このすば ハード?モード   作:ひなたさん

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真面目な描写多めで疲れたので文字数はいつもより控えめ。

90話です。さあ、いってみよう。



90話

 

 一人には慣れている。

 だから一人で円卓の騎士を相手取ることを選んだ。

 前の戦場では乱戦であったが故にやられたが今は一対一、負ける道理は無い。

更に言えば彼等のパーティーの連携を崩すような真似はしたくなかった。

 それに彼等は余のせいで戦いに巻き込まれた。

 ならば余が一人を引き受けるのは当然だろう。

 そう思っていた。

 

 だが今になって後悔している。

 やはり誰かに援護を頼みたかった。

 そうすれば状況も幾分マシだったかもしれない。

 

 ズルズルと大剣を引き摺る音が近付いてくる。

 まるで死刑執行人が近付いて来てるかのようだ。

 この音をわざと聞かせているのだとしたら、あの円卓の騎士は相当性格がねじ曲がっている。

 

「こんなところで…」

 

 木を背にした余は思わず独りごちた。

 木を背にしている理由は単純明快。

 そうでもしてないと立っていられない。

 致命傷ではないが、身体はボロボロ。

 躱しきれずに何度か打ち合っただけでこんな無様を晒すとは。

 王家に代々伝わる魔法も通じなかった。

 どれだけの魔法抵抗力や魔法防御があれば、余の魔法を正面から食らって、傷一つ無く涼しい顔をしていられるのか。

 

「見つけた」

 

 まるで死刑宣告。

 余を見つけるや否や引き摺っていた身の丈を越える大剣を片手で軽々と持ち、飛んでくるように余に近付いて来た。

 小さい身体からは考えられない怪力で大剣を振り回し、嵐のように攻撃してくるのを見ると同じ人間とは思えなかった。

 余はすでに動くことが出来ずに剣でガードすると凄まじい力で後ろの木をぶち抜いて後方へと吹き飛ばされた。

 ボールのように飛んで何本も木を折り、勢いを失った頃にゴロゴロと地面を転がった。

 

 ああ、一人に慣れているはずだったのに。

 どうしてこんなに後悔の念が押し寄せる。

 

「一人じゃなければ……こんな…」

 

 歯痒い。

 悔しい。

 そんな思いで思わず口にしてしまった。

 

 

「おいおい、何言ってんだこの野郎。ぼっちっていうのは何でも一人で出来てこそ名乗れるもんだ。まさよし君はぼっち失格だ」

 

 

 振り返ると彼等がいた。

 

「バカなこと言ってないで早く助けるわよ!」

 

「そうだよ!今、回復魔法をかけますね!」

 

「遅くなってしまい申し訳ありません、ジャティス王子」

 

 待ち望んだ声と顔。

 駆け付けてくれたのか。

 あの騎士を倒して。

 

「立てこの野郎。早く倒すか逃げるか、しようぜ」

 

「……遅いぞ、馬鹿者」

 

 湧き上がる力に任せて立ち上がる。

 自然と余は笑っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、どうするよ」

 

「出来れば『テレポート』で逃げたいのですが…」

 

「それはならん。ここであの騎士を倒す」

 

 ジャティスが言い切るが、ジャティスがここまでやられる相手をどう倒したものか。

 パラメデスを相手取った時と戦い方は変わらないだろうから、あのサフィア相手に前衛を張るのは難しい気がする。

 

「どうにか時間稼ぎ出来ないか?余の必殺剣スキルを使えば確実に倒せる」

 

「何その必殺剣って」

 

「余の一族に代々伝わるものだ。ただ使うのに時間がかかる。十秒ほどだ」

 

 長えよ。

 

「サフィア相手に十秒ですか…」

 

 トリスターノも顔が引き攣っている。

 時間稼ぎについて話始めようとした時、ズルズルと何かを引き摺る音が聞こえ始めた。

 

「あの騎士が来る。任せていいか?」

 

 引き摺っているのはあの馬鹿でかい剣か。

 だが、俺達に出来るだろうか。

 あの円卓の騎士一の筋力を持つ騎士を相手に十秒の足止めなど。

 

「僕の力を使えば、もしかしたら時間を稼げるかも」

 

「ヒナの力?」

 

 ヒナの力っていうと

 

「ボクシングか」

 

「違うよ!!天使の力だよバカ野郎!」

 

「どう使うんだよ?飛んで持ち上げて落とすとか?」

 

「いや、何その戦法!?僕の支援魔法と全力の天使の加護をヒカルに掛けてあげれば、かなり強化出来るはずだよ」

 

「そんなんあるのか」

 

 こいつが天使として活躍してるの飛んでるところしか知らないしな。

 というか天使の加護とやらで俺のことを守ってくれれば世界を渡る時に気絶とかしなくて済んだんじゃないのか?

 

「ねえ、本当に大丈夫なの…?」

 

 ゆんゆんが心配そうに尋ねてくる。

 戻ってきた時に泣き止ませるのは大変だったし、心配なのは当然だろう。

 正直俺も天使の加護を知らないから何て返せばいいか、わからない。

 

「リーダーは狂戦士で前衛として確かに適任なのですが、サフィア相手となると私も行って欲しくないのですが…」

 

 トリスターノも同じ意見のようだ。

 

「来るぞ!」

 

 まだ話し合いの途中だと言うのに、お相手さんは来てしまったようだ。

 大剣を引き摺る騎士が数十メートル先まで来ていた。

 

「ゆんゆん、『テレポート』の準備を頼む。最悪ジャティスも無理矢理連れて行け」

 

 ゆんゆんにひそひそ声で話すと、頷き返してきた。

 

「何故お前達がここにいる?」

 

 こちらを睨みながら少年の声で聞いてくる。

 

「私が討ち取らせていただきました。私の『ラウンズスキル』で」

 

「………嘘をつくな。騎士モドキが」

 

「では何故私達はここにいるのでしょう?何故パラメデスの姿は見えないのでしょう?」

 

「貴様っ!」

 

「お前なに煽ってんだこの野郎!?」

 

 トリスターノが煽るせいでサフィアはすぐに突っ込んで来そうだ。

 

「すみません。サフィアも嫌いです」

 

「円卓の騎士めんどくせえ!」

 

 サフィアが大剣を片手で持ち上げる。

 引き摺るのをやめたということは、来る。

 

「ヒナ、すぐに俺を強化してくれ!ゆんゆんは準備!トリスターノは弓で援護!ジャティス、しっかりやれよ!」

 

『了解!』

 

「シロガネ…いや、ヒカル。任せたぞ」

 

 サフィアが地面を砕きながら、こちらへと迫ってくる。

 ヒナの支援魔法と天使の加護とやらが俺に掛けられると、体は羽のように軽くなり、それでいて身体中に力が漲り、突っ込んでくるサフィアの動きもよく見えるようになった。

 

 これなら戦える。

 

 そう確信してしまうほどの力が身体中を巡っていた。

 後ろでは魔力が集まっていくのを感じながら、俺もサフィアへと突っ込んでいく。

 同じく天使の加護が掛けられた刀の鯉口を切り、サフィアの大剣に合わせて引き抜いた。

 

 凄まじい衝突音と共に地面が地割れでも起きたかのように砕け飛ぶ。

 お互いの衝突と踏ん張った力でここまでの力が出たのだ。

 

「っ!!??」

 

 サフィアの顔が驚愕で染まる。

 きっと真正面から攻撃を受けて、踏ん張ってきたやつはいないか、もしくは少ないのだろう。

 とはいえ一瞬でも気を抜いたら殺られるのは間違いない。

 こちらも殺す気で戦う。

 もうパラメデス戦のような躊躇はしない。

 

「うおおおらああああああああああ!!!」

 

 一瞬の間に何度も剣と刀がぶつかり合う。

 ド派手な交通事故でも起こしたかのような音と衝撃が辺りへと響き渡る。

 後ろからでもわかるほど魔力が高まっていくのを感じた。

 

「ふざけるな!!お前らなんかに僕達兄弟がやられるものかーーーー!!!」

 

「こっちは大真面目だ馬鹿野郎おおおおおおおおおおお!!!」

 

 呼吸を止めて、力任せに相手の剣に合わせて刀を振るう。

 数秒が経ったか、それとも一瞬の出来事か、決死の力で下から打ち上げるように振られた大剣に押し負けて吹き飛ばされる。

 俺を呼ぶ声が聞こえて、すぐに俺は空中で止まった。

 飛んだヒナが俺をキャッチしたらしい。

 

「大丈夫!?」

 

「俺はいい!早く降ろしてくれ!」

 

 足止めがいなくなり、真っ直ぐにジャティスへと距離を詰めるサフィア。

 

「大丈夫だよ、もう勝ったから」

 

 そうヒナが言った後に、ジャティスは剣を高く掲げた。

 金色に光る魔力を纏った剣は、空から光が差したような光景だった。

 ジャティスの周りはピリピリと電流が走るような光が迸っていて、更に剣の光が増した瞬間。

 

「『セイクリッド・エクスプロード』ッッ!!」

 

 ジャティスの全身全霊の叫びと共に、迫るサフィアへと剣は振り下ろされて、視界は光で覆われた。

 

 

 

 

 あれから一日が経過した後、ようやく目的地である戦場へとたどり着いた。

 ジャティスが戦線を離脱した後も戦いは続いていたらしく、多くの戦死者を出したものの退かずに魔王軍とグレテン軍の連合軍と戦っていたという。

 後から聞いた話だが、もう退却を始めるギリギリだったらしい。

 戻ってきたジャティスは戦場で高々とサフィアの剣を掲げて、円卓の騎士を二人倒したことを宣言するとベルゼルグ軍の士気は上がり、連合軍は気圧されて士気は下がった。

 宣言を聞いたグレテン軍はすぐ様撤退を始めた。

 そのグレテン軍率いるラモラックはジャティスを睨み、貴様の首を獲る準備をして戻ってくるだろうと宣言し、帰っていった。

 

 戦場での出来事はこんな感じ。

 ジャティスを始めとした多くの人にお礼を言われた後、俺達は『テレポート』でアクセルに帰ることにした。

 円卓の騎士を相手にしたり、俺は俺で世界を渡ったり、また急かしてくるジャティスに押されて戦場まで急いだりしたせいで俺達全員は疲労困憊だった。

 ヒノヤマに向かうにしても約一日は歩かないと着かない上に山を登る元気なんて無かった。

 それに強いモンスターも生息しているとかで戦闘を考慮するとヒノヤマに向かうことは現実的ではなかった。

 ヒナもアクセルに戻ることを提案していた。

 なんでも元魔王軍幹部のヒナの父親がヒノヤマで暮らすことを黙認する代わりに魔王軍との戦いに干渉しないのがルールなのだとか。

 円卓の騎士ラモラックの言うことが本当であれば、ヒノヤマに近いこの地域の戦の規模が大きくなるかもしれないことを考えると、巻き込むわけにはいかず、ヒノヤマに戻るのは危険だというのも理由の一つだ。

 一応ヒナに本当に戻っていいのかと聞いてみたが

 

「僕のお母さんがすごく残念がるだろうけど、しょうがないよ」

 

 と言っていたし、何故だかヒナ自身はそこまで残念そうにはしていないように感じたので、アクセルに戻ることが決定した。

 

 ジャティスからはこの戦の参加者には王城で開かれるパーティーに招待することになっていて俺達も呼ぶから是非来るように言われた。

 それに適当に返事しつつ、俺達はアクセルの我が家へとテレポートした。

 

「あ、パーティーと言えば」

 

「なんだよ、腹減ったのか?」

 

「違うよ!お母さん達パーティーの準備してたかも…」

 

「ああ、俺達の歓迎会的な?」

 

「うん、それと明日は僕の誕生日だし」

 

「「「え?」」」

 

「え?」

 

 数秒の沈黙の後、ヒナが焦ったように

 

「……あ、あれ、僕言ってなかったっけ?」

 

「知らねえよ」

「初めて知りましたよ…」

「ど、どうしよう!?プレゼントとかパーティーとか準備しなきゃ!」

 

 俺とトリスターノは呆れながら、ゆんゆんだけはオロオロしながら明日をどうするか考えていた。

 

 五月五日はヒナの誕生日だそうだ。

 




後書き長め。

五月五日は何の日〜?
まあ、あの世界ではただの平日とかかもしれませんね。
次回で一応六章終わり、だと思います。
本当はラモラックも倒す予定だったんですけど、真面目描写が疲れました。

土日の後も火曜日ぐらいにまたデイリーランキングに入りました。
ありがとうございます。
評価も50人を越えて、ゲージ全てに色がつきました。
しかも現段階では真っ赤ですね。
本当に嬉しいです。
色々目標がありましたが、この連続デイリーランキングで多くの目標をクリアして、更には平行世界のお話も書き終わって、軽く燃え尽き症候群になってました。
お気に入りもかなり増えて、書く前の予想を遥かに上回るものになりました。
ここ好きも地味に増えてて嬉しいです。
最高評価をいただくのは本当に光栄なことだと思っています。
なんと表現していいかわからないぐらい読者様方には感謝しています、本当にありがとうございます。
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