このすば ハード?モード   作:ひなたさん

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78話です。さあ、いってみよう。



78話

 

 

「いってえ…」

 

 俺とジャティスは熱いシェイクハンドをかまして、俺の右手はバキバキになっていた。

 あの後話すことはもう無いので明日に会おうと言われて部屋を追い出されて、今は手を治してもらうべくヒナの元へ向かっている。

 

「もうあいつの名前はまさよしで決定だ」

 

 そう呟きつつ、ヒナの部屋の前でノックをしてみたが返事がない。試しにノブを回してみると鍵がかかっていた。

 シャワー中とかかもしれないが、俺はある事を思い出して厨房へと向かった。

 

 

 

「御用改めである!!」

 

「わあ!?…なんだ、ヒカルか。驚かさないでよ」

 

「なんだじゃねえよ、この食いしん坊」

 

「……しょうがないじゃん。足りなかったんだもん」

 

 案の定ヒナはここで飯の続きをしていた。

 先程の夕飯はジャティスに気を使ったか、もしくははしたないとでも思ったのか、俺達と同じ量しか食べていなかった。

 いつもはニ、三人前を余裕で食べるヒナがそんな量で満足するわけもなく、ヒナならここにいるだろうと予想してここに来てみれば見事当たったというわけだ。

 

「どうしたの?お腹すいたの?」

 

「お前じゃねえんだよこの野郎。手、治してくれ」

 

「手?」

 

 俺の手を見て、怪訝な顔をするヒナ。

 

「どうしたのこれ?」

 

「まさよし君と握手したら握り潰された」

 

「はあ?」

 

 何言ってんだこいつ、みたいな顔をやめろ。

 嘘はついてないぞ。

 

「王族の握手は相手の手を握り潰すのが作法らしいぞ」

 

「そんなわけないでしょ。どうせヒカルが変なこと言って怒られたんでしょ?」

 

「変なことじゃねえよ。まさよし君って呼んだだけだぞ」

 

「……かっこいい名前なのにね…」

 

 そう言って残念そうな顔で俺の手に回復魔法をかけてくれる。

 かっこいいかどうかは知らんが、良いニックネームだと思ったんだがな。

 そろそろ折れた手が腫れて熱を持ってきてたので、早々に治してくれるのはありがたい。

 

「一応治ったと思うけど、安静にしといてね」

 

「この旅が無事に終わればな」

 

「…そうだね」

 

 そう言って暗い表情になった。

 変な返事をしなければよかったか。

 そう思って、何か話題を変えようと思っていたらヒナが何か思いついたような表情になった

 

「そういえば、さっきの『ごよーあらためである』って何?」

 

「ああ、それは日本の昔の警察が悪いことした奴のところに捜査しに来た時に言う感じの言葉だ」

 

「……僕、悪いことしてないもん」

 

 そう言って膨れっ面になるヒナ。

 

「つまみ食いしてただろうが。まあ言ってみたくなっただけだ。気にすんな」

 

「ふーん。じゃあ僕もヒカルがなんか悪いことした時に使おうっと」

 

 余計な知識を与えてしまったかもしれない。

 

「ねえ、ヒカル」

 

 また暗い表情になったヒナが呼んでくる。

 なんだ、と返すとゆっくり近付いて抱き付いて来た。

 

「なんかすごく嫌な予感がするんだ」

 

「物騒なこと言うんじゃねえよこの野郎」

 

 力強く抱き付いてくるのを抱き返してやると、ぶるぶる震え出した。

 

「なんか怖いんだ。今すぐみんなでテレポートして帰りたいぐらい」

 

「そんなにか。でも、あともう少しだろ?」

 

 ヒナの震えは止まらない。

 そこまでの恐怖を感じているのか。

 

「そうなんだけど、何かが起きそうな気がする…」

 

 こいつは予知能力まで手に入れたのか、それとも危険な戦場へ向かっていることのプレッシャーか、はたまた王族の護衛をするという責任から来ているものか。

 こいつなら予知能力を手に入れたって不思議じゃない。

 エリス様に愛されて、才能に満ち溢れたこいつなら驚くようなことじゃない気がする。

 

「わかった。ジャティスを送り届けたら、戦場とかには目をもくれずにヒノヤマに向かおう。何言われたって知ったこっちゃない。お前も変な責任とか感じなくていい。リーダーの俺がこの方針で行くって言ってんだからな」

 

「…うん」

 

 ヒナをなんとか落ち着かせて部屋に送った。

 その後、自分の部屋に戻ると疲れていたのか、すぐに眠くなった。

 シャワーは明日の朝に回し、すぐに寝ることにした。

 

 

 

 翌朝。

 全員で朝食を済ませて、荷物を取り、外に出る。

 屋敷はジャティスが何かを唱えると、元の謎の四角形に戻った。

 なんて便利な代物だ。

 普通なら寝るのも交代制だし、飯も辺りを警戒しながらさっさと食べて、野営に使った物の後片付けとそれなりの時間もかかるのだが、一瞬で終わってしまった。

 そしてまた戦場へと向かい始めて、少し経った頃。

 

「ふわあ〜」

 

「あくび?どうしたの?」

 

 先程から出て来るモンスターはジャティスが一瞬で倒すせいで、ただののどかな歩き旅になってるせいだ。

 

「そなた、まさか手を怪我したままか?」

 

「あ?あ、そういえば昨日はよくもやってくれたなこの野郎」

 

 ジャティスが昨日シェイクハンドどころかプレスハンドしたせいで俺が寝不足なんだと思ったのかそう聞いて来た。

 ヒナの回復魔法が完璧だったせいで少し忘れかけてた。

 

「む?違うのか?まあ、いい。一応手を見せてみろ。もし本当に痛むのであればヒナギクに回復してもらおう」

 

 そう言って俺の手を取るジャティス。

 

「おい、野郎と手を握る趣味は無いぞ、まさよし君」

 

「余も無いに決まっているだろう。あと、まさよし君ではない。ジャティスだ」

 

「まさよし君もジャティスも意味合い的にあまり変わらないからいいだろうが。いいから離せこの野郎。大丈夫だって言ってんだろ」

 

「意味合いの話ではなく、名前そのものが変わってるだろう。まさよし君呼びは許さん。続けるのであれば…」

 

 そんな言い合いをしてたらトリスターノが俺達の間に割って入って来た。

 

「失礼します。リーダー、ジャティス王子。仲が良くなったのは大変喜ばしいことなのですが、ここはモンスターが多く生息する場所です。静かに移動する事を意見具申します。それにリーダーの手も…特に問題はなさそうですね」

 

 そう言いつつ、トリスターノが割って入ったおかげでフリーになった右手を握り、見てくる。

 なんでお前とも手を繋がなきゃならんのだ。

 

「それに」

 

「おいこら、もういいだろ。手離せこの野郎」

 

 なんでこいつ離そうとしないどころか、握る手を強めてんだ!?

 きもちわるっ!

 

「ジャティス王子、失礼を承知で申し上げますが、リーダーの男親友枠は私です。ジャティス王子ほどの人が相手でも、これは譲れません」

 

「何言ってんの、お前。すごい気持ち悪いんだけど。てか手離せ」

 

「…ほう。だがシロガネは嫌がっているようだな?」

 

 そう言って俺の左手を取るジャティス王子。

 

「別にお前ならいいわけでもねえよ!いででででで!強引に握ってんじゃねえよ!てめえ離せ!どっちも離せ!」

 

 両手をバカ二人に取られて、バカ二人は睨み合うかのように俺を挟んで見合っている。

 

「強引なのは嫌われますよ、離してください」

 

「そなたこそ離せ」

 

「どっちも離せっつってんだろうが!!気持ち悪いんだよこの野郎!」

 

 そんなやり取りをしていたら、控えめに服を引っ張られて、首だけなんとか振り返ると心配そうにゆんゆんが見ていた。

 

「ね、ねえ、ヒカル?男の人が好きとかじゃないよね?じょ、女性の方が好きだよね?」

 

「何の心配してんだ!?今まで俺の何を見てきたんだ!?当たり前だろうが!」

 

 そう言った後、ゆんゆんとは逆方向の後ろから服をグイグイ引っ張られて首だけまた振り返ると、ヒナがこちらを見ていた。

 

「ねえ、僕は?僕は何枠なの?」

 

「知るか!っていうか枠とか勝手に言い出したのはトリスターノだろうが!変なこと言ってんじゃねえよ!てかマジで手離せこの野郎!」

 

「ヒ、ヒナギクは余の恋び」

 

「お前も変なこと言い出してんじゃねえよ!言っとくがお前とどれだけ親しくなろうとそれだけは許さんからな!」

 

 バカ王子がバカなことを言う前に遮った。

 

「なるほど。ジャティス王子は恋のライバル枠ですか」

 

「何がなるほどだ!?冷静な分析してるみたいなリアクションやめろ!」

 

「ねえ?本当に大丈夫なんだよね?信用していいんだよね?」

 

「それだけは信用してくれよ!聞くまでもないだろうが!」

 

「なかなか良いな。親友ではあるが恋のライバルでもある。どこぞの物語にありそうじゃないか」

 

「お前も冷静なフリしつつボケ倒すのをやめろ!」

 

「待ってください。二つも枠があるのはどうかと。どちらかにしてください」

 

「ねえ僕は?僕的にはお姉さん枠だと思うんだけど」

 

「お前は良いとこペット枠だ馬鹿野郎!てかマジで離せよ!気持ち悪いって言ってんだろうが!」

 

「ペット!?なんで僕が!?訂正して!このっ!このっ!」

 

「脇腹を殴ってくるのをやめろ!」

 

 全力で殴ってきてるわけじゃないが、当たったら普通に痛いレベルの殴りだ。

 左右、後ろからと話しかけられて首が忙しい。

 

「二つ枠があるのはいけないなんてルールは無い。余とシロガネはライバルとして切磋琢磨し合い固い友情が芽生える流れだ。そなたに勝ち目はない。手を離せ」

 

「そういう話は私が70話とかでやってます。残念ながら私の勝ちです。諦めてください」

 

「おーーい!バカを治す魔法はありませんかーー!?あったらこのバカ共にかけてあげてくれませんかーー!?」

 

「そんなのあるわけないでしょ?だいたいヒカルの方がバカでしょ?」

 

「うるせえよ!ああ、もう離せ!!引っ張るな!急いでるんじゃなかったのかこの野郎!!」

 

 

 

 

「戻ってきてる様子はないな」

 

「テレポートで撤退したとかは?」

 

「最悪の状況が続いたのであれば、父上だけでも撤退させるかもしれないが、全員を撤退させるのは難しいだろうからテレポートで撤退は無い、はずだ。それに今の戦場を引くと資源の豊富な場所を取られてしまうから尚更全員が撤退するのは考えられない」

 

「そうか。とりあえずここで一度休憩していくか」

 

 あれから歩き続けて、戦場と街の中間地点に幾つか置かれている野営地に着いた。

 多くのテントが並び、寝る場所や水に食料、そして医療道具やポーションがある程度揃っているみたいだ。

 着いてから野営地を確認してみたが、王子から見たら特に変化も無く、誰もいなかった。

 ここで合流出来れば、ジャティスを引き渡せたのだが、まだヒノヤマへ向かうことは出来ないみたいだ。

 この野営地はモンスター避けの結界もあって、休憩がしやすい場所なので休憩をしていくことになった。

 俺はさっさと食事を終わらせて、寝る時間に当てた。

 

 一時間ほど寝た頃、ヒナに叩き起こされた。

 また徒歩の旅が再開だ。

 ある程度歩き進め、無言の時間が続いた頃にトリスターノが口を開いた。

 

「ジャティス王子、一つ聞きたいことがあります」

 

「なんだ?」

 

「戦場の最前線に立ち、この国でもトップクラスの実力を持つジャティス王子をたった三人で追い込んだ円卓の騎士について聞きたいのです」

 

 とうとう聞いたか。

 

「む、そうだな。どれもまだ年若い男だったな。二人は少し似ていたから兄弟かもしれない。それぞれ金髪碧眼の色黒の肌で、身長が高い方は細長の槍を持っていた。低い方は自身と同じくらいの大剣を持ち、その馬鹿力に吹き飛ばされたのだ」

 

 その特徴を聞いて、トリスターノはまるで苦虫を噛み潰したような表情になった。

 もしかしたら同僚の中でもマジで嫌いな奴なのかもしれない。

 

「三人目の騎士は『ラモラック』と名乗っていた。その騎士だけは顔も鎧をしていた。槍も剣も装備していて、魔法も使えるみたいだった。状況に応じて使い分けていて、うちの兵士を容易く倒していた」

 

「……そうですか。教えていただき、ありがとうございます」

 

「そなた達も気をつけよ。そなた達も実力があるとはいえ彼等を相手にするのは難しいだろうからな」

 

「はい、ありがとうございます」

 

 トリスターノがお礼を言った後、さりげなくトリスターノに近付き、来ている円卓の騎士について聞くことにした。

 

「トリスターノ。そいつらはどんな奴なんだ?」

 

「……名前が不明の騎士二人は恐らく『パラメデス』とその弟の『サフィア』です」

 

 喋るのも嫌だと言わんばかりに表情を歪めて話すトリスターノ。

 

「なんだ?嫌いなのか?」

 

「……嫌いとかじゃありません。彼らが私のことを勝手に嫌っているだけで私は…」

 

「つまり嫌いなんだな?」

 

「……ええ、二度と会いたくないぐらい嫌いですよ。特にパラメデスにはね」

 

 いつもニコニコしているコイツも人を嫌いになるなんてことがあるのか。

 少し、というより割と気になってストレートに聞いてしまう。

 

「何かあったのか?」

 

「……あー、なんというか、その」

 

 トリスターノは目を泳がせて、話すのを躊躇っていた。

 俺が無言で待ってると、トリスターノは観念したように口を開いた。

 

「……パラメデスとは、その、女性を取り合ったというか」

 

「……」

 

「やめてくださいよ、その目…。パラメデスとは争い事が絶えなくてですね。騎士内の勝負事でも事故を装って殺しに来たりしてきたんですよ」

 

「……」

 

「私は別に殺そうなんて思ったことはありません。絶対に。ですがパラメデスが執念深くて結果的には殺し合いに発展してしまったというか」

 

「嫌いとかいうレベルじゃねえだろ」

 

 険悪どころの騒ぎじゃなかった。

 トリスターノは口や表情では上手く誤魔化してるが、本気で恨んでるんじゃないか?

 

「槍の腕を見てもらった時に難癖をつけて来た騎士の話をしましたよね?パラメデスが円卓の騎士全員の前で難癖をつけてきたんです。私の弓には勝てないから自分の得意な槍の勝負に…」

 

「あー、えっとサフィアは?」

 

「……サフィアはパラメデスの弟ですね。無表情無口でずっとパラメデスの後ろを付いてる腰巾着みたいな男ですが、円卓の騎士一の筋力を持っています」

 

 ジャティスを遥か彼方にぶっ飛ばしてるわけだからな。

 というかトリスターノの話し方的にどうやらサフィアも嫌いみたいだ。

 

「じゃあラモなんとかは?」

 

「ラモラックは円卓の騎士の中でも強力な魔法剣士の一人です。武勇に優れていますが、プライドが高く、そのせいで私とも馬が合わなかったみたいですね」

 

「つまり嫌いなんだな」

 

「ええ、嫌いです」

 

 即答だった。

 

「トリスターノ、なんというかアレだな。運が悪かったというか…」

 

「本当にそう思、皆さん止まってください」

 

 俺と声を潜めて話し合ってたのに、いきなり全員に聞こえるように声を出すので驚く。

 

「どうした?」

 

「敵感知に反応があります。反応は二つ。十二時方向と六時方向から私達が逃げられないように近付いてきています」

 

 トリスターノに言われて道の先を見ると、人が見えた。

 その人物はゴツい鎧に身を包み、槍を肩に担ぐようにして、こちらへと近付いて来ていた。

 後ろを振り返ると、同じ様な出で立ちで大きな剣を引き摺るようにして持ち近付いて来ていた。

 

「おい、まさか…」

 

「リーダー。私は、いえ私達は本当に運が悪いみたいです」

 

 円卓の騎士のパラメデスとサフィアだ。

 





文字数多くなるかと思って、とあるシーンをガッツリ消したので、変なところがあるかもしれません。
あったらすみません。
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