このすば ハード?モード   作:ひなたさん

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86話です。さあ、いってみよう。



86話

 

 

「えーっと、ヒカル今なんて?」

 

「ギャグ補正全開で行く」

 

「シロガネ、今はボケるタイミングじゃないと思うんだが…」

 

 ミツルギが呆れたように言ってくるが、俺はボケてなどいない。

 というかミツルギだけでなく、みんな呆れた表情だ。

 何だこの野郎、俺は真剣にギャグ補正全開で行く気だぞ。

 

「じゃあミツルギ。正面から戦っても勝てない、説得も通じない、セコい手もそんなに効かない。どうするよ?」

 

「……」

 

「俺は今回ゆんゆん達の注意を引けるなら、いや儀式を止める為なら多少の恥は覚悟の上だ。それだけ今回の役割は重要だしな」

 

「……それはわかったんだが、ギャグ補正っていうのは一体なんだい?」

 

「ギャグ補正はギャグ補正さ。やられてもギャグで済んだりするやつ。過去の例から言うとシルビア第二形態の時だ。カズマ達が作戦を考えてる間に俺とダクネスの二人で時間稼ぎをした時にダクネスを盾にしたり武器にしたりしてな…」

 

「なっ!?何という扱い!向こうの私はそんな羨ましい目に合っているのか!?ヒカル、今からでも遅くはない!魔王城で私を使ってくれ!」

 

「変な言い方するな、肉盾」

「変態クルセイダーは黙ってろ」

 

「んっ!二人から責め立てられるのも悪くない、むしろ良い!」

 

 ダクネスはさておき、そうか。

 俺はシルビアとの戦いの時には死んでるから、話が合わないのか。

 

「とにかく!ゆんゆん相手に勝つどころか戦うのも難しい。だから少しでも対抗出来る為のギャグ補正さ。シルビア第二形態と戦うのもキツかったけど、ギャグ補正が無かったらやられてた」

 

「ヒカルが真面目な顔しながら真剣なこと言ってるフリしてアホなこと言ってるんだけど…」

 

 まさかアクアにアホ扱いされる日が来るとは。

 

「ゆんゆんを連れ出した後、魔王城と一緒にこの男も爆裂魔法で吹き飛ばしましょうか」

 

「やめろこの野郎。もう殺されるのは御免だ」

 

 スクラップにされたり、槍で貫かれたり。

 更には爆裂魔法で塵も残らないとか、俺の命はなんなんだ。

 次に死ぬのは寿命であって欲しい。

 

「さっきから言ってるように正攻法じゃ無理だ。今回はゆんゆんとヒナの秘密とかをバラして上手く注意を引く作戦で行くぞ」

 

「『今回は』とか言ってる時点でもうダメそうなんですが…」

 

 

 

 

 

 

「ゆんゆん!帰るぞこの野郎!」

 

「はあ…」

 

 俺が魔王の部屋に入りながら叫ぶと、返ってきたのは呆れた表情とため息だった。

 

「何だそのリアクションは!?」

 

「……一応聞いてあげるわ。何しに来たの?」

 

「連れ戻しに来たつってんだろうが!今なら『ごめんなさい許してください何でもしますから』って言って大人しくお縄になれば、みんな許してくれるぞ!」

 

「はあ…。ヒカルがここまでバカだなんて」

 

「……僕なんで告白しちゃったんだろうなぁ…」

 

 二人に呆れられるが、告白はヒナが勝手にしてきたことだろ。

 ある意味ここでヒナが自分の気持ちが間違っていたと思ってくれる方がヒナの心のダメージは少ないだろうし、俺はこのままの勢いで行くしかない。

 

「おいおい、本当にいいんですかこの野郎!?今の内に謝って降参しないと大変なことになるぞ!?」

 

「いい加減にして。ヒカルこそ今の内に牢屋に戻れば、そんなに痛い目には合わないわよ」

 

 何で自分から牢屋に戻るんだよ。

 というか、そんなにって何だ。戻っても痛い目に合うとか、絶対に嫌だわ。

 

「……本当にいいんだな?」

 

「しつこいわよ。ヒカルは確かに強くなったみたいだけど、それだけじゃ私に勝てないのは昨日わかったでしょ?ヒカルが大人しく牢屋に戻るなら他の人達がこの城から安全に出ることを約束するわ、それでどう?」

 

 くそ、昨日の少しの戦闘で力量に雲泥の差があるのがわかったせいか、めちゃくちゃ舐めてかかってきてやがる。

 

「俺は本気だぞ?降参しないと後悔する」

 

「もういいわ。もう一度分からせてあげる」

 

 ゆんゆんは玉座から立ち上がり、俺を真っ直ぐに睨んでくる。

 いいだろう、作戦開始だ。

 俺はゆんゆんに向かって人差し指を向けて、名探偵が犯人を追い詰める証拠を突き付けるように高らかに叫んだ。

 

 

「今からお前達、ゆんゆんとヒナの恥ずかしい過去をバラす!!」

 

 

「「なっ!?」」

 

 ゆんゆんとヒナが驚き、硬直する。

 もう遅い。俺は言うからな。

 

「は、恥ずかしい過去…?い、一体なにを」

 

「お、落ち着いてゆんゆん!僕達は別に恥ずかしい過去なんて無いはずだよ!ふ、普通の健全な生活をしてたはずだもん!」

 

「そ、そそそうよね!?別に何も無いわよね!?ヒカルのハッタリでしょ!」

 

 明らかに動揺してる二人。

 ほう…。

 

「まず第一弾」

 

「「っ!?」」

 

 二人が驚愕の表情で俺を見てくる。

 第一弾ということは、それなりの数の恥ずかしい過去があることがわかったはずだ。

 

「これからゆんゆんのアザ、紅魔族のバーコードの位置をバラします」

 

「……あざ?ばーこーど?」

 

 ヒナはわかってないみたいだが、ゆんゆんは絶句していた。

 

「この男、ゆんゆんを連れ戻す為とはいえ最低ですよ!」

「流石にこれは擁護出来ないね…」

 

 味方の紅魔族二人から不評だが、確実に注意を引けている。

 作戦は確実に成功したと言える。

 だが、それはそれ。

 ゆんゆんをこのまま投降させてや

 

「な、な、ななななななな…」

 

 ゆんゆんがプルプルと震えながら、顔を俯かせて呟くような声量で口を開いた。

 

「数秒間、最後のチャンスをやる!今から投降すれば、この秘密は黙っててや」

 

「な、なんで私のアザの位置を知ってるのよおおおおおおおおおおおお!!??」

 

 ゆんゆんの大絶叫。

 ゆんゆんが俺に杖を向けて、真っ赤な顔と瞳で俺を睨んでいるが、その程度で怯む俺じゃない。

 杖なんか向けられ慣れてるぜ!

 

「数秒間経ったぞ!ゆんゆんのアザは右足の」

 

「わあああああああああ!!!『ファイアーボール』ッッ!」

 

 素早く放たれた火炎の弾は、俺の数メートル前に着弾し、凄まじい爆風を齎した。

 つまり、

 

「うち太もどわあああああああああああああああああ!!」

 

 俺は踏ん張ることなんて出来るわけもなく吹っ飛んだ。

 

「何すんだこの野郎!!」

 

「そっちこそ何言ってんのよこの野郎!!何で知ってるの!?な、ななななんななな何で私のアザの位置を…」

 

「ゆ、ゆんゆん落ち着いてよ。アザって何?どういうこと?」

 

「ヒ、ヒナちゃんは知らなくて大丈夫だから!」

 

 未だ状況が分からないヒナと、俺が何故アザのことを知ってるのかわからない動揺しまくりのゆんゆん。

 これなら行ける。

 完全に注意は俺の方に向いた。

 ……味方の軽蔑するような目も俺に向いたが、今は儀式を止めることが最優先だ。

 俺が床に倒れてるのに誰も助けてくれなかったが、なんとか立ち上がり俺は続ける。

 

「ゆんゆんのアザの位置は右足のうちふ」

 

「『ファイアーボール』ッッ!!」

 

「どわあああああああああああああ!!」

 

 先程と同じ様に吹き飛ばされて、地面をゴロゴロと転がった後、床を舐める様に地面へと這いつくばった。

 

「うぐぐ……ア、アザの位置は右足の」

 

「『ファイアーボール』!『ファイアーボール』!『ファイアーボール』!」

 

「え、ちょ、どわあああああああ!!ぐええええ!!!うわああああああああああ!!!」

 

 絶妙にコントロールされた『ファイアーボール』の爆風で俺をピンポン球のように部屋の四方八方に縦横無尽に飛ばされた。

 

「ゆんゆん!?ゆんゆん、止めて!ヒカルが死んじゃうよぉ!」

 

「『ファイアーボール』!はあ…はあ…はあ…。こ、これで、喋れない、はず…」

 

 最後の爆風で転がって来たのは待機するモンスター達の中心。

 そして、ゆんゆんやヒナと数メートルしか離れていない場所だった。

 まずい、また牢屋に戻ることになる。

 そう思っても爆風で飛ばされまくった俺はボロボロで何故意識があるのかわからないような状態だった。

 

「ぐ、ぐぐ…」

 

 それでもなんとか逃げようと歯を食いしばって這って逃げようとしたが、すぐにゆんゆん達が俺のすぐそばまで来て

 

「『バインド』ッ!」

 

「っ!」

 

「え、きゃっ!?」

 

 すぐ近くで男の声が聞こえて、なんとか振り返るとカズマがゆんゆんを『バインド』で拘束していた。

 

「嘘だろっ!?潜伏で近付いたのに何で分かった!?」

 

「勘だよ!」

 

「なんだよそれ!?」

 

 どうやらヒナはカズマが近づいて来るのに気付いて拘束スキルを避けたらしい。

 ヒナはすぐにファイティグポーズを構えてカズマの懐に入ろうと接近するが、それを嫌がったカズマは距離を取る。

 

「『ブレイクスペル』!」

 

 距離を離したカズマを確認してから、ヒナがゆんゆんに向かって手をかざし魔法を唱えると、ゆんゆんを拘束してた縄はスルスルと落ちていった。

 

「はあっ!?」

 

 ヒナは確かアークプリーストの力が使えないはずじゃ…。

 まさかクリスが言っていたように、少し力が戻ったというのか。

 カズマは堪らず俺へと走り出し、俺の背中に触れて、呪文を唱え始める。

 

「『テレポート』っ!」

 

 

 

 

 

 

 『テレポート』した先は先程俺達が作戦会議をした魔王城の一階だった。

 すぐに全員が揃った。

 話を聞くと、『ファイアーボール』で俺が飛ばされてる間に既に他のメンバーは部屋の外に避難していたらしく、俺達が『テレポート』したのを確認してから、同じくあるえちゃんの『テレポート』でここに戻ってきたという。

 俺はダクネスと一緒にアクアの回復魔法でボロボロの体を治してもらった後、休憩を取りつつ作戦会議を始めた。

 ちなみに何故ダクネスも回復魔法をかけてもらっているかと言うと、ダクネスが自分から爆発に突っ込んでいったからだ。

 

「作戦自体は上手くいってたんだけどな…」

 

「ああ、俺のギャグ補正も上手く」

 

「それはゆんゆんが手加減してたからであってその補正は何も意味はないです」

 

 めぐみんが呆れたように俺に言って来る。

 一緒に来てもらってるから、あまり強くは言えないが、こいつに呆れられた表情をされるのは滅茶苦茶腹立つんだが。

 というか今更だが、魔王を倒した後もこいつは爆裂魔法しか覚えてないのか。

 

「ま、まあまあ。確かに作戦自体は上手くいってた。問題もあったけどね」

 

 ミツルギの言葉に俺は頷く。

 まさかヒナが

 

「ヒカルさんが紅魔族のアザの位置を言おうとしたことだね」

 

 え、それなの?

 

「そうね」

「うん」

「そうだね」

 

「いや、待てよ!カズマが潜伏で忍び寄れるほど注意を引けたのは間違いなく紅魔族のアザの話だったからだぞ!」

 

 賛同の声が次々と上がるのに、耐えられなくなった俺はすぐに言い返した。

 

「だからってアザの位置はどうかと思いますよ」

 

「ヒカルさんがどうやってゆんゆんのアザの位置を知ったのか興味深いが、紅魔族のアザは他人に知られるのを嫌うんだ。これ以上手加減されなくなる前にその話はしない方がいいと思うよ」

 

「そ、そう言われると軽率だったかもしれないけど、確実にゆんゆんを動揺させられるのがアザの話だったんだよ」

 

 他にもいろいろ考えてはいたが、確実に反応して来るのは紅魔族のアザの話だと予想していた。

 予想通りどころか予想以上だったが。

 

「じゃあアザの話はもう無しだ。もう一つの問題の話に入ろう。ヒカルは近くで見てたよな?」

 

「ああ、ヒナがスキルを使っていたな」

 

「私も見ていたが、正直信じられん。クリスとよくヒナギクに会いに行っていたが、この数年間そんな様子は無かったぞ」

 

 ダクネスの言葉に事前に得ていた情報が間違ってないことがわかった。

 この通りなら、クリスが言っていたように俺と会って精神状態が落ち着いたヒナがアークプリーストの力を使えるようになったのだろう。

 もしそうならめちゃくちゃ面倒だ。

 ヒナならゆんゆんの方に行っても力が使えないから特に障害になったりはしないと思っていたが、回復やら支援やらをされ始めたら、ゆんゆんが無敵になってしまう。

 

「スキルを使えるようになったのは、まだいいとして、俺の潜伏スキルに気付きやがったんだ。もう忍び寄るのも無理だ」

 

 やばい、無理ゲーかもしれん。

 カズマを見ると、多分同じことを考えたのか俺と目が合った。

 

 そこから作戦会議はあーでもないこーでもないと長引き、特に何も打開策は見当たらず、日付が変わる時間になった頃。

 

「ギャグ補正だ」

 

 みんなが意見を出すことすら諦めて沈黙が流れていたせいか、カズマの呟きがよく聞こえた。

 みんなが「はあ?」みたいな顔をする中、カズマは俺を見てくる。

 

「ヒカル。ギャグ補正の作戦を思い付いたんだ。あー、でも、これは上手く行くかって言われると」

 

「上手くいきそうな作戦もダメだったんだし、今更だろ。聞かせてくれ、カズマの作戦は聞く価値がある」

 

「……ああ。作戦は」

 

 

 

 

 

 

 

 

「たのもーー!!」

 

「『ファイアーボール』!」

 

「え、ちょ、どわああああああああああああ!!?」

 

 また爆風で吹き飛ばされた。

 

「いきなり何すんだこの野郎おおおおお!!」

 

「懲りずに来たくせに何言ってるのよ!!それにアザの位置は言ってないでしょうね!?言ってるんだとしたら、ただじゃおかないわよ!」

 

 吹き飛んだのは先頭の俺だけで済んだらしい。

 同じく部屋に入ってきたカズマとミツルギに助け起こされながら、立ち上がる。

 

「言ってねえよ。悪かったな、ゆんゆん」

 

「え、う、うん。謝ってくれるなら、少し痛い目に合ってもらうだけでいいけど…」

 

 普通には許してくれないらしい。

 

「ゆんゆん、いろいろ話したいことがあるんだ。里に戻らないか?」

 

 優しく語りかけるように言ったが、ゆんゆんはすぐに首を横に振った。

 

「ダメよ。話したいことがあるなら、ここで話すか牢屋で話して」

 

「そうか…」

 

 この作戦をやらないといけないのか。

 カズマと目を合わせて、作戦開始の合図を送る。

 

「よし、『バインド』」

 

「「えっ」」

 

 ゆんゆんとヒナの間抜けな声が聞こえる中、俺はカズマに縄でぐるぐる巻きに拘束されて地面へと倒れた。

 

「おい、大事な仲間がどうなってもいいのか!?」

 

「「えっ」」

 

 カズマが俺の体の横でしゃがみ、脇差サイズの刀のちゅんちゅん丸を俺の首に当てながら叫ぶと、再びゆんゆんとヒナの間抜けな声が返ってきた。

 

「こ、この魔剣グラムのサビにしてくれてもいいんだぞー!?」

 

「「えっ」」

 

 ミツルギが魔剣グラムを引き抜き、ヤケクソ気味に叫ぶと、ゆんゆんとヒナの間抜けな声が。

 

「俺がどうなってもいいのかこの野郎おおおおおお!!」

 

「「えっ」」

 

 作戦名は『人質作戦』。

 人質は俺だ。

 





ヒナギクの『全知』の説明を忘れてたのでここで。
『全知』はあらゆる知識を知ることができて、物事の本質を理解する能力です。
それとほんの少しだけ未来や過去のことを断片的に知ることが出来ます。
未来や過去について知るのは色々と条件がありますが、今のところは伏せておきます。
誰かさんと似た能力ですが、誰かさんほど強力でもありません。


お気に入り、感想、評価ありがとうございます。
いつも書くモチベやパワーをもらってます。
人の反応を見るのが楽しみで楽しみで。
これからも精進しますので、『このすば ハード?モード』をよろしくお願いします。

次回か、その次で平行世界でのお話は終わりです。
それと六章のラストにこの平行世界の後日談も用意してますのでお楽しみに。
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