

 

「ああ、全部読んだし、ほとんど覚えてるはずだ」

 

「ならベルゼルグ王国が武勇で有名なことも知っていますね?その武力を外交に使う時もあります」

 

「ああ、知ってる」

 

 この国はちょっと脳筋だが、だからこそこうして魔王軍とかと戦えてる、と俺は勝手に思っているが本当のところはよくわからん。

 勉強不足と知識不足、あとアクセルの外に出てないからだろう。

 

「この国の王と第一王子、そしてその側近の者たちがこの戦争の最前線に何度も出ているのです。それでもこの戦争は好転していません。それどころか逆に押されて来ています。何故だと思いますか?」

 

「円卓の騎士か?」

 

「そうです。円卓の騎士は一応人間ですが、それを優に超える力を持つ人達です。わかりやすく言えば『化け物』です」

 

「自慢ですかこの野郎」

 

「私は違います。グレテン王国は魔王軍に味方する国ではありましたが、戦争に介入することは少なかったはずなんです。それが彼らが頻繁に戦場に出るようになってきているのですよ。魔王軍ですら手一杯の状況だというのに。もし王族の方やニホンから来た人達がいなければ、すでにベルゼルグは崩壊しています。それほど危険なんですよ」

 

「だから同じ円卓の騎士であるお前が殺そうってのか」

 

「……はい」

 

「あのな」

 

 トリスターノを真っ直ぐに見つめる。

 俺の目にはトリスターノは迷っているように感じた。

 

「お前がやりたいならやれ、やりたくないならやるな。以上」

 

 キッパリ俺がそう言うと、トリスターノは呆けた顔で数秒間固まる。

 

「え、ちょ、ええっ!?そんな子供の進路相談みたいな感じなんですか!?」

 

 確かになんか父親っぽい言い方をしてしまった。

 俺自身も父親にそう言われた気がするし、最近ヒナの父親役をやってる影響だろうか。

 でも、俺が思うままのことを言った。

 

「なんだこの野郎。不満か?」

 

「いや、もう少し真剣に答えて欲しいんですけど」

 

「真剣に答えたよ。お前が円卓の騎士だかを止めに闘いに行くなら俺も闘う。行かねえなら行かねえ。これだけだ」

 

「……」

 

 目を見開き、口を少し開いてまた固まった。

 

「お前が何しようが、何になろうが俺の友達で仲間で家族だ。お前が真剣に考えて選んだ道なら応援するし、俺もその道を通るよ」

 

 いつか言われた言葉をトリスターノに返す。

 たまには俺が背中を押す側になってやる。

 

「……ありがとうございます」

 

 わざわざ頭を下げてくる。

 親友を名乗ってくるくせに、いつまでも遠慮してくるというか水臭いというか。

 

「私の予想ですが、この平和は長く続かないと思います。数年、いや一年も無いでしょう。今まで何十年も魔王軍の幹部が倒されることが無かったのに、この数ヶ月の間に多くの幹部が倒されていますからね。きっと原因究明とその原因を潰しに来るはずです。アクセルに原因がいるとわかればすぐに攻め入ってくるはずです」

 

「……そうだろうな」

 

「円卓の騎士がアクセルに来ることは無いでしょうが、遠くない未来に魔王軍とグレテンの連合軍がベルゼルグの核である王都に攻めに来る時が来ます。その時が来たら」

 

「俺も行くよ。ただし一つ条件がある」

 

「なんでしょう?」

 

「絶対に死ぬな。それだけだ」

 

「御意」

 

 そう言ってトリスターノは恭しく頭を下げた。

 そして頭を上げて

 

「というかこれ死亡フラグでは?」

 

「うるせえんだよこの野郎。バカがバカしないようにわざわざ言葉に出してんだよ」

 

 

 

 

 

 

「明日の準備は出来てんだろうな?」

 

「もちろんです。リーダーも大丈夫ですか?結構な長旅になりますよ」

 

「一応な」

 

「そうでしたか。それではまた明日」

 

「おやすみ」

 

「おやすみなさい」

 

 トリスターノが部屋から出て行くのを見送ってから、俺も寝ようかとベッドへと振り返ったら、先程まで居なかったはずの人物が俺の部屋の椅子に座っていた。

 

「こんばんは。男の友情ですね。いいと思います」

 

「……こんばんは。また覗きかこの野郎」

 

「む、失礼ですね。お会いするタイミングを図っていただけですよ」

 

 椅子に座っていたのは女神エリス。

 わざわざ覗いて待っていたらしい。

 

「何の用だよ?明日朝早いんだぞ」

 

「貴方に大事なお願いがありまして」

 

 女神エリスは真剣な顔で俺を真っ直ぐに見てくる。

 どうやら余程のことらしい。

 軽くため息が出てしまうが、それぐらいは許して欲しい。

 

「なんだ?」

 

「お願いしたいのはこれです」

 

 そう言って女神エリスは何もない場所から紙袋のようなものを取り出した。

 

「なにそれ」

 

「これは王都の高級菓子折です。明日からヒナギクのご実家へ行かれるんですよね?ヒナギクのご両親に是非渡していただきたいのです」

 

「え、土産ぐらいなら俺らでも準備してるけど」

 

「いえ、そうではありません。ヒナギクのご両親ということは私のお義父様とお義母様ということですから、これを」

 

「おやすみ」

 

「ちょ、ま、待ってください!渡すだけじゃないですか!?ね、寝ないでくださいよ!」

 

「くそ、離せ!わざわざ夜更けに真剣なツラして出てきたと思ったから聞いてやろうと思ったのに!離れろこの野郎!」

 

 ベッドに入ろうとする俺の腰にしがみ付いて止めてくるエリス様。

 しょうもない登場をいい加減やめろ。

 

「いいじゃないですか、これぐらい!わかりました!着く前日の夜にお渡しするので!それなら荷物にならないですよね!?」

 

「そういう問題じゃねえの!何で俺が渡さなきゃいけないんだって話!」

 

「これお義母様が大好きですから!リサーチ済みですから!」

 

「うるせえんだよこの野郎!誰がそんな話したんだよ!というかお義母様呼びをやめろ!」

 

 コンコン。

 

「「!?」」

 

 俺達がバカなやり取りをしていると、俺の部屋の扉がノックされた。

 

「やべ、騒ぎ過ぎたか!?」

 

「いえ、私の力で声は聞こえないようにしてるのでそれはあり得ません」

 

「だったらゆんゆんだ。エリス様、悪いんだけど」

 

「はい。また来ますね」

 

 そう言って、エリス様は音もなく消えた。

 いや、わかってる感出してたけど、出来ればそのまま出てこないで欲しいんだけど。

 

 扉を開けると、予想通りゆんゆんがいた。

 

「もしかして寝てた?」

 

 出るのが遅かったからか、申し訳なさそうな表情で聞いてくる。

 

「いや、ちょっと着替えてたんだ。待たせてごめんな」

 

「ううん。あの、ね」

 

 上目遣いで甘えた声になるゆんゆん。

 毎晩のことになってるから、どうして俺の部屋に来たかわかってる俺は頷いて、ゆんゆんへと顔を近付ける。

 ゆんゆんも目を瞑り、待機していた。

 お互いに抱きつき、唇を合わせる。

 

 恋人として何もしない日でも、ゆんゆんはこれぐらいはしたいと言って、毎夜寝る前に俺の部屋に来るようになった。

 顔を離した後、恥ずかしそうに顔を赤く染めた後、俺の心臓の音を聞くように強く抱き付いてきた。

 

「明日の準備出来た?」

 

「ああ、出来たよ。ゆんゆんは大丈夫か?」

 

「うん」

 

 そんな話を五分ほどして、名残惜しそうに離れた後おやすみと言って別れた。

 振り返るとまた椅子に女神エリスが座っていた。

 顔を赤く染め、気まずそうに目を逸らしている状態で。

 

「あー…なんというか」

 

「コホン。さ、これをお願いします」

 

 俺が言う前に咳払いをして、目を逸らしたまま紙袋を渡してくる。

 気まずくてなんとなく受け取ってしまった。

 これなんて言って渡せばいいんだよ。

 エリス様からです、どうぞ。なんて言えばいいのか?

 

「ついでにお話しすることがあります」

 

「ついでねえ」

 

 早く帰って欲しい。

 そう思いつつも話を聞くことにした。

 





最近書けなすぎて申し訳ない。
この話を書いて多少勢いが出てきたので、次回はもう少し早めに投稿する予定です。

アンケートのご協力ありがとうございます。
投票してない方はまだ投票出来ますので、良ければお願いします。

シロガネヒカルの冒険は

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