ドラゴンクエスト9 AngelsTale   作:彩波風衣

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サンマロウ編、その前編というべきストーリーですね。
ここは不思議いっぱいな展開です。


17「変わり者のお嬢様」

 

 ビタリ山の頂上・石の町で3つ目の女神の果実を入手したフィリス一行は、大きな町であるサンマロウに到着した。

 

「確かこの町には、大富豪がいるって噂が、カラコタ橋であったな」

「いつの間に、そんな情報を仕入れたのですか……」

「気にすんな。 そんでこの町には港もあるし、また船に乗せてもらって、旅にでようぜ」

「そうですね」

 

 そう話をしながら、船着き場を目指していくと、道中で町の人であろう男性が彼らに話しかけてきた。

 

「そこの旅人さん、光る果実ってものを知っておるかね?」

「え、それについて何かご存じなんですか?」

 

 そこで話題にあがっていたのが光る果実という単語だったので、彼らはそれに迷わず反応した。 光る果実というのが、フィリス達の探し求めている、女神の果実かもしれないからだ。

 

「ああ知っているとも。 なんでも、万病に効く薬らしいぞ」

「……は?」

「なんていったって、この町一番のお金持ちの令嬢、マキナさんは光果実を食べたとたん、不治の病が治ったそうだ! 面白い話だろ!」

 

 そう愉快に話した後、その男性は別の人にもその話をしにいってしまった。 話のすべてを聞いていた4人は一度ポカンと呆気にとられていたが、やがて我に返ると焦りを露わにしながら大声を上げる。

 

「………食べられたーっ!!」

「え、なにこれデジャビュ!?」

「なんでみんなして、食べるんだよー!?」

 

 そう慌てながら、フィリス達はまずは情報収集を行うことにした。 若干、フィリスは魂が抜けたようになりながら。

 

「と、とりあえず………そのお嬢様についての話、集めようか………あははは………」

 

 そうして、彼らはマキナというお嬢様についての話を集めていく。 マキナというのは前途の通り、この町で一番の富豪の一人娘なのだが、両親を早くになくしたそうだ。 そして、どうやら子どもの頃のマキナは病弱であり、引っ込み思案かつおとなしい性格だったらしい。 だが数日前、贈られた果実を口にしたらその病弱な体は回復し、一転して元気いっぱいになったそうだ。

 

「んで、ついでに頭のネジが一本はずれた……と………」

「フィリス、言い方……」

「うーん……ユニークっていうのかな?」

 

 マキナについての噂話は以上だ。 とりあえず、彼女が女神の果実に大きく関わっていることは間違いないだろう。 それにたいしフィリスは、果実の存在よりもずっと別の不安があった。

 

「なんかまた、果実がやらかしている気がしてならないんだけど………」

「前例があるだけに、そう思っても仕方ないかもね……」

 

 そうやって話をしながら港の方で、出店でうってたので購入したパンを4人と1人の妖精で一緒に食べていると、彼らの視界にある大きな船が眼に入った。

 

「あ、見て、大きな船よ!」

「船、かぁ………」

 

 その船をみて、フィリスは思った。 こういう船があれば、もっと広い世界を旅することもできるだろうなと。

 

「こういう船、あたしらもほしいな」

「そうですね………」

「この船がほしいというのなら、簡単じゃよ」

「え、簡単?」

 

 船にたいする欲望がうずいていたら、突然老婆に声をかけられた。 この船はパッとみた感じでも大きく、そしてどこか高価な雰囲気さえ漂っている。 買おうとすればかなりのお金が必要なはずだろうに、簡単だというのはどういうことなのだろうか。 疑問符を浮かべているフィリス達にたいし、老婆は説明をしてきた。

 

「この船は、マキナお嬢様の一族の所有物じゃ。 マキナお嬢様に直に頼みにいけばいいぞ」

「頼みに?」

「うむ、そして……マキナお嬢様と、友達になれば万事解決じゃよ」

 

 その方法に対し、4人はポカンと口を開けた。

 

「と、友達になればいいの!?」

「でも、いくらなんでも簡単すぎる気がしますが」

「なーに、問題はなかろうて。 マキナお嬢様はお優しい方じゃ」

「…………」

 

 

 

「でも通りすがりの、見ず知らずの人間に易々と10万Gも出すなんて、変わってるにもほどがあるぜ」

「もはや、変わってるという言葉では済まされない気がします………」

「でもほかに手段はない……いくぜ」

「え……ええ……」

 

 そう話をしながら、4人はこの町でもっとも大きな家…もとい、屋敷に到着した。 本当に大きい屋敷だと感心しながらも、この屋敷の門番をしている兵士に声をかける。 事情を聞いた兵士は、入ってよいと言ってマキナに会う許可を与えた。

 

「ただし、先客もいるから、順番だぞ」

「わかってるって」

 

 どうやら他にも、マキナに会いに来ている人がいるのだろう。 まぁ噂通りなら、マキナと友達になることで得られるものが目当てなのだろうが。 まぁそのへんは、自分にはあまり関係のないことだと思い、様子を見る。 大きな部屋には、長い髪の女性に体格のいい男性がいる。 そして、大きないすに腰をかけた、ふわふわとした金色の髪に青い大きな瞳、そして大きな赤いリボンがトレードマークの可愛らしい少女こそが、噂のマキナお嬢様といったところだろう。

 

「こんにちは、ごきげんよう。 今日はなにして遊びましょう?」

「うん、今日はマキナさんのためにケーキを作ってきたんだ!」

 

 そういって男性は、箱からケーキを取り出した。

 

「ほら、おいしそうだろ? イチゴがいっぱい乗った真っ白いケーキだよ!」

「ありがとう。 ステキな……ケキ……? ケキー…ね。 花瓶に入れて飾っておくわ」

「あの~……マキナさん? それはかざるものじゃ……」

 

 突然ケーキを花瓶に飾ると言ったので、男も、そして様子を見ていたフィリス達も呆気にとられていた。 やがて男は頭をポリポリかきながらも、口元には笑みを浮かべた。

 

「………まぁいっか、気に入ってくれたならよかったよ」

「いや、よくないわよ!?」

 

 男性の言葉に対し、クルーヤは思わず壁越しにツッコミを入れてしまった。 そんな男をよそに、今度は別の女性がマキナに声をかけた。

 

「ここは女の子らしく、食べ物よりおしゃれよ! というわけで、じゃーん! 私はリボンを持ってきたわよ!」

 

 そう言って女性は、綺麗な色と模様のリボンを取り出した。

 

「ほら、いつも同じリボンをしているでしょう? だから新しいのをプレゼントしてあげる!」

「いらない!」

「え、ええ? な……な、なんで? なんで? ほら、色も模様もかわいい………」

「いらないったらいらないの! このリボンは大切なお友達とおそろいなんだから! ほかのものなんかつけないの!」

 

 すると今度はどうしたことだろうか。 女性の出したリボンに対しては怒りの感情を露わにし、不機嫌になってしまった。

 

「もう、キライ! あなたとは、ゼッコー!」

「そ、そんなぁ………」

「………」

 

 そんなマキナと二人のやりとりを見ていたフィリス達は、本当に大丈夫か、友達になって船を入手できるのかと、自信を喪失しかけていた。 だが、ここで立ち止まっていてもどうにもならないと自分に発破をかけて、フィリスが代表してマキナの前にでる。

 

「あら、あなたは…はじめまして、ごきげんよう」

「ご、ごきげんよう……」

 

 すると、そんなフィリスを前にしたマキナは一転して、お行儀のいい挨拶をした。 フィリスはぎこちない挨拶を返しつつも、本題に入る。

 

「えーと、実はあたしたち、あなたにお願いがあって………」

「おねがい?」

「うん、実は……さ………」

 

 フィリスは今、ワケありで世界を旅していることや、さらに世界を旅するためにも船がほしいこと。 この家が所有している船が長いこと使われてないことや、もし今も使われていないなら是非譲ってほしいということ。 フィリスの話を聞いたマキナは、にっこりと笑って許可を出した。

 

「いいよ、あのお船、ほしいならあげる!」

「マジか!」

「だけどその代わり、わたくしとお友達になってね」

「ああ、もちろん………?」

 

 友達になる分は、全然かまわないことだし。 そういいたいフィリスだったが、マキナはフィリスの顔を見たとたん狼狽える。

 

「どうしたんだ?」

「あなた、あなたは、町の人とは違う………」

「え?」

「あなた、マキナを迎えにきたのね……!?」

「え、ええ……? ち、違うよ、あたしはただ……!」

 

 突然豹変したマキナにたいし、フィリスはあわてる。 彼女は恐怖を顔に出しながらフィリスの顔を見て、告げる。

 

「うそ、うそよっ!! わたし………知ってるわ………! あなたはマキナを迎えにきたということを………!」

「ちょ、ま、落ち着いて……」

「わたし、あなた、キライ! あなたなんかお友達じゃないわ! だからやっぱり船もあげない!」

「お、おい………」

「帰って!」

 

 なんとかして話をしようとするが、マキナは大声を上げて、その場にいた全員を拒絶する。

 

「キライったらキライ!! みんな出てって!! あなたたちみーんなよ! 出てってぇぇえーーー!!」

「わ、わかった、わかったから!!」

 

 あまりにも叫ぶので、その圧に負けたフィリス達は急いで屋敷の外にでた。 そうして屋敷の外に追い出されてしまったフィリス達は、ただそこで呆然とするしかなかった。 そこで、先ほどマキナと会っていた二人が、フィリス達に怒ってきた。

 

「おい、お前! よくもマキナお嬢さんを怒らせたな!? どうしてくれるんだよコノヤロー!」

「もう、あなたが変なことを言ってマキナちゃんを怒らせるから、私たちもとばっちりを受けたのよ、なにしてくれちゃってるのよ!!」

「しらねーよっ!!」

 

 怒鳴ってくる2人に対しイアンが怒りかえす。 そのときの眼力が怖かったのか、2人はそれ以上はなにも言わなかったが、フィリス達もこの状況に対して頭を抱える。

 

「ちょっとぉ、サイアク! いきなりなにキレてんの!? マジイミフなんですケド!」

「ああ、わっけわかんねぇぜ……」

「でも、むかつくけど………。 あのマキナって子が機嫌直さないと、船がもらえないっぽいし………。 このまま足止め食らうのもいやジャン?」

「うーん……だよなぁ。 どうしたら機嫌直るのやら………」

 

 このまままた会いにいったところで、またへそを曲げることだろう。 打開策が思いつかないフィリスにたいし、セルフィスは情報収集を提案してくる。

 

「なにか、手がかりがないか調べてみましょうか」

「………しゃーね、それしかないか」

 

 そう話をして、フィリス達はサンマロウの町を探索することになった。

 

「………」

 

 その後ろ姿を、マキナによく似た謎の少女の幽霊が見ていたことには、誰も気づいていなかった。

 

 

 町の人の話によれば、どうやら屋敷の使用人たちは、今は宿屋で働いているらしい。 もしや何か知っているかもしれないと思い、彼らは宿屋を訪れていた。

 

「光る果実、か……そのことなら知ってるよ」

「本当ですか?」

「ああ、あれはあたしがコックをしていたときのことだ。 マキナ様のご病気を治すため、遠い国から万病に効くという、不思議な果物を取り寄せた…。 その果実はキラキラ光ってて…美しくてねぇ、それを食べてから……マキナ様は見違えるほど元気になったのさ……」

 

 料理人に話を聞いてみると、そこではマキナが食した果実のことがわかった。 そのときのことを懐かしむように語っていた料理人だったが、やがて物憂げな表情になっていった。

 

「でも、それからマキナ様は………何も食べず……人が変わったようになった。 ………あれは、病気をなおすかわりに、何かを代償として捧げたに違いないよ………」

「だ、代償………」

 

 強ち間違いではないことを言われ、フィリスは顔をひきつらせる。

 他にも、髪をとかしていた使用人が、人形みたいにかわいいと言ったら、マキナが急に怒り出して皆を家から追い出したという話。 そうしていき、やがて話はマキナの乳母の存在にたどり着く。 もしかしてと思い、フィリス達はその乳母の元をたずねる。

 

「確かに、私はマキナお嬢様の乳母を勤めておりました。 でも、今のマキナお嬢様は元気になられたぶん…気むずかしくなり、使用人とは口を利きません……」

「そんなぁ………」

 

 頼みの綱だろうと思っていた分、どうしようもできないと知ったフィリス達は落胆する。 すると、乳母は思い出したようにある人物のことを口に出す。

 

「そうだわ、あの人なら!」

「え?」

「一人だけ、マキナお嬢様が今も変わらず心を開く相手がいます…マキナ様のお気に入りの人形を作った、からくり職人のおじいさんです」

「からくり職人のおじいさん……」

「その方は教会の隣の家に住んでいますよ。 そのお方ならマキナ様も会ってくれるでしょう」

 

 その乳母からのアドバイスをきいた彼らは、そのからくり職人をたずねる事を決め、その老人の元を訪れる。

 

「ふむ、確かにわしは、マキナお嬢さんに人形を作ったからくり職人じゃ。 いやはや、なつかしいのう……して、そんなわしに何かご用かの?」

「はい、実は………」

 

 フィリス達は、マキナの今の状況を老人に話した。

 

「なんと、機嫌を損ねて屋敷に閉じこもってしまったと!? それは心配じゃな……。 わかった、わしが直接会いに行こう」

「よろしいのですか?」

「ふむ……どういうわけだか、お嬢さんはほかの使用人とは口を利かぬが、わしのことは今も気に入ってくれているようでの…。 今もちょくちょくわしを招いてくれるのじゃ。 だから、今でも聞いてくれるに違いない。 さぁ、いこうぞ」

「はい!」

 

 そうしてからくり職人の老人を連れて、フィリス達はもう一度屋敷へ向かうことにした。

 

「大好きな人形を作ってくれたからといって、そこまでこのおじいさんを気に入るなんて……」

「相当の信用があるのでしょう」

 

 そんな話をしながら、彼らは屋敷へたどり着いた。

 

「おーい、お嬢さん、わしじゃ。 話をきいてくれんかのう?」

 

 そうからくり職人はマキナを呼ぶが、なにも返事がない。

 

「返事ねぇな」

「ん? おかしいのう……? 返事くらいはしてくれてもいいのじゃが………仕方ない、入るとしようか……ん?」

 

 そういってからくり職人が扉に手をかけようとしたとき、扉と扉の間に紙が挟まっていることに気づいた。 フィリスがその紙を手に取り、内容を読む。

 

「娘はあずかった。 返してほしくば金をきたの洞窟までもってこい」

 

 そう読み上げたときは意味がわからなかったが、すぐにその意味を理解し驚く。

 

「え!?」

「な、なんということだ!? マキナお嬢さんが……マキナお嬢さんがさらわれた……!! こうしてはおれん、皆に知らせなくてはっ!!」

「あ、おじいさん!?」

 

 そう言ってからくり職人のおじいさんは飛び出していった。 フィリス達はまさかと思い屋敷に入り彼女を捜してみるが、やはりマキナの姿はなく、本当に誘拐されたのだと実感する。

 

「まさか、マキナがさらわれるなんてね……」

「サンディ」

「ビミョーに、助けにいこうって気になれないんですケド……どうする……?」

「ちょ」

 

 サンディの言葉に対し、フィリスは戸惑う。 これを放っておけるわけがないだろうと彼女の言うと、そこでイアンはある異変に気づく。

 

「ヘン、だな………」

「え?」

「いや、俺達はこの屋敷の内部の詳細を知らないせいかもしれねぇが………あのじいさんが言っているような、人形なんてどこにもないぜ?」

「!?」

 

 それはいったい、どういうことだろうか。 4人が驚いていると、フィリスは何かの気配に気づく。

 

「ん?」

「どうしたの、フィリス?」

「視線を感じる……」

 

 フィリスがその方向を見ると、そこにはマキナによく似た少女の幽霊がいた。 幽霊はフィリス達が自分の存在に気づいたのを知ると、どこかへ去っていた。

 

「え?」

「今の、幽霊………」

「マキナに似てなくてね? どういうこと? まさか、あのヘンテコお嬢様に何かあったとか?」

「…後を追ってみよう!」

 

 4人はそろって、その幽霊の後を追いかける。

 

 

 

 幽霊の向かった先には庭、そこには墓石が3つ。 そこにはしっかりと文章が刻まれている。

 

「お墓が、3個ありますね」

「何々………大商人を支えた心優しき妻、ここに眠る。 サンマロウの発展に尽くした大商人、ここに眠る。 ……大好きなお友達、ここに眠る……?」

 

 大好きなお友達とは、なにか。 フィリスは自分達がみたあのマキナの姿を思い浮かべる。

 

「どういうこと……? あそこにいる、マキナは……?」

「あの子は、私のたった一人の大切なお友達………」

 

 その声と同時に、先ほどの幽霊の少女が姿を現した。

 

「で、でた! ヘンテコの幽霊!!」

「私はマキナ。 このお墓の下で眠るものです……」

「って、え!?」

 

 なんと、この幽霊の少女こそが、マキナだというのだ。 墓の下にいることや幽霊になっていることから、彼女は既になくなっていることを悟り、マキナは事情を説明する。

 

「あの子……さらわれてしまったあの子は、私のお人形のマウリヤ。 不思議な光る果実の力で命を宿した、私の大切なお人形……」

 

 やはり、女神の果実の仕業だったのかと悟り、フィリス達は目を丸くする。 そんな彼女達にマキナはなにがあったのかを打ち明ける。

 

「普通の子のように…外で遊ぶことのできない私にとって、マウリヤだけがお友達でした……。 あの子は大好きな、大切なお友達。 私はマウリヤと毎日遊んだ………その時間はとても幸せでした……」

 

 だが、その時間の間に病気は彼女の体を蝕んでいき、体は弱くなる一方だった。 その中でマウリヤはじきに、天使が自分を迎えにくると死期が近いことを悟り、知っていた。

 

「そんなある日のこと………私は黄金の果実をもらったのです。 それはどんな不治の病を直すと言われている、とってもきれいなもの………。 だけど、私はとっくにあきらめていました…。 それを口にしたところで、私の病気は治らない………私の命はもう尽きるのだと………」

「そんな………」

「私は、その果実をマウリヤとともに見つめ、話しかけていた。 そのときに私は口にしてしまったのです。 私の中の願いを………」

 

 マキナは、寂しく悲しい目でマウリヤを見つめて、自分の気持ちを口にした。

 

「マウリヤ、あなたが本当にお人形じゃなくて、本当に一人の女の子だったらいいのに………。

人間のように動いてくれたら………しゃべってくれたなら……。 あなたに命が宿って、私だけのお友達になってくれたら、どんなによかっただろう………」

 

という心の願いを。

 するとどうしたことだろうか、果実は光を放ち人形の中に宿り、人形も同じように光り輝きながら瞬きをして、首を動かしながらマキナに声をかけてきた。

 

「あなた、マキナ? わたしのお友達ね……?」

「え……?」

 

 驚くマキナの前で、マウリヤは無邪気な笑顔でマキナに声をかけてきた。

 

「こんにちは、マキナ。 やっとあなたとお話しできて、とってもうれしい!」

「マウリヤ………あなた本当に………!」

 

 本当に動き出したマウリヤにたいしマキナは喜んだものの、同時に目がかすみ、意識が徐々に薄れていくのを感じた。 そこで、自分の死期は間もなくと悟ったマキナは、マウリヤに願いを託す。

 

「私は、マウリヤにお願いしました……。 屋敷や財産……自分のもっているものを全部上げるから、あなたにはマキナになってほしいと……。 もし人形であると知られたら、この町にいられなくなるかもしれないから………だから、私のフリをして………マキナとして………この町にいてほしいって、いったの………。 マウリヤには幸せになってほしいから……私の分まで生きてほしいから………」

「…………」

「私の代わりに、友達をたくさん作ってねと、言ったのです」

 

 その後、マウリヤはマキナのお墓を作り、そこにマキナの遺体を密かに葬ったのだ。 そしてマキナは、幽霊となった後でマウリヤをすべて、見守っていたのだ。

 

「だけど、まさかこのようなことになるなんて……町の人々を騒がせたり、あなた達の気分を害したのは………私の責任です………。 あの子はがんばっているだけなのだから、マウリヤを許して………責めないで………」

 

 その中でマウリヤは時に他者を困惑させ、困らせていたこともあった。 その相手には、フィリスも含まれている。 さらに、今はマウリヤが連れ去られてしまった。 今は彼女を助けたいと、マキナは思っている。 そこで、目の前にいるフィリスの正体を知っている彼女は、フィリスにお願い事をする。

 

「そして、お願いです……天使様。 どうか、私の大好きなお人形を、大切なお友達を………マウリヤを助けてください………」

 

 そう彼らに告げて、マキナはすぅっと消えていった。 話をすべて聞いたフィリス達は、顔を合わせてうなずく。

 

「よし、みんなマキナを…いや、マウリヤを助けに行くぞ!」

「ああ!」

「ええ!」

「はい!」

 

 彼らは、マキナの願いを叶えるため、マウリヤ救出に動き出したのであった。

 




ここも書くのは、実はけっこう難しかったです。
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