ドラゴンクエスト9 AngelsTale   作:彩波風衣

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イアンの過去を解明しつつ、女神の果実を天使界にもっていきます。
自分でこういう設定にしててなんですが、イアンの過去はこれくらいハードにしとく必要があり実行しました。


28「再会、そして…」

 

 こうして、エルシオン学院で起きた事件も無事解決し、フィリスたちも探し求めていた女神の果実の入手に成功した。 学院長にも、このすべての出来事を説明した。 犯人はエルシオン卿の幽霊であることも、その行動にでてしまった原因なども。 女神の果実の存在は伏せながら。

 

「…と…いうわけなのです」

 

 最初は行方不明となっていた生徒が全員無事で帰ってきたことに喜んでいた学院長だったが、真相を突きつけると、苦い顔をした。

 

「エルシオン卿は、現代の教育の質の低下をごらんになり、お嘆きになったのでしょう………。 私の教育方針が甘かったようです………」

 

 どうやら学院長も、今のこの学院のあり方について反省をしているようだ。 不良が増える原因、自分たちの甘さと厳しさに、気付いている。

 

「我々教員一同、エルシオンの名に恥じぬよう…これからは生徒達をしっかりと指導していかねばなりませんな……誰一人として見捨てず、真剣に向かい合いながら………」

「そうしてください。 彼らはただ、悪ぶって自分をみせたいだけなのですから。 本心から向き合えば……わかりあえます」

 

 セルフィスがそう言うと、学院長は頷き、そしてイアンの方をみる。

 

「そして、君のことも思い出したよ………。 イアンくん」

「……学院長さん……」

 

 どうやら学院長も、最初にイアンを見かけたときに抱いていた違和感に気づいたようだ。 彼だけ初対面ではない気がしていたのだが、名前を聞いて思い出したようだ。

 

「追放されて何年たったか……もうわからない。 君に手を焼いていたのが、まるで昨日のことのようだ……」

「手を焼く、だけでは済まされないことも、やりましたが………」

「そうだったな。 だが……」

 

 学院長は笑って、彼に言った。

 

「よく戻ってきて、探偵として………この学園を救ってくれたな。 今は素直に君の成長を喜び、そして感謝しておる………」

「……ありがとうございます」

 

 イアンはそんな学院長の言葉を聞いて、深々と頭を下げるのであった。 そんなイアンの姿を見て学院長はうんうんと頷くと、やがて大きな声で大笑いをしながら言った。

 

「これにて、すべて一件落着ですな! 流石は私が雇った探偵だ! わっはっはっはっは!」

 

 そういって今回の事件を締めくくる学院長。 そこでサンディはボソリと言う。

 

「………ホントはアタシら、探偵じゃないんだけどね………」

「サンディ、しっ!」

 

 

 

 その夜、この学生寮での最後の夜を過ごしていた。 夕食を食べ、風呂に入り、明日の朝にはこのエルシオン学院を去っていくことになっている。 ちなみに、事件を解決したということで、この学院の生徒達にはすでにフィリス達の正体は公開されていた。

 

「イアンッ」

「ああ、お前達か……」

 

 そこで、フィリス達は一人で夜風に当たっていたイアンの元を訪れた。 その理由は、彼の過去を知るため。 彼がかつてはこの学院で生徒として過ごし、そして不良だったという話しに関する真相を確かめるためだった。

 

「悪かったな………オレの過去、隠してて」

「そのへんは、あたしもやってたから…今更気にしない。 それよりも、約束をはたしなよ」

 

 イアンは、今回のエルシオン学院の事件が解決したら、自分の過去や素性についてすべて、仲間に話すと約束していたのだ。 そして、今からそれが果たされようとしている。 イアンはフィリスの言葉に対し頷くと、説明をする。

 

「モザイオが言っていたのは、正解なんだよ……。 オレはここ…エルシオン学園で……長い間過ごしていた………。 だけど、オレはその中でグレたんだ…………なにもかもが、イヤになって………」

「どうして、そんなことに………」

 

 いくら気むずかしい年頃でも、反抗期でも、唐突にグレるなんてありえない。 きっと何か理由があるはずだ。 イアンは、自分がグレた理由を彼らに語る。

 

「…………失敗したんだ、試験で………。 オレはほかの生徒においていかれるかのように……成績が落ちていった………。 それが、オレにはショックだった」

 

 些細なことでしかない、他人が聞いたらそんな理由でと思うかもしれない。 だがイアンにとっては、それがショックだった。 そこにも、理由があった。

 

「………オレさ、親が少し遠くにすんでいたんだ。 あまりお金はなかったけど、両親はオレをエルシオンに入れるために……必死に働いた。 借金してまで、オレを学校に行かせた………けど、オレは試験で失敗し、成績が落ちて………グレることで………それを全部裏切ったんだ。 オレが学校で起こした騒ぎ、壊した学校のブツ…ケガをさせた生徒…逆らった教師…。 全部親にバレて……オレも学校から追放された。 不良とか、落第者のレッテルを……はられてな…………」

 

 その後イアンはいくあてもなく目標もいきる理由もなく、世界を放浪することになった。 彼の脳裏をよぎるのは、自分が不良になり追放を受けたと知ったときの両親の、失望した顔。 それがより一層イアンの心を壊していった。 だがその先で、彼にある転機が訪れた。

 

「その先で、オレは武術の師匠に会って、その人に教えをもらってやり直そうって決めたんだ。 そこで武術を磨いて、更正に励んだ……。 んで、師匠や兄弟子に認められて………武道家になって…その成果を親父とお袋にみせに行ったんだ……」

「それで、ご両親はあなたが更正したことに、喜んでくれたの………?」

 

 フィリス達からみてもイアンは立派な武道家だし、常に自分たちを引っ張ってくれる兄貴分でもある。 そんな彼を両親が認めないはずがないと思って問いかけるが、それにたいしイアンは首を横に振った。

 

「………いや………」

「え、どうして」

「実家には……誰もいなかったんだ…………」

 

 イアンが再び自分の実家を訪れたとき、そこはすでにもぬけの殻となっていた。 イアンはその家に住んでいた夫婦の話を聞き込みで調べたが、それを聞いたときに彼は激しい後悔におそわれた。

 

「後で知ったよ。 オレが学校でやらかしたことを知った途端に………親父は酒におぼれて………お袋もノイローゼになって……夫婦喧嘩の果てに共倒れして、そのまま……心中した……」

「……………」

 

 迷惑をかけたことを謝りたかった、更生してやりなおそうと努力したことをはなしたかった。 今の自分の姿を見せたかった。 だがイアンは、それをなにひとつ叶えることができなかったのだ。

 

「オレは罪ほろぼしのために、用心棒として各地を渡り歩いて……己を鍛え続けた……。 ときどき師匠や兄弟子と再会をして………困ってる人を助けたり………護衛を行ったり………強い奴と手合わせをしたりしてさ………」

 

 そう話をしていくにつれて、イアンの顔色は悲しさを宿していった。 まだなにか、抱えているものがあるかのようだ。

 

「そんで、オレはその先でルイーダさんに雇われて、彼女の用心棒をして…………」

「んで、あたしに出会ったというわけか」

「そういうこと」

 

 イアンはフィリスに惹かれるものがあって、彼女の旅に同行することを決めたのだ。 その後でクルーヤとセルフィスと出会い、今に至る。

 

「とはいえ、まさかそのフィリスが実は天使で…こんなとんでもねぇ冒険に巻き込まれるとは、想像できていなかったけどな!」

「うっせぇな」

「ふふっ……思えばそうですね…………」

「あははっ」

 

 そう話を進めていく中で、イアンはふとフィリスについて思うことがあったのだが、それは今は聞かないでおくことにした。

 

「さて、もう寝ようぜ……明日は早いしな」

「うん」

 

 そう呼びかけてフィリス達が眠りについた、それとおなじころ。 本来この事件を受けるはずだった探偵が到着したのだが、不審者と勘違いされて追い出されたという出来事があったのだが、それは誰も知らないことなのである………。

 

 

 その翌日、フィリス達はエルシオン学院を旅立っていった。 そこには、エルシオン卿にとらわれ授業を受けていた生徒達の姿もあり、特にモザイオが彼らに大きな声でお礼を言っていた。

 

「サンキュー! お前達は命の恩人だぜ!」

 

 そう彼らに告げるモザイオの表情は生き生きとしており、もう彼は大丈夫だと確信を得て離れていく。

 

「よし、じゃあ女神の果実はこれで全部らしいし、青い木のあるダーマ神殿にむかおう!」

「ああ!」

 

 彼女達はこれから、地上に落ちた女神の果実を届けるために天使界に向かうことになったのだ。 そこでフィリスはそうだ、とある提案を思いつく。

 

「みんなも一緒に、天使界に行こうよ!」

「え、それって私達も大丈夫なの………!?」

「いいっていいって! あたしが天使界にいるみんなを説得する! んで、あんた達の滞在とか……あたしの同行を許可させる!」

「………天使界………僕がそこにいけるなど………奇跡ですね………!」

 

 それをきいて、仲間達も気持ちを高めていった。 やはり、天使界にいくのが楽しみのようだ。

 

「じゃ、アタシちょちょいっと準備をするねっ!」

「ああ、待ってるぜ」

 

 サンディは早速、天の箱船を呼んで準備に取りかかる。 そして、それを待っている間、イアンはフィリスに話しかけてきた。

 

「…………なぁ、フィリス………」

「ん?」

「昨晩、ふっと思ったんだけどよ……」

 

 イアンが内心思っていたことは、偶然にも出会ったフィリスが天使だったことや、世界を巡る旅だったことにたいする、自分の立場のことだった。

 

「お前の宿命に手を貸して………そして、世界の困っている人たちを助けることができたらそれもまた、オレの贖罪になるかな………?」

 

 この旅も、自分にとってはそういうことなのだろうか。 イアンはフィリスの立場について改めて考えるにつれ、そう思っていたのだ。

 

「そんなの、あたしにわかるわけないだろ?」

 

 そんなイアンの考え方にたいし、フィリスはそうあっさりと返した。

 

「結局どうすれば満足するのかも、それがどう転ぶのかも………全部決めるのはあたしじゃない………イアンなんだ……。 あんたがそう思いたければ、そう思っていればいい」

「だがっ……それで……」

「利用されている、ことには一切ならないさ。 それなら、あたしも人のことをいえた義理じゃないしな。 あたしは自分の目的のために、あんたらを利用したことにもなる」

 

 そう語りながら、フィリスは彼らとのこれまでの旅で思ったことをそのまま口に出す。

 

「でも、あたしは………これまでの旅で認識したよ。 あんたは自分のためだけに動かない。 あたしも……自分の目的のために誰かが犠牲になったり苦しむことを望まない。 仲間のためになにができるか、なんのために動けるか………そっちが大事だと、あたしは思うよ」

 

 フィリスは旅の間で彼に対する気持ちを打ち明ける。

 

「少なくともあたしも、クルーヤも、セルフィスも。 イアンはいい奴だと思ってる仲間だと思ってるだろうさ。 だから、ここまできたんだ」

「フィリス……」

「あんたも、どうしたいか決まってるんだろ?」

 

 その言葉に対し、イアンはああ、といって頷き口を開く。

 

「オレは、もっとお前達と旅をしたいと思ってる。 オレは旅をして鍛えて………強くなった気でいるだけかもしれねぇ。 だから………」

「わぁってるって。 あたしらは仲間だしな……一緒にいこうぜ」

 

 イアンの言葉にそう答えると、フィリスは別の方を向いて笑いかける。

 

「な、みんな」

「えっ?」

 

 何故そこでみんな、という単語がでたのか理解できずに、イアンはきょとんとする。 すると、物陰からクルーヤとセルフィスが姿を見せた。

 

「クルーヤ、セルフィス! いつの間に!」

「ごめんなさい、あなた達の話……聞いちゃった」

「………イアンさんが、そういう風に考えるとは………僕もビックリですよ……」

 

 そう言った後で、クルーヤもセルフィスも笑顔を浮かべて彼らに言う。

 

「イアンってば、水くさいわ。 頼りたいならいくらでも私達を頼ればいいのに」

「そうですよ………自らの罪を認めるのは、とても勇気のいることなのです。 僕は貴方の勇気を認めたい……だから、貴方の罪滅ぼしのお手伝いをさせてください」

 

 そうイアンに語りかけてきているセルフィスとクルーヤのほほえみには、彼の抱えているものを受け入れる姿勢が見受けられた。 その表情でイアンは、どこか心が軽くなったらしい、彼らにほほえみかけた。

 

「ああ……ありがとう………」

 

 そんな3人の様子をフィリスが見守っていると、そこで天の箱船を動かす準備を整えていたサンディが現れて、フィリス達に呼びかける。

 

「おまたせ、準備完了よっ!」

「みんなで、いけそう?」

「天の箱船をみることはもちろん、乗ることも出来てるんだからモンダイなしっしょ」

「よーし、じゃ、いこ!」

「「「おーっ!!」」」

 

 そうしてフィリスは仲間達をこの天の箱船に乗せて、天使界へと向かう。 運転をしているサンディは、操縦をしながらフィリスと話をする。

 

「とりあえずこれを持って行くだけでも、天使のみんなが安心するでショ。 フィリスも頑張ってるってこと、アピールしたいしね!」

「そうだな」

 

 フィリスの鞄の中にはしっかりと、七つの女神の果実がはいっている。 これで天使界は救われるだろうと思い、期待に胸を膨らませる。

 

「えっ!?」

「んん!?」

「なに!? まぶし………」

 

 だがそのとき、強くまぶしい光が現れた。 何事かと思いながらもそのまぶしさに目を閉じてしまい、光が止んだところでゆっくりと目を開ける。

 

「…………!」

「久しいな……フィリスよ……」

 

 そのときにフィリスの目の前には、一人の天使の男性が立っていた。

 

 

 その姿を見たフィリスは目を丸くさせ、サンディは突然現れた天使に対しあわてている。

 

「え、だ……誰……!? て、て、天使みたいだけど……フィリスの知り合い!?」

「い、イザヤールお師匠様……!」

「し、ししょー!?」

 

 天使はフィリスの師匠である、イザヤールだったのだ。 衝撃の事実に対しサンディは驚き呆然とする横で、フィリスは嬉しそうに笑いながら彼に迷いなく駆け寄って、彼に怒濤の勢いで話しかける。

 

「ご無事だったんですね!? あれ以来ですね! 天使界はああなるし師匠の姿は見えないし、あたし心配していたんですよっ!!」

「ああ、心配をかけてすまなかったな……」

 

 イザヤールは冷静にフィリスにそう告げると、あるものについての話題を持ち上げてくる。

 

「ところで……女神の果実はどこにあるのだ? お前が集めているのだろう?」

「え、どうして………そのことを……?」

「長老様に話を伺ったのだ。 恐らくお前はすべて集めきったであろうこともな………そして、お前は無事にそれを果たしている………」

 

 そう言った後で、イザヤールはフィリスに手を差し出してきた。

 

「ここまでよく頑張った、後のことは私に任せるといい。 その女神の果実は、私が天使界へ届けよう」

「え、だけど………」

「………天使は自分よりも上級の天使に逆らえぬ。 それがならわしだと教えたはずだ」

「……………」

 

 唐突にそう言われて戸惑ってしまうものの、結局彼には逆らえずにフィリスはその女神の果実を鞄から取り出して、彼に手渡してしまう。 そこでフィリスは違和感を覚える。 命令は絶対であることがならわしだと言いながらも、彼はちゃんと自分の話を聞いてくれるはずなのだ。 実際、星のオーラの時だって、イザヤールはフィリスに、その大事な立場になるという手柄を与えてくれたのである。

 

「流石だな、本当にすべてを集めるとは」

「………ま、まぁ……そりゃあ………これが使命です……し………」

 

 そんな違和感を覚えながらも、フィリスはイザヤールにそう返す。 自分はこれからどうするべきかも問わねば、と思った、そのときだった。

 

「……………ご苦労だったな…イザヤールよ………約束通り…女神の果実を……我が帝国へ送り届けるがよい…………」

「!?」

「なに、今の声?」

 

 突如として不気味な声がして、フィリスもサンディも戸惑う。 なによりも気になったのは、その声がイザヤールの名前を口にしていたことだ。 その真意を確かめようと、フィリスは彼に声をかけようとする。

 

「あの、師匠………?」

「ハッ」

「えっ?」

 

 その声に対し、イザヤールは返事をする。 サンディはフィリスにしがみつく。

 

「なんかあやしくねっ!? ホントに果実を渡してよかったの!?」

「し、師匠………あなたは一体………!? 女神の果実を、どうするつもりですか!?」

 

 咄嗟に剣に手をかけるフィリス。 そんなフィリスの姿を見て、イザヤールは剣を抜いて切っ先を彼女に向ける。

 

「…………私に刃向かうというのなら、容赦はしないぞ…フィリス!」

「ッ!」

 

 その剣をフィリスははじこうとするのだが、体が動かなかった。 これが、天使の掟の力なのかとフィリスが思った次の瞬間。

 

「フッ!」

「うぁッ……!」

 

 イザヤールの剣が、フィリスの体を切り裂いた。 それにより血が舞い上がり、フィリスは崩れ落ちる。

 

「…………な……なんで………し、しょ………………」

 

 最後にフィリスは、ぼやける視界と遠のく意識の中でイザヤールを呼ぼうとしたが、かなわず倒れてしまった。 イザヤールは剣を鞘に戻し、その様子を見たサンディは悲鳴を上げる。

 

「キャーッ!!」

「なんだ、騒がしいな……」

 

 そのサンディの悲鳴を聞いたようであり、奥の車両からイアン達が姿を現す。 そして、その視線の先でイザヤールと、倒れているフィリス、あわてているサンディという光景が広がっていることに気づいた。

 

「フィリスッ!?」

 

 彼らの視線は一気に、倒れているフィリスに向いて彼女の元に駆けつける。 そして、イアンはそこにたっているイザヤールをにらみつける。

 

「て、てめーなにもんだ!?」

「天使……なの………?」

「そ、それが……フィリスのお師匠様なんだって! それで、いきなりフィリスを攻撃してきたのヨッ!」

「なんですって!」

 

 イザヤールのことはフィリスから話を聞いていたので、イアン達も知っているがこうして目撃するのは初めてだ。 だが、そんな彼が何故フィリスを切り捨てたのか。 戸惑う彼らをみて、イザヤールは告げる。

 

「…………お前達がフィリスに組しているという人間達か………」

「そんなことはどーでもいいわっ!」

「あなたは、なにをして………」

 

 3人がイザヤールに問いつめようとしたとき、イザヤールの手によって扉が破壊された。

 

「さらばだ」

「まてっ!!」

 

 破壊した扉を使って外に逃げていくイザヤールを捕まえようとしたイアンだったが、相手の方が動きが早く、捕まえることはできなかった。 そして、その先でとんでもないものを目撃した。

 

「なんだあれ!?」

「黒い、大きな龍!?」

 

 彼らが目の当たりにしたのは、空を舞う黒く長い竜のような生き物。 そしてその背には、鳥の頭を持っている謎の人物が乗っている。

 

「イザヤールさん、首尾はいかがですか?」

「私のお目付役か? ご苦労なことだな…ゲルニック将軍よ」

「ホーホッホ……滅相もない。 たまただですよ。 私もこちらに用があったのです……」

 

 ゲルニック将軍と呼ばれた鳥の頭の人物は、平行して飛ぶイザヤールにそう話しかけてくる。

 

「しかし、我々も完全にはあなたを信用していないのも、事実ですがね」

「心配せずとも、果実は手に入れた」

「………それは上出来ですねぇ」

 

 イザヤールの言葉を聞いて、ゲルニック将軍はにやりと笑う。

 

「私はこの闇竜バルボロスの力で、ドミールの里へ向かい、空の英雄を亡き者にするべく向かいます。 その前にこの力を……試すとしましょう」

 

 そう言ってゲルニック将軍はバルボロスになにか指示を出す。 するとバルボロスは黒い塊を吐き出して、天の箱船を攻撃した。

 

「あのヤロッ……!?」

「きゃあぁぁ!!」

 

 その力がぶつかった衝撃で、天の箱船全体が激しく揺れる。 イアンとセルフィスとクルーヤはその激しい揺れに翻弄され、ただ一人倒れているフィリスが外に投げ出されそうになった。

 

「フィリス……うぐぅぅう! む、ムリくさい……!」

 

 サンディが外に投げ出されるフィリスを空中にとどめようとするが、体格の差ゆえに持っているのが厳しくなっていく。 それによりサンディも力つきて落ちそうになるが、そこでクルーヤの手が伸びた。

 

「いやよ、このままフィリスがいなくなるなんて、いや!」

「僕もっ……!」

「オレも、こいつを……失いたかねぇよっ!!」

 

 そういってセルフィスとイアンも手を伸ばしてフィリスをつかむものの、そこに無情にもバルボロスの攻撃が命中し、天の箱船は吹っ飛んでしまう。

 

「うわぁーーーっ!」

 

 バルボロスの攻撃による衝撃により4人は宙に投げ出され落下していき、それぞれで散り散りになってしまった。

 

「……」

 

 そのとき、フィリスの目から、光る何かがこぼれていた。

 




まぁ衝撃の展開ですよね。
ここから4人はどうなってしまうのか…次回をお楽しみに!
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