このムービーはぞわっとしますよね。
ドミールの里を、ガナンの兵士が襲いかかってきた。 その脅威から里を守ることは出来たものの、そこでフィリス達はゲルニック将軍に遭遇し、やはりガナンに狙われていることを悟る。
「ハオチュンさん」
「奴ら、去ったようだな……」
「ええ、なんとか」
そこに、ドミールの里の人々を守りながら避難させていた武道家、ハオチュンと合流する。 そのときに魔物が立ち去っていったことを報告しあっていたのだが、そこでハオチュンはフィリスの様子がどこかおかしいことに気がついた。
「フィリス? 目が血走っているように見えるのだが……」
「ああ……戦ってたらこうなっただけだ………」
「…………」
そうフィリスは、あくまでも冷静に答えたが、隣にいたセルフィスとクルーヤは顔をうつむかせた。 ガナン帝国の兵士が襲いかかってきたときに出くわしたゲルニック将軍が、彼女の師である男と関係があると知ってしまったからだろう。 フィリスが、自身の目が血走っているかのように興奮しているのは。
「おお、ここにおらせられたんですか」
「おばあさん?」
そう、ガナン帝国軍侵略についての話をしていたとき、里長の母である老婆がフィリス達に声をかけてきた。 どうしたんですか、と問いかけてみると、老婆はフィリスの顔を見て告げてくる。
「実はグレイナル様より、あんたに伝言がありましてな」
「伝言?」
「ええ……。 なんでも、急に気が変わって……条件付きでならあなたとだけ、お話をしてもよいとのことです」
条件とはなんなのだろうか。 いきなり話を聞くようになるとはどういう風の吹き回しだろうか。 様々な疑問を抱えるフィリスにたいし、老婆はグレイナルの出してきた条件を彼女に告げる。
「その条件とは、あんたが一人きりで竜の火酒をもって山奥までくること…だそうじゃ」
「あたしに、一人で…?」
「そう。 ちなみに竜の火酒はこのドミールの名産品で、非常に強い酒のことじゃ。 それは普通の人間はすぐによってしまうほどのものなんじゃが……同時に、グレイナル様の大好物でもあるものなんじゃ」
つまり、フィリスに酒をつげと言うことなのだろうか。 そう考えていたサンディにフィリスが軽くツッコミを入れたところで、改めてグレイナルの条件の意図を気にする。
「……どういう意図なのでしょう?」
「うーん……意図はわかんないけど。 これは聞くべきなんだろうな。 いいさ、引き受ける!」
フィリスはグレイナルの条件をのむことを決め、仲間であるセルフィスとクルーヤに、ドミールの里に残るようつげる。
「セルフィスとクルーヤはこの里で待ってて」
「フィリス……」
「大丈夫、あたしのことなら心配はいらないって」
そう明るく2人に告げるフィリスは、先ほど襲ってきたガナンの兵士の話をする。 彼らはまた、この里に攻めてくる可能性が高いということを。
「それに、あたしがあっちにいる間に……里になにかあったら大変だ。 守ってほしい」
「そういうことなら、仕方ないわね…だけど、無事に戻ってきてね?」
「わかってる」
「僕も、お待ちします…あなたが帰ってくるのを」
セルフィスとクルーヤは彼女をこの里の中で待ちつつ、いざとなれば里を守る約束をした。
「ハオチュンも、二人とドミールの里をお願いな」
「わかった」
ハオチュンに、仲間達のことを託したフィリスは、竜の火酒を作っているという工房を訪ねるのであった。 そのときはまだ仕上げるには早い時間らしいのだが、グレイナルが酒が欲しいというのなら仕方ないといって、その火酒をフィリスに渡したのであった。
「おそい、おそいぞ! 待ちくたびれたわい!」
「さーせん」
グレイナルの条件通り、フィリスは竜の火酒を工房から一人でもってきた。 再会してすぐに怒鳴ってきたグレイナルにたいしフィリスは適当に返事をする。 最初はその適当な返事に対し眉をひそめるグレイナルだったが、彼女が一人で酒をもってくるという条件を果たしたことで、おとがめなしとすることにしたのであった。
「……まぁ、条件は果たしたからよいか………そういえば、貴様の名前を聞いてはいなかったな」
「はっ…フィリス、と申します」
「ふむ、貴様らしい間の抜けた名前だな」
自分の名前をそういわれたので、今度はフィリスが眉をひそめることになった。
「……………それはさておき………先だっては貴様を信用できぬと言ったが……どうやら間違いだったようじゃな。 おいたりとはいえ、わしの耳は人間とはものが違う……。 貴様が、帝国の兵士を名乗る連中を退治したのだろう」
「ええ、まぁそうですね」
「外であれだけ騒いでおれば、イヤでも聞こえてくるしのう」
「………………」
それは嫌味か、と言いたかったフィリスだったが、グレイナルはそんなことは気にもとめず、先程のガナン帝国の兵士のことを思いだし語る。
「しかし、わしの知る帝国の兵士達は…あのような魔物ではなかったな」
「え、魔物じゃないんですか?」
「うむ………だが、奴等の放つあの気配は、忘れもせん。 あれこそは紛れもなく、300年前にわしが戦ったのと同じものじゃ…………」
やはりガナン帝国が復活でもしたのだ、とグレイナルも感じたらしい。 どうやらフィリスがバルボロスに遭遇したという話も信じてくれたようだ。 だが、それと自分のにおいとの関係はなんなのだろうか。 フィリスがそのことについて考えていると、グレイナルは思い出したように竜の火酒のことを話す。
「っと、それよりも酒じゃ酒。 竜の火酒を持ってきたんじゃろう?」
「これですね」
「うむうむ! これじゃ、これじゃ♪」
どうやらグレイナルは相当酒に目がないらしい、フィリスが竜の火酒を見せると一気に機嫌がよくなり、一気に飲み始めた。 においは、強烈なものだ。
「…………ぷっはぁ! うー……しみるのう」
「美味しそうに飲むなぁ」
「当たり前じゃ、この酒は強く、そして美味! これを飲んでわしは、300年生きてこれたのじゃよ!」
そう高らかに笑いながら、グレイナルは竜の火酒を飲み干した。 酒の成分で体がほてっているのだろうか、その顔はわずかに赤みが差しており、少し酔っていることがわかる。
「うぅ……ヒック! …………ん!? この気配はどこかで!?」
「えっ?」
酔いながらもグレイナルは何かの気配に気づき、空を見上げる。 すると真上から闇の力をまとった巨大な球が飛んできて、ドミールの火山の一部を崩した。
「わぁ!?」
その余波が、フィリスとグレイナルの元にとんでくる。 その力は、ドミールの里にも降ってきているようだ。 なぜ突然、このようなものが自分たちのところに襲いかかっているのだろうかと、攻撃が飛んできている根元であろう空を見上げる。
「まさか……あれは……!?」
ドミールの火山の煙の中、暗い夜空。 そこにいたのは、黒いドラゴンン。
「…………バルボロス!」
グレイナルは憎々しげに、その竜の名前を口に出した。
グレイナルとフィリスの目の前で、バルボロスがドミールを攻め始めた頃。
「イオラ!」
バルボロスは容赦なくドミールを攻撃してくる。 そこでクルーヤは、魔法を用いてバルボロスの攻撃を相殺していく。 里の人達は万が一に備えて、ハオチュンやセルフィスが避難させていった。
「クルーヤさん、大丈夫ですか!」
「まだ魔力はあるけど……切れるのは時間の問題ね…。 それよりも……」
クルーヤにまほうのせいすいを使いながら、セルフィスが駆け寄ってきた。 クルーヤは自分の魔力の限界を悟りながらも、空にいる黒い竜を睨みつけて徹底抗戦の体制に入っていた。
「間違いなく、あれはあのときの…黒いドラゴンだわ!」
「そうですね……!」
自分達が天の箱船で見つけたあの黒いドラゴンが、ここにいる。 あいつをそのまま好き放題にしていたら、間違いなくドミールが滅んでしまう。
「きゃあ!」
「クッ!」
それはわかってはいるものの、相手の力は圧倒的だ。 少し気を抜けば相手の攻撃が飛んできて、里を襲う。 そんなバルボロスの止まらぬ攻撃をみて、セルフィスはある仮説をたてる。
「まさか…!」
「なに?!」
「あの者は里を攻撃することで、グレイナル様をおびき出すつもりでは………!?」
「なんですって!」
セルフィスが敵の意図を悟りそうつぶやいた、同じ頃。
「ヒック……おのれ、バルボロスめ! なんとしてでも、ワシを引きずり出したいようじゃな……!」
「くっそ……卑劣だな……!」
フィリスとグレイナルもまた、バルボロスが里を攻撃する理由に気がついていた。 グレイナルを引きずり出すのは罠かもしれないが、このままではドミールの里が危ない。 そう思ったフィリスは、思い切ってグレイナルに頭を下げて協力を申し出る。
「………ヤツだけは、あのまま許すわけにはいかないんだ…! だから、あなたの手を貸してください!」
「うぅ~……よかろう。 お前がおれば、なんとかなるじゃろう!」
「え、あたしが?」
手を貸してもらえると思った矢先に、自分を指されたのでフィリスはきょとんとした顔になってしまう。 そんなフィリスにたいし、グレイナルは立て続けに話をしてきた。
「裏の洞窟に、竜戦士の装備というありがたーいものがある! 貴様にそいつをくれてやるから、装備してくるのじゃ! それを着た貴様が竜の戦士として我が背にまたがれば、今のわしでもきっと、再び空を飛べるはず!」
「わかった、すぐに着る!」
フィリスはグレイナルの言葉に従い、竜戦士の装備を取りに行くため、グレイナルがねぐらにしている洞窟を目指した。
「グレイナルの命、もら…!?」
「邪魔っ!」
「グホォッ!」
途中でグレイナルの暗殺をもくろんでいたであろう魔物を、フィリスは一刀両断して、洞窟にはいる。 そして、白い甲冑を発見した。 他にそれらしい装備品もないので、すぐにそれが竜戦士の装備だと気付いた。
「これか!」
その装備一式を手にしたフィリスはすぐにそれを身につけ、洞窟をでる。
「装備してきました!」
「おお、それはまさしく竜戦士の装備……ヒック! ……にしても、なにか魔物の悲鳴が聞こえたが、なにかあったのかの?」
「問題なしです!」
あの魔物の存在をなかったことにしつつ、フィリスは今のグレイナルの様子について一言言う。
「それよりも、あなたも大丈夫ですか? さっきお酒いっぱい飲んだでしょう?」
「わしも、少し酒が入っているくらいがちょうどいいんじゃ!」
「じゃ、しつれいっ!」
そう言ってフィリスは身軽にグレイナルの背に飛び乗る。 するとグレイナルは翼を大きく動かし始めた。
「うぅむ! かつての力が戻ってきたように感じるわい! ではゆくぞ、フィリスよ!」
「はい!」
そうして、フィリスを乗せたグレイナルは、その翼をかつてのように大きく羽ばたかせながら、空高く飛び上がった。 そこにいるバルボロスと対峙するために。
「ど、どこだ! バルボロス!」
キメラの軍勢を振り払いながら、グレイナルはバルボロスを探す。 フィリスも周囲を警戒しつつバルボロスを探し、やがて遠目に黒いものがあるのに気がついた。
「グレイナルさんっ」
「ん?」
フィリスの呼びかけに答えて、グレイナルもそちらをみると、そこには自分とそっくりな姿をした黒い竜が飛んでいた。
「そこか……まさか、まだ生きていたとは………」
「ふふふ」
自分が戦うべき相手を発見したグレイナルは目つきを鋭くさせる。 バルボロスは余裕そうに笑いながら、グレイナルを睨みつけて、その口から巨大な火の玉を吐き出す。
「くらえっ!」
その火の玉をグレイナルも同じように火の玉を吐き出して、相殺する。 それにより黒い煙が舞い上がり、その中からバルボロスが現れてグレイナルにからみつく。 それを振り払おうとグレイナルは空を舞い、力ずくで振り払うと今度ははげしいほのおを吐いてバルボロスを攻撃した。 2体の竜による激しい空中戦が繰り広げられ、グレイナルの背に乗るフィリスは振り落とされないようにしがみつくのに必死になっていた。
「食らうがいい!!」
そこでグレイナルはバルボロスを正確に捉え、そこに光の力をまとった球を放ち、バルボロスを攻撃した。 その攻撃は命中し、バルボロスはボロボロとなり空中でうなだれる。
「やったか!?」
これによりバルボロスが敗れ去ったのかと思ったフィリスはそう言ったが、バルボロスの表情から余裕の色は消えない。
「ふふふ………流石だなグレイナル。 だが、以前のようにはいかぬぞ」
「なにを……」
バルボロスがそう言うと、空から黒い雷が降ってきてそれがバルボロスを直撃した。 その雷による紫電が空をおおい、フィリスとグレイナルの視界もさえぎられる。 その紫電にたいし、フィリスは既視感を覚えながら。
「………なんだ………!?」
そして、その紫電がはれたとき、そこには先程よりも装飾が多くなり、体力も満ちあふれていて、禍々しさのましたバルボロスがいた。
「う、うそ……!」
「我はさらなる力を得たのだ……! 己の非力さを、思い知れ!」
そういいバルボロスは、先程よりももっと強力な闇の力を放って、グレイナルを攻撃した。 その一撃はこれまでとはケタ違いなものであり、フィリスとグレイナルに襲いかかり体力を一気に持っていく。
「グァァァ!」
「うあぁぁ!」
その一撃だけで、グレイナルもフィリスも大ダメージを受ける。 フィリスはその中でなんとか声を絞り出して、グレイナルに声をかける。
「ぐ、グレイナル、さ………」
「うぐっ……」
グレイナルもかろうじて命は取り留めているようだ。 だが、このままではバルボロスとは戦えない。 そんなグレイナルの姿を見たバルボロスはグレイナルをみくだす。
「ふふふ………もはや、それまでか………」
「……て、め………」
フィリスは目を開いてかぶと越しにバルボロスを睨みつける。 そのとき、バルボロスは再びあの闇の力をまとった球を放つ体制に入った。
「みよ、グレイナルよ」
「な、なにをする気じゃ!?」
「ただ殺すだけではもの足りぬ………貴様に、あの里の最期をみせよう!」
「なんだって……!」
バルボロスはそう告げた後、非情な行動をとった。 その巨大な闇の球を、ドミールの里に向かってはなったのだ。 その力はすさまじく、ドミールの里の一部が破壊されつつある。 あれが直撃すれば、里は一瞬で消滅するだろう。
「いかん、このままでは……」
「ダメだ! あそこには、多くの人あたしの仲間もいるんだっ! あんなこと…許しちゃダメだ………!」
なんとかして防げないかとフィリスが試行錯誤をしていると、グレイナルはゆっくり目を閉じたかと思うと、やがて意を決したように頷き、フィリスに告げる。
「短い間だが、世話になったな」
「なにを!?」
「さらばじゃ!」
「うわ!」
グレイナルはその身を大きく震わせ、フィリスを自分の背中から振り落とした。 突然の出来事に戸惑っているフィリスは、竜戦士の兜越しにグレイナルを見た。
「生きよ! ウォルロ村の守護天使よっ!」
「!」
その時かけられた言葉を、フィリスは聞いて、グレイナルは自分の正体に気がついていたのだと悟る。 フィリスは声を振り絞って、グレイナルの名前を呼ぶ。
「グレイナル様っ……!」
「ワシは、ワシの里を守ろう!」
直後、グレイナルは里の方へと飛んでいき、里と闇の球の間に割って入り、最後の力を振り絞って全身から強い光を放った。 その様子を、里にいた者達がみていた。
「あれは!」
「グレイナルさま!?」
里に直撃するはずだった闇の力が、直前で飛び散った。 グレイナルの鱗と、その魂とともに。
まさかの最期をみせつけられ、フィリスはどうなってしまうのか。
次回、注目です。