ドラゴンクエスト9 AngelsTale   作:彩波風衣

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今回は新大陸上陸・そしてカラコタ橋のはなしをお届けします。
人気が実はあるみたいなので、あのキャラも出しちゃいました。


15「ならず者の町」

 

 船を使い、南東の大陸に降り立ったフィリスたち。 その船着き場で武器や防具などの、ある程度の装備品を整えた彼らは、次の目的地を目指す。

 

「あの船着き場にいた人達は、もっと自由に旅をしたいのなら、自分達の船を手に入れろって言ってたな」

「ああ、けど船なんてそう簡単には手に入らないだろうぜ。 ああいうのってバカに高いからな。 まぁ最悪中古の小型船なら、手に入らなくもないかもしれねぇな…」

「え、アテがあるんですか?」

「いや、アテらしいアテはねぇけど」

 

 イアンの言葉にたいし、全員がずっこけることがありながらも、イアンは冷静に地図を出してある一点を指さす。

 

「とりあえずこの、サンマロウという町を目指そうぜ。 これだけ大きな町ならなにか、いい情報も手に入るだろう」

「そうだな、立ち止まっていてもなんも変わらないし」

「だったら、進んだ方が得ですね」

 

 目的地が決まり、そのために歩き出すフィリス一行だったが、そんな彼らの前に、容赦なく魔物が立ちふさがる。

 

「おっと!」

 

 彼らの前に現れたのは、人型の獣モンスター、リカントの集団だった。 フィリス達を自分達の獲物だと認識したリカント達は、自らのテンションをあげることでパワーアップをはかり、襲いかかってくる。

 

「バギマッ!」

 

 そこでセルフィスは風の魔法バギマを放ち、リカントの不意を打つ。 そこにイアンが飛び込んで、リカントの腹を強く蹴るが、直後に反撃を受ける。

 

「こいつっ!」

 

 大きなその一撃に対しイアンは棍をふるい反撃をするが、それによりリカントのパワーがあがったのように見える。 それを見たサンディは、相手の特長に気づく。

 

「まさか、ぶたれればぶたれるほど攻撃力があがるってヤツじゃないの!?」

「え、まさかのドMか!?」

「その言い方はどうなのヨ…」

 

 そうツッコミを入れるサンディを横目に、フィリスは相手のテンションを下げる方法がないかを考える。

 

「じゃあこれならどうかしら、メダパニッ!」

 

 そのとき、話を聞いていたらしい、クルーヤがリカント達に向かってメダパニの魔法を放つ。 すると、相手の目の瞳孔がぐるぐるとまわりだし、どう動けばいいのかわからないもの、仲間を攻撃するもの、自分を殴るもの、逃げるもの等々の異常行動を起こし始めていた。

 

「お、なんか頭トチ狂ってるぞ!?」

「そりゃそうよ、メダパニの魔法で混乱させたんだから! さぁ、なにもかもがわからなくなってる今がチャンスよ!」

「おう!」

 

 それをきき、まず動き出したのはセルフィスだった。 彼は新品の槍を使い、獣系モンスターに効果が強く出るけもの突きという技を繰り出し、リカントを葬った。

 

「よし! あたしも続くぞ!」

 

 そう言ってフィリスも剣を振るい力ずくでリカントを倒し、イアンも拳や足の技で相手を打ちのめしていく。

 

「ヒャダルコッ!!」

 

 そして、クルーヤの放った氷の魔法がとどめとなり、フィリス達をおそったリカント集団は全滅したのであった。

 

「やったな!」

「さぁ、追撃がこないうちに先を急ぎましょうか」

「ああ」

「ええ!」

 

 

 そうして魔物との戦闘をくぐりぬけた彼らは、やがて大きな橋にたどり着いた。 そこには荒ら屋がいくつもあり、外で寝そべっている人やたき火をたいて寒さをしのごうとしている人、そして町の隅ではゴミがたまっておりそこには虫がたかっている。 はっきりいって、お世辞にも町として整っているとは言い難い。

 

「ガラが悪い町ね」

「ここがカラコタ橋か」

「カラコタ?」

「船着き場で聞いた話だけどよ……。 ここにはならず者や、どこにも行き場のない貧しい人たちが集まる………吹き溜まりの町のようなもんらしいぜ」

「そうなんだ……」

「様々な事情故に、普通の暮らしができない人々もいるのですね……」

 

 そう話をしていると、前方から一人の少女が歩み寄ってきた。 フードを深くかぶったその少女は、周囲の人々とどこか違う雰囲気をまとっていたので、人間ではないと気付く。

 

「あっ……」

「……」

 

 その少女はフィリスの顔を見てなにかに気付き、彼女に近づくとその顔をのぞき込んできた。 彼女はじっとフィリスの顔を見ていたものの、やがて目を伏せて首を横に振ると、そのまま立ち去っていった。

 

「違う……違うわ………どうかしてる………天使と人間を、見間違えるなんて………」

 

と、つぶやきながら。

 それはイアン達には聞こえず、フィリスだけに聞こえていた。

 

「なにかあったのか?」

「んー…顔をまじまじと見られただけだった」

「そっか……にしても、なんなんだ?」

「さぁ……」

 

 なぜ彼女は天使というワードを口にしたのか、という疑問は残るものの、今はそう大した問題ではないだろうと判断したフィリスは、そのつぶやきに対してはなにもいわなかった。

 

「きゃ!?」

 

 そのとき、後ろにいたクルーヤに一人の男がぶつかってきた。 男はいくつか歯の抜けた口を見せながらクルーヤをみて、にたりと笑う。

 

「おっとすまねぇな、嬢ちゃん……へっへっへ」

「いや、なに!? チカン!!?」

 

 その男にたいしクルーヤは気味の悪さを感じ、咄嗟に男から離れてフィリスの後ろに隠れた。 それにたいし男は、気にしないというかのように、濁った笑い声をあげながら立ち去っていった。

 

「大丈夫かよ、クルーヤ? ケガしてないか?」

「ケガはないけど……なんというか、あんな汚いヤツにさわられて、マジサイアクって感じ!」

「なんか、アタシっぽい喋り方になってる気がするんですけど……」

「まぁ、ケガがないんならいいや……さっさと行こうぜ」

「ええ…」

 

 フィリスのいうとおり、こういう町はさっさと通り過ぎてしまうのが吉だと判断した彼らは歩きだそうとする。 だがそこでクルーヤは、ある異変に気づく。

 

「あ、あれ!?」

「今度はどうしたんだ、クルーヤ?」

 

 クルーヤは自分のポーチや衣服などを調べて、やがて自分がいつも持っていたあるものが無くなっていることに気づいて、震えた声で彼らに告げる。

 

「私の、私のペンダントが……ない……っ!」

「えぇ!?」

「今朝は確かにあったのに……」

 

 今朝はあったはずのものがなくなっている。 おまけにクルーヤは非常にしっかりとした性格だ。 そう簡単にものをなくすはずがない。 そこで、あの男に気づく。

 

「まさか、さっきの変な男か!?」

「チッ! チカンかと思いきや、スリかよっ…」

 

 あの男に盗まれたのだと感づいた彼ら。 そこでクルーヤは、そのペンダントがないことにたいし、落ち込んだ。

 

「クルーヤ?」

「盗まれたペンダント………あれは、友達からもらった……大切な宝物なの………」

「そうだったのですか……ならば、見つけねばなりませんね!」

「そうだな!」

 

 そうして、本来は通り過ぎるだけだったはずの、カラコタ橋でやるべきことができたのであった。

 

「とにかく……! なんか、小汚い男だったし調べて回ってみようぜ! そんで犯人はたたき斬る!」

「フィリスさん、無益な殺生はいけません」

「盗みを働いた天罰と言うことにしとけば、問題はない!」

「おい天使」

 

 

 そうして彼らはカラコタ橋で、クルーヤのペンダントとそれを盗んだ男を探し始めたのだが、それは苦難を要するものであった。

 

「どこにいったのかしら………」

「情報を探すなら酒場、と思ってきたけど……手がかりはなさそうだな………」

 

 そうはなしながら、彼らは情報収集の基礎に戻ろうとして酒場に入った。 酒場にいる客達はフィリス達を一度みたものの、すぐに自分たちが口にしている酒や食事に興味を戻した。 やはり吹き溜まりの町というだけあって、他人のことに興味はないのだろうか。 いずれにせよ、ここにも手がかりはなさそうだと思ったフィリス達だったが、そこでクルーヤはあるものに気がつく。

 

「あ、あれは!」

「んっ?」

 

 その視線の先には、男性が数名いた。 うち一人はターバンを頭に巻いており、暗い色味の衣服を身に包んでいる。 男は鋭い形をしている目で袋の中の金品をあさっており、その中から一個のペンダントを手に取っていた。 銅で出来ており、赤い石をかこうようにして尾をくわえた蛇をあしらったペンダントトップを持つペンダントだった。

 

「へぇ、こいつはなかなかの品だな。 ま、どうせ盗品だろうがな………」

 

 男がそのペンダントを査定していると、クルーヤがその男に突っかかっていった。

 

「うわぁ!?」

「クルーヤ!?」

「あたしのペンダントを返してよ!!」

「な、なんだお前は!?」

 

 どうやら、男が査定していたそのペンダントこそが、クルーヤが盗まれたと語るペンダントらしい。 クルーヤはそのペンダントを目の前にいるその男性が持っていると知り、その手にメラの魔法を浮かべながら男を脅す。

 

「……返さないなら、燃やすわよ!」

「「「ちょ、まてまてまて!!!」」」

 

 このままではこの盗賊だけでなく、酒場まで火だるまになってしまう。 流石にそれはまずい、と思った3人はクルーヤを止める。

 

「落ち着けよクルーヤ! で、お前はなんなんだ?」

「お、オレは盗賊を家業にしている……デュリオってんだ!」

「デュリオ……? どうして、あんたがそのペンダントを持ってるんだ? あんたは明らかに、あたしらが見かけた犯人の男じゃねーし……」

 

 あの男は小汚いが、この目の前にいる男は盗賊独特の鋭さはあるものの、顔立ちとしてはなかなかに整っている。 ほかにも違いが多くあり、フィリスは何故このデュリオがクルーヤのペンダントを持っているのかを問いかける。

 

「さっき襲った男から奪い取った、金品の中に混じってたんだよ。 あいつはスリで有名だからな………前から目を付けていたのを、今日盗みを実行したというワケさ」

「盗賊が…………スリからものを盗むとは………」

 

 デュリオのしたことにたいしセルフィスは、訝しげに彼をみる。 そんなセルフィスをみて、デュリオは苦笑しつつもクルーヤに言う。

 

「んで、さっきの台詞通りなら……これはお前のだったということだな?」

「そうよ!」

「………」

 

 それを聞いたデュリオは、どこか納得したような顔をして、そのペンダントをクルーヤに差し出した。

 

「ほらよっ!」

「えっ………」

「ちょっと汚れてるけど……それでいいんなら、返すぜ」

 

 どういうことだろうか。 盗品を持ち主にあっさりと返すという行為を行うデュリオにたいし、一同は疑問を抱いた。

 

「何故、盗んだものを返すのですか?」

「オレらはあくまで、悪人や悪質な貴族をターゲットにする義賊だ。 盗んだものはこの町の人達の生活資金として配っている。 ………そして、オレ達は義賊であることを誇りに思っている。 だから、ターゲットではない奴のモノを奪うのは…気が乗らないってもんだ」

「………」

「持ち主がちゃんといて、しかもオレらの前に現れたんだったら、持ち主の元に返すのはふつうのことだ…。 しかも、返さないとオレらが殺されそうだしな」

「な、だって………」

「わかってる、それほどに大事なモノなんだろ」

 

 そう言うと、クルーヤはデュリオとペンダントを交互にみた。

 

「ホントに、タダで返してくれるの………?」

「ああ、男に2言はねぇぜ」

「あ………ありがとう」

 

 クルーヤはデュリオからペンダントを受け取り、今度からは盗まれないようにしようと決め、ペンダントは今後首にかけておくようにした。

 

「にしても、この町はスリが多いのね……」

「ああ………だから、気をつけろよ。 そうやって身につけて、もう2度と盗まれないようにしておけ。 ここでは、被害者は皆すべて、自業自得と言われちまうんだ。 ………オレはそうは思ってないけどな………」

「そんなことが……なんというか、嘆かわしいですね………」

 

 被害者は悪くない、悪いのは加害者なのに。 そんな理不尽さは、豊かでないこところで生まれてしまうのだろうかと、彼らは思う。

 

「とりあえず、見つかってよかったな」

「ええ……」

「よし、じゃあ果実探しの旅に戻ろう」

「そうですね」

「果実?」

 

 その部分をデュリオに聞かれてしまい、フィリス達は焦る。 そして、なんとか光る果実の噂を聞いて一目見たいと思っているんだと言ってごまかすが、直後に情報が入ってくる。

 

「そんな理由かよ………まぁいいや。 光る果実の話なら、聞いたことがあるぜ」

「マジかよ」

「ああ、最近もこの近くにあって…発見されたらしい…だけど……」

「だけど?」

 

 デュリオは、光る果実に関する情報をそのまま彼らに告げた。

 

「その果実を見つけた男は………ビタリ山というところにいるラボオってじいさんに、その金色に光る果実と皮の靴を交換してもらったそうだ」

「えぇ!?」

「どうしてもみたいんなら、そのじいさんを訪ねたらどうだ? みられる保証はないけどさ」

 

 その話を聞き、なにかの手がかりになるかもしれないと思った彼女達は、決意をした。

 

「ちょっとその、ビタリ山ってところにいってみましょうよ」

「ああ」

「いくのか? なんでそんなもんに興味を持って、探しているのかは気になるけど………深くはつけいらねぇぜ。 とりあえず、健闘は祈ってる」

「あ、ありがとう」

「じゃあな」

 

 そう言ってデュリオと別れたフィリス達は、外にでて軽く話をする。

 

「盗賊だけど、思いの外いい人でしたね」

「ああ」

「……」

 

 そのとき、クルーヤがなにかを考えた様子になったが、すぐに顔を上げて仲間達に言う。

 

「よし、出発しましょ」

「でも、今から出て行ったら野宿になりますよ」

「野宿になってもぜんぜんいいわよ、この町には一秒でも滞在したくないわ…」

「あはは………」

 

 どうやらこの町で起きたことは、クルーヤにとって悪い印象しかないのだろう。 それを聞いた3人は苦笑しつつ、クルーヤを筆頭にして町を出て行くのであった。

 

 

 ビタリ山の場所を確認しなが歩いていくが、セルフィスの言うとおり道中で日が暮れてしまった。 これ以上夜の道を旅するのは危険なので、比較的安全そうな場所を発見してそこにキャンプをすることにした。

 

「よし、いい感じね」

 

 そのときの夕食は、クルーヤが作っていた。 今日の夕食メニューは、魚とトマトのスープだった。 そうして出来上がった料理を、フィリス達は口にして、それぞれでおいしいって感想を告げる。

 

「クルーヤって本当に料理上手だよね、この旅の間でよく作ってくれるしな」

「ええ、私、小さい頃からやっていたから……」

 

 そう言ってクルーヤは、ポツポツと語る。

 

「私ね………実は、小さい頃に家族を亡くして……それからずっと、孤児なんだ………」

「……え……」

「それで、友達の家にお世話になったの。 その友達も家族も、私に優しくしてくれたわ。 やがて、私は魔法に興味を持って、旅もしたくなって……その人達はセントシュタインならたくさんの人が集まると言って勧めてくれて……連れて行ってくれたわ」

「そうだったのか」

「その友達にも、ご家族にも、感謝しているわ……だから、今も大切な人たちよ」

 

 クルーヤは、今回の事件の発端となったペンダントに触れながら、語る。

 

「このペンダントもね、友達が頑張って働いて………私のために購入してプレゼントしてくれたものなの……。 だから、とても大事なものなのよ」

「そっか……通りであんなに、取り乱していたんだな」

 

 彼女がどれほどに、そのペンダントを大事に思っているのか、何故大事にしているのかを知った彼らは、笑みを浮かべる。

 

「だからね、私……あなた達がこれを取り戻そうとしてくれて、うれしかった。 迷惑をかけちゃったかなとも、思ったんだけど………」

「そんなはずはないよ、仲間の宝物を盗むなんて…あたしらも許せないことだし」

「そうですよ」

「だから、気にすんなよ」

 

 仲間達の言葉を聞き、クルーヤは安堵した笑みを浮かべてありがとうと告げると、視線を町の方に向ける。

 

「………だからもう、あの町にはいきたくないわ……また盗まれたりなんかしたら、たまったものじゃないもの……」

「そうだな……」

 

 クルーヤはカラコタ橋への嫌悪を露わにしながらも、ある人物に対してはひとつコメントを口にだした。

 

「でも、あのデュリオって人は………ホントに、いい人かも……ね」

「へっ?」

「あ、いいえ……なんでもないわ」

 

 そう言ってクルーヤは自分のつぶやきを濁しつつ、自分が作ったスープを一気に飲む。 そんなクルーヤの顔にたいし首を傾げつつ、フィリスは空を見上げる。

 

「星空………」

「ん、どうしたの?」

 

 星空を見上げるフィリスが気になったサンディは、彼女になにがあったかをきく。

 

「……いや、ちょっと見上げたくなっただけさ」

「ふぅん?」

 

 そうして、夜は更けていく。

 




次回はビタリ山の話を、おとどけします。
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