このすば ハード?モード   作:ひなたさん

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ここからの内容は魔王城へと入る為、このすば最終巻のネタバレを含みます。ネタバレ食らいたくない方はご注意下さい。

82話です。さあ、いってみよう。



82話

 

 

 この世界の現在、協力者とモンスターが魔王城を守り、魔王の娘が魔王軍幹部候補や配下を引き連れて、襲いやすい街の人間を儀式用に捕まえているらしい。

 儀式が行われるのは魔王城であり、魔法陣などの特別な準備が魔王城でされていることもあって協力者が守る必要があるのはそのせいだ。

 俺に禁忌のことを詳しく教えるのもまずいらしく、あまり教えてはくれなかった。

 

 ともかく俺がやるべきは儀式の阻止。

 今は魔王の娘が出払っていて、魔王城の守りは薄く、戦うことになるのも協力者と幹部ほど強力ではないモンスターなのだが、そろそろ魔王の娘達は儀式に必要な数の人間を揃えてしまうらしく、戦力が分断されている今の内に決着を付けたい。

 だが、現代魔王を名乗るだけあってその協力者の実力は本物で、何度か儀式の阻止に向かったらしいのだが、阻止は失敗に終わっている。

 

「今もカズマさん達が儀式の阻止に向かっていますので、貴方はこれから合流し、儀式の阻止をお願いします。混乱を抑えるために既にアクア先輩には話を通してあります」

 

「なるほどな、それは助かる。いきなり死んだ人間が出て来たら魔王城の潜入どころじゃなくなるだろうしな」

 

「ええ、面倒なやり取りは文字数もかさむし、読み辛くなりますから」

 

「その配慮は良いことだけど、口に出すなこの野郎」

 

「……それでは、準備はよろしいですか?」

 

 エリス様の表情が引き締まり、緊張感を含んだ声でそう聞いてくる。

 

「…準備も何も、行ってやるべきことをやってくるだけだろうが」

 

「それでもですよ。貴方ならやり遂げるかもしれませんが、相当な苦労はしそうです」

 

「苦労しないで終わるような問題なら、わざわざ俺のことなんか呼ばないだろ?俺なら大丈夫さ」

 

「わかりました。では、最後に。幸運の女神において、とびきりの祝福を。『ブレッシング』!」

 

 運を上げる支援魔法。

 なんでだよ、という視線を向けると、エリス様は不敵に笑っていた。

 

「カズマさんの魔王討伐の前に同じ魔法をかけたんですよ。これで上手くいく自信が出て来たんじゃないですか?」

 

 自分で言うか、そう思ったが確かに幸運の女神からの支援魔法はバカに出来ない。

 

「そりゃどうも」

 

 エリス様が俺の方へと手をかざして、俺の足元に魔法陣が浮かび上がり、俺の体が宙に浮いた。

 

「死なないでくださいね。私との約束です」

 

「わかってる。俺は絶対に元の世界に戻るからな」

 

 俺の返事を聞いて満足そうに笑うエリス様。

 そうだ、絶対に戻るんだ。

 俺は

 

「あ、最後に一つお願いが!」

 

「なんだよ!?」

 

 かなりの高さまで浮いてしまっているので、お互いに声を張り上げる。

 もう少しで頭上にある光の中に俺の体が入ってしまう。

 

「ヒナギクにエリス教に戻るように説得を…」

 

「行ってきまーーーす!!」

 

 俺はウルト◯マンが空へ飛ぶように、魔法陣を蹴って自ら頭上の光へと飛び込んで行った。

 

 

 

 

 目を開けると、道に一人で立っていた。

 周りを見渡すと、少し遠くに禍々しい漆黒の巨城が見えた。

 初めて見たがわかる。

 あれこそが魔王の城だということが。

 あの中に

 

「そこの君、こんなところで何を…」

 

「あ?」

 

 後ろから声をかけられて振り返る。

 

「シロガネ…?」

 

「おお、ミツルギ。それにみんなも」

 

 振り返った先には、青年の顔付きになっているカズマにあまり変わらないめぐみん、漆黒の鎧に身を包んだダクネスに女神アクア。

 それにミツルギと二人の女性、そして

 

「う、うそ……」

 

「よお、ヒナ」

 

 ヒナがいた。

 そして、

 

「シロガネ?その名前は聞いたことがあるな」

 

 何故だか知らないが、あるえちゃんもいた。

 というか、あれ?

 なんかみんな驚いた顔なんだけど。

 アクアに話を通してあるとかなんとか言ってたような…。

 

「う、うそだようそだようそだよ!!また!また僕は!また僕はおかしくなっちゃったの!?最近は落ち着いて来たのに、また!?また幻覚を見るように…!」

 

 ヒナは俺を見て、半狂乱になって叫びだした。

 ヒナのあんな姿を見るのは正直言って本当に辛い。

 そんなヒナの肩を掴んで、冷静に話しかけるダクネス。

 

「ヒ、ヒナギク、落ち着け。ヒカル…らしき者は確かにそこにいる。幻覚などではないぞ」

 

「ほ、本当ですか!?ダクネスさんや、皆さんにも見えてるんですか!?」

 

「ああ、見えているとも。それにしても懐かしいな。もしかしてアンデッドになってしまったのか?無理もない。クルセイダーの私にアクアもいる。早く浄化してやろう」

 

「ええ、そうね。私も早いところ終わらせて帰りたいもの。でもアンデッドの気配がしないような…」

 

 え、

 

「ダ、ダクネスさん!アクアさん!す、少し待ってください!あ、あれは!」

 

 ヒナが信じられないものを見る目で俺を見ながら、止めようとしているが…

 

「ヒナギク、気持ちはわかるが彼をアンデッドのままにしておくのはかわいそうだ。彼もきっと辛いだろう」

 

「なあ、本当にアンデッドなのか?普通の人間に見えるんだけど…」

 

「私もそう見えますが」

 

 カズマとめぐみんのセリフは誰も聞いてないみたいだ。

 

 

 これ、あれだ。

 俺のこと知らないやつだ。

 

 

「おい、アクア!お前エリス様から何も聞いてねえのか!?」

 

 俺がアクアに問いかけると、アクアは何言ってんの?みたいな表情だ。

 

「はあ?エリス?エリスが」

 

「おい、シロガネ!」

 

 アクアのセリフを遮り、ミツルギが一歩前に出て、俺に魔剣を向けた。

 

「君の事情は知らない。死してなお立ち上がることにも敬意を表する。だが、アクア様を呼び捨てにすることは許さない!」

 

「あー…それは」

 

「おい、カツラギ。お前は話がややこしくなるから黙ってろよ」

 

「ボクはミツルギだっ!それにボクは当然のことを言ったまでで…」

 

 俺が何かを口にする前に、カズマとミツルギがまるで喧嘩をするように向き直って話し始めて、更には

 

「お願いします!一度僕にお話する時間をください!」

 

「ダメだ。最初はアンデッドかと思ったが正直怪しいと思わないか?あれから何年も経っているのに、いきなり彼のアンデッドが出てくるとは思えない。これは魔王軍の新たな作戦か何かに違いない」

 

「で、でも!」

 

 ダクネスがヒナの肩を掴み、俺の方へ行かないように止めている。

 アクアは何かを考え込むように黙り込んでいて、めぐみんは俺を睨んでいた。

 ちなみにミツルギのパーティーメンバーの二人はミツルギのそばにいて、私達は関係ないと言った表情だ。

 

 どうすればいいんだ、この状況。

 そう思った時

 

「あー!もしかしてあんたが平行世界から来る協力者!?」

 

『え?』

 

 アクアが突然思い出したように声を上げて、周りからは疑問の声が漏れ出たのが綺麗に揃った。

 この女神、忘れてやがったな。

 

 

 

 

 

 

 アクアからも説明が入り、やっと話しが進んだ。

 皆、信じられない表情ではあったが、敵ではないことだけはしっかり理解してくれたらしい。

 

「じゃ、じゃあ!ほ、本当に?本当にヒカル、なんだよね!?」

 

 ヒナが恐る恐る俺に聞いてくる。

 ああ、と頷くと、突進でもして来てるのかという勢いで胸に飛び込んできた。

 腰に手を回して苦しいぐらいに抱きついて来る。

 

「ヒカル、ヒカル…!」

 

「ヒナ…」

 

 名前を呼ぶぐらいしか出来なかった。

 口で謝るのは簡単だ。

 でも、こいつが辛い思いをした分の謝罪が俺に出来るとは到底思えなかった。

 数分ぐらいずっと抱き付いてくるヒナを撫でていると、コホンと咳払いが聞こえた。

 

「感動の再会なのは、この状況が分かりきっていない私でもわかるんだ。でも、ここはすぐそこに魔王の城もあるし、感動の再会の続きは禁忌の儀式を止めてからにしないかい?」

 

 眼帯をした発育の良い少女、あるえちゃんがそう言った。

 それを聞き、ずっと抱き付いていたのを今更恥ずかしくなったのか、俺を突き飛ばしてすぐに離れた。

 ヒナの顔は耳まで真っ赤だった。

 

「邪魔をしてしまったついでに、自己紹介をさせてもらおう。我が名はあるえ!紅魔族随一の発育にして、やがて作家を目指す者!」

 

 ポーズを決めて、満足げなあるえちゃん。

 そうか、この世界の俺はあるえちゃんと初対面か。

 じゃあ、やっとくか。

 この人数の前で少し恥ずかしいけど。

 

「お控えなすって」

 

 例のポーズをして、そう言うとあるえちゃんが首を傾げてきたが、そのまま続ける。

 

「手前、生国と発しまするは日本の生まれ。姓はシロガネ、名はヒカリ。人呼んでヒカルと発する冒険者でございます。

以後、面対お見知りおきの上、よろしくお願い申し上げます」

 

「っ」

 

「おおっ!」

 

 ヒナは辛そうな表情になり、あるえちゃんは感嘆の声をあげた。

 

「気に入ったよ、ゆんゆんの友人にして、世界を渡りし者、ヒカルさん」

 

 なんか変な二つ名を付けられた。

 まあ、いいか。

 

「さて、ヒカルさん。貴方に一応言っておかなければならないことがある」

 

 あるえちゃんはそう前置きをして続けた。

 

「私は見ての通り、紅魔族のアークウィザード。上級魔法とテレポートぐらいは使えるよ。でも、申し訳ないけどここにいるメンバーのように冒険者ではなく、私は作家だ。そこまでの実力があるわけではない。だから」

 

「わかったよ。あまりあるえちゃんには無理を言わないようにするよ。でも緊急時にはテレポートとかは頼むよ」

 

「もちろんさ。それぐらいは任せてくれたまえ」

 

 そう言って、あるえちゃんは満足そうに笑みを浮かべた。

 

「あるえの話しが終わったのなら、次は私が話をしてもいいですか?」

 

 そう言って手を挙げたのはめぐみんだった。

 お前が?なんてカズマまでそんな顔をしている。

 俺が頷くと、めぐみんは俺の方へとゆっくり歩いて来て、肩に手を置くような気安さで

 

 俺の顔を思いっきりぶん殴って来た。

 

 俺は直撃しつつも仰け反って数歩後退る程度で済んだ。

 めぐみんは多分本気で殴って来たが、寸前に歯を食いしばったのと、ステータスが上がっていることでなんとか耐えられた。

 

「なっ!?何するんですかっ!?」

 

 皆驚いていたが、はっきりと抗議の声を上げたのはヒナだった。

 

「私の友じ…いえ、私のライバルを泣かせたので殴っただけですが、何か?」

 

「な、殴ることないじゃ…」

 

「いい、ヒナ。それにしてもお前、マジで魔法使いかよ。筋力上がりすぎじゃねえかこの野郎」

 

「そっちこそ、随分とステータスが上がったみたいですね。私はぶっ飛ばす気で殴ったのですが、残念ながらそこまで出来ませんでしたね」

 

「これで満足か?」

 

「ほう?私を焚き付けるとどうなるか、その身で知ることになりますよ?」

 

「おい、めぐみん!もういいだろ!ヒカルも煽るなよ!」

 

 一触即発の雰囲気になったところ、カズマが割って入って来た。

 

「俺は満足したかどうか聞いただけだぞ」

 

「本当は爆裂魔法でも撃とうかと思いましたが、一発思い切り殴れたので一先ず満足しました。私からは以上です」

 

 そう言ってめぐみんは背を向けた。

 そしてダクネスがやって来て、俺の肩に手を置き、

 

「ヒカル、わかるぞ。一発ぐらいじゃ満足出来ないだろうが、ここは我慢だ」

 

「一緒にするんじゃねえよこの野郎!!」

 

 

 

 

 

 

「はい、『ヒール』」

 

「ありがとよ」

 

「いいってことよ」

 

 めぐみんにぶん殴られたところをアクアに回復魔法をかけてもらい、話の続きを…

 

「な、なんて羨ましい…」

 

 この魔剣の勇者はどうしちまったんだ。

 そんな恨みがましい目で見ないでくれ。

 

「ごめんね…僕が回復してあげられれば…」

 

 ヒナが心底申し訳なさそうに俺に謝って来た。

 なんでこいつが謝るんだ。

 

「大丈夫だよ。アークプリーストの力が使えないんだろ?エリス様から聞いてるから」

 

「っ。う、うん」

 

 エリス様の名を聞いた時に、まるで悪いことをしたのが見つかったような顔になって俯いて返事をした。

 負い目のようなものを感じているのだろうか。

 俺が誤魔化すように頭を撫でてやると、恥ずかしそうにしていたが、されるがままだった。

 

「なあ、ヒナ。ここに来るのは流石に危険じゃないか?お前が来た理由はよくわかるけどさ」

 

「……で、でも僕はずっと何も出来なかったから…少しでも役に立てるかもしれないなら僕は、その、力になりたくて…」

 

「……そうか、わかった。でも、あまり前に出たりするなよ?」

 

「うん…」

 

 この態度といい、まるでヒナじゃないみたいだ。

 ヒナをエリス教に戻すことはどうでもいいが、いくら違う世界のヒナとはいえこのままにしておきたくない。

 何か考えないと。

 

「さて、ヒカルが戦力に加わってくれたことだし、情報の共有と作戦の立て直しだ」

 

「すぐそこに魔王城があるのにですか?」

 

「何度も失敗してるし、近くにいても向こうから俺達に攻撃してきたりすることは無かった。それならここで話し合って大丈夫だろ」

 

 カズマとめぐみんがそう話し合った時にふと二人の左手を見た。

 左手の薬指に同じ指輪をしているのが。

 

 ………。

 ……。

 …。

 

 ま、まじか…。

 いやでも、あり得る。

 紅魔の里にいた時に『私の男』なんて言っていたのだ、十分あり得る。

 それにしたって

 

「おい!ヒカル聞いてんのか!?」

 

「えっ!?」

 

「おい、しっかりしてくれよ。ちゃんと聞いてたんだろうな?」

 

「あー…えっと…」

 

 呆れた視線がいくつも俺を見てくる。

 

「仕方ない。もう一度最初からだ、佐藤和真」

 

「わ、悪い…」

 

 

 

 

 

 魔王城は魔王がいる最上階のフロア以外はほぼモンスターの一匹もいないらしい。

 いたとしても最低限の見張りか、どこからか寄り付いた雑魚モンスターらしい。

 現代魔王やその配下が守っているのは最上階のフロアのみ、ということだ。

 潜入は容易だが、最上階の守りは固く、そんな状態でも現代魔王は魔王城を守る自信があるのか、他の守備は最低限しか用意してないみたいだ。

 ある理由でカズマ達の戦法も通じないせいで何度も現代魔王の無力化に失敗していて、打開策としてミツルギ達やあるえちゃん、それにヒナを連れてきたということらしい。

 そこに俺も加わった。

 エリス様から聞いた魔王討伐時のパーティーより豪華になったのだから負けるわけがない、はずだ。

 

「先程話した通り俺は、この世界の俺とは違って上位職になってレベルも上がってる。まずは俺が前に出る。他の奴らには周りのモンスターの相手を頼む。それで俺が勝負をかけるが、もし失敗したらカズマ」

 

「すぐに撤退するよ。まだ魔王の娘が帰ってくるのも数日がかかるはずだ。焦る必要は無いし、無理と判断したらすぐ退く。これでいいな?」

 

「それでいい。アクア、……さま。支援魔法を最上階でかけてもらいたいんだけど」

 

 ミツルギの表情が険しくなったのを見て、後から付け加えた。

 この女神に様付けして呼ぶ日が来ようとは…。

 どうやらミツルギはいつの間にか狂信者になってしまったみたいだ。

 何故カズマとミツルギの仲が悪いのか、ようやく分かった。

 

「いいわよ!このアクア様に任せなさい!」

 

 アクアはミツルギのことなどどこ吹く風で胸をどんと叩きながら自信満々にそう答えた。

 

 

 

 

 魔王城の中の守りは最上階以外薄いが、外からの攻撃に備えて結界自体はちゃんと張ってあるらしく、まずはその解除からなのだが、

 

「はい」

 

 アクアが結界に触れると、たちまち結界に穴が開き、人が通れるほどの大きさになった。

 

「ヒカル、どうした?」

 

「……なんでもない」

 

 アクアが女神なのはちゃんと理解しているが、俺が見ていた普段のアクアからは考えられない有能さ加減のギャップに頭がおかしくなりそうだ。

 だが、それをわざわざ言っても仕方ないことだし、アクアに機嫌でも悪くされて支援魔法をかけないーなんて言われたら面倒になるのは俺だ。

 ここは耐えることにしよう。

 なんだかんだでエリス様(へんたい)アクア(駄女神)も女神様ということか。

 

 城の門をくぐり、城内へ。

 城内を見回すとダンジョンのように通路は入り組んでいた。

 壁には一定間隔で明かりが灯っていて、どこか普通の建物のような気さえしてくる。

 禍々しい見た目の外観のように、もっと暗い雰囲気だったりするのかと思えば、城内は割と綺麗で清潔感があった。

 まあ、住むところが綺麗にしたいのは人も魔王も変わらないということか。

 カズマ達は通路の階段の方に進んでいたかと思えば、階段をスルーして通路の行き止まりへと向かった。

 そして行き止まりの奥へと辿り着き、その壁には『押すな』と書かれた紙が貼ってある。

 その紙の前には魔法陣が描かれていて、そのすぐ横にはボタンがあった。

 

「これが例の?」

 

「そう、ショートカットだ」

 

「話には聞いていたが、興味深いね。カズマはこれを初見で見破ったと聞いたが?」

 

 あるえちゃんが注意深くボタン近くを見ていたかと思えば、そんな話をしだした。

 

「え、あ、あああ、そ、そうだとも。このカズマさんの目は誤魔化せないからなうん!」

 

「そ、そうよ、この女神の曇りなき眼には何でもお見通しなんだから!」

 

「へえ」

 

 絶対こいつら偶然知っただろ。

 まあ、そんなことはどうでもいい。

 俺達はそのボタンを押して、一気に上層階へと移動した。

 その後、モンスターに一匹も出会うことは無く、最上階に続く階段に着いてしまった。

 あまりにもスムーズ。

 もしかしたらカズマ達のパーティーが何かミラクルを引き起こすかと思ってドキドキしていたが、特に何も起こらなかった。

 少し考えすぎかもしれない。

 

 俺達は階段を上り、通路を通り、魔王のいる部屋へと続く扉の前に辿り着いた。

 俺が一番前に立ち三角形になるように右にダクネス、左にミツルギで立つ。

 その三角形の真ん中にはヒナ、後ろにあるえちゃんにカズマ、ミツルギのパーティーメンバー、アクア、めぐみんと続いた。

 話によると俺達が攻撃をするまでは攻撃をしてこないらしいが、ヒナは戦えないので念のためこんな陣形モドキで俺達三人が守れるようにしている。

 最悪あるえちゃんにテレポートしてもらう予定だ。

 戦いになって戦況が悪くなれば、戦えないメンバーはすぐにこの部屋から撤退し、戦えるメンバーで逃げられるようになるまで戦う。

 もしくは、無力化するまで戦う。

 

 カズマの戦法は通じない。

 何故なら現代魔王はカズマのことをそれなりに知っているからだ。

 潜伏で忍び寄ったりすることも出来ない。

 戦いになれば、正面衝突しかない。

 中にいるモンスターはあまり強いモンスターばかりでもないが数は多く、何より現代魔王の実力は凄まじい。

 

 正直、今回ばかりは俺にかかってる。

 

 自分の行動の責任とやら、とってやる。

 

「行くぞ、野郎ども!」

 

「女性の方が多いですよ」

 

 カズマやミツルギは俺のセリフに「おう!」と返してきてくれたのだが、めぐみんのセリフで勢いが削がれたのか、顔の緊張感が無くなった。

 

「……やかましい!行くぞ!」

 

 俺は言葉を発すると共に扉を開け放つ。

 

 扉を開けると、多くのモンスターがこちらを静かに睨み付けていた。

 玉座へと続く道を開けるように左右で分かれて大量のモンスターがひしめいていた。

 モンスターに近付きすぎないぐらいまで近付き、玉座に座る魔王の娘の協力者にして、現代魔王を名乗る人物を真っ直ぐ見ながら、俺は話しかけた。

 

「ゆんゆん、里に帰るぞこの野郎」

 

 玉座に座り、驚愕の表情で固まった現代魔王。

 彼女は目の前の光景が信じられないとばかりに首を横に振って、何度も自分の頬を叩いていた。

 




前書きで注意書きはじめて書きました。
今更ではあるんですけどね。でも魔王城のショートカットとかあったので一応書きました。

評価やお気に入り、感想ありがとうございます。
書くモチベーションが高かったので連日投稿しちゃいました。
すでに六章の後日談や六章最終話は書けてるので、そこにお話を持っていくまでが勝負ですね。
六章が終わるまで多分、あと三話か四話か、それぐらいになると思います。
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