ドラゴンクエスト9 AngelsTale   作:彩波風衣

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最初に言っちゃうと、今回で仲間が全員、再集結します。
そして、こういう形式にもしてみました。



34「地上の地獄へ」

 

「………フィリス! フィリス!!」

「ん?」

 

 真っ暗な闇の中、フィリスは自分の名前を呼ぶ仲間の声につられるかのように自分の瞼を動かして、真紅の瞳をみせた。 彼女が目を覚ましたことに気付いた仲間達は、安堵の笑みを浮かべている。

 

「………あれ……セルフィス……クルーヤ……それに…………」

 

 そこには離ればなれになっていた最後の仲間、イアンの姿もあった。 彼の存在に気付いたフィリスは驚いて、大声で彼の名前を呼んで起きあがる。

 

「イアン!?」

「ああ……オレだ……」

「彼は、ガナン兵の鎧をきてそれに扮し、僕達と合流してきたのです。 その時に、ガナン兵と戦い、奴らを退けてくださいました」

「そうなのか…」

 

 イアンがここにいる理由を知り、フィリスはそう言ったが、直後に自分と共に戦っていたあの白い竜のことを思い出す。

 

「グレイナルのじーさんは!?」

「…………」

 

 グレイナルがどうなったかを目の当たりにしていた3人は顔をうつむかせる。 そして、意を決したようにセルフィスは、彼の最期をフィリスに伝える。

 

「彼は、この里を守るために………その身を挺しました」

「……そんな………」

「…………」

 

 あの瞬間に自分がみたのは嘘の光景ではなかったのだと、フィリスは悟る。 あのときバルボロスはドミールの里を滅ぼすために攻撃をしかけてきたのだが、グレイナルがそれを、その身を使って防いだのだ。 直前にフィリスを自分の背中から振りおとし、彼女を天使と呼び生きるように諭しながら。 そうしてグレイナルの最期を知った一同は表情を曇らせるが、そこでイアンがなにかを思い出したように声を出した。

 

「そうだ、フィリス!」

「!?」

「目覚めてそうそうにわりぃが、オレに力を貸してくれ! こいつを使ってオレと一緒にきてくれねーか!」

 

 そう言ってイアンは、ふつうのものとは少し違う形をしたキメラのつばさを取り出して彼らに見せる。

 

「キメラのつばさ?」

「でも普通ではなさそうですね」

「ああ……特別製だぜ」

 

 そういうと、イアンはセルフィスとクルーヤも、自分の方へ引き寄せる。

 

「セルフィスも、クルーヤも、こい!」

「と、唐突ねっ!?」

「うわわっ」

 

 イアンにしっかりと捕まれた3人は、彼が取り出したキメラのつばさによって、このドミールとはまた別の場所へ飛んでいってしまったのであった。

 

「あ、ま、まってー!?」

 

 だが、先の戦いでフィリスから離れていたサンディだけが、まるで存在を忘れられたかのように、その場に残されてしまった。 その事実にだれも気付くことはなく、イアンに導かれるがまま、4人はとある場所にとばされた。

 

「ここって……?」

「カデスの牢獄だよっ」

「カデスの牢獄?」

 

 カデスの牢獄と呼ばれるその場所は、非常に強固な壁と扉、空には紫色の暗雲、周囲は枯れ果てた大地と毒の沼に囲まれている場所だった。

 

 

「いやな空気が漂ってますね……ここは、いったい……?」

「ああ……」

 

 イアンは、フィリスと離ればなれになったあと、何があったのかを語る。

 

「オレは天の箱船から振り落とされた後………気が付いたらここに捕まっていたんだ。 そんで、そこで奴隷として働かされていた………」

「奴隷ですって!?」

「ああ……ここは帝国に逆らったものや侵入者を捕らえては、自分達の国のために働かせる。 中には理不尽な理由で奴隷にしたり、中には命を落としたものもいるみてぇだ……ほとんど、兵士達の遊び半分で………」

「なんと……むごいことを………」

「話で聞いたガナン帝国の、悪行そのままね………」

 

 イアンのその短い説明だけで、彼がこの合流のときまで、どのような状態にたたされていたのかを知る。 ここはまさに地獄なのだ。 そこで、イアンはさらに、自分が無事に脱出できた理由を説明する。

 

「だけどここで、オレを……オレだけを逃がしてくれた人がいたんだ。 危険を省みず、兵士を利用して、特別なキメラの翼をオレに渡して………ドミールの襲撃部隊にオレを混ぜることで………」

「そんな危険なことを…………!」

 

 オレも無茶だとおもう、とイアンは苦笑しつつも、自分の恩人について思い出したことがあったのでフィリスに告げる。

 

「そういえば、その人は、フィリスのことを知っていたぜ」

「な、なんであたしを…………!?」

「わかんねぇ……だが、オレはその人に、お前とともにここに戻ってこいって言ってたんだ…………。 ここを突破するには、お前の力が必要不可欠だっていって…………」

「あたしの力……?」

 

 どういうことだろうか、と戸惑っているフィリスに、イアンは告げる。

 

「説明はその人に、直にしてもらうこった。 オレにこのキメラの翼を渡してくれたのも、オレが戻ってきて助けてくれるのを……知っているからだ……」

「なにを考えているの?」

「脱出計画だよ」

「脱出計画?」

 

 その脱出計画という単語を聞いて、4人はイアンがなにを考えているのかを悟る。

 

「まさか……!」

「そのまさか、だぜ! オレ達で外で大暴れして、結界を解除して皆を逃がす作戦だ! あそこは結界で囲まれていて、囚人が逃げれないようになっているが……そいつを発生させている装置を、オレ達が壊す!」

「そうすれば、あそこに捕らわれている人を、助けられる!?」

「ああ、オレは……危険を省みずオレを助けてくれた人を、そして……ここで奴隷として働かされている人たちを、助けたい! だから、つきあってもらうぜ!」

 

 ここでイアンは、仲間達に対して有無をいわさない姿勢を見せる。 それは、彼らの答えを知っているから出来ることだ。

 

「そういうことか!」

「であれば」

「答えはひとつよねっ!」

 

 4人は顔を見合わせてうなずきあい、次にイアンがクルーヤに声をかける。

 

「クルーヤ、合図頼むぜ!」

「ええ!」

 

 イアンの声に答えて、クルーヤは上空に向かってイオラを放った。 その爆裂の魔法は上空で大きく破裂し、それは牢獄内にも届いていた。

 

「なんだ?」

「あれは………! 戻ってきたか……イアン………!」

 

 一方、そのカデスの牢獄の中では、一人の囚人が断頭台にかけられ、処刑されようとしていた。 外で起きた謎の爆発に全員が戸惑っていたが、ただ一人だけ反応が違った。 そんな中、囚人がボロボロに泣き崩れながら断頭台にたたされていた。

 

「いやだぁ、やだぁ! しにたくねぇよぉ……!」

「ちょうどいいぜ! オレももう堪忍袋の緒が限界だ! これ以上はガマンできねぇぜ!!」

 

 そう言い出したのは、非常に筋肉質で大柄な男だった。 その男は囚人を処刑しようとしていた兵士にタックルをしかけて、壁にたたきつける。

 

「ぐほぉ!」

「なっ……」

「オラァッ!」

 

 それに気付いた兵士も、その男が力業で投げ飛ばして、そのまま気絶させた。 そしてその兵士から槍を奪い取り、そこにいた残りの囚人達に呼びかける。

 

「いいか、みんな! 今外から救援がきた! ここで大暴れしてみんなで脱獄するぞ!」

「え……そんなのいつの間に!?」

「も、もし逃げられるのならこれはチャンスかも!?」

「今までの鬱憤を晴らそう! ここで、一気に………反乱を起こすんだ!」

「お、おぉぉぉーっっ!!」

 

 そのかけ声に応えるかのように、囚人達は声を上げて、兵士から武器を奪ったりそこら変に転がっていたものを持ち上げて兵士達に投げつけたりしはじめた。

 

「は、反乱だ! 反乱が起きたぞ!! 兵をよべーっ!!」

 

 囚人達が反乱を起こしたと知った兵士達は増援を呼ぶが、それでも囚人達は攻撃の手をやめない。

 

「結界が消えるまでの辛抱だ、兵士を取り押さえろ!」

「おおおおっ!!!」

「アギロの旦那の言うとおり、ここはやってみるっきゃねぇぜ!!」

 

 アギロ、と呼ばれた体格のいい男は、外にいるであろうある人物のことを口にした。

 

「イアン、天使を連れてきたな……!」

 

 そこには、天使という単語が含まれていた。

 

 

 

「お、騒がしくなった!」

 

 カデスの牢獄から騒がしい声が聞こえてきたので、イアン達は囚人達の反乱が始まったのだと悟る。 彼らが戦っているのを確認したフィリス達は顔を見合わせて頷くと、牢獄を覆っている結界を生み出している塔に向かった。

 

「な、なんだおまえは!?」

「えいっ!」

「ハッ!」

 

 フィリス達の存在に気付いたがいこつ兵士だったが、フィリスのはやぶさ斬りとイアンの黄泉送りがヒットして倒れる。 そしてその死体を踏み台にするかのように通り過ぎていくと、扉の前に一体のキラーアーマーがいた。

 

「なんだ、貴様等は!?」

「門番かっ!」

「ここに侵入するとは命知らずめ。 処刑台に送り込む前に、オレ様が直に引導を渡してやろう!」

「へっ! その台詞……そっくりそのまま返してやるよっ!」

 

 そう言ってフィリスはキラーアーマーの剣を同じく剣の技ではじき返し、突き返す。 そこにクルーヤのメラミが命中しひるんだところで、セルフィスが槍でついて突き飛ばした。

 

「この上だぜ、あの牢獄を囲っている結界を作ってる…結界発生装置は!」

 

 4人は結界を生み出している装置の元にたどり着き、赤いスイッチを発見した。 これこそが結界を作っているものだと、4人はすぐに気付く。

 

「どうやって止めるの?」

「思いっきりたたく!」

 

 そう言ってイアンはそのスイッチをたたく。 するとそのスイッチは光を失胃、周囲に飛んでいたレーザーも徐々に消えた。 すぐに外にでて牢獄の様子を見るフィリス達に、ある人物が声をかけてきた。

 

「イアン、きてくれると信じてたぜ!」

「オレだけでも逃がしてくれた恩は、わすれねぇよ、危険を冒してまで……兵士から鎧を強奪して、オレに着せて兵士に変装させて…ドミールを攻める部隊に入れるという……強引な手を使ってでも、オレを助けてくれたアンタを………! オレが仲間を連れて戻ってきてくれると、信じてくれたアンタを! 見捨てたりなんかしない!」

 

 そう、そこにいた筋肉質な男にイアンは叫ぶ。 その男はうなずき、そして彼のそばにいたフィリスに気付く。

 

「そいつもつれてきたな!」

「え?」

「おう! そんで、アギロさんよぉ! 結界は解除したぜ! どうする!?」

「結界が解除したら、やるべきことがある」

「やるべきこと?」

 

 アギロ、と呼ばれた男は牢獄を見つめつつ、話を続ける。

 

「この奥には特別な囚人がとらわれている………。 そいつらを助けにいく!」

「特別な囚人?」

 

 そして、アギロはフィリスのほうをみた。

 

「それにはおまえの助力が必要なんだぜ、フィリス!」

「あたし!?」

 

 どういうことなのだろう、と思いつつもアギロの後を追いかけ、その特別な囚人の救出に挑むことになったフィリス達であった。

 

「わざわざフィリスを指名するなんて……ただの人じゃないわよね」

「ええ………フィリスさんは特別な存在ですが………それと気付くのは難しいことですし……」

 

 アギロの正体に関する疑問を、セルフィスとクルーヤがこっそりかわしていた。

 

 

 

 そしてアギロが向かっていった先、その部屋にはアギロと巨大な魔物が一体いた。 イノシシのような顔に頑丈な鎧、巨大な鉄球を持った、筋肉質な魔物だ。

 

「こいつがこのカデスの牢獄を管理している……ガナンのゴレオン将軍だ!」

「こいつが………!」

「なんだぁ? また一匹増えたのかぁ?」

 

 ゴレオン将軍はフィリス達を見て、ほくそ笑むように声を上げた。

 

「何匹こようと、所詮虫けらは虫けらだ! 増えたところでなにも変わらん!」

「うっせぇ!」

 

 相手がガナンの将軍だときいたフィリスは剣を抜いてその切っ先を向ける。 ある人物の情報を知るために。

 

「お前も将軍だというなら、あの鳥野郎を出せっ!」

「……ゲルニックのことか? そいつはでる幕はない! ここで、このゴレオン将軍が貴様等をねじ伏せるのだからな! そとの下らぬ反乱者ともども!」

 

 そう叫び、ゴレオン将軍は鉄球を振り回してきた。

 

「我が力を、その命に刻みつけるがいいっ!!」

「おっと!」

 

 鉄球の攻撃を間一髪で回避し、フィリスは相手に切りかかる。 だが相手の筋肉は堅く、剣が思うようには通らなかった。 それ故に相手の反撃を受けそうになったが、そこでイアンがゴレオン将軍の顔面に棍をたたきつけたことで防がれる。

 

「……力ずくで、聞き出すぜ!」

「……ああ!」

 

 そうフィリスに声をかけた直後、ゴレオン将軍はイアンに攻撃を仕掛けてきた。 反応に遅れてしまったイアンは鉄球攻撃を受けて弾き飛ばされ、立ち上がろうとしたときには目の前までゴレオン将軍が迫ってきており、イアンは追撃も受けてしまう。

 

「グッ……!」

「よく見てみれば、貴様も外の牢獄にいた囚人だな? まさかここまでくるとはな!」

「………へっ、てめーらの警備、結界で油断してたのかずいぶんザルだったぜ! てめぇ図体だけでアタマはお粗末なんだな!」

「んだとぉ!!」

 

 ゴレオン将軍はイアンにさらに攻撃を仕掛けにいったが、そこで背後から火の球が数発飛んできて、ゴレオン将軍を攻撃し、さらにセルフィスが鎧の間に見えた肉体に槍を突き刺してくる。

 

「ぐぉぉ……!」

「イアンさん、今回復を……!」

 

 敵がダメージに苦しんでいるスキに、とセルフィスはイアンに回復魔法をかけたが、直後に立ち上がったゴレオン将軍がセルフィスめがけてつっこんできた。

 

「うわっ!」

「セルフィス!」

 

 セルフィスはその突進に反応が遅れ、自分の身を守ろうと防御しようとする。

 

「グォッ!?」

 

 しかし、その瞬間にゴレオン将軍の懐でなにか小さい力が発生した。 セルフィスから飛んできた力が、ゴレオン将軍にぶつかったのだ。 ゴレオン将軍はそれに面くらい、それにより別方向から攻撃を仕掛けてきたフィリスの一撃をまともに受けてしまう。

 

「これは……」

「どうした!?」

「これは、あのときの力……! ゲルニック将軍からフィリスさんを守るために放った………あの強い力です……!」

 

 その力には、セルフィスも驚いていた。 実はグレイナルに振り落とされたあのとき、ゲルニック将軍がフィリスを捕まえて連れ去ろうとしていたのだが、それをセルフィスは妨害したのだ。 その中で彼は新しい力に目覚めていた。 まだ、その兆しの段階ではあるが。

 

「貴様っ!」

「クッ……」

 

 フィリスは盾でゴレオン将軍の一撃を受け止めた。 その後フィリスは防戦一方を強いられる。 その一方では、クルーヤが魔力をためることに集中させていた。

 

「イオラじゃだめ……もっと、もっと強い力を………!」

 

 実は先ほど、イオラの魔法を放ってはいたのだが、火力不足で相手に有効的なダメージを与えられなかったのだ。 だからこそ、それ以上に強いダメージを与えられる攻撃魔法をひねり出そうとしている。

 

「みんなの痛み、思い知りなさい!」

 

 そして、それが実現しようとしていたことにも、クルーヤは気付いていた。 その手に強力な魔力をため、一気に解き放ち、大爆発を起こす。

 

「イオナズーンッ!」

「うぐぁぁーっ!」

 

 そうクルーヤは強力な力を持つ爆破の魔法を放ち、ゴレオン将軍を吹っ飛ばした。 その一撃を受けて、ゴレオン将軍は地に伏せた。

 

「やったな!」

「決めてやったわっ!」

 

 この戦いにたいし勝利を確認したフィリス達は笑いあう。 一方攻撃を受けたゴレオン将軍はおもむろに起きあがりつつ、苦しげに呼吸をしながら語り出した。

 

「ごふっ……! 帝国の将軍と……あろうものが、虫けら如きに倒されるとは……これは、夢か、悪夢かっ!?」

「虫けらだと思ってればいいさ、その虫けらに負けたお前は無様ということになるだけだからな!」

 

 そう言い返すフィリスだったが、ゴレオン将軍には響いていない。 いや、響かせる余裕が彼自身の中にはない…といったほうが正解か。

 

「いや………いや、違う…………!」

「!?」

「オレは以前にも…………こうして、戦いに敗れ………這い蹲っていた!?」

 

 ゴレオン将軍の中には、ある記憶がよみがえってきていた。

 

「そうだ! 遙か昔オレはグレイナルに挑み、奴の炎に焼かれて死んだはず…………ということは……オレは、死者なのか………………? わからぬ…………」

 

 そういい残し、ゴレオン将軍の体は煙となって消え去っていった。 フィリス達は、ゴレオン将軍の言葉が気になっていた。

 

「………」

「………フィリス、最後の言葉が気になるのはわかるが、今は……まだとらわれている仲間を助けにいこうぜ」

「ああ……うん……」

「俺も大事なものを取り戻した。 まだ囚われている奴は、こいつを使えば助けられる」

 

 そういってアギロは右手に金色に光る笛を、左手に不思議な形をした鍵を持っていて、その鍵をフィリスに差し出していた。

 

「そうだな、いかなきゃいけない………あたしは自分でそう思うよ………」

 

 ガナンの3人の帝国将軍のひとりを打ち破ることに、彼らは成功したのであった。 残るは、まだ囚われている、特別な囚人を救出するだけだ。

 

 




フィリスじゃなくイアンをカデスの牢獄いきにしたのは、バラバラになってことを表したかったからです。
やや無茶なところがあるかと思いますが、ご了承ください。
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