このすば ハード?モード   作:ひなたさん

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彼女はずっと一人でした。
一人の友の死が彼女を孤独に追いやりました。
心を病んだ友を実家へ送り届けて、しばらく様子を見た後から、もう一人の友も姿を消し、一人になりました。
彼女は友達を失うショックから立ち直れず、ずっと友の死を引きずっていました。
自分が意識を失っていなければ、彼は死なずに済んだかもしれない。
そう思うと彼女は悔やみきれませんでした。
それから彼女は一人で冒険者を続けました。
一人なら、失う痛みを、苦しみを感じずに済むのだから。

時は流れて、数年後。
魔王を倒すパーティーに所属した彼女は若くも実力、名声ともにトップクラスの魔法使いになりました。
引く手数多。
そう言われるほど多くの冒険者のパーティーに勧誘を受けましたが、全てを拒否しました。
彼女は数年経っても友の死から立ち直ることは出来ていませんでした。
彼女は紅魔の里の族長になるという使命を捨て、一人で旅をしました。
街を巡り、クエストを受けて生活費を稼ぐ日々。
とある日、とある街のギルドで合同クエストが貼り出されました。
彼女の実力からすれば、一人でも出来るようなクエスト。
ですが、魔法使いが足りないという声を聞き、彼女はクエストに参加することになりました。
彼女は言うまでもなく大活躍。
周りの人を救いながら、クエストの半分以上のモンスターを討伐しました。
彼女は多くの人に感謝されて、クエストに出た人達からご飯を奢るから一緒に食べようと誘われます。
彼女は気が引けましたが、たまには悪くないのかもしれないと思い、大勢の人達とご飯を食べることにしました。
ギルドは宴会で大盛り上がり。
酒やジュース、肉に魚にパンにご飯。
机いっぱいに食器が並び、ギルドいっぱいの人達。
乾杯し合う人達、酒飲み勝負する人達、早食い競争をする人達、功績を自慢する人にヤジを飛ばす人、ケンカする人達。
ほとんどの人が自分達のパーティーや仲が良い人で思い思いに楽しんでる姿を見て、ふと思ってしまいました。
どうして私は一人なんだろう。
何故私はこんな苦しい思いをしなければならないのだろう。
そう思ってしまうと、涙が止まらなくなり、止めて来る人達を振り切り、ギルドを出ました。

街を変えよう。
そう思い、次の街へ移動していると、モンスターが妙な動きをしていることに彼女は気付きました。
彼女は魔法で自身の姿を消し、妙な動きをしているモンスターを追いかけました。
着いたのは廃城。
モンスターが中に入っていくのが見えて、少し躊躇しましたが、彼女は廃城へ入って行きました。
廃城の最上階に着いて、周りを確認すると、そこにいたのは唯一の魔王軍幹部の生き残りである魔王の娘がいました。
彼女は臆することなく、名乗りを上げて、即座に魔法を放ちます。
一瞬でほとんどの配下を全滅させた彼女に恐れ慄いた魔王の娘は交渉に出ます。
ほとんどの交渉に首を横に振った彼女でしたが、彼女はその時聞いてしまいました。
『反魂術』と呼ばれる禁忌の儀式のことを知ってしまったのです。
そして、思ってしまったのです。

この儀式を行えば、彼が蘇る。
彼が蘇れば、また彼が生きていた時のように楽しい日々が戻ってくる。
離れ離れの仲間が帰ってくる。
もう、一人で苦しい思いをせずに済む。

そう思ってしまった彼女は魔王の娘と協力し、儀式を完成させることを決意しました。




84話です。さあ、いってみよう。



84話

 

 

 

「ほら、起きて。起きてったら」

 

 なんだよこの野郎。

 疲れてるんだ。起こさないでくれ。

 

「もう、せっかく来てあげたのに。帰っちゃうよ」

 

 眠くてしょうがないのに、何が帰っちゃうよ、だ。帰れ帰れ。

 勝手に来ておいて、何言ってんだこの野郎。

 そう思って目を開けると、周りを見ると鉄格子の外には銀髪の少女、クリスが立っていた。

 

「……クリス?」

 

「そうだよ、クリスさんだよ?」

 

「クリスか、そうか。……クリス!!?」

 

「ちょっ!?しーっ!せっかく潜入してきたのに、大声出さないでよ!」

 

 やっと意識がはっきりしてきた。

 鉄格子の外から、クリスが人差し指を口に当てていた。

 

「お、お前、助けに来てくれたのか?というか、どうやって?」

 

 ベッドから立ち上がり、すぐにクリスの方へ寄っていった。

 

「凄腕盗賊のクリスさんだよ?これぐらいは……いや、結構苦労したよ。ここに入るのに少し女神の力使っちゃったし」

 

「その、悪い」

 

「大丈夫だよ。まだ時間はあるんだしさ。でさ、出る前に少し大事な話をしようか」

 

 クリスが真剣な表情になって、そんなことを言った。

 

「大事な話?なんだ?」

 

「もうこういう手助けは出来ない。これが最後。君の世界を救う役目にあたしが関わるのはよくないってこと」

 

「……わかった。その、これも無理してやってるんじゃないか?だとしたら本当に悪い」

 

「お、察しがいいね。実はバレたら大目玉なんだよ。それぐらいなら全然構わないし、気にしなくていいんだけどね」

 

 エリス様も俺がこんなあっさり捕まるとは思わなかっただろうな。

 情けない話だ。

 

「それで大事な話パート2」

 

 クリスがピースサインをして、次の大事な話に入ろうとした。

 

「いくつまであるんだ?というか出てからじゃダメなのか?」

 

「まあまあ、聞いてよ。ヒナギクにエリス教に戻るように言って…」

 

「おい、出せこの野郎」

 

「なんでさ!?少し聞いてくれても良くない!?」

 

 何が大事な話だ。

 出てから話せばいいことじゃねえか。

 

「大事な話パート3」

 

 あれも大事な話に入ってるのかとツッコミを入れてやりたいが我慢しよう。

 

「君さ、この世界に残らない?」

 

 ………。

 

「……は?」

 

 あまりに予想してない話に思わず間抜けな声が出た。

 

「いやさ、悔しいことに君に会ってからヒナギクの精神状態が一気に良くなったんだよね。もしかしたら少しぐらいは失った力が使えるようになってたりするかもだよ」

 

 またヒナか。

 

「出してくれるのはありがたいけど、そんなわけにいかないのは知ってるだろ」

 

「そうなんだけどさ。君もこの世界の現状を知ってるでしょ?ゆんゆんのこととか放って置けないんじゃない?」

 

「それはそうだけど、元の世界のあいつらのことも放って置けない。しばらくはこの世界のゆんゆん達といて、少し心の整理がついてから戻ろうとか思ってるんだけど、それはどうだ?」

 

「それでもいいよ。もし永住したくなったら、『死んだ人が蘇ったー!?』とか変なことになる前に女神の力をちょちょいと使って不自由なく暮らせるようにしてあげるよ」

 

「お前な…」

 

「もしもの話さ。それに儀式の阻止に失敗した時もね」

 

「おい!」

 

 こいつ、何考えてるんだ。

 失敗なんて冗談じゃないぞ。

 

「それは君次第か。あまり怒らないでよ。あたしも君の『ムードメーカー』の影響を受けてるのかもね。君がいると、なんとなく安心するよ。だから引き止めてるのかも」

 

「……」

 

 俺の能力は自分には何の効果も無いからわからん。

 もしかして俺の能力はそんな厄介なのか?

 

「少しは考えておいてよ。なんとなくだけど、君なら良い方向に持っていける気がするんだよね」

 

 そう言って鉄格子の扉の鍵をいじり始めた。

 クリスの表情は明るく、鍵を開ける時もイタズラをする子供みたいな顔だ。

 

「あ、開いたよ」

 

 お礼を言って外に出ると、俺の牢屋から死角にある机の上に脇差以外の俺の装備品一式が置いてあった。

 よかった。ヒナに全部持ってかれてるかと思った。

 

「なあ、クリス。ヒナに、ヒノヤマで暮らそうって言われたんだ」

 

 俺が装備し直して、そう言うとクリスの顔が引きつった。

 

「その、あれだ。これは自慢とかじゃなくて相談なんだ。変なことを言うんだけど、ヒナの気持ちを落ち着かせたいというか、何か方法は無いかなって」

 

 クリスの顔が引きつったまま、体がプルプルと震え出す。

 

「あー、いや、クリスがヒナのこと好きなのはわかってる。だから、こう、女神の力とかでもいいし、そうで無くてもいいから何かヒナの気持ちを変えるような方法は無いか?」

 

「………さない」

 

「え、なに?」

 

「絶対に許さない!!表出ろこの野郎!!」

 

「今から表出るんだろうが!というか声!声抑えろ!」

 

 クリスは腰にあるダガーに手を伸ばす。

 やばい。

 

「ヒナの気持ちを弄ぶなんて!戦争だよ!滅多刺しにしてやるううううううううう!!」

 

「おいいいいいいい!!お前俺に死ぬなって言っただろうが!!」

 

 ダガーを振り回して来るのを避けながら、すぐに走り出す。

 ブンブンとダガーを振る音が後ろから聞こえながら必死に走った。

 

「前言撤回!!早くあたしの世界から出ていけええええええええ!!」

 

「お前さっきと言ってることがまるっきり違うだろうがこの野郎おおおおおおおお!!!」

 

 

 

 

 

 

 時間は見ていないが、霧が出ていて少し明るいことから朝早い時間帯だということがわかった。

 

「「はぁ…はぁ…はぁ…」」

 

 魔王城の出入口近くで、俺とクリスは膝に手をついて息を切らしていた。

 ダガーを振り回してくるクリスから逃げ回った。

 それだけならここまで疲労しないんだろうが、城内がダンジョンみたいに入り組んでるせいでアホみたいに駆け回り、野良モンスターや警備のモンスターを蹴り倒したりしながら走ったから余計に疲れた。

 

「クリス、本当にさ。ヒナを傷付けたくない。何か無いか?」

 

「……そんな都合の良い何かがあるんだったら今頃あたし達はハッピーにやってるんじゃない?」

 

 投げやりな感じで言ってくる。

 それはそうか。

 

「じゃ、あたしはここでお別れだね。出してあげたこと感謝してよ?」

 

「お、おう。なんかあっさりだな」

 

「これ以上いるとまた告白自慢されそうだし、カズマ君達に会うと面倒だからね。そろそろ戻らないと」

 

「別に自慢なんかじゃ…」

 

「あたしからしたら自慢だよ。はあーあ、何でこうなっちゃうんだろうな。ヒカルって別に魅力的な男性ってわけでもないと思うんだけど」

 

「それ目の前で言うか?」

 

「言うね。まあ平均よりは上かな」

 

「わあ、うれしーなー」

 

 俺からの評価も聞かせてくれようか。

 いや、余計なことをするのはやめよう。

 触らぬ神になんとやら。

 

「もう助けられないから、今度は上手くやるんだよ」

 

「ああ、ありがとな」

 

「あと十分ぐらいでカズマ君達が到着するよ。次にこの姿で会うのは君が儀式をどうにかした後かな。じゃ、大変だろうけど頑張って」

 

 結界をスルリと抜けて、走り去るクリスを見送った。

 牢屋で一晩過ごし、ヒナの気持ちから逃げるように熟睡を決め込んだ俺の体調はかなり良かった。

 あのゆんゆんやモンスター、それにヒナまで相手にしなきゃいけないんだ、体調が悪いよりはマシだ。

 さて、カズマ達がまた来るのを待とう。

 

 

 

 

 

「お前、捕まったんじゃなかったのか?」

 

「俺の好きなゲームはメタ◯ギアだ」

 

「それが逃げられた理由になると思うなよ」

 

「メ◯ルギアって何ですか?紅魔族的センスに何かビビッと来るものがあるのですが」

 

 魔王城に戻ってきたカズマ達と無事合流した。

 もう魔王城に入っているのだが、相変わらずゆんゆん達は最上階だけ守ることが出来ればいいらしく、モンスターを寄越してきたり襲ってくる気配も無いので、このまま作戦会議が始まった。

 監禁している間は飯を出してくれるという話だったが、結局貰うことなく出てしまった。

 カズマ達から食料をもらい、そのまま話を聞く。

 

「まずヒカルが合流出来たのはよかった。救出する時間を城攻略の時間に充てられる」

 

「攻略の時間に充てられると言っても、その攻略をどうする?ゆんゆんは本気で儀式を行う気だぞ。ヒナギクまで向こうに行ってしまった」

 

「ダクネスの言う通り、攻略方法が問題だ。何も意見が無ければ俺の作戦から言うけど」

 

「カズマの意見から聞きましょう。どうせいつもの狡っからい作戦でしょうが」

 

「おい、狡っからいはやめろ」

 

 いつもの漫才だ。

 数年経ってもこいつらの中身は変わらないらしい。

 

「で、どうするんだ?」

 

「ああ、俺は魔王討伐の時と同じ作戦で行こうと思う」

 

 魔王討伐の時って、エリス様に聞いた時は確か…。

 

「それってボク達が戦ってる間にキミが忍び寄る作戦かい?その作戦はすでに失敗したじゃないか」

 

 ミツルギの言う通り、それはすでに試したと聞いた。

 それにゆんゆんはカズマのことをかなり警戒しているはずだ。

 

「ああ、失敗した。でも、今回はヒカルがいる」

 

「モグモグ。え、俺?」

 

「ヒカルがいるから何なのですか?昨日も瞬殺されてましたよ」

 

「俺も気にしてるんだから瞬殺とかいうのやめてくれませんかこの野郎」

 

 あんな手も足も出ないのは正直傷付いた。

 魔術師殺しの装備もあったし、上位職になってレベルも上がったという自信が全部ぶち壊された。

 ゆんゆんと喧嘩する時は気を付けよう。

 

「ゆんゆんは今まで会いたかったヒカルに会えて、かなり動揺してた。ヒナギクもな。そこでヒカルにはめちゃくちゃ目立つ言動で注意を引いて欲しい」

 

「いや、待て。昨日ならともかく今日は流石に無理があるだろう。一晩経てば流石にあの二人も落ち着いてるはずだ」

 

「確かにそうだ。そこでヒカルには少し無茶振りすることになるんだけど、どうにか昨日ぐらいあの二人を動揺させるようなことは出来ないか?」

 

 カズマが俺を真っ直ぐに見て、俺に言ってくる。

 こいつらが仲間でよかった。

 良くないところも目立つが、なんだかんだで頼りになる奴らだからな。

 俺は食べかけのパンを飲み込んで答えた。

 

「ああ、ある。というか、俺も二人の注意を引く役を買って出ようとしてたところだ」

 

「へえ、その自信満々なセリフを吐くということは何かあるんだね、世界を渡りし者よ」

 

「ああ、あるえちゃん。あるよ。割と結構ある」

 

「じゃあ、任せていいんだな?」

 

「俺が注意を引くのは構わない。なんなら昨日みたいに突撃してもいいと思って」

 

「二日連続でずるいぞ、ヒカル!その役目はクルセイダーである私の役目だ!今日は私が突撃しよう!」

 

「お前は黙ってろ、変態!」

 

 カズマがダクネスを押し退けようとしても筋力差で全く動かない。

 

「シロガネ。突撃とやらは危険なだけだ。実力差は昨日わかっただろう?ボクでさえ彼女と正面からやり合うのはマズイと思うよ」

 

「突撃ってのは例えだよ。あいつらの注意引くなら何でもするよ。でも、それ以外をお前達に任せてしまっていいのか逆に聞きたくてな。大丈夫なのか?」

 

 ミツルギの冷静な意見に俺も冷静に返す。

 そう、俺はぶっちゃけ囮だ。

 捕まえるなり何なりは他の面子に任せることになる。

 一番危険なのは

 

「任せろよ。俺は魔王を倒した男、カズマさんだぞ」

 

 カズマが不敵な笑みを浮かべてサムズアップしてこちらを見ていた。

 

「貴方に力を貸すわけではありませんが、世界最強の魔法使いもいますよ」

 

 めぐみんが俺を見ずにそう言ってきた。

 

「盾の一族ダスティネス家の次期当主である私もいる。攻撃は全て私に任せろ」

 

「水の女神だっているわ!前に出ることは出来ないけど、サポートなら任せてちょうだい!」

 

 続くようにダクネスが毅然とした態度で、アクアが自信満々に俺を見て言ってくる。

 

「女神に選ばれし魔剣の勇者のこのボクも着いてる。今度はその名に相応しい働きを見せよう」

「私達もいるわ」

「まあ、他の人達ほど役に立てるかわからないけどね」

 

 ミツルギは少しキザったらしかったが、目は真剣だった。ミツルギの仲間である二人も協力してくれるらしい。

 

「ふっ、紅魔族随一の作家がいることも忘れてもらっては困るな」

 

 あるえちゃんが紅い瞳を光らせて、ポーズを決めている。

 

「お前ら…」

 

「なんつーかさ、ヒカルが死んじまった後ゆんゆんが落ち込んでるのはわかってたんだけど、それをちゃんと理解してなかったっていうか、俺達ももっと色々してあげられたはずなのに出来なかったからさ。そんな俺達にもこの状況の責任があると思う。だからさ、ヒカル。気負わないで俺達にも任せてくれよ」

 

 ……ほらな、ゆんゆん。

 やっぱりお前は一人じゃない。

 辛い思いも、寂しい思いもある。

 それでも、もう踏み出さないとダメだ。

 

「みんなでゆんゆんを連れて帰ろう」

 

『おう!』

 

 背中ぶっ叩いてでも進ませてやる。

 これからのゆんゆんの笑顔の為に。

 

 

「あー、これから行こうぜって時にアレなんだけどさ、ヒカルはどうやって二人の注意を引く気なんだ?」

 

 そういえば、まだ言ってなかったな。

 

「まあ色々あるんだけど、全部言ってもキリがないし、とりあえず方向性としては」

 

「方向性としては?」

 

「ギャグ補正全開でいくわ」

 

『えっ?』

 





本文は最近にしては文字少なめだけど、前書きで過去話入れたしセーフ。
三人称の語りは勉強中なのでお見苦しいかもしれませんがご容赦を。

次回は少し文字数多めで、視点は移り変わって……。
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