このすば ハード?モード   作:ひなたさん

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80話です。さあ、いってみよう。



80話

 気がつくと懐かしい空間にいた。

 日本で死んだ後に来た場所。

 あの駄女神に会った場所に似た真っ暗な空間。

 数メートル先には椅子に座った絶世の美女。

 何も知らなければ見惚れていたかもしれないが、俺は知っている。

 見た目とは裏腹に中身は残念な女神様。

 

「ようこそ死後の世界へ。白銀光さん」

 

「エリス様…」

 

 はっきりしない頭で椅子に座った女神の名を呼んだ。

 

「辛いでしょうが、貴方の人生は終わったのです」

 

「は?」

 

 間抜けな声を出した後、俺は思い出した。

 円卓の騎士パラメデスに胸を一突きにされたことを思い出した。

 慌てて胸を確認してもそこには槍も刺さっていなかったし、穴は空いていなかった。

 だが手を当てた時にあるべきものが無かった。

 心臓の鼓動を感じなかった。

 なんで。どうして。

 何度も手を当てて確認するが、何も感じない。

 

「落ち着いてください。一度深呼吸を」

 

 これが落ち着いていられるか。

 怖い。

 心臓の鼓動を感じないだけで俺はどうしようもないほどの恐怖を感じた。

 呼吸が落ち着かない。

 鳥肌が立って、手足に力が入らない。

 

「深呼吸をしてください。貴方らしくありませんよ」

 

 何が俺らしいだ。

 死んじまったのか?

 あんなあっさり?

 あんな簡単に殺されて?

 

 ふざけんな。

 俺があの世界で頑張ったことはなんだったんだ。

 俺があいつらとーーーっ!!!

 

「おい!!あいつらはどうなった!?」

 

 気付いた時には叫んでいた。

 そうだ、なんで俺は自分のことばかり考えていたんだ。

 俺が一番大事なのはあいつらだろうが。

 

「きゃっ!?い、いきなり大声を出さないでください!」

 

 なんだその普通の女みたいなリアクションは!!

 今更普通ぶるな!

 

「あいつらは!?ヒナ達はどうなったって聞いてんだこの野郎!!」

 

「お、落ち着いてください!今話しますから!」

 

「無事なんだろうな!?」

 

「貴方以外は無事です。今は」

 

「変な言い方するんじゃねえよ!どうなってるんだよ!?」

 

「今はトリスターノさんが一人で戦っています」

 

「っ!?」

 

 思わず息を呑んだ。

 

 あれにトリスターノが一人で……?

 嘘だろ……?

 トリスターノは確かに強いが、パラメデスほどじゃない。

 まさか二人が逃げる時間を稼ぐ為に?

 やっちまった。

 俺があっさり死んだせいで

 

「落ち着いてください。トリスターノさんは意外と戦えていますよ」

 

「……は?」

 

「彼も円卓の騎士ですからね」

 

 え、マジで言ってんのか?

 あれと戦えてるのか?

 トリスターノは後衛なのに、どうやって?

 いや、戦えてるなら今はいい。

 

「ゆんゆんは!?ヒナは!?」

 

「ゆんゆんさんは動揺してますが、貴方の体とヒナギクの護衛をしています。ヒナギクは貴方の体を治してますが」

 

〈『リザレクション』!!うそ、なんで!?『リザレクション』!『リザレクション』!『リザレクション』!なんでなんでなんでなんで!?なんで発動しないの!?なんで!?〉

 

 半狂乱になっているヒナの声がどこからか聞こえた。

 そうだ、『リザレクション』があった!

 トリスターノが戦えてるなら、俺が今度こそ殺す気でやればきっとなんとかなるはずだ。

 

 だが、頭上から聞こえるヒナの声は様子がおかしい。

 まるで俺の蘇生が出来ないような

 

「貴方に『リザレクション』は使えません」

 

 エリス様が俺の考えを読んだ様に先にそう言った。

 

「は?」

 

 間抜けな声が出た。

 なんで使えないんだよ。

 

「蘇生魔法は一度しか許されない奇跡の魔法です」

 

 俺はまだ蘇生魔法はかけてもらってない。

 だというのに、何故。

 

「貴方はこの世界に来る時に一度死んでいます」

 

 ………………は?

 

 

 日本から来た時のもカウントするのかよ。

 うそだ。うそだと言ってくれ。

 

「ま、待ってくれ!俺はまだ……!」

 

「天界規定により、二度の奇跡は許されません」

 

 この女神の冷静な表情に腹が立って仕方ない。

 

〈戻ってきて!!戻ってきてよぅ!!嫌だ!お願い!ヒカル帰ってきて!!嫌だ嫌だ嫌だ!お願いします!エリス様!!〉

 

 ヒナの悲痛な声が辺りに響く。

 くそ、結局こいつは俺が死んで万々歳ってわけかよ。

 そんなことを思っていたら、目の前の女神は深々と頭を下げた。

 

「申し訳ありません。最近の私の行動のせいで、女神としての力や発言権が弱くなっていて、貴方の二度目の蘇生の申請は通りませんでした」

 

 よくわからないが、一応俺に味方しようとしてくれていたのか。

 

「ある一人の少年の蘇生の規定を曲げるのが精一杯でした」

 

 じゃあ、俺は戻れないのか。

 

 あいつらに、もう会えないのか。

 

 ヒナの泣き叫ぶ声が聞こえる中、俺を絶望感が包んでいく。

 頭の中が真っ白で、何もかんがえられない。

 

「……ですが、創造神様に無理を言ってチャンスをいただきました」

 

 自然と俯いていた顔が上がり、不安気ではあるものの諦めていないような表情のエリス様が見えた。

 何かあるのか?戻れる方法が?

 

「これは正直言って危険です。大きな賭けに」

 

「やってやる。あいつらに会う為ならなんだってやる!」

 

 希望はまだあるらしい。

 なら、それにしがみつくしかない。

 

「わかりました。貴方にはとある世界を救っていただきます」

 

 エリス様は嬉しそうに微笑んだ後、真面目な表情でそう宣言した。

 

 

 

 

 

 俺が生き返るには世界を救った特典を使わないといけないらしい。

 要は今から別世界に行き、その世界を救って、その世界を救った褒美として与えられる特典を使って今いる世界での蘇生が認められる。

 創造神様の最大限の譲歩がこれなのだとか。

 本来であれば二度目の蘇生は許されないが、褒美の特典を使った蘇生は許す、と。

 普通は世界を救った特典は私利私慾の為だったり好きな人を蘇らせたりとかする為に使われるらしいのだが、こんな使い方は初めてらしい。

 世界を救え、なんて俺に大それたことが出来るかわからないが、戻るためにはやるしかないんだ。

 

「どんな世界に行けばいいんだ?あまり世界観が違うと困惑するっていうか…」

 

「安心してください。貴方のよく知っている世界ですよ」

 

「ちょっと待った。日本とかそういうオチか?やめてくれよ、あんなのどうやって救うんだよ!?」

 

「ち、違いますよ。落ち着いて聞いてください」

 

「とにかく早めに簡潔にちゃんと説明して、その世界に送ってくれ。あいつらが待ってるんだ」

 

「分かっています。ちゃんとその世界を救えば、ヒナギク達に危険が迫る前に蘇生できるようにしますから、落ち着いて聞いてください」

 

「本当か!?じゃ、じゃあ落ち着いて聞くわ。ひっひっふー、ひっひっふー」

 

「はあ……。もうその呼吸法でいいので落ち着いてくださいね」

 

 エリス様は頭を抱えてため息をつく。

 なんだよ、いつもは俺がそうする側なのに。

 なんか納得いかないけど、なんとか落ち着いてきた。

 

「……ふう、話を聞くとしよう。言っておくが、俺は同じ失敗はしない。あの自称水の女神に何も教えられないまま違う世界に送り込まれるようなことは御免だ。何から何まで聞いてから行ってやる」

 

「その件に関しては私からも謝罪しますが、あれでもアクア先輩は自称ではなく、ちゃんとした水の女神ですよ」

 

「そんなことはどうでもいいんだよこの野郎。とにかく聞かせてくれ。俺のよく知る世界って言ったな?俺のよく知る世界なんてこの世界か、元の俺が生まれ育った世界しかないぞ」

 

 正直この世界に関してはよく知っていると言っていいのか微妙だ。

 まだ勉強中だぞ。

 

「もう、やっぱり落ち着いてませんね。いつもより変ですよ」

 

「変態に変って言われた…」

 

 流石にショックだ。

 こんな変態に…。

 

「誰が変態ですか!?」

 

「お前だろうが!!」

 

 何言ってんだこいつ。

 そう思って睨んでると、ぷいとそっぽを向いた。

 

「いいんですよ?別に説明無しで別の世界に送っても?」

 

「こ、この…」

 

「あー手がー。手が勝手にー」

 

 エリス様が棒読みで手を俺にかざすと、俺の足元に魔法陣が少しずつ浮かび上がる。

 この変態女神まじかよ!?

 

「て、てめえ!」

 

「あー!魔法陣が完成して『転送』って言っちゃったらー!あー!魔法陣がー!」

 

 わざとらしくかざした手を別の手で押さえようとしながら棒読みで叫ぶエリス様。

 

「く、くそあっ!!す、すみませんでした、エリス様!!……これでいいだろ!?」

 

 九十度腰を曲げて深々と頭を下げた後にエリス様を見上げると、エリス様はニヤニヤとした笑みになっていた。

 

「汝、私に向かい二度と『変態女神』と口にしないことを誓いますか?」

 

「ぐ、ぐぐぐ…」

 

 悔しさのあまり歯を食いしばった。

 落ち着け。

 今はこんな場合じゃ

 

「てんそ」

 

「誓います!!」

 

 ヤケクソに叫んだ。

 この女神、マジで後で覚えてろよ。

 俺が誓ったことに満足したのか、ニコニコして手をかざすのをやめた。

 そして魔法陣も消えていた。

 

「あっ、そうだ!」

 

 俺が早く話を聞かせろと言う前に、何かを思い付いたようにエリス様が声を上げた。

 

「汝、私とヒナギクの仲を認め、仲人として私達の仲を…」

 

「てめえ、いい加減にしろこの野郎!!!」

 

 やっぱり変態じゃねえか!

 俺が変態女神に掴みかかると、被害者面して悲鳴を上げた。

 

「きゃああああああ!?や、やめてください!乱暴しないでください!他の神や天使を呼びますよ!?」

 

「てめえが悪いんだろうが!!早く話せこの野郎!!」

 

 

 

 

 

 お互い少しボロボロになって、ようやく話が始まった。

 

「平行世界というのをご存知ですか?パラレルワールドとも言います」

 

「まあ、知ってるよ。最近の物語ではよく使われる設定だろ」

 

 説明がめんどくさいが、もしもの世界とか、これまでとは違う行動をした世界とか、そんな感じか。

 例を出すのも嫌なぐらいあり得ないが、この変態女神が超絶清楚の女神様だという平行世界も存在するかもしれない。

 絶対にあり得ないけど。絶対に。

 

「知っているなら説明は省きますね。つまりヒカルさんにはこの世界の平行世界に行っていただきます」

 

 この世界の平行世界に?

 わけわからんが、少しずつ聞いていくしかない。

 

「その平行世界の私はかなり力を失くしているみたいなので、直接的な協力は出来ませんが、情報提供は確実にしてくれるはずなので何か聞きたいことがあれば…」

 

 力を失くしてる?

 

「どういうことだ?」

 

「申し訳ありません。私のことに関しては教えられません。というより私自身も知らないのです」

 

「はあ?」

 

 ますます訳がわからん。

 

「ヒカルさんに行ってもらう世界は未来の平行世界なんです」

 

「未来の平行世界?」

 

「はい。ヒカルさんをその未来の平行世界に送ることは出来るのですが、未来のことを知るわけにはいきません。情報規制がかかっていますから」

 

 変な単語が出てきた。

 

「えーっと、つまり今の俺の目の前にいるエリス様が未来のことを知ってしまうのはよくないからエリス様も詳しくないってことか?」

 

「その通りです。なので、まず未来の平行世界に送った際にその世界の管理をしている私の元へ送ります。そこで詳しいことを教えてもらってください。ですが、ちゃんと私が知っていることもあります。それだけはお伝えしましょう」

 

「ちょっと待った。それなら俺が送られても未来のことを知ることになるんじゃないのか?」

 

「そうですね。ヒカルさんがその世界を救い、こちらへ戻って来た時に情報規制で記憶は消されてしまいます。なのでヒカルさんはこちらへ戻って来た時には最低限のことしか覚えていないでしょう」

 

 消すから知っても問題ないよってか。

 

「そうか。邪魔して悪かった。エリス様が知っていることを教えてくれ」

 

「はい。わかりました。私が知っていることは少ないですが、まずヒカルさんがこれからいく世界は『この世界より数年後の平行世界』だということ。次に『その世界の女神エリスの力は大幅に弱体化している』こと。そして…」

 

 言いづらいのか、少し言葉が止まった。

 

「……『その世界の白銀光は死亡している』こと」

 

「…………え?」

 

 思わず聞き返した。

 俺?俺が死んでる?

 

「以上が私が知る情報です」

 

 平行世界ってのは、つまりそういうことか?

 俺が死んでしまった世界ってことか?

 

「それと創造神様からの言伝を預かって来ました」

 

「は?創造神さま?俺に?」

 

 もうさっきからわけわからんことだらけだ。

 

「はい」

 

「お、俺は全く全然面識とか何もないんだけど…」

 

「ですが、伝えろと言われたので、言われたままをお伝えします」

 

 そう言って、何故かエリス様はムッとしたような顔になって、無理矢理声を低くしているような、そんな感じで話し始めた。

 

「『てめえの行動の責任を取ってこい。もし移動した先でくたばったら俺がてめえのドタマぶち抜いてやる』……だそうです」

 

 もしかしてエリス様、今の変な表情といい創造神さまとやらの真似してたのか?

 知らんからわからないけど。

 というか意味がわからない。

 死んだらまた殺されるってことか?

 

「質問しても無駄ですよ。私にもわかりませんから」

 

 俺が口を開く前にそう言った。

 もう何だってんだ。

 

「さて、そろそろ貴方を送りましょうか。もう話せることはありませんしね」

 

「え、ちょっと待て、っておい!?」

 

 エリス様が俺に手をかざして足元に魔法陣が浮かび上がった。

 

「早くヒナギク達の元に向かいたいのでしょう?」

 

 ……そうだ。その通りだ。

 エリス様から伝えることがないのなら早く行くべきだ。

 俺の体が浮かび上がり、俺は覚悟を決めた。

 何メートルも頭上には眩い光が大きく広がっていて、俺はその光へと浮いているみたいだ。

 

「貴方ならきっと成し遂げるだろうと信じています」

 

 女神のような微笑みで俺にそう言ってくる。

 

「……やらなきゃあいつらに会えないんだ、絶対に何をしてでもやり遂げてやる」

 

「はい、私自身も貴方がここで終わることを望んでいません。絶対に帰ってきてくださいね?」

 

 ……もう本当に変態女神とは呼べないかもしれない。

 そんなことを思いながら、俺は頭上の光に飲み込まれていった。

 




今回も後書き長め。

やっぱり思い付いた中で一番ハードな道を進んでもらうことにしました。
アンケートでもハードを選んだ方が多かったですしね。
少しシリアスが続きますが、お付き合いいただければ幸いです。



前回で出てたラウンズスキルの説明が前回の後書きに無いとかマジ?
ここで説明します。誰かさんも当然持っているスキルですからね。

ラウンズスキル
円卓の騎士がそれぞれ持つオリジナルスキル。
騎士によってスキルの効果は違うが、ほとんどの騎士は一つのラウンズスキルしか所持していない。
騎士王や騎士王に名を連ねるほどの実力を持つ者だけが複数のラウンズスキルを持っているらしいが、条件等も含めて詳細は不明。
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