ドラゴンクエスト9 AngelsTale   作:彩波風衣

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今回から3話にわたり、カルバド大草原でのお話をお届けします。


23「草原の集落にて」

 

 船旅の道中、小さな島でしばしの休息を味わった彼らは、再び船を動かし新たに見えた陸地に上陸した。

 

「イアン、もう風邪は大丈夫なのか?」

「ああ、すっかりこの通り!」

 

 休息の理由、それはイアンが突如として体調を崩してしまい、仲間達で彼の看病をしていたからである。 そして、彼の風邪が治った時を見てフィリス達は旅を再開したのだ。

 

「今後はもっと自分のことを管理しなくちゃな、油断大敵だぜ」

「そうしてくれ、あたしは仲間が倒れるのをみたくないんだからな」

「無理したりしないでよ」

「ああ、もちろんだ」

 

 そう言葉を交わしあいながら、4人は陸地を進む。 地図でみる限りでは、この先には広い草原が存在するという情報があり、それはすぐに彼らの視界に入ってきた。

 

「わぁここが、カルバド大草原?」

「のどかで広い場所ですね」

「遠目に魔物が見えなければな」

 

 穏やかな風が吹いていて、景色も悪くない。 地面から生えている草に触れてみるが、その草は柔らかく、寝転がればとても気持ちがいいだろう。 だが、こんなところにも魔物は多く生息しているようだ。 これではこの草原の良さを思う存分には楽しめないだろう。 実際、襲われたし。

 

「ん? 村みたいなところがあるな」

「わぁ、なんだかかわいい形の家がいっぱいね」

「行ってみましょう」

 

 そうして草原を進んでいった先で彼らは、柵に囲まれている、家が多くある場所を発見した。 もしかしたら、人が住む村なのかもしれないとおもい、彼らはそこに立ち入る。

 

「おんやぁ、あんた旅の者だか?」

「はい」

「そうだかぁ、この草原の集落にようきなすったな!」

 

 その村に足を踏み入れて早々、そこに住む人に声をかけられ、ここがカルバドの集落だというのを知る。

 

「集落…そうか、ここは草原に住む人々が集まる集落だったんだな…」

「んだ。 んでオラ達は、草原とともに暮らす遊牧民…カルバドの民だべっ。 にしても、旅人がくるなど、珍しいことだべ」

「そうなんですか? 僕達は海を渡ってここまできたんですが」

「ほぉー!」

 

 彼らが遠くから来たと知った集落の人々は、ただ関心をしていた。 海には魔物も多くいるのはここの人々も知っていることだからだろう。 とりあえず、この集落に集まる人々には、族長なる中心人物がいるそうなので、とりあえず挨拶にいくことにした。

 

「オレが族長のラボルチュだ、お前達は海からきたよそ者だな?」

「はい、初めまして」

 

 もっとも大きなパオでその族長なる人物・ラボルチュに会うことはできた。 黒い髭を口元にいっぱいたくわえた、いかにも豪快そうな人物はフィリス達に対し横柄な態度で答えた。

 

「ホホホ…これはなんと珍しいことよのう。 わらわは、シャルマナじゃ」

「あなたが、シャルマナさんですか」

「おやおや、わらわのことを知っておるのか?」

 

 その族長の隣にいた、不思議な身なりの女性・シャルマナにたいし、フィリス達は集落の人々に話を聞いたことを伝える。 彼女は突然この集落に現れ、傷を負った人の傷をすぐに癒したという。 他にも、不思議な力を持っているらしい。 カルバドの人々は皆、シャルマナの美貌と能力に、すっかり虜になっているのだ。 そして、話はフィリス達が旅をしている理由に転がっていった。

 

「なんと、光る果実を捜して旅をしている……とな………?!」

「え?」

「なにか、ご存じなのですか?」

「な、なんとことやら……ホホホ。 そのようなもの……聞いたこともないわ………」

 

 自分たちが光る果実、つまり女神の果実の話をした途端。 彼女は少し狼狽えるような態度をみせた。 それが気になり、さらに深く聞き入ろうとするが、それを族長が遮る。

 

「どうしたのだ、シャルマナ? 慌てるなどお前らしくもない…余所者の話など気にするな」

「ホ、ホホホ………そうじゃなぁ。 もしその、光る果実などという不思議なもの………もしも、実在するのなら、わらわのほうがお目にかかりたいぐらいじゃ…」

「そうか、それなら……」

 

 シャルマナの態度に対し疑惑が残ったものの、族長は彼女の言葉を信用したらしい、フィリス達に告げてくる。

 

「話はおわりだ。 光る果実など知らん。 ゆえに、とっとと立ち去るがいい」

「……なんなのこのオッサン、チョーエラソーでまじハラたつんだけど……」

「シッ」

 

 フィリスの真横でサンディが眉間にしわを寄せながらそう言ったので、フィリスはあわてて彼女を制止する。

 

「まぁ…旅のものよ、族長はこのとおり忙しいのじゃ…今日のところはここで失礼しておくれ」

 

 そうシャルマナも言ってきたので、このままでは情報がなにも入らないと感じたフィリス達はためいきをつく。 このままここにいても、進展がないので、仲間達に今後どうしようかをたずねる。

 

「………だ、そうだ。 どうやら手がかりはなさそうだけど、どうする?」

「うーん……」

 

 彼らが今後の旅路について考え出した、そのときだった。

 

「父上! お呼びでしょうか!」

「?」

 

 

 

 突如、このパオの向こうから声がしたとおもえば、誰かがそこに入ってきた。 その人物は、青年のようであり、フィリス達に気付くと声をかける。

 

「旅の人、少し失礼させていただきます」

「あ、はい…どうぞ」

「すみません」

 

 入ってきたのは、腰が低く、黒く長い髪を三つ編みでまとめている一人の青年だった。 背丈などからして、年はおそらくセルフィスと同じくらいなのだろう。

 

「遅いぞ、ナムジン! どこへ行っていたのだ!?」

「面目ありません……ボーッとしていたらつい……」

 

 どうやらこの青年の名はナムジンといい、族長とは親子であるようだ。 いかにも気性の激しそうなラボルチュとは違い、ナムジンはどこかおとなしげな印象を受ける。

 

「ホホホ…かわいいのお。 わらわはのんびりしているナムジン様の方が好みじゃ」

「はは、嬉しいな。 それを言ってくれるのはシャルマナぐらいだよ」

 

 シャルマナの言葉に対しナムジンは穏やかにそう返す。 そこで、ラボルチュはナムジンに対し用件を伝えてくる。

 

「早速だが、ナムジンよ。 お前を呼んだのは他でもない。 オレを狙っている魔物のことは知っているよな」

「魔物?」

 

 魔物、というのが気になるフィリスの目の前で、ラボルチュはその魔物をナムジンに退治させるように言ってくる。

 

「よいな、ナムジンよ! 族長の息子として見事に手柄を立てるのだ!」

「おまかせください、父上。 父上の名にかけて、必ずや魔物を退治して見せましょう…」

「なんか、話みえてきたな」

「ええ」

「ですが、色々と準備がありますので、もう少しだけお時間を……」

 

 時間がほしい、とナムジンがラボルチュに頼もうとしたそのときだった。

 

「お、おいみんな! あれをみるだぁーーーっ!!」

「え!?」

「なんじゃ? 外がさわがしいのお…」

 

 突如としてこのパオの外が騒がしくなった。 人々の驚きの声が聞こえてくる。

 

「ぎゃー! 魔物がでたぁーーーっ!!」

「うわぁーーーっ!!」

「魔物ですって?」

「なんだと!? おのれ……またきたか! ちょこざいな魔物めっ!!」

 

 どうやら、この集落に例の魔物が出現したらしく、それで集落がパニックになっているようだ。 ラボルチュはその魔物が自分をねらう敵だと知るやいなや、ナムジンに言いつけてくる。

 

「ナムジンよ、聞こえたな! さぁ、魔物を打ち倒してこい!」

「こ、こんなに早く……くるなんて………! ぼ、ぼぼぼ………ボクが……!? ボクが……あの魔物を………!?」

 

 よく見ると、ナムジンの顔は青い。 彼はそのまま震え上がり頭を抱え、パオの隅っこに逃げていき縮こまってしまった。

 

「ひぃぃぃ! だ、だめだ! ボクには無理だぁぁっ!」

「はいっ!?」

「………なんとふがいない息子だ……」

 

 そんな息子の姿を見て、ラボルチュはあきれてため息をつく。 そこで、フィリスは仲間達と顔を見合わせる。

 

「あたしらがでてみようぜ!」

「ああ!」

「!?」

 

 彼女らが自ら動き出したことにたいしラボルチュもシャルマナも驚く。 そうしてフィリス達が外にでてみると、人々が魔物から逃げ場を奪っていく様子がみられた。 集落を襲う魔物の正体は、巨大な猿っぽいモンスターである、マンドリルだった。

 

「あれは、マンドリルですね!」

「おい、そっちへいったべ!」

「こっちだこっちだ!」

「いくよっ!」

 

 人々に逃げ場を奪われていくマンドリルの前に、フィリス達は立った。 すると、そのマンドリルは動きを止めてフィリスの顔を見る。

 

「グギギ………」

「……?」

 

 そして、マンドリルはうめくような鳴き声をあげた後で、そのままなにもせずに立ち去っていってしまった。 自分はなにもしていないのに、あっさり逃げていったフィリスは、きょとんとしてしまう。

 

「逃げていっちゃったな…」

「はい…」

「なんというか……デカイ割に随分とあっけないな」

 

 フィリスだけでなく、他の3人もこの現状に対し呆然とするしかなかった。 どうにも釈然としない、そんな彼らの様子とは裏腹に、集落の人々は盛り上がる。

 

「おぉ、海から来た旅人さんが追い払ったべ!」

「いんやぁ、すっげぇなぁ! まるでシャルマナ様みてぇだ!」

 

 そう賞賛の声を浴びせられても、自分達は結果としてなにもしていないのだ。 なのに、こうして声を浴びせられるのは、どうも納得できない。

 

「追い払ったというかなぁ…」

「ええ…相手が勝手に逃げただけなのよね」

「とりあえず、魔物は逃げたってつたえる?」

「…そうしておきましょう…」

 

 とりあえず、危機は去ったのだから報告はすべきだろうと思い、4人はラボルチュの元に帰ってきた。 ラボルチュは彼らの話に耳を傾けた後で、未だに縮こまってふるえているナムジンの方をみる。

 

「ふむ、なかなかやりおるわ……それにくらべて…我が息子ときたら…………」

「ホッホッホ、ナムジン様。 もう安心じゃよ。 こっちへきなされ……」

 

 そうシャルマナが声をかけたところで、ナムジンはようやくふるえを止めて、キョロキョロしながら立ち上がり、ラボルチュの前にたったあとで彼に謝罪の意をこめて頭を下げた。

 

「みっともない姿を見せてしまい、申し訳ありません……父上……」

「ナムジンよ………お前はいずれ、集落を導かねばならんのだ。 魔物一匹におびえて、どうする?」

「はい……面目ないです………。 差し違える覚悟でしたが、いざとなったら足がふるえて………」

 

 そう語る息子をみて、父は重くためいきをつきながらも、再び彼に魔物を退治するように命令を下す。

 

「よいか、ナムジンよ。 もう一度チャンスをやろう。 今度こそ魔物を倒すのだ」

「そんな…父上! ボクには無理です!」

 

 その命令に対しナムジンは反発をしたが、後ろから衛兵らしき人物が現れてナムジンを捕まえる。

 

「え」

「ええい、お前達! 縛ってでもこのバカ息子を、魔物退治に連れて行け!」

「ちょ……それはかわいそ……」

「うわ! やめろー! 助けてくれシャルマナーーー!」

 

 さすがにやりすぎだと思ったフィリスは止めようとし、ナムジンは必死になってそう叫ぶが、空しいことに彼はそのまま外へ連れて行かれてしまったのだった。

 

「あー……連れて行かれちゃった………」

「あいつが次の族長になるかと思うと、オレは不安で不安で…おちおち寝ることもできんよ…………」

「やっぱり、族長というのは強さが大事なのか」

「それはもちろんのことだ」

「ホホホ……わらわになついていて、かわいいと思いますじゃ………」

 

 頭を抱えるラボルチュにたいし、シャルマナは笑っている。 対照的な二人をみつつ、フィリス達は引き続きラボルチュにはなしをきく。

 

「みてもらったとおり………今のが、オレの息子であり、次期族長のナムジンだ。 あいつが今のままで族長になったら、集落は大変なことになってしまう…。 そこで、オレは父親として…あいつに自信を持たせたいのだ」

「それが、あなたを狙っているという魔物の、退治………」

 

 セルフィスの言葉に対し、ラボルチュはそのとおりだとうなずく。 だが、ナムジンがあの様子では、どうしようもないのでは、と悩んでいるようだ。 そこで、シャルマナがある案を持ちかけてくる。

 

「そうじゃ、わらわにいい案があるぞ……」

「?」

 

 

 

 シャルマナに言われた名案。 それは、ナムジンの魔物退治に対する協力だった。 ナムジンに手を貸して魔物と戦い、そしてそのトドメをナムジンにささせるというもの。 それに、もしナムジン協力してそれを果たしたのなら、シャルマナは自分の力で女神の果実を探してくれるらしいのだ。 ラボルチュも、それにたいし特に反発はしなかった。

 

「うーん……それでいいのかなぁ………?」

「仕方ないわよ、放っておけないし。 今女神の果実を捜す方法って、それしかないわよ…」

「ああ」

「不安の声が挙がってた上に、あのザマだからな……」

 

 あのナムジンの様子を思い出しているらしい、イアンはそう苦笑する。 それにたいし、セルフィスはナムジンを気遣うような言葉を口にする。

 

「でも、普通の人に魔物と戦えというのは中々にむごい話ではないかと……」

「でも、人をまとめるって……本当に強くなきゃいけねぇのかもな……それが、ここのルール的なもんかもしれねぇ……」

 

 そう話をしつつ、今ナムジンがいるという場所にたどり着いた。 そこには先程の集落ほどではないが、パオが数個存在していた。

 

「ここにいるって言ってたわよね……」

「うん」

 

 そうしてそのパオのあつまりに足を踏み入れた、次の瞬間。

 

「なんで魔物退治にいかないだか!? 若様はラボルチュ様の跡を継がれる方なんだべ!」

「そんなことを言われても、無理なものは無理だ! ボクは魔物をみただけでヒザがガクガクするんだから!」

 

 どうやらナムジンは未だに強く反発し、魔物退治を拒否しているようだ。 その声に導かれてフィリス達は彼らのパオの前で、立ち往生してしまう。

 

「あちゃぁ…」

「どうしよう……」

「おい、貴様等! なにをしている!」

「わっ!!」

 

 背後から衛兵に声をかけられ、4人そろって驚き転び、その勢いでパオに突っ込んでしまう。 パオの中にいたナムジン達は、彼らが突然突っ込んできたことに驚く。

 

「え、な、なんだ?」

「こ、こんちわー……」

「君は…この前の………一体何の用なんだい?」

「じつは………」

 

 フィリス達は起きあがりつつ、自分達はラボルチュやシャルマナに頼まれて、彼の魔物退治を手伝うようにいわれたのだと説明する。

 

「魔物退治に協力してくれるだか!」

「カルバドの集落から魔物を追い払った方が協力してくれるなら、これほど頼もしいことはないべ!」

「さぁナムジン様、こうとなれば早速……!」

 

 彼女達の援助があると知って一気に盛り上がる一同だったが、ナムジンは彼らに対し強く怒鳴る。

 

「……えぇーい! しつこいなっ! 何度言ったらわかるんだ!! ボクは絶対に行かないぞ!」

 

 それだけを言うと、ナムジンはそこを立ち去ってしまい、残ったカルバドの民はためいきをつく。

 

「はぁ………ナムジン様はどうしてああなんだべか………」

「パル様が生きていたころは、もっとしっかりしていたもんだが………どうしちまったんだかなぁ………?」

「パル様?」

 

 初めて聞く名前だったので、フィリス達は首を傾げる。 そんなフィリス達に人々は説明をした。

 

「パル様は、ラボルチュ様の奥方で……ナムジン様の母君なんだべ。 もう、数年前に病気で亡くなってしまったがな………」

「………そうだったんだ………」

 

 その人物についての説明を、短いながらも聞いたフィリス達は、もうひとつのパオの中にいるであろうナムジンに話を聞きにいくことにした。 そのパオの中でナムジンは、頭を抱えていた。

 

「ナムジンさん!」

「!」

 

 思い切って名前を呼ぶと、ナムジンは顔を上げる。

 

「あの旅の方か……」

「あぁ、そういや自己紹介してないよな? あたしはフィリス……そして………」

「イアンだ」

「セルフィスと申します」

「クルーヤです」

「そうでしたか。 ボクはナムジン………一応、族長ラボルチュの息子です………って、もう知ってますよね………」

 

 そう弱々しく語っていたナムジンが心配になり、フィリスは彼にさらに声をかける。

 

「その、大丈夫なのか?」

「え?」

「いやぁ、あんたのおびえよう見てたら…あたしらにも不安が伝染するっていうか……あんた自身に何かあったらどうしようって心配になるよ。 おまけに、族長さんがあの様子だし……魔物はいつでるかわかんないし……さ」

 

 そう声をかけてくるフィリスを見て、ナムジンは何か思い詰めたような顔になったかと思えば、フィリスの顔を見て話をしてきた。

 

「あなたは………父上に魔物退治の手伝いをすると言われてましたね………」

「ん?」

「みんなは、魔物が父上を狙っていると言っていますが………あなたも、あの魔物が本当に、父上をねらっているように見えたんですか………?」

 

 突然、あの魔物のことを聞かれて、フィリスも彼女の仲間達もポカンとする。 彼のその質問の意図は読めないが、フィリスは集落をおそったというあのマンドリルを思い出し、やがて首を横に振った。

 

「いや、あたしはそう見えなかった、と思うな……」

「……なぜ?」

「んー……根拠はないし、あの一瞬しか見られなかったんだけど………。 もしやれるんだったら……魔物らしく人を襲うつもりなら、族長どころか誰か一人、とっくにやられてると思うしな」

「ちょ、フィリス……」

 

 フィリスは正直に自分の考えを口にすると、ナムジンはつぶやく。

 

「………そうですか………」

「どうかした?」

「いえ………どうやらあなたは、話のわかる方のようですね………」

「………どういうこと?」

「……まぁ…どちらにせよ、魔物退治などする気はないので、手伝いは必要ありません」

「そんな……」

 

 彼を手伝わねば、自分達も旅の目的が果たせない。 そう言いたかったのだがナムジンは、さてとと呟いてから歩き出した。

 

「なにかあったんですか?」

「ボクはやることがあるので、ここで失礼します」

 

 そう言い残して彼はそこを立ち去っていってしまった。 そのとき彼がとったある行動にフィリスの視線が向いていた。

 

「魔物退治ができないと、果実探しできないじゃん。 なんとかして説得しようよ」

「それしかないかな……?」

 

 サンディがそういうので、彼女達はナムジンを探すことにする。 彼の行方に関するヒントは、見張りをしていた衛兵にあった。

 

「ナムジン様が草原を北の方へ抜けていくのをみた気がするけど、まさかなぁ…」

 

 

 

 北の方へ向かうナムジンをみた気がする、という証言を受けたフィリス達は、まさかと思いつつもその北の方へと向かう。

 

「あ!?」

「どうした、セルフィス?」

「みなさん、あれを!」

 

 そのとき、セルフィスは何かに気付いてフィリス達に声をかける。 彼が見つけたものは、周囲を警戒しながら堂々と草原を進むナムジンの姿だった。

 

「あれって、ナムジンさん?」

「ちょ、どゆこと!? あいつ、魔物をみただけでおびえるとか言ってたよね? なのにこんな魔物がわんさかいる草原を突き進むなんて…チョー怪しいんですケドッ!」

「明らかに矛盾していますね……」

 

 よく目を凝らしてみれば、草原の各所には相変わらず魔物の姿があり、自分達にも見えているのだから彼に見えないはずがない。 本当に魔物におびえているのなら、遠目に見てもビクビクしてしまうはずだ。 さらにフィリスは、彼に対するある違和感のことを口に出す。

 

「…あたし、見逃してなかったよ」

「なにを?」

「ナムジンさん、腰に装備している剣……護身用かと思ってたんだけど、あれをいつでも抜けるようにしていた。 あれって、どこから敵がきてもすぐに対応できるようにする…構え方だよ。 それを、戦う気もないような人が簡単にできると思うか?」

「………」

 

 その構え、素人はまず知らないものだ。 他の誰もが気付かなかったその動きに気付いたフィリスもなかなかだが、それをさり気なくやるナムジンにたいし、彼らはますます疑心暗鬼になった。

 

「とりあえず、追跡してみよう」

 

 フィリスの案にたいし3人は迷わずうなずき、ナムジンはもちろんだが魔物にも気付かれないように進む。 やがて彼らがたどり着いたのは、小さな洞窟のようなものだった。

 

「洞窟?」

 

 その洞窟の前でもナムジンは周囲を警戒し、キョロキョロとしつつも洞窟の中に入っていった。

 

「魔物と言うより、人を警戒しているのかもしれねぇな………」

 

 彼の動向をみていたイアンは、そう解析をしてつぶやく。 そして、洞窟の中をのぞき込むと、そこにはふたつの存在があった。

 

「ダメじゃないか……ポギー」

「グギッ」

「……あれって、集落をおそった魔物じゃないの……?」

 

 そこにいたのはナムジンと、あの集落に現れた魔物、マンドリルだった。 ナムジンはそのマンドリルと会話をしているようだ。 おそわれる様子も、敵意もない。

 

「あのようなやり方では、シャルマナを倒すどころか……お前が殺されてしまうぞ。 お前が死んでしまっては、母上もあの世で悲しむ………。 命を粗末してはダメだ………」

 

 そう言ってナムジンは、マンドリルを撫でる。

 

「今はここでおとなしく、母上の墓を守っていてくれ………いいかい? わかったな……?」

「グギギギギ……」

 

 ナムジンに言われて、マンドリルはどこか悲しげな声を漏らした。 そのとき、彼らはフィリス達の気配を察知し、そちらをみる。

 

「グギッ!?」

「誰かいるのか!?」

 

 自分達の気配に気付かれたことでフィリス達は、素直にその姿を現す。

 

「ナムジンさん………」

「あなた達は………」

 

 さっきの会話をすべて聞いていたし、密会をみていたこと。 フィリス達は姿を現すことで、彼にそのことを伝えた。

 

「あんた、その魔物を知ってたんだね………」

「………まさか、こんなところを見られてしまうなんて………」

 

 魔物と会っているところをフィリス達にみられたことに戸惑っているナムジンには、あの気弱な印象は感じられなかった。

 




ぶっちゃけ私は当時軽くネタバレをみてしまったため、あの真実には驚かなかった。
ここからフィリスたちがどうかかわるのか、見ていってくれると嬉しく思います。
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