さあ、いってみよう。
幕間
創造神の間にて
「創造神様、申し訳ございません。失敗しました」
「んなモン見てればわかる」
私がいるのは創造神様の仕事部屋。
とある報告と謝罪に来た。
頭を下げて謝罪するが、創造神様の表情は変わらず、足を組んで両足を仕事机に載せている。
その仕事机の創造神様の手の届くところに拳銃が置いてあるのだが、それだけは仕舞っておいて欲しかった。
その拳銃と強面の鋭い視線に怯えながらも、報告を続けた。
「白銀光の死亡時と蘇生後の報告に私の部屋へ来た時に『ムードメーカー』の回収を何度も試みたのですが…」
「わあってるよ。『ムードメーカー』があいつの魂と引っ付いてて回収出来なかったんだろ?」
「正確には付いてるどころではなく、同化してます。すでに白銀光自身が『ムードメーカー』と言っても過言ではありません」
私の報告を聞いて、はあと心底面倒臭そうにため息を吐く創造神様。
私も同じくらいのため息を吐きたい。
「ったくメンドクセェことになったモンだ。パッちゃんの世界は何でこんなメンドクセェんだぁ?」
「あ、あのすみません。パッちゃんって何ですか?」
正直私が管理してる世界が面倒くさくなったことに関しても私のせいではない気がするのだが、それ以上に気になることがあって優先して聞いてしまった。
「あ?そりゃお前、パ◯ドの神様なんだから、パッ」
「違います!『幸運』の女神のエリスです!」
「大して変わらねえだろぉ?」
「変わります!何もかもが違います!!」
思わずため息をついてしまった。
いけない、と思い創造神様の方を恐る恐る見ると、何かを考えているような難しい表情をしていた。
「『ムードメーカー』の回収は諦める。無理言って悪かったな」
「い、いえ」
まさか創造神様が謝るとは思わなかった。
「なんだあ?変な顔しやがって」
「い、いえ、その創造神様に謝られると、その」
創造神様に怪訝な顔で尋ねられて、なんとか返事をするも創造神様の圧力に負けて口が止まった。
「お前さんはどちらかと言うと俺と似たスタイルだからな」
「え"っ」
思わず口から疑問の声が出てしまった。
今更口を押さえても意味はないが、押さえてしまった。
「なんだあ、てめえ?おじさんと一緒は嫌だってか?」
「い、いえいえいえいえ!め、めめめめ滅相もありません!」
なんとか言い繕うが、効果は薄いらしく強面の顔は不機嫌になった。
早く自分の部屋に帰りたい。
「まあ、いい。お前さんは人間側に立ち過ぎるところがある。バカ真面目なフリして実は裏でヤンチャしてるところなんて特におじさんソックリだ」
創造神様がバカ真面目なフリをしたことなんてあっただろうか、そう考え始めると創造神様が私に銃を突き付けた。
「なんだあ?お前さん今更自分がヤンチャじゃねえとか言い出すんじゃねえだろうな?」
別にヤンチャではないような…。
それに疑問に思ったのはそこではない。
だが、それを言うわけにもいかず、返事を出そうとするも、銃を持っている手が動くような気がして、すぐ様しゃがんだ。
パァン!
「ひぃっ!あ、あああの、私そんなヤンチャと言う程…」
羽衣に穴が空いた。
危なかった。
「じゃあ、お前さんが管理してる世界で何で『神聖』持ちが現れたか言ってみろ。三秒以内にな」
そう言って、しゃがんだ私に銃を向け直す。
まずい、これは。
「イチ」
パァン!
「2と3はあああああああああ!?!?」
なんとか頭を抱えて横に飛んだおかげで無傷だった。
無傷とはいえ、その理不尽に突っ込まずにはいられなかった。
「世界の管理を行う存在である俺達神はまどろっこしい数字なんて覚えねえで、1だけ知っておけばいいんだよ」
「そ、そうでした!申し訳ありません!!あ、あの!私やっぱりすごいヤンチャでした!!創造神様にはいつもご迷惑を…」
「わかりゃあいいんだよ」
そう言って銃を向けるのをやめてくれた。
まさか創造神様と似た存在だなんて…周りにもそう思われてたりするのだろうか。
だとしたら
「お前さん、失礼なこと考えてるだろ」
懐に仕舞いかけた銃をまた私に向けてくる。
私はすぐに両手を上げて、全力で首を横に振った。
「このまま話を続けるぞ。『ムードメーカー』の回収任務、失敗とはいえご苦労だった」
えっ、このまま?
銃を向けられたまま?
「お前さんの協力者でそれなりに知ってる仲みたいだったからな。能力の回収の為にわざと死ぬように仕向けさせたんだ。俺だって謝るぐらいはするさ」
「……」
あまり考えないようにしていた事を言われてしまう。
そう、私は彼が死ぬのを知っていた。
自分の仕事の為にわざと彼を見殺しにしたのだ。
そして能力の回収を謀り、失敗した。
「だが救済措置も設けた。あの天使もしばらくは見ないフリをしてやる。それでチャラだ。いいな?」
「はい。ありがとうございます」
「あと『ムードメーカー』のことは他言無用だ。本人にも言うことは許さん」
「もちろんです」
私が返事をすると、やっと銃を向けるのをやめてくれた。
いい加減両手が疲れて来たところだからありがたかった。
「じゃあ帰れ。パッちゃん」
「エリスです」
「はあ…。本当に面倒なことになりましたね」
自分の部屋に戻り、思わず独りごちる。
最近は想定外のことばかり起きる。
ヒナギクの覚醒に、『ムードメーカー』のこと。
ヒナギクのことに関してはほぼ話が決まっているのでいいとして、問題は『ムードメーカー』だ。
創造神様に『ムードメーカー』のことは誰にも話すな、と言われたが誰にも言えるわけがない。
『ムードメーカー』とはよく言ったものだ。
どれだけ場を盛り上げることが出来る人間でも一人でいるのなら、それはただの騒がしい人だろう。
だがその人の周りに一人、また一人と集まっていけばいくほど、盛り上げる人物の場を盛り上げる力は強くなっていく。
それは集まって来た人たちも影響を受けて、更に周りへ広がっていく。
『ムードメーカー』それはそんな能力だ。
関わった人達に影響を与えていく。
効果を与える人が多ければ多いほど、信頼が深くなっていくほど、その能力は強くなっていき、影響を与えた人達の力すらも自分の力にする。
条件は厳しく、大器晩成型の能力ではあるものの、その能力が実った場合それは恐ろしく危険な能力になり得る。
人の繋がりが増えれば増えるほど、力は増幅していき、無限を超える力を得る。
それはありとあらゆる存在を超えて、神すらも届かない力になる。
ただ一定数人が増えなかったり、『ムードメーカー』の能力を正しく理解していないと自身の力にする能力はなかなか発動されないらしいのだが…。
能力の詳細が判明したのは少し前ヒナギクのことが創造神様にバレて、芋づる式に白銀光の存在もバレた時のこと。
バレた事はしょうがなかった。
協力者と誤魔化した。
誤魔化されたと分かった上で創造神様も見逃してくれた。
問題はその後起こった。
彼が日本から来た転生者だという説明をすると、当然彼が転生する際に得た転生特典の話になる。
私は特に何も考えず、彼の特典は『ムードメーカー』だと伝えると、創造神様は「ほお、ムードメーカーね」と言った後、固まった。
数秒後、創造神様はもう一度言ってくれとか、マジで言ってんのパッちゃんとか、今まで見た事が無い程の動揺を見せた。
当然疑問に思った私は創造神様に聞くと、創造神様は頭を抱えながら説明してきた。
私やアクア先輩が生まれる遥か昔のとある世界で一人の人間がその能力を得た。
その人間は少しずつだが確実に『ムードメーカー』の力を引き出していき、結果的に人間と神の間で戦争すら引き起こした。
その戦争は世界の有り様や人間と神のルールを根本から変えさせる程の影響があった。
無限を超える力を得る能力なんて、どう考えても危険で手に余ると考えた神々は、彼の死後に『ムードメーカー』が誰も手を付けないような能力に見せかけることで『ムードメーカー』が誰の手にも渡らないようにした。
誰も選ばないような能力を記し、『ムードメーカー』の能力を偽造した後、転生特典の能力が置かれた倉庫のような場所に仕舞われて永遠に選ばれず忘れ去られるのを待つのみであった。
だが、
ランダムに特典を選んでくれと頼まれた女神アクアはその持ち前の運の悪さを遺憾無く発揮して、
そんな恐ろしい能力はもちろん回収という話になり、私が回収する役になった。
与えたチート能力を回収するなんて前代未聞だが、それ程の能力だった。
世界のバランスを保つ為に存在する私達が世界のバランスを壊すものを見逃せるわけがない。
だが先程創造神様に報告した通り、回収は失敗に終わった。
『ムードメーカー』は白銀光の魂と同化していた。
本来であれば能力を保持している人物が死亡してしまえば、能力の回収は容易なのだが、魂と同化してしまった場合は話は別だ。
そもそも能力が魂と同化するなど聞いたことがない。
『ムードメーカー』自身が白銀光を気に入ったとでも言うのか、それとも単純に仕舞われたままの状態が続いたのが嫌だったのか、それは定かではない。
良くない話は続くものだ。
『ムードメーカー』の能力が強くなり始めていることもわかった。
その証拠が白銀光が『神聖』を宿していることだ。
最初はヒナギクと同様神聖な存在に触れてしまった為に『神聖』を宿したのかと思っていたが、実際は違った。
確かに白銀光は神聖な存在と何度も遭遇する機会があった。
ただ彼には『神聖』を持つ資格がない。
そんな人間が会っただけで影響を受けて『神聖』を宿すわけがない。
同じ条件で言えば佐藤和真にだって『神聖』が宿ってもおかしくない。
白銀光よりも神聖な存在に会った回数は少ないが、彼は弱体化しているとはいえ水の女神アクアと生活を同じくしているし、私とも何度も会っている。
それでも彼に『神聖』は宿らない。
では何故、白銀光に『神聖』が宿ったか。
それは繋がりを得た神聖な存在から『神聖』を自分の力にしているからだ。
『ムードメーカー』は周りの存在に強化などの影響を与え、更に影響を与えた人間の力も自身の力にする能力。
神々の力すら自分の力にする能力なんて許されるわけもないが、回収は出来ず彼の魂を転生させるにしても、予測出来ない事態が起こる可能性もある。
もし転生させた場合、白銀光と共に能力が消えるのか、それとも生まれ変わってもなおその魂と在り続けるのか。
想定外のことが起こるのを恐れた私達が出した答えは監視と観察だ。
彼に能力の詳細を伝えないのはもちろんのこと、何も起こさないように彼を監視することになった。
もちろん監視する役は私だ。
つまり、また私の仕事がまた増えたわけだ。
ヒナギクの可愛い姿を見る時間が減る。
それもこれもアクア先輩のせいだ。
先輩がもう少し丁寧に説明をしていれば、こんなことにはならなかった。
……あのいい加減さが日本の死んでしまった方達をうまく誘導出来ていたことは認める。
アクア先輩がポンポン人を送ってくれたおかげであの世界は滅びることなく、魔王軍にも抵抗ができた。
……その代わり問題もポンポン増えたが。
認める理由のもう一つはアクア先輩の後任は全く人を送れないでいる。
丁寧に説明しすぎていて、あの世界の厳しさを知り、生き残れる自信がないと感じた人達は私達の世界に来ることを恐れて、日本の転生のし直しばかりを選択するようになってしまい、結局最後に送られて来たのはカズマさんとアクア先輩のペアのままだ。
あとちょっとでよかったのだ。
あとちょっと丁寧に説明していれば…。
何故こうも極端なのか。
私が何度頭を抱えて……なんて考えていると通信が届いた。
タイムリーなことにアクア先輩の後任だ。
またアクア先輩の残したなんとかが手に負えないとかそんな感じだろう。
ため息をつきつつ、私は通信を繋げた。
『通信失礼いたします、エリス様。今お時間よろしいでしょうか?』
「問題ありませんよ。どうしましたか?」
面倒な話ではありませんように、そう思いながら話を続けた。
『日本の人間を一人、エリス様が管理する世界へ送りました。そのご報告です』
「なるほど」
日本の人間を一人ね。
私の管理する世界に。
………ん?
日本の人間を一人、私の管理する世界に送った?
聞き間違いか?
「すみません、もう一度お願いします」
『え、は、はい。日本の人間を一人、エリス様が管理する世界へ送りました。』
……聞き間違いじゃなかった。
もう送られて来ることは無いと思っていたが、どうしたことか。
アクア先輩みたいに送って、はい頑張ってーじゃないのは助かる。
後で様子を見に
『あの、実はですね』
私が考え事をしていると、気まずそうに話を切り出して来た。
『送った人なんですが、その、なんというか変わった人で…』
また変わった人か。
まともな人の方が珍しいとは一体どうなっているのか。
能力の詳細は彼自身が死後に天界に来てから知ることになるので、本編で彼が能力を使いこなすことはありません。
なのでヒカルの強化は無く、ヒカルの知らないところでただ能力が判明しただけです。
そしてまたオリキャラが増えますが、このキャラは重要なキャラ(レギュラーメンバー)にはしない『予定』です。
ネタバレを控えた言い方をしつつ確実に言えることはヒカル達の仲間にはなりません。
ただ『このすば』の物語の都合上、あるキャラの代わりをしてもらうことになっています。
その代わりをするという重要な役割を担っていますが、そのキャラ自体は重要ではないという感じです。
登場回を作りますが、そこで評判が良ければちょくちょく出てくるようになるかもしれません。