本当は年内完結をしたかったけど、私の未熟さが更新を遅くさせてしまったことをお詫び申し上げます。
来年はちゃんと、更新しますので…お楽しみくださると幸いです。
サンマロウで起きていた一件も無事に解決し、4個目の女神の果実を手に入れたフィリス達。 その一件に大きく関わっていた令嬢・マキナと、彼女に扮していた人形マウリヤは、旅にでるといって姿をくらます前に、フィリス達に自分の船を譲り渡すと話を通してくれていたらしく、無事に念願の船を入手することができた。
「せっかくマキナとマウリヤがあたしらにくれた船なんだ、思い切り利用しようぜ」
「そうですね、この船があればさらに広い世界へ、自由に旅ができるはずです。 これで活動範囲は広がりますね」
これから船で海上の長旅になるであろうと思ったフィリス達は、サンマロウの市場で今後の旅支度をするのであった。 主に詰め込むものとしては、食材や水、簡単な日用品等だ。 ちなみに船はといえばかなりの大型であり、また使用されていないとはいえ船を愛する船乗り達によって毎日かかさず手入れをしていたために、壊れた部分もなく掃除が行き届いていてきれいな状態が保たれていた。
「とりあえず…野菜とか果物はこれくらいあればいいかしら?」
「ええ、十分だと思いますよ。 今後足りないものがあっても、途中の町で買えば大丈夫でしょうし」
とりあえず必要なものは揃ったところで、買い出しをしていた3人は船に戻ってきた。 そこでサンディはあることに気がついてその疑問を彼らに投げかける。
「ところでさ…」
「ん?」
「船って、誰が動かすの?」
「え」
「あ」
サンディの言葉をきいて、フィリスとセルフィスとクルーヤは戸惑う。 この3人は、船なんて操縦できないし、やり方なんて全然わからないのだ。
「……………」
「なによその目。 アタシは天の箱船専門の運転手なんですケド。 人間の船の操縦方法とかマジイミフなんですけど」
「ですよねー」
そんなやりとりをしていると、船のことで管理人や船乗りと話をしていたイアンが彼らに合流してきた。
「オレができるぜ」
「え、本当なんですか…イアンさん!?」
「ああ、バイトしてたから」
「バイトかい」
そうツッコミをいれるが、なにはともあれ、船を操作できる人間がいることは非常にありがたいことだ。
「じゃ、船の操縦は頼んだぜ」
「おうよ。 ちょうどこの船の扱いについての情報は聞いてきたところだからな。 まかされたぜ」
こうして、船の操縦は誰がやるのかが決まったところで、4人は船に乗り込んでいった。
「わぁ、外装でみるよりも、実際に乗ってみた方が大きさがよくわかるわね!」
「ああ、思ってたより広いぜ」
「この船がじきに動くのは、楽しみですね」
そうして荷物をおいたところで、イアンは仲間達に呼びかけて船を動かす。 船が海に進んでいくところで甲板からサンマロウの町を見つめていると、この船を見守る人々の姿がみた。
「…またな、サンマロウ…」
こうしてフィリス一行を乗せた船は海に繰り出し、海面を走るようにして進んでいく。
「おお、舵はちゃんと動いてるなー!」
イアンは自らの手で舵を操りながら、そう感想を口にした。 どうやら、舵を切ることに関しての手応えを感じているらしい。 彼の操舵の腕は確かなようで、乗っているフィリス達も安心しきっている。
「さて、魔物がこないうちに…と……」
船に乗っているからとはいえ、完全に安全とは言い切れないのがこの世界だ。 海にももちろんといわんばかりに、魔物が多く生息している。 もし襲ってきたら迎え撃たねばならないだろう。 今だけでも安全であるならば、と思ったフィリスはある目的のために歩き出す。
「どこへ行くんですか?」
そこで、彼女の動きに気付いたセルフィスが声をかけてくる。
「なに、船の中をちょっと探索しようと思ってさ…今のうちに実行したいって思ったんだよ」
「そうだったのですか。 では僕もご一緒します」
「ああ、いいぜ」
フィリスはそう言い、セルフィスの同行を許可して、2人で船の中を探索した。 船の中にある部屋はいくつもあり、最下層には格納庫、武器や防具などをしまっている武器庫、テーブルとイスと小さな棚がおかれている会議室、小さいキッチン、そして寝室がふたつほど存在していた。
「寝室がふたつということは、男女に分かれるのがちょうどいいよな」
「はい。 僕達の個人の荷物もそれぞれに置いておくべきでしょう」
「そうだな」
あとは、簡易なシャワールームやトイレもちゃんとあるし、個室のような小さな部屋がいくつもある。 流石は、大富豪の所有していた船といったところだろうか。 少々これを無料でもらうのは今思えば気が引けることだが、今更気にしても仕方ないということでそれにたいする気持ちを振り払う。
「持ち主の許可もあるし、これくらい贅沢っぽいことをしてもソンはないよな……うん………」
「フィリスさん、どうなさったんですか?」
「………セルフィス、この船、大事にしようよ」
「? え、ええ……もちろんです……?」
唐突にそんなことを言われてしまったため、セルフィスは思わずきょとんとしてしまう。 フィリスの言葉に対し戸惑いを覚えながらもそう返事をしたセルフィスは、この船の見取り図を発見する。
「ちょうどよく見取り図がありますね。 今後のためにみんなで、この見取り図を覚えましょう」
「ああ」
そう話をしていると、そこに2人の姿を見つけたクルーヤが声をかけてきた。
「あら、フィリスもセルフィスもここにいたのね」
「クルーヤ」
「今ちょうど、船の見取り図を見つけたところなのです」
そうセルフィスが言うので、クルーヤもその見取り図をみる。 そして、船の全体図を見つめ、思ったことをそのまま口に出す。
「………こんな立派な船、タダでもらっちゃってバチはあたらないかしら……」
「いいんだよ、それは! 本人から許可とってんだから!!」
「あ、え、そ……そう?」
自分と同じことを考えていたクルーヤを必死に説得するフィリス。 そんな彼女の様子を見たセルフィスは、フィリスが先ほどなにを思っていたのかを、察していたそうな。
彼らが船内探索をしつつ、今後この船を自分達でどうしていくかを話し合っていたときだった。
ガンガンガンガンッ!!
「うぉ!?」
「なんでしょう!?」
「え、え、えぇっ!?」
突如、激しい音が聞こえてきたので、その音の発生源に向かう。 そこには、武器を手にしているイアンと、慌てるサンディの姿があった。
「どうしたんだ!? イアン、サンディ!?」
「おう! 思ったより早く駆けつけてくれたな!」
「キンキュージタイ! 魔物が出てきたよー!」
「なんですって!」
どうやら魔物が出現したらしい。 その話を聞いたフィリス達もまた武器を構える。 そんな彼らが戦闘態勢に入ったのを確認したかのように、海の魔物が姿を現した。 両腕に位置する鰭が鎌の形をしている魚型の魔物のヘルマリーンと、とげつきの膨らんだ頭部を持つニードルオクトだ。
「なにこいつ!」
「こいつら、この海域に住んでいる魔物だって聞いたぜ! このままこいつらをここに置いていたら、この船は沈められちまうかもしれねぇ!」
「そんな…! これは苦労した果てに譲り受けた、大事な船なんだぞ!? 旅路が途絶えるよりずっとヤダよっ!」
「……そうこなきゃな!」
フィリスの言葉を聞いたイアンは、武器を手にして自分に襲いかかってきたヘルマリーンを正面から迎え撃つ。 奥にいたニードルオクトが頭のトゲを数発放って彼らを攻撃しようとしたが、セルフィスがあらかじめかけてくれていたスカラのおかげで大したダメージにはなっていない。
「そこです!」
そしてセルフィスは豪快に槍で、ヘルマリーンの腹部を突き刺してそのまま吹っ飛ばした。 やはり彼は見かけによらず、フィリスやイアンに負けず劣らずのパワーがあるようだ。
「負けられないなっ」
そんなセルフィスの戦い方に感化されたのか、イアンはマストを利用して高く飛び上がり、真上からニードルオクトに飛びかかって、そのまま踵落としを食らわせる。
「おぉっ! さっすが男は力ってのがあるなぁ!」
「フィリス!」
「わかってるよ、クルーヤ!」
彼らの戦いぶりに関心していたフィリスだったが、自分も負けて入られないと自分でも思ったようであり、足払いをかけてきたヘルマリーンの技を高くジャンプして回避し、剣を振るって懇親の一撃をたたき込む。 彼女の剣術は、ヘルマリーンの体をまっぷたつにした。
「そこよ……決めてやるわ! ヒャダルコッ!」
そして、そこにクルーヤが氷の魔法を唱えて、ニードルオクトを一斉に攻撃していく。 別のヘルマリーンもまた、ヒャダルコで一斉にダメージを受けて弱っていき、そこに3人がとどめを刺していった。
「魔物は、全滅したわね…」
「ああ…」
なんとか船は守ることができた。 だが、先ほどの魔物との戦いはいくら善戦していたとはいえ、数が多くて疲れてしまった。 おまけに、時刻はすっかり日暮れの時間だ。
「…とりあえずあの小島。 あそこは無人島だろうし……あそこで船を止めて今日は一晩休もうぜ。 オレも、疲れたし……」
「賛成ですね、気付いたらもう一日中移動していましたし……小休止としましょう」
「ああ、もうすぐ夜になっちまうしな」
「ふふ、じゃあ夕食の時は、私が腕をふるうわ」
そうして、彼らは近くにある小島に船を進め、そこで一度船を停めるのであった。
船を小島に停留させたフィリス達はとりあえず、船の基本操作をイアンから念のためという形で教わることになった。 主に舵の取り方による船の操作方法、船で起きるトラブルの対処方法、管理の方法など。
「………というわけだ、わかったか?」
「はい、覚えました」
「一応……」
「右に同じく」
「おい女性陣」
自分の説明に対しセルフィスがしっかりと対応していたのだが、逆にフィリスとクルーヤは微妙な面持ちでそう答えたので、イアンはそうツッコミをいれた。 まぁマニュアルとかあるし大丈夫だろうと、イアンはため息をつきながらそう言って、船の方をみる。
「……というかイアン、バイトで船を操っていたって言ってたわよね。 私達と会う前の話だろうけど………船の操作って、並大抵では難しいはずよね」
「そうだな…だいたい船のバイトって使いっぱしりとか掃除当番だよな……。 船の操縦って中々まかされないぜ」
「しかも、船の動きも安定していましたよね……」
そう話をしながら、フィリス達は船のチェックをしているイアンをみる。 思えば、自分達はイアンのことは全く知らない。 フィリスは元守護天使、クルーヤは砂漠の国の出身で、セルフィスは町長一家の出身。 一応、仲間になる前の過去は全員知っている。 だが、イアンだけは全くわからない。
「……まぁ、イアンも自分から話をしようとはしないっぽいしな……」
「追求はしないのね」
「……ああ、あたしも、秘密を隠していたし……隠したいものっていっぱいあるしな……。 そこは、イアンが自分から話すのを待ったほうがいいだろうぜ」
そうイアンについての話をしていると、その張本人が彼らに声をかけてきた。
「お前等、なにをはなしてたんだ?」
「べっつにぃ?」
「……?」
はぐらかす3人に対しイアンは首を傾げる。 そうしてクルーヤは夕食を作り、全員でそれを食べて、船の中にある寝室で一晩眠った。
「よし、じゃ出発しよう!」
「「「おー!」」」
そして、時がたつのははやく、翌日になり彼らは再び船で次の大地を目指して走り出した。 海を快調にすすんでいき、途中で魔物と遭遇することはあっても、彼らは全力で戦ってそれを切り抜けていくのであった。
「もうすぐ、陸地が見える頃だぜ」
「ホントか?」
船を操作しながらその先にあるもの見つめていたイアンがそう言ってきたので、フィリス達は甲板からその陸地をみる。 その陸地をみたクルーヤは、目を丸くさせながら笑う。
「あ、あそこ!」
「ん、なにかあるのか?」
「あの島にある城………あそこがわたしの故郷……グビアナ国よ!」
「あそこか…!」
フィリス達はクルーヤが、グビアナという砂漠の国のうまれであると知っていたが、その国の象徴である城を目の当たりにするのは初めてだ。
「ちょうどよかったわ! みんな、是非グビアナにいきましょうよ! 私もみんなを案内したいし、なにか手がかりがあるかもしれないわよ!」
「そうだな…」
旅の途中で行くことができるなら、是非言ってみたいとはなしていたこともあるし、もし立ち寄ることができたときはクルーヤが案内してくれるという約束もしている。 ここで、クルーヤの故郷をみてみるのも悪くないかもしれない。
「よし、まずはあそこにいってみようぜ!」
「ああ!」
「ええ!」
「はい!」
全員の意見が一致したことで彼らは、その次の目的地である砂漠の国、グビアナを目指して海を進むのであった。
次回の更新を、どうぞお楽しみに!
良いお年を!