このすば ハード?モード   作:ひなたさん

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76話です。さあ、いってみよう。



76話

 

 

 

 

「すまないな。助けてもらった上に道案内まで」

 

「いえいえ、滅相もないです」

 

 結局俺達は王子様の護衛をしつつ戦場になっている地域の近くまでの道案内をすることになった。

 もし撤退が上手く出来ているのであれば一日程で合流出来るらしいが、撤退できていないのであれば二日、遅くて三日程かかる。

 ヒノヤマへ着くのは一日か二日は余裕で遅れそうだ。

 一応ヒナに遅れてもいいのか聞いてみたところ

 

「お母さんが心配しそうだけど、お母さん達も冒険者だったし、わかってくれるよ」

 

 とのこと。

 ヒナの父親は元勇者候補兼元魔王軍幹部という破天荒な人物だったが、ヒナの母親も高名な魔法使いだったらしい。

 ヒナの母親はエリス様に負けず劣らずヒナを溺愛しているらしく、冒険者として旅に出る前の父親と修行していた期間にはヒナの顔に少しでもキズが出来れば烈火の如く怒り狂い、魔法を撃ちながら一日中追いかけ回したとか。

 今更ながらヒノヤマに行くのが怖くなってきた。

 

「ヒナギク、あとどれくらいで着きそうか?」

 

「えっと、まだ半日しか歩いてないので、まだ一日以上はかかるかと…」

 

「そうか…」

 

 護衛に着くと決めてから簡単な自己紹介を済ませたのだが、何かある度に王子様はヒナギクに話しかける。

 やっぱりロリコンで色ボケしてるじゃねえかこの王子。

 ヒナもヒナで律儀に返事してんじゃねえよ。

 

「おい、ロリコン色ボケ王子。いちいちヒナに聞いてんじゃねえよ。言っておくが、話しかければ話しかけるほど好感度が上がるとかそういうのじゃないから。ギャルゲー気分かこの野郎」

 

「ちょっと!なんて失礼なことを!」

 

「やかましい」

 

 ヒナが突っかかって来るのを片手で止める。

 第一王子を見ると少し困惑していたが、力強くこちらを見てくる。

 

「……そなたの言っていることはほとんどわからないが、ロリコンでも色ボケでもギャルなんとかでもない。余はベルゼルグ王国第一王子、ベルゼルグ・スタイリッシュ・ソード・ジャティスだ」

 

「いちいち名乗るんじゃねえよ。長いし、文字数稼ぎだと思われんだろうが」

 

「モジスウカセギとはなんだ?余はそんなスキルは持っていない」

 

「誰がスキルの話したよ」

 

「もう!ジャティス王子が怒らないからって乱暴な言葉遣いやめてよ!申し訳ありません、ジャティス王子」

 

 ヒナが俺とジャティス王子の間に入ってくる。

 こいつがなんか馴れ馴れしいから、つい口を挟みたくなる。

 なんとなくムカつく。

 

「余は構わん。それより先を急ごう」

 

「申し訳ありません、ジャティス王子。そろそろ野営の準備をしますので、これ以上進むことは出来ません。続きは明日の朝になります」

 

 トリスターノが申し訳なさそうに口を出す。

 そろそろ日が傾いて時間が経つ。

 全員王子様に気を使って言い出せずにいたが、本来なら既に準備を始めている時間だ。

 

「む?……もう少し進めないか?まだ明るいし、距離はあるのだろう?」

 

 王子様が渋った表情でそう言い出す。

 野営の準備などしたことないから、準備だけで時間がどれだけかかるのかわからないのだろう。

 

「距離はありますが、そろそろ日が完全に落ちます。野営の準備もそれなりの時間がかかりますし、戦場に戻った後のことも考えてジャティス王子には万全の状態でいていただきたく存じます」

 

「……そうだな。そなたの言う通りだ。後のことを考えていなかった。冷静になる為にも休むことにしよう」

 

「ありがとうございます。では準備に取り掛かります」

 

 ……トリスターノのことを見直した。

 もしかしたら騎士王の元でも似たようなことを言っていたのかもしれない。

 トリスターノと目が合うとウインクしてきた。

 やめろ、気持ち悪い。

 これだからイケメンは。

 

「じゃあ準備をはじめ…」

 

「む、そういえば将軍からもしもの為にと持たされていたものがあったな」

 

 俺が王子様以外の面子に準備を始めるように言おうとしたら、王子様が懐から四角形の物体のようなものを取り出した。

 トリスターノがそれを見て固まっていると、その四角形の物体を王子様が少し離れた場所へと放り投げ、物体が地面に落ちたと同時に光を放った。

 そして物体が落ちた場所には小さめの貴族の屋敷が建っていた。

 何を言ってるかわからないと思うが、見たままだ。

 何が起きたかわからずに絶句する。

 王子様はそのまま屋敷へと入ろうとして、固まったままの俺達に振り向き、先程までと同じ調子で話し始める。

 

「そなた達どうした?早く入らぬか。準備に時間がかかるのだろう?」

 

「あー、えっと」

 

 俺はなんとか言葉を絞り出したが、特に返事にはなっていなかった。

 

「まさか遠慮しているのか?余の道案内をしてくれているのだ。世話になっている者同士、遠慮するな」

 

 そう言ってそのまま屋敷へと入っていった。

 俺が振り返って仲間達を見ると、ヒナとゆんゆんも固まっていた。

 トリスターノと目が合うと、語り始めた。

 

「あれは最高級の魔道具の一つです。モンスター避けの結界も張られていて、持ち運びにも便利な代物で、中も普通の屋敷と変わりません。私も騎士王以外が使っているのは初めて見ました」

 

 あいつも持ってるのか。

 というか俺も欲しい。

 そう思っているのがバレたのか、トリスターノが続けて口を開いた。

 

「ちなみにアレは国が保有している最高級の魔道具の一つなので億単位以上のお金が必要になるかと」

 

 さ、早く中に入ろうぜ。

 

 

 

 

 

 

 中に入ると、本当に屋敷と変わらなかった。

 外には馬はいなかったが馬用の小屋まであるし。

 王子様に十部屋ぐらいある通りまで案内されて、どこでも好きなところを使っていいと言われた部屋に荷物を下ろした。

 部屋は立派なもので俺が普段過ごしている部屋の倍か三倍の広さをしていて豪華な装飾がされた部屋だった。

 俺達に部屋の説明をした後、王子様は俺達とは別の階段を挟んだ向こう側の一つしか扉がない通りへと向かって行き、その扉へと入っていった。

 恐らくそこが王子様の部屋なんだろう。

 そして俺達は俺の部屋へと集まり、会議を始めた。

 ちなみに何故俺の部屋へ集まったかは知らん。

 俺が荷物を下ろして、部屋に備え付けてあったトイレで用を済ませて廊下に出たら、三人が既に待っていて、そのままゾロゾロと入ってきたのだ。

 

「おい、どうすんだこれ。準備に時間がかかるって言ったけど、これだと準備もクソもねえじゃねえか。シャワーもトイレもあるし」

 

「そうだよね。こんな便利なものがあるなんて…」

 

「私もジャティス王子自身がこれを持っているとは思いませんでした。幸い王子は自室でゆっくりしているみたいですし、何も言わず準備をしているのを装うのがいいかと」

 

「う、うん。何か悪いことした気分になってくるけど、そうしよっか。夕ご飯はどうしよう?王子様の分も僕達が作った方がいいのかな?」

 

「あの世間知らずな感じを見ると作ってやったほうがいいだろ。最悪保存食の干し肉かなんか渡しとけば食うんじゃねえの?」

 

「ヒカルだって世間知らずのくせに何言ってるの?それに王子様にそんなもの出せるわけないでしょ」

 

「やかましいんだよこの野郎。じゃあお前は王子様に出せるようなものがあるのか?」

 

「う、それは、無いけど…」

 

 そら見たことか。

 

「この屋敷に厨房のような場所があるかと。もしかしたら食材もあるかもしれません」

 

 至れり尽くせり過ぎるだろ。

 何でもありか。

 

「じゃあそこで作ればいいんだね。まずはこの屋敷の探索をしようよ!」

 

 ワクワクした表情でヒナがそう言い出した。

 もしかしたら明日も使うかもしれないし、何がどこにあるのか把握しておいた方がいいだろう。

 王子様も好きに使っていいって言ったし、こんな屋敷を好きに徘徊出来る機会もそうない。

 ヒナの言う通り、俺達は屋敷の探索を始めることにした。

 

 

 探索という程いろいろと探し回ったわけではないが、あっさりと厨房は見つかった。

 ヒナはなんだかガッカリしたような安心したような複雑そうな表情を浮かべていた。

 アホみたいにでかい魔道冷蔵庫の中に食材も大量に入っていて、一週間は余裕で食って行けそうだった。

 ゆんゆんとヒナが食材を使うことを少し躊躇していたが、王子様が好きに使っていいって言ったんだから大丈夫だろうと説得して料理を始めた。

 

 

 

 王族相手にどんな料理を出せばいいか分からず、結局開き直って庶民料理を出すことになった。

 あの王子なら多分大丈夫だろうと思ったし、ヒナが頑張って作りましたーとか言えばほぼ炭状態の卵焼きだって食べそうな気もする。

 なんかあったらリーダーの俺が責任を取ると言って、そのまま作らせた。

 王子様を呼び出して料理を並べる。

 流石に身分が違う俺達が王族と同じテーブルで飯を食べるわけにはいかないと思っていたので、食べ終わるのを待つことにした。

 トリスターノがそれぞれ料理の説明をしていると

 

「そなた達は食べないのか?」

 

 不思議そうに王子様が疑問を口にした。

 

「それはですね…」

 

 トリスターノが言いづらそうに口籠ったので、俺が言うことにする。

 

「身分が違うんだ。同じテーブルで食べないだろ。後で食べるよ」

 

 そう言うと、表情は動かなかったが王子様はそうか、とだけ返してきた。

 そんな王子様を見て、俺はなんとなく騎士王を思い出した。

 騎士王と対峙し、死にかけた時のこと。

 何故トリスターノの為にそこまでするのか、と聞かれて友達のために何かしてやりたいと答えた、あのやり取りを思い出す。

 「友達」の意味すら知らなかった騎士王と一人でテーブルに座っている王子様の姿が重なって見えた。

 一人ギルドの机でトランプタワーを作っているゆんゆんの姿と重なって見えた。

 

 こいつのことなんか全く知らないし、特に興味があるわけでもない。

 今はこんなんだが、本当はもしかしたら友達が何十人といるかもしれない。

 こいつを戦場に連れて行って、その後褒美を貰ったらきっとこの王子様とは何の関わりもない人生になるだろう。

 ヒナには馴れ馴れしいし、別に気に入ってるわけでもない。

 それでも。

 それでも、一人はきっと……。

 

「あー、やめだやめ」

 

 俺はそう言うと、全員が俺の方を見てきた。

 その視線を無視して、厨房から自分の分の飯を持ってきて、王子様の右斜め前に腰掛けた。

 ヒナ達が何か言ってるが、知ったこっちゃない。

 

「腹減って死にそうだ。邪魔するぜ、ジャティス君」

 

 それでもなんとなく一人で座るこいつを放っておけなくなってしまった。

 俺の行為は全くと言っていいほど、褒められたものではないけど、こうしたいと思ってしまった。

 今更怒られたりとかしないはずだ。多分。

 

「……死にそうなら仕方ないな。だがジャティス君はやめろ」

 

 そう言ってくるジャティス王子の表情は変わらないが、心なしか表情が少し柔らかい気がした。

 





一週間目安なのでセーフです。
すみません、冗談です。
実は急用が入ったり、思い付いた展開があって十話ぐらい先のお話を書いてたりしたら進みが遅くなりました。
その思い付いた話はヒカルととあるキャラの重要なシーンだったので忘れないように優先して書きました。
次の投稿も一週間目安でお願いします。

またpaprika193様から支援絵をいただきました。

【挿絵表示】

まさかの霧の森第二弾です。さてはこれ第四弾まであるな?
ゴスフェ衣装のヒカル君。
マジカッコいいイラストありがとうございます。



ヒカルのジャティス王子に対しての態度は「ヒナギクに馴れ馴れしいんだよこの野郎。お父さんそういうのマジ許さないから」みたいな感じです。
王族相手にこんなのいいの?みたいな指摘は無しでお願いします。

次のお話はまだ書けてませんが、次こそは話が動き始め、円卓の騎士が……?


高評価、お気に入り、感想ありがとうございます。
長いこと続けられているのも反応を頂ける読者様のおかげです。
最近頂ける評価は高評価ばかりでめちゃくちゃ嬉しいです。
これからも精進致しますので、よろしくお願いします。
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