このすば ハード?モード   作:ひなたさん

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今回はシリアス、説明、伏線などなど大盛りになっております。
文字数もいつもより倍です。

81話です。さあ、いってみよう。



81話

 

 

 目を開けると、先程と全く変わらない空間にいて椅子に腰掛けていた。

 

「平行世界からようこそ。白銀光さん」

 

 声をかけられて見ると、そこには絶世の美女が……

 

「えーっと、エリス様?」

 

「はい、エリスです」

 

 頷くエリス様は先程まで一緒にいたエリス様とは全く違う様子だった。

 目の隈はひどく、髪もボサボサで顔に生気がなかった。

 まるで病人だ。

 この世界では一体何があったのだろう。

 

「お久しぶりです、シロガネさん」

 

 そう言ったエリス様は表情はあまり変わっていないように見えたが、なんとなく睨んでいるように感じた。

 

「……俺はさっきまで一緒にいたんだけどな」

 

「そうでしたね。私からすれば数年ぶりでしたもので、つい…。申し訳ありません」

 

 ペコリと頭を下げてくるエリス様。

 何か失礼なことを聞いてしまうかもしれないが、もう気になってしまって仕方がない。

 

「その、エリス様?何というか、俺が知ってるエリス様とは随分と違うっていうか…」

 

 直球で聞こうと思ったが、なんとなく躊躇してしまって濁しながら聞いてしまう。

 

「そうでしょうね。ですが、私も貴方を見て、同じことを思いますよ。そんな良い装備を身につけていますしね」

 

 良い装備?

 魔術師殺しの装備のことか?

 

「シロガネさんも聞きたいことだらけでしょうが、私も知りたいことだらけなんですよ。平行世界とはいえ、どうしてここまで変わってしまうのか、気になって仕方がないんです」

 

 俺がいるのといないので、そこまで変わるのだろうか。

 とにかくこの世界を救えば、ゆんゆん達が危なくなる前に蘇生させてくれるって言ってたし、今は落ち着いて情報の交換をしよう。

 

「あー、その、何が知りたいんだ?」

 

「……意外と落ち着いてるんですね?大変な状況だと聞きましたが」

 

「今は慌てても仕方ないしな。結果出せばいいんだし、お互いに情報交換は必要だろ?」

 

「……そうですね。では私から質問していってもいいですか?」

 

「どうぞ」

 

「では遠慮なく。あの絶望的な状況からどうやって生き残ったんですか?」

 

 絶望的な状況?

 俺の怪訝な顔を見て察したのか、エリス様は失礼しましたと口にしてから続けてくる。

 

「騎士王に遭遇した時のことです。貴方は一人残って戦い、そして負けた。そうですよね?」

 

「それで合ってる。けど、この世界の俺はもしかして…」

 

「ええ、その時に騎士王に殺されました。ですが、平行世界の貴方は生きていますね。どうやって生き残ったんですか?」

 

 そうか、あの時に。

 でも、正直な話、そうなってもおかしくなかった。

 

「その、わからないんだ。あれから約半年経った今でも何故俺が生きてるか、わからない」

 

「……詳しく聞かせてください」

 

 エリス様に説明した。

 俺は騎士王に最後槍を振り下ろされて気絶した。

 その後、ゆんゆん達が戻ってきて倒れてる俺を確認すると、ボロボロであちこち怪我をしているものの命に別状は無く、ヒナに回復されて、そのまま宿に戻った。

 説明が終わると、エリス様は少し黙った後、この世界の俺のことを話し始めた。

 この世界の俺も一人残り騎士王に負けた。同じく戻ってきたゆんゆん達に倒れてるところを見つかり、状況を確認したがそこで既に事切れていたらしい。

 

「本当に何もわからないんですか?」

 

「今でもわからない。何で生きてるのか。偶然なのか、それとも見逃されたのか、死んでると見間違えたのか」

 

 本当にわからない。

 ちょっとアホな王様だったから、もしかしたら死んだと思い込んだだけなのかもしれないが。

 

「そうですか。貴方一人の死がここまで世界の流れを変えるなんて、今でも信じられません」

 

 はあ、とため息をつきながら疲れ切ったように話すエリス様。

 どこまで変わったというんだ?

 自分で言うのもなんだが、俺一人が死んだところで世界の流れとやらが変わるわけがないと思うんだが…。

 そろそろ俺も質問させてもらおう。

 

「エリス様。世界の流れが変わったとか言ってるってことは、俺がさっきまでいた平行世界のことは知ってるのか?」

 

「ええ、知っていますよ。理想的な世界で羨ましい限りです」

 

 理想的?

 俺が死んだ程度でそこまで違うのか?

 

「俺はこの世界のことを全然知らないんだ。情報規制がどうとかで。だから、どうなったのか教えて欲しい」

 

「でしょうね。ええ、答えられることなら幾らでも答えますよ」

 

 幾らでも、か。

 さっきから気になって仕方がないし、一番に聞いてしまうか。

 

「その、言い辛かったら別に構わないんだけど、エリス様がすごい弱ってるみたいなことを向こうの世界で聞いて、現にこうして会ったエリス様も調子悪そうなんだけど、一体何があったんだ?」

 

「貴方が死んだせいです」

 

 即答だった。

 いやいや、待て待て。

 

「……あー、俺のせい?」

 

「はい」

 

 試しにもう一度聞いてみると、食い気味に返事をしてきた。

 俺が死んで悲しい、なんて思うわけが無い。

 何故なら

 

「あのー、俺、何度かエリス様に殺されそうになったことがあるんだけど…」

 

「そのことに関しては謝罪します。貴方一人が死ぬことでまさかここまでの影響があるとは思いませんでしたから」

 

 事務的で感情のこもってない謝罪で、思わず俺の顔が引きつったのは俺が悪くないと思いたい。

 

「ですが、貴方のせいです。全部、貴方が死んだからです」

 

 なんでそこまで言われなきゃいけない。

 

「そこまで言うなら詳しく聞かせてもらおうじゃねえか。変な理由だったら承知しないからなこの野郎」

 

「ええ、何から何まで教えてあげますよ」

 

 俺とエリス様は睨み合い、まるで喧嘩が起きる数秒前みたいな雰囲気だ。

 こんなことをしてる場合じゃないのかもしれないが、ここまで言われたのだ。詳しく聞かないと気が済まない。

 

「では、わかりやすく貴方が死ぬ少し前のことから話しましょうか。私は全てを知っているわけではありませんが、貴方はトリスターノさんを気絶させて、ヒナギクに運ばせましたね?」

 

「ああ、そうだよ」

 

 何でそこで話を戻すのか分からんが、とりあえず聞くことにしよう。

 

「そして貴方はヒナギク達を逃す為に騎士王と一人で戦った」

 

「その話はさっきしただろうが」

 

「そうですね。でもヒナギクは貴方一人を残すことに反対したはずです。違いますか?」

 

「したよ」

 

「でしょうね。あの子は優しい子です。弱っちい貴方を見捨てる訳がありません」

 

 今どれぐらい強くなったか、教えてくれようか。

 そう思ったが、拳を握りなんとか我慢した。

 

「そんなヒナギクを行かせる為に貴方は嘘をついたんじゃないですか?」

 

 そう、あの時俺は嘘をついた。

 『ムードメーカー』には隠された能力がある、みたいなことを言って。

 あの後三人にしこたま怒られたな。

 

「…そうだよ。でも仕方ないだろ。あいつらを逃すにはそうするしかなかったんだ」

 

「そうでしょうね。シロガネさんは仲間を逃す為に必死だった。ですが()()()()()()()()()()()()()はどう思うでしょうね」

 

「……」

 

 ……置いて行った?

 それは違う。俺が行かせたのだから、それは

 

「貴方は違うと言うでしょうね。ですがヒナギクは違います。貴方を残して行ってしまったヒナギクは貴方とは同じ考えになりません」

 

 今まででトップクラスに嫌な予感がした。

 これ以上先を聞きたくない、それぐらいの。

 だが、もう引き返せない。

 ここまで聞いてしまったら、もう…。

 

「戻ってきたヒナギクが貴方の遺体を見て、後悔し絶望しました。ヒナギクは多くの後悔に苛まれ、最終的にこう思ったのです。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と」

 

「ふざけんな!!そんなわけねえだろ!!」

 

 反射的に叫んでいた。

 違う、絶対に違う。

 俺はただ

 

「ええ、そうでしょうとも。貴方の行動は仲間を守る上で最善の行動だったでしょうね。パーティーのリーダーとして立派だった。ですが、貴方は決定的に間違えたんです!貴方がヒナギク達を大事に思う気持ちと同じくらいヒナギク達が貴方を大事に思っていることを考えていなかった!」

 

 エリス様は途中から我慢していたものが噴き出すように声を荒げた。

 何も言い返せない。

 大当たりだ。

 自分の気持ちばかり考えてた。

 

「貴方は最悪の結果を引き当てたんです!それからあの子達がどうなったか、聞きなさい!貴方は聞く義務がある!」

 

 ああ、最悪だ。

 生き残った後にトリスターノに射抜かれたり、あいつらに監禁されたりして、あいつらの気持ちを理解した気でいた。

 全くわかってなかった。

 

「ヒナギクは帰ってきた当初は酷いものでした。自分が死なせたんだと何日も泣き叫び、食事も喉を通らず、眠ることも出来ず、私の声を聞くこともしなかった。あの子は実家へ戻り、クリスとしての私にゆんゆんさんとご両親と付きっきりでヒナギクに寄り添い、一月経つ頃やっと食事や睡眠が出来る様になりました」

 

 頼む。頼むから嘘だと言ってくれ。

 今ならドッキリ大成功とか言われても全然許すから。

 

「あの子は今でも後悔しています。数年経った今でも。最近ようやくあの子は家の外に出られるようになったんですよ。あの時のショックからアークプリーストの力は失っているので、一人では家から出られませんが」

 

 信じたくない。

 そんな話、信じたくない。

 

「次にゆんゆんさんですが」

 

 もう聞きたくない。

 聞きたくないが、聞かないと気が済まない。

 きっとエリス様の言う通り、これは()()なのだろう。

 

「この三人の中では落ち着いている方ですね。塞ぎ込んだりした危うい時期もありましたが、冒険者も続けていました。もう友達や仲間を作ろうとはしていませんでしたが」

 

 これを聞いてよかったと思ってしまった。

 それだけヒナの状況が絶望的だった。

 

「最後にトリスターノさんですね。トリスターノさんはヒナギクを実家へ送った後、一人でグレテン王国へ乗り込んで行きました」

 

 ……うそだろ。

 俺が残った意味がねえじゃねえかよ…。

 

「トリスターノさんが円卓の騎士だと納得するほどの戦いぶりで、一人で四人の騎士を殺し、三人の騎士に重傷を負わせて、あと一歩のところで騎士王の元には辿り着けず、騎士達に取り囲まれて殺されました」

 

 『最悪の結果』だ。本当に。

 

「死亡後、私の元へ来たトリスターノさんは死後の案内を聞いた後こう言ったのです。『また白銀光のような友人を作りたい』と」

 

 あのバカ野郎…。

 

「私はこの世界の貴方を日本に送りました。なのでトリスターノさんも望み通り日本の貴方が生まれ変わった先に魂を送りました。きっと良い友人同士になるでしょう」

 

 ……くそ。

 最期なんだから、『友達100人欲しいです』ぐらい贅沢言っとけ馬鹿野郎。

 

「わかりましたか?貴方の行動がどれだけのことを招いたのか」

 

「……ああ」

 

 よくわかったとも。

 だが、もし。

 もし泣き言が許されるなら、俺はあの時どうすればよかったんだ。

 トリスターノが連れて行かれるのを黙って見てればよかったってのか。

 

「話を聞いた限りでは貴方もこうなるかもしれなかった。貴方はたまたま良い結果を引いただけです。貴方には自分の行動の責任をとってもらいます」

 

  『てめえの行動の責任を取ってこい。もし移動した先でくたばったら俺がてめえのドタマぶち抜いてやる』

 創造神様からの伝言はこういうことか。

 

「……何をすればいい?」

 

 責任でもなんでもとってやる。

 俺がいた世界が最悪の結果にならないように。

 

「……ぁ、その、すみません。言い過ぎました。神としてあるまじき発言でした」

 

 俺が落ち込んでるようにでも見えたのか、エリス様が頭を下げて謝ってきた。

 この神様の『神としてあるまじき発言』は聞き慣れてるが、それを言う気分ではなかった。

 

「いや、エリス様の言う通りだ。俺はたまたま運が良かっただけだ。これまでずっと」

 

 俺が途中から言い返せなかったのが良い証拠だ。

 ショックが大きかったのもそうだが。

 

「いえ、その…八つ当たりでした。申し訳ありません。お詫びに少し情報を差し上げます」

 

 情報?

 

「向こうの私では伝えられない情報です。この情報は向こうに戻っても消えることはないでしょう。内緒にしてくださいね」

 

 向こうのエリス様では伝えられない情報?

 そして未来に関する情報でもない、ということか?

 

「『ムードメーカー』の情報です。貴方はどんな能力だと思いますか?」

 

「は?……いや、なんかあるんだか無いんだかよくわからない地味な能力だと思うけど…」

 

 突拍子もない、そう思った。

 何故ここで俺の能力の話が出てくるのか、さっぱり見当がつかない。

 

「ですよね。今はそうです」

 

「今?」

 

「あ、すみません。私が話していいのはこの情報ではありませんでした。『ムードメーカー』は他人に影響を与える力だというのはご存知ですよね?」

 

「そりゃ他人にしか影響を与えない能力だからな」

 

「……与える影響は能力を上げる以外にもあるんです」

 

 そんなの初耳だ。

 もしかしてこの世界ではアクアが失くした『ムードメーカー』の詳細が書かれた書類が見つかってるのか?

 

「心です」

 

「……こころ?」

 

「そうです、心にも影響を与えます」

 

 結局あるんだか無いんだか分からねえじゃねえか。

 

「貴方がいるだけで安心したり、少し自信が持てたりするんですよ」

 

 ため息が出そうになった。

 じゃあ何か?

 あのお子ちゃまの普段の大きな態度は俺のせいだとでも言うのか?

 

「貴方がいなくなった世界のことを聞いても信じられませんか?貴方と親しかった三人は特にショックが大きいはずです」

 

「……」

 

 そう言われると、バカにできない。

 …気がする。

 

「貴方に酷いことを言ってしまいましたが、とにかく貴方に言いたいことは『貴方は死んではいけない』んです。仲間も大事だと思いますが、今の貴方は三人だけでなく、いろんな人との繋がりがあるのでしょう?」

 

「ああ」

 

 なんだかんだでいろんな奴に会ってきた。

 最近で言うならジャティスの野郎か。

 

「その繋がりを大事に、そして自分自身も大事にしてください。今の貴方が死んでしまうと、この世界よりもっと酷いことになるかもしれませんよ?」

 

 …それは、恐ろしいな。

 早く戻ってやらないと。

 

「さて、長くなりましたが、そろそろ本題に」

 

 いや、その前に。

 

「エリス様、少し待った。この世界の仲間のことは聞けたけど、結局俺はエリス様が弱くなった理由を教えてもらってないんだけど…」

 

 俺がそう言うと、エリス様はきょとんとした顔で首を傾げた。

 いや、俺も首を傾げたいんだが。

 

「え、私もう話しましたよね?」

 

「いや、仲間のことしか聞いてないぞ」

 

「はい?」

 

「あ?」

 

 なんだ、この噛み合ってない感じ。

 俺が悪いのか?

 

「最初にヒナギクのことを話しましたよね?」

 

「それはそうだけど」

 

「話してるじゃないですか」 

 

 ……まさか、この女神。

 

「この世界のエリス教が大変になってるとか信者が急激に減ってるとかじゃなくて、まさかヒナギクが心配でそんな状態になってる、なんて言わないよな?」

 

 まさかな。

 

「なんでそんな物騒な話になるんですか!?エリス教に特に変わりはありませんよ。ヒナギクが心配なのは当然ですが、流石に心配なだけでこんなことにはなりませんよ」

 

「じゃあ何故?」

 

「ヒナギクが大変なことは話したでしょう?ヒナギクはあれからエリス教徒をやめてしまったのです。ヒナギクからの信仰が無くなり、あの子の『神聖』も消えてしまいました。超辛いです」

 

 エリス教をやめた?

 あのヒナが?

 超辛いです発言に若干イラッとしたが、正直信じられなかった。

 辛いですのところじゃなくて、ヒナがエリス教をやめたという部分が。

 

「エリス様に聞くのもなんだけど、やめる必要はあったのか?」

 

「私もクリスとなって何度もそう言ったのですが、『もう僕の祈りは届かないし、意味がないから』なんて言うんです!そんなことないのに!あの子の信仰は食事で言うなら主食!もう主食無しの食生活には耐えられません!」

 

 なんか言い始めた。

 膝を拳で叩いて、辛いことをアピってくる。

 

「栄養がこないんです…。ぐすっ…うぅ…」

 

 顔を両手で覆い、泣き始める。

 結局ヒナだった。

 

「あー、そのよくわかった。じゃあ本題とやらに入ろうぜ」

 

「グスン…わかりました」

 

 涙を拭いながら返事をしてくる。

 ぶっちゃけガワは良いから、たまにエリス様がめちゃくちゃ可愛く見えてしまうことがあって、今がその瞬間だ。

 これをエリスマジック現象と呼ぶ。

 中身は残念なのに、ガワが良いせいでふとした瞬間に可愛く思ってしまう現象のことだ。

 だいたいこの現象が起こるのがエリス様と一部のアクセルの女性達だ。

 …他にもいるかもしれないが、とにかくこのエリスマジック現象にだけは気をつけたい。

 

「やっと本題ですね。と言っても貴方の世界とは時間の差があるので、どこから説明しましょうか」

 

「まあ、わからないことがあれば俺から質問するよ」

 

「そうですね。では、まず数年前に魔王が倒されたことから説明しますか」

 

 そうだな、まずは魔王が倒されたことからだな。

 まおうがたおされた。

 ……?……魔王が倒された?

 

「魔王が倒された!?」

 

「はい」

 

「いや、待ってくれ!俺はこの世界を救って戻らなきゃいけないのに、魔王が倒されたのか!?」

 

「そうですよ。数年前にカズマさん達が倒しました」

 

 マジかよ!?

 あいつ、魔王まで倒しちまったのか!

 

「俺は一体どうすればいいんだ…?何をすればいい?」

 

「順を追って説明しますから、落ち着いてください。そもそもの話、普通に魔王やその他大勢を倒すのに別世界の貴方を呼ぶわけが無いと思いませんか?」

 

 ……確かに。

 でも、世界を救うって言ったら俺はそういうことなのだと思っていた。

 

「今回は特例中の特例。貴方にだけ許された特例なんです」

 

 それは聞いたけど。

 

「貴方が呼ばれた一つ目の理由が世界のルールを破る行為が行われようとしていること。二つ目の理由が貴方ではないと解決が難しい問題であり、貴方が解決すべき問題だということです」

 

 世界のルール…?

 俺じゃないと、いけない…?

 話を聞きたいが、もう頭の中がいっぱいだ。

 

「話を続けます。数年前に魔王は倒されました。ですが魔王軍の中でも特に厄介な魔王軍幹部の生き残りがいました。それは魔王の娘です。彼女は逃げのびた先で魔王軍復活の計画を立てました。彼女はすでに魔王から能力をほぼ継承していたので、配下を集めるのはそう時間はかかりませんでした。魔王の能力の説明は必要ですか?」

 

「俺の上位互換だろ?」

 

 俺が皮肉っぽくそう言うと、エリス様が目を逸らしながら「えっと、貴方と似た能力ですね…はい」なんて濁しながら肯定してきた。

 その後、何事も無かったように、俺に向き直り、説明を続けてきた。

 

「彼女は次の計画の段階に入りました。それは魔王を復活させる儀式を行うことです」

 

 魔王の復活…!

 そういうことか。

 

「つまり、俺が倒しに…」

 

「違います。その計画の阻止です。魔王復活の儀式を止めることが、貴方がこの平行世界に呼ばれた理由であり、魔王復活を止めることが世界を救うことに繋がり、元の世界でもう一度蘇生を許される条件になります」

 

 それなら、もしかして。

 いや、もしかしなくても早めにあいつらの元に戻れるんじゃないのか?

 倒せとは言われてないし、止めるだけなら本当に何とかなるかもしれない。

 だが、これがわざわざ俺を呼ぶ理由になるのか?

 

「貴方が疑問に思っているであろうことに答えます。まず儀式ですが、これが世界のルールを破る行為になります。プリーストの蘇生魔法は一人に一度しか許されない奇跡の魔法ですが、その儀式には制限はありません。それだけなら世界のルールを破る行為とは言えないでしょう。問題なのは儀式には大量の生命の血と肉や魂、その他にも多くの犠牲を払い行われることにあります」

 

 よくわかった。

 マジで阻止しないといけない儀式だというのが。

 

「この儀式は最低最悪の蘇生方法です。世界の禁忌。天界の存在だけでなく悪魔達ですらこの禁忌には嫌悪感を示すでしょう。この禁忌を犯した者は永遠に地獄で罰を受けることになります。それほど罪が重いのです。ですが、この方法をどう知ったのかはわかりませんが、魔王の娘である彼女と魔王軍、それにとある協力者で、この儀式が行われようとしています」

 

「協力者?」

 

「はい。その協力者は現代魔王を名乗っています。魔王の娘と儀式を成功させるために多くの配下と魔王城を守っています」

 

「そいつは知らないのか?儀式がヤバいものだって」

 

「いいえ、知っています。その協力者にも目的があるのです」

 

「目的だ?というかそいつは、人間なのか?」

 

「はい。人間です」

 

「人間なのに、その儀式の惨さがわからないってのか?」

 

「……目的がありますから」

 

 エリス様が節目がちに顔を逸らして、そう答えた。

 

「そいつは、誰だ?」

 

 俺が聞くと、エリス様は辛そうな表情になり重い口を開くように、ゆっくりと言葉を紡いだ。

 

「現代魔王の名はーーー」

 





次回からやっと天界から下りて、ヒカルが動き始めます。多分。
説明が長くなってしまいましたが、必要でした。

実はこの前の選択肢次第でヒカルの冒険がどうなるか、を書いたのですが、あれは後から優しめに考えて書いたもので、当初はどれを選ばれてもヒカルは死亡するようになっていました。
イージーでは天界規定は破れないものの違う方法ですぐに蘇生されて、ヒカルは戦闘に復帰します。
ノーマルでは今のお話のような残酷な未来ではなく、ある程度救われた世界に飛ばされます。その世界では紅い瞳を持ったヒカルにそっくりな人物と出会い、かつての仲間達とそのそっくりさんとヒカルで世界の危機に立ち向かい、なんとか成し遂げて蘇生されます。
ハードは今のお話です。
中でもトップクラスに残酷な世界の進み方をしています。

後から考えた難易度設定はノーマルの方をハードにしようと思ったのですが、やめました。
ハードですしね。


papurika193様からまた支援絵をいただきました。

【挿絵表示】

ハッピーハロウィン!
めちゃくちゃ可愛いヒナギクですね。
デフォルメされた皆も最高です。
このファンのハロウィンアイリスと同じ格好ですね、ハロウィンアイリスは僕の元には来てくれませんでしたが。
トリスターノの姿が変態のセーター野郎なの笑ってしまいました。
ヒナギクの胸の影が見えませんが、仕様らしいです。なんという解釈一致。
今回も素敵なイラストありがとうございました!
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