今回でまた別のキャラクターが登場します。
魔獣の洞窟を突破したフィリスとセルフィスは、光の道を生み出すという矢を手に入れた。 これをもって竜の門という場所に行けば、ドミールへ向かい、そして黒い竜を追うための手がかりである、空の英雄と呼ばれる存在にも会えるだろう。
「ナザムの村の人々も…もしこの光の橋を見たら………あたし達もとい、よその村の人達を、信じるようになってくれるかもしれない!」
「はい、僕もそう思います」
その期待も僅かに抱きつつ、フィリス達は竜の門と呼ばれる崖に到着した。 そこには竜のレリーフが描かれており、そこに立てということだろうとよんだフィリスが、そこに立つ。 すると、彼女の脳裏に声が響きわたった。
「光を掲げ、空を射抜け。 さすれば光は汝を導く」
「!」
その声に従い、フィリスは弓矢を手に持ちながらその位置に着いた。
「フィリスさん…」
「……ああ、わかってる」
セルフィスと顔を見合わせて頷き、フィリスは弓に矢をつがえて弦を強く引く。 そしてそのまま、ヒュンという鋭い音とともに矢を放ち、すると矢は光の軌道を描きながら飛んでいき、それに続くかのように光の道が現れる。
「おぉぉ………!」
「これはマジヤバなんだけどっ!」
「これが……光の道……!」
フィリスとセルフィス、サンディは矢によって現れた光の道をまじまじと見つめる。
「フィリスさーん!」
「ティル!」
その時、幼い声で名前を呼ばれたのでそちらを見ると、ティルがこちらに駆け寄ってきた。 それに続いてナザム村の人々が、ここにかけより集まってきていた。
「今……このあたりが光ったように見えたのだが………なにをしたというのだ………?」
最初は村長はいぶかしげな目でみていたのだが、フィリスの手の中にある光の弓と、そこに出来ている光の道を見て、驚いていた。
「なんと! これは………光の橋が…かかっている……!?」
「はい、たった今フィリスさんが作りました。 僕達は魔獣の洞窟を突破して、これを手に入れたので」
「わぁ! ついにやったんだね、フィリスさん! セルフィスさん! すごいや、すごいやっ!」
村長は光の道を見て、ナザムに伝わる言い伝えを口にした。
「…………ドミールへの道をめざす者……現れし時………。 像の見守りし地に封じられた光で……竜の門を開くべし………」
それを知り、ティルはフィリスがドミールを目指すものだと悟り、村長を中心にナザム村の人達に告げる。
「やっぱりそうなんだよ! フィリスさんこそが、光の矢を手に取ることができる選ばれし人なんだ! あの黒いドラゴンを追いかけるつもりなんだよ!」
「…………ただの言い伝えではなかったのか………」
村長や、後ろにいたナザムの村人達は、顔色をふっと暗くさせる。 それは、先程まで彼女を疑っていたことや、彼女にした仕打ちを悔いているかのようだった。
「…………フィリス殿があの黒いドラゴンに襲われ、生き残ったというのも……本当のことだというわけですな………」
「えっ?」
「…………我々はあなたを信じようともせず、過去の災いに縛られ、おびえ、余所者を近づけまいとしていたのか……」
そう口にし、村長を中心にナザム村の人達は、フィリス達にたいし頭を下げる。
「………あのとき、あなたが私を叱ったことは、正しかった……。 ………先程までの無礼をどうか、許していただきたい」
「簡単にすませられるものではないと、承知はしていますが」
「我々は、やりすぎたところもある。 しかし、それでも……どうか、どうか、許してくだされ……」
ナザム村の人達は、次々にフィリス達に反省の意味を込めた謝罪を告げてくる。 ティルは彼らの様子を心配そうに見つめていたが、そんな彼らに対しフィリスは笑みを浮かべて頷く。
「………いいよ。 わかってもらえたのなら、あたしはもうこれ以上はとやかくは言わない」
「そうです。 人を信じないことは、自身の心の弱さの証明………。 あなた達はその過ちに気付くことができた………それだけでも素晴らしいことです………。 これから、やりなおしていけばいいのです………」
フィリスもセルフィスも、彼らが本気で反省しているのを受け取ったために、彼らを許すことを決める。 言葉だけの謝罪などに意味などないしそれで許して丸く納められるものなどないが、心から反省しているのであれば話は別だからだ。
「じゃああたし達は、もう行くよ」
「これからの旅に、どうかご武運を」
「はい、貴方達もやり直しができるように………神の支援がありますように…………」
そう言葉を交わし、フィリス達はドミールへ向かうため、村人達は今後のやり方を変えていくため、別々の場所へ向かった。
「またねフィリスさん、セルフィスさん!」
「ああ!」
「はい!」
黒い竜を突き止めることができたらまた会おう、と、3人は強く約束した。
そうして結果として、黒い竜を討伐することになった2人は、ドミールを目指して竜の地を進んでいく。 そのドミールが存在する地は火山地帯のようであり、高い湿度と気温を誇っている。 おまけに、道中に出てくる魔物も全身が石のブロックで出来ているゴーレムや、溶岩を流すようがんピローなど、どこか暑苦しいものばかりだ。
「ふぅ………随分暑いな…………大丈夫か、セルフィス?」
「はい、これしきのこと試練だと思えば……なんともありません」
「そりゃまた過酷な試練を与えられたことで………」
相変わらずなセルフィスの返事に対しフィリスは苦笑しつつ、額の汗をぬぐい払う。 フィリスが前線で魔物と戦い続ける一方で、セルフィスは後方で彼女のサポートを続けている。 攻守のバランスはとれているといえばとれているが、それでもまだ厳しいところである。
「しかし………」
「ん?」
「改めて、こうして二人だけで進んでいると………仲間が多いのは本当に心強いことだったんだと…………思い知らされますね…………」
それは、魔獣の洞窟でも思い知らされたこと。 あそこに生息している魔物や、弓矢を守っていた番人との戦い。 2人でも苦戦を強いられたことがあったが、それでも、1人で挑み続けるよりずっといいものがあった。
「そうだな………特にあたしは、セルフィスと再会できるまで一人だったし…………」
「それは僕も同じことです。 僕は目を覚ましたとき一人きりでした。 奇跡的に一命をとりとめたし………体の節々の痛みは回復魔法で事なきを得た…………。 しかし…………孤独だと、心がつらかったです」
そう話をしていくにつれ、フィリスとセルフィスはまだ合流できていない残り2人の仲間のことを思いだした。 彼らは、1人でいて不安を覚えたり苦戦を強いられたりしていないだろうか…と。 そう心配する気持ちでいっぱいになりかけた頃、サンディが口を開いた。
「でもここでクヨクヨしたって、話がチョベリバな方に進むだけじゃね? せっかくこっちにこれたし、なによりもあの村の人達の中じゃ、もうアンタ達があの黒いドラゴンを倒すって話になっちゃってるし…今更後戻りしたり悩んでも、しょーがないっしょ」
「サンディ……」
「クルーヤもセルフィスも、絶対に大丈夫だから問題ないって! むしろアタシ達が止まったら、もうなんもなくなるよ! それでもいいなら、シカトしちゃえばいいし!」
これもおそらくは、サンディなりの励まし方なのかもしれない。 それをきき、フィリス達は2人のこともすぐに見つけて合流すると決めていたことを思いだし、互いに顔を見合わせてうなずき、再び歩き出そうとする。
「ギャグガァッ!」
「なに!?」
「魔物の鳴き声でしょうか!?」
どこからか魔物の鳴き声がして、そちらへ向かってみると、そこには拳法着を着用した坊主頭の男性がヘルジャッカルに囲まれていた。 男性をよく見ると体のあちこちに傷を作っており、その顔にも苦戦の色が見られる。
「…………ダメだよな、この人別人だし………うん…………」
「どうしたんですか?」
「いいや、なんでもない」
その男性の容姿にたいし、思うところがあるようだが、フィリスはそれどころじゃないと判断し首を横に振って、剣を手にしてセルフィスに呼びかける。
「あの人を助けよう!」
「はい!」
フィリスははやぶさ斬り、セルフィスはけもの突きをそれぞれ繰り出して、ヘルジャッカルを倒す。 それにより相手に隙が生まれ、その隙をついて2人は男性を救出する。
「グッ……」
「大丈夫ですかっ!」
セルフィスは急いでその男性にベホマをかけ、その男性のからだの傷をいやしていく。 その間にフィリスは敵の注意を自分に引きつつ、すべてを吹っ飛ばして気絶させていく。
「セルフィス! 追っ手が来る前に急いで逃げるぞ!」
「はい! この男性は僕に任せてください!」
そう呼び掛け合い、2人は男性を連れてその場から逃げ出す。 そして、人気も魔物の気配もない横穴を発見し、そこに身を隠すことにする。
「ここなら心配なさそうだな」
「みたいですね」
念のためせいすいをまき散らしつつ、フィリスは男性の治療に専念しようとするセルフィスを見る。
「その人、どうかな? 助かりそう?」
「ええ……少しダメージは負っているものの、これならば回復魔法をかけて少し休ませれば、すぐに目を覚まして動けるようになります。 なので、心配はいりませんよ」
「そっか……ならよかった。 じゃあ、その人の意識が戻ったら行動を再会するってことでどうだ?」
「かまいません」
「うぅ……ん?」
「あ、気がついた!」
この横穴で休息がてら男性の様子を見ていること数時間。 男性はうなり声をあげながらも目を覚ました。 男性は周囲と、そこにいる2人に目を向けた。
「ここは……」
「火山の横穴の、人も魔物もいない空間です」
「あんた、魔物に囲まれていて……大ピンチだったんだぜ? あたしらがこなかったら、どうなっていたことか………」
「……………お前達が……助けてくれたのか……」
「ま、そんなところかな」
フィリスとセルフィスの2人が、自分を助けてくれたのだと聞いた男性は、自分の名前を名乗る。
「むぅ………旅のものよ、感謝する。 私の名は………ハオチュン。 武道家だ」
「ハオチュンさん?」
「ハオチュンさんは、何故このような地に?」
ハオチュンと名乗った武道家は、自分の目的を正直に告げる。
「私は、ドミールの里を目指していたのだ」
「あなたもですか?」
「なんと、お前達も目指しているのか?」
「まぁちっと、わけありなんだけどな……そこにいるある人物を訪ねようと思っていたんだよ」
フィリスの目的を聞いたハオチュンは少し考えた後、彼女に向かって問いかける。
「………それはもしや、空の英雄のことか?」
「え、なんでわかったの!?」
「わざわざ過酷なドミールを目指す理由は、それしか思い当たらないからな。 それでも、それなりの事情はあると見える」
「………まぁ、あるな……」
そう話しをしていると、ハオチュンは彼女達にある申し出をしてきた。
「お前達さえよいのであれば、私もドミールまでともにいってもよいだろうか?」
「え、本当ですか!?」
「ああ…お前達には礼がしたいし……目的も同じだからな」
ハオチュンの突然の申し出にたいし、驚きながらも人が増えるのはありがたいと思ったフィリスとセルフィスは頷く。
「それなら、あたし達にとっても嬉しい話だよ!」
「是非、ご同行をお願いします」
「そうか……私も己の武の力を利用して、お前達を守ろう。 よろしくたのむ」
そう話をして、3人はドミールの里まで行動をともにすることになった。 そしてハオチュンの体調も十分に回復したのを確認した後で、3人は再びドミールを目指してその火山地帯を進むことにしたのであった。
「ハァッ!」
その道中で魔物に遭遇したものの、ハオチュンはその巧みな武術で圧倒していった。 その実力は凄まじく、フィリスもセルフィスも、彼に対しての評価をあげていった。
「強いな、ハオチュンさん…」
「そうですね……でも……」
しかし同時に、ハオチュンの戦い方を見て2人はあることを思っていた。 それは、自分達の仲間と、どこか戦い方が似ているということだった。
「まるで、イアンさんのような戦い方ですね」
「ああ」
「イアン?」
その名前にハオチュンは反応し、2人にイアンのことを尋ねる。
「お前達、イアンを知っているのか?」
「はい、僕達…最近まで彼と旅をしていたんです。 今はアクシデントにより、離ればなれになってしまったんですが…………」
「………そうだったのか……」
イアンのことを聞いて、ハオチュンは腕を組んだ。 そこでフィリスは、彼もまたイアンのことを知っているのだろうかと思い、彼にイアンのことを尋ねる。
「ハオチュンさんとイアンも、知り合いなのか?」
「ああ。 私と彼は兄弟弟子なのだ」
「え!?」
そこで衝撃的な事実を知り、2人は驚く。 イアンがエルシオン学園の元生徒かつ不良だったと聞いたときも驚いたものの、ここでまた彼に縁のある人物に会えるとは、思ってもいなかったのだ。
「イアンが我らの師匠に免許皆伝を貰い………そのまま旅にでてから、ずっと会っていないのだが………そうか、お前達がイアンの仲間になっていたのだな…………」
「うん」
「………しかし、先ほども言ったように、今は別行動になってしまい、彼の行方はわからないのです。 本当ならば、貴方とお話させてあげたかったのですが………」
そう悲しげに語るセルフィスにたいし、ハオチュンはイアンのことを思い出しながら、彼に告げる。
「………イアンは、中々に根性のある男だ」
「えっ?」
「……だから、心配はいらない」
それは、彼なりの励ましなのだろうか。 それを聞いたセルフィスは最初キョトンとしていたものの、やがて安堵したような笑みを浮かべた後、はいといって頷いた。
ハオチュンと共にドミールを目指して、どれほどの時間がたっただろうか。 日が暮れかけているころに、彼らは人々が集まる場所を発見する。
「ここが、ドミールの里か?」
「ええ、そうですよ旅の方。 よくここまでおいでくださいました」
そこにすむ人達に尋ねると、ここが目的地であるドミールの里だと知って、フィリスとセルフィスは笑った。
「やった、ついに到着したぞっ!」
「一安心ですね」
「そうだな」
そう2人に同意するハオチュンは、表情の変化は見られないものの目的地に着くことが出来て安堵しているようだ。
「…………さて……ここまでこられたから、私はもう大丈夫だ。 お前達には、世話になったな………」
「なに、あんたの武術にも助けられたよ」
「次会ったときにまた、ゆっくり礼をしよう。 そして、お前達が無事に………イアンと再会できることも願っている………」
「はい、ありがとうございました!」
そう言葉を交わして、2人はハオチュンと別れた。 そのあとでフィリスとセルフィスはこの後どうするかを話し合う。
「さて、ここまで登ってきて疲れたし……とりあえず宿屋で休む…………?」
「さんせー。 もう暑苦しくて、汗だくだしー! お風呂はいりたーい!」
「そうですね……休息は大事です。 宿屋でゆっくりしつつ、今後の計画を練るとしましょう………」
「決まりだな」
まずは休憩だ、と思った2人は宿屋へ向かう。 この里の宿屋は、温泉も設置されており、そこでならゆっくり休めそうだとフィリスは喜ぶ。 そうして宿屋の中に入ったとき、2人はある人物に遭遇する。
「あっ!!」
そこにいたのは、紫色の大きな瞳に桃色の髪の少女。
「フィリス、セルフィス!」
「クルーヤ!」
「クルーヤさん!」
それは仲間の一人である、魔法使いの少女クルーヤだった。 フィリスとセルフィスに再び会えたことをクルーヤは全身を使って表現しており、2人に思い切り抱きついてきた。
「会えてよかったよぉ!」
「僕達も、貴女に会えて嬉しく思っています!」
「ああ、そうだな! にしても……まさかこのドミールにいるなんて………」
ここで再会できるとは思ってもいなかったことを告げると、どうやらクルーヤも同じことを思っていたらしい。 ええ、と頷きつつ自分がここにいる経緯を説明した。
「私、この温泉に沈んでいたみたいなの………」
「し、沈んでた!?」
「僕達が言えた義理ではないですが………よく生きていましたね……」
「ええ………ここの人達もビックリしていたわ。 それでつい最近まで、里の人達のお世話になりながら、体調を戻していたの…」
「……そっか……」
なんであれ、クルーヤが無事で、その上で再会できてよかった。 フィリスがそのことを告げるとクルーヤも笑って、残る仲間の話をする。
「残るは、イアンだけなのね」
「ああ」
「でも、みんなの中じゃ一番非力である私が無事だったんだもの! 絶対にイアンも無事よ! だから、私達は私達のできることをしましょ!」
「そうだな………とりあえず、今日はもう休んで寝るか………あたし、疲れたし……」
「ですね」
「ええ」
そうして集まることの出来た3人は、そのドミールの宿で風呂に入り食事を口にし、眠りにつくことが出来た。
「イアン……生きてろよ」
と、まだ合流できていない仲間のことを胸に秘めながら、フィリスは目を閉じる。
明日には、空の英雄に会いに行くために。
ドミールへ到着し、クルーヤとも合流しました。
仲間が全員そろうのが待ち遠しいですね。