ドラゴンクエスト9 AngelsTale   作:彩波風衣

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ここで仲間達4人の話を挟みたいと思います。
私にとってはこういう話はとても大事なものなのです、ご了承を。


37「仲間とは」

 女神からの神託を受け、世界の命運をかけて戦うことになった。 ガナン帝国との決戦のために、その帝国城へ乗り込む。 フィリス達はそのために、休息をとろうと久しぶりにセントシュタインのリッカの宿屋にきていた。

 

「あら、フィリス! おかえりなさい!」

「ああ、ただいま!」

 

 リッカは最初はフィリスを宿を利用するお客の一人として迎えようとしていたが、その相手がフィリスだと知ると、友人感覚で迎え入れてくれた。 そのことが、彼女を友人として見ているフィリスにとって嬉しいことであった。

 

「本当に久し振りね。 音沙汰ないから、どうしているのかなって思っていたのよ」

「そりゃそうっすよルイーダさん。 オレ達は世界の各地を旅してるくらいっすから、手紙を出すことなんて忘れちまいますぜ」

 

 ルイーダも久しぶりに宿屋を訪れるフィリス達に気付いて、声をかけてきた。 それにたいしてイアンがそう答えると、ルイーダはきょとんとしつつイアンに告げる。

 

「イアン、なんだか雰囲気変わったわね」

「え…そうっすか?」

「ええ」

 

 そう答えつつ、ルイーダはイアンと初めてあったときのことを思い出しながら彼に告げる。

 

「初めて会ったときの貴方は、明るく笑っていたけど………どこか陽気を演じているという感じがしていたもの。 人なつっこいように見えて、その実は他人と必要以上に関わらないように、距離を置いていた………」

「…………」

「でも……その空気が、今は感じられないわ。 よっぽど今の仲間が気に入ったのね」

「…………あったりまえっすよ」

 

 ルイーダにかつての自分を指摘されてイアンは苦笑する。 自分が変わることができたというのであれば、その理由はすべて仲間にあると思ったイアンは迷いなく肯定する。

 

「この宿屋も…雰囲気変わったね。 お客さんも多いしにぎわってるし、綺麗になってるし……」

「えへへっ。 がんばったからね」

「それに……」

「それに?」

 

 フィリスは別のカウンターにいる、緑色のワンピースに金色の髪の女性を見た。 あの女性は初対面だ。

 

「なんか人増えてるし…」

「あ、フィリスは初対面だよね……ロクサーヌさん!」

「はい」

 

 リッカはロクサーヌを呼び、彼女にフィリスを紹介する。 するとロクサーヌはフィリスのことを話で聞いて知っていたとつげてから、自己紹介をする。

 

「はじめまして、私、世界宿屋協会から派遣されたロクサーヌというものです。 宿を訪れたみなさまに特別な商品や情報を提供するのが、私のお役目でございます」

「は、はぁ………」

 

 世界宿屋協会なんてものがあるんだ、とフィリスは苦笑しつつ、ロクサーヌの顔と名前、立場を記憶する。

 

「貴女にも様々な情報を貴方にお伝えできるように努めて参りますので、今後ともよろしくお願いします」

「こ、こちらこそ……」

 

 上品に挨拶をしてくるロクサーヌにたいし、フィリスはまた苦笑したのであった。

 

「フィリスさん、戸惑っていますね……やはり、礼儀正しい人には弱いのでしょうか」

「ふふっ…そうみたいね」

 

 

 

「でも、あなたがここにまたくるなんて、うれしいけど………。 なにかあったの?」

「うん、あたし達これから少し、厄介なことに首を突っ込むことになったから……さ。 その前夜ということで……ここで一泊して英気を養おうとしていたのさ」

「………そうだったんだ」

 

 フィリスは詳しい内容を告げず、おおざっぱにそう告げた。 彼女の腕っ節を知っているリッカは、彼女がわざわざ厄介なことと言うところにひっかかるところがあって、思わず問いかけてしまう。

 

「そんなに、大変なことなの……?」

「……………」

「………って、ごめんなさい。 戦ったり冒険したりする力もないわたしが、深く聞いていいものじゃないよね……」

「リッカ……………。 ううん、あたしの方こそ……ごめんな………説明、してあげられなくて…………」

 

 自分の非力さを知っているリッカはフィリスに謝罪をすると、今度は逆にフィリスはリッカに謝罪をした。 フィリスもフィリスで、恩人であり親友であるリッカに、詳しいことを説明できないことに歯がゆさを感じているようだ。 だが、詳しい話をしたらより不安にさせるかもしれないし、巻き込むこともできない。

 

「でもそのかわり、フィリスがその厄介事にも打ち勝てるように……わたしも最大級のサービスをしちゃうからね! わたしからの応援の気持ちを込めて!」

「……サンキュ! リッカの応援があればあたしも明日、頑張れるぜ!」

 

 リッカは自分にできることをしよう、と気を引き締めなおしてフィリスにそう言うと、フィリスは彼女に笑い返した。 そしてチェックインを済ませて用意してもらった部屋に4人で向かう。 男女別にしようかとリッカは提案したが、フィリス達が4人で同室がいいと押し切ったのだ。

 

「きっと冒険の相談をしあうためなのよ。 あの4人も、それだけ信頼しあっているんだわ………あのときよりも、とても仲がよくなったのね…」

「それもそうですね」

 

 ルイーダの言葉に対しリッカも納得している一方で、4人はリッカが用意してくれた部屋に入る。 細かいところまで掃除がされていて、ベッドも布団もふかふかで、談笑にぴったりなソファやテーブル、シャワールームまである。

 

「こいつぁ、いい部屋を用意してもらっちゃったな」

「この部屋は4人用に広い部屋みたいだけど………ほかの部屋もきっとこのクオリティに間違いないわ。 リッカちゃんをはじめとする、宿屋のみんなの働きによるものに間違いないわね」

「この宿屋は、僕が訪れたときは経営が傾きかけていたみたいですが……そのときの話がウソのようですね」

「そういえば、そんな話もあったなぁ。 はは、懐かしいや…」

 

 そう楽しげに会話をしていると、サンディが出てきてその輪に入る。

 

「うん、いい部屋ジャン! 決戦前夜には相応しいカンジじゃね!?」

「おお…サンディもお気に召されたようですな」

「なにその話し方。 本人のキャラに合ってなくてうけるんですけど」

「うっせーやい」

 

 そんな会話をしているフィリス達に笑みを向けつつも、すぐに真剣な表情に戻って、明日の戦いのことをはなす。

 

「忘れちゃならねぇぜ。 明日オレ達がやるべきことも……そして、オレ達がやらなきゃ………この宿屋も奴らの餌食にされかねないことも」

「うん、ここはあたし達にとっても大事な場所だもんな。 ここがあったから、あたし達は会えたんだし……」

「なによりも、ガナン帝国があちこちでまた悪さをしたら、みんな悲しむだけよ」

「ガナン帝国の者達………彼らを討つことこそ、世界の人々を救うことになるのでしょう。 ……………そう、女神様も仰られたのですから…………」

 

 セルフィスは天使界で聞いた、女神の言葉を思い出しながらそうつぶやく。 そこでクルーヤは、セルフィスがやたらとガナン帝国に興味を持っていたことに気付いていたことをはなす。

 

「そういえばセルフィス、話を聞いたときからガナン帝国に強い興味を示していたわね…」

「そうだったのか?」

「……ええ……」

 

 クルーヤの言葉をセルフィスは一切否定することなく、事情を説明する。

 

「僕にもなにがあるのか、どうしてそうなるのかはわからないのです。 ですが、その単語を初めて聞いたとき………僕の心がざわつき…もっとガナンのことを知っておかねばならない気がしてしまったのです。 まるで、ガナンに触れることが……その真相を知ることが………僕の使命であると神が告げていたかのように………」

「セルフィス………」

「……とはいえ、実際の神の話をきいて…少し戸惑っていますけどね……」

 

 神をあがめ信仰する僧侶であるセルフィスは、その神であるグランゼニスがかつて人々を滅ぼそうとしていたことを知り、戸惑ったようだ。

 

「でも、ガナンとの戦いは……僕には避けて通ることは不可能なのでしょう。 胸がざわついていたのは、事実ですし…………なにより、彼らの悪行を目の当たりにして、放っておくわけにはいきません」

「そうか」

 

 

 ガナン帝国にたいするセルフィスのおもいを聞いたフィリスたちは、リッカに呼ばれて食堂へ向かい、明日のために食事を口にしていった。 その食事はおいしく栄養満点であり、4人とも大満足の味だった。

 

「ふぅ、食った食った」

「すごくおいしかったわね」

「ええ、僕も満足です」

 

 料理を食べきった4人は、自室に戻り順番にシャワーを浴びることにした。 彼らはまずフィリスに一番最初にシャワールームに送りこんで彼女にシャワーを浴びさせる。 ついでにいうと、サンディもシャワーを浴びたいとのことでフィリスについて行っている。

 

「さてと……みんな、装備や武器の準備はいいな」

「ええ。 私も最近いろんな攻撃魔法を覚えたし、良質な杖もフンパツして買っちゃったもの。 護身用として、少し強めのムチも持っておくわ」

「僕もここ最近の力の異変に気付いて、この間ダーマ神殿に行った際、大神官様に相談しました。 そうしたらどこかに賢者に関する書物を手に入れれば……僕は賢者として真に覚醒できると仰っていました」

「マジか。 そいつぁいいな。 まぁ賢者になれそうってくらいなら、おまえのレベルもつえぇってことだろ?」

 

 そうクルーヤとセルフィスのレベルを確認していき、イアンも自分の力がどれほどのものかを確認した。

 

「オレもドミールでハオチュンに再会して、今のオレの力をみてもらったよ。 オレの力は、あの帝国を相手にどこまで戦うかで証明できる……って言ってた。 ぶっつけ本番というところだろうぜ」

「まぁでも、イアンは今までだってかなり強かったじゃない。 今更、心配する必要ないんじゃない……?」

 

 話し合っていく中、彼らの話題はフィリスの方に集まっていく。

 

「あとは……フィリスのことだよな………」

「ええ………私の目が間違っていないのなら……フィリス思い詰めているはずよ。 ガナン帝国と天使の関係もあったし、今も関係は完全に切れていないわ」

「お師匠様のことも、まだ解決はしていませんし彼もまだあそこにいるのもかわりありませんしね」

 

 そう語り、セルフィスはずっとフィリスをみていて思っていたことを口に出した。

 

「僕の目の届く範囲でのことですが、彼女は一度たりとも涙を流したり、後ろ向きなことを言ったりしていません。 まるで、それを口に出すことを拒んでいるかのように…………」

 

 言葉は己自身を左右することもある。 良い言葉であれ悪い言葉であれ、多くの者のモチベーションを左右することもある。 だからフィリスは仲間を気遣い、弱音を吐かなかったし、弱い姿をいっさい見せないようにしていたのだろう。

 

「フィリスさんは、きっと強くありたいのでしょう。 自分の使命や、女神の果実のため………天使達のため………なによりも人間のために………。 それは、僕達も例外ではないと思います」

「そうね、もし彼女にとって私達のことがどうでもいい存在だとすれば、私達もここにはいないもの」

「オレ達がここまでついていくのは、なにもオレ達が並外れたお人好しってだけじゃねぇ。 あいつが一番お人好しだからだし………あいつが、オレ達を守ろうと動いているし、正面から見てくれるからだ………。 だから、答えたいと自然に思うことができる…………」

 

 イアンは、かつての自分を思い返しながら、語る。

 

「人間、受けた恩をどれだけ返せるかなんて………たかがしれてる。 人から受けた恩を仇で返すことなんて、あっさりできちまうんだ」

「イアン」

「でも、そこで取り返せるかどうかが、本当に腕の見せ所だろ? 少なくとも、オレは一緒に旅をしてくれたという恩を、フィリスに感じているぜ…………」

「それは、僕も同じです」

「私もよ」

「だから、これからその恩返しをやろうぜ」

 

 そう語り合い、これからの戦いでフィリスを守ろうと決めあう3人。

 

「………みんな………」

「フィリス!」

 

 そのとき、ちょうどシャワーを終えたフィリスが合流してきた。

 

 

「も、もしかして……さっきの話聞いてた?」

「ああ……途中からだけどな!」

「友情ゲキアツで、なかなかカンドーなんですケド!」

 

 そう口にしつつ、フィリスは3人に話をする。

 

「みんなが、あたしのことをそう思ってくれていたなんて……知らなかった。 あたし、みんなと一緒にいたのにな……」

「……………」

「あたしは、人間じゃない天使だ。 だけど、人としての時間を過ごしていて………人間みんなを助けたいって、思ったよ。 それを一番感じさせてくれたのは………あたしを最初に助けてくれたリッカと…………そして、あたしと一番ながい時間一緒にいて、旅をさせてくれた…………あんた達だ………」

 

 フィリスはまっすぐに3人を見つめて、言葉を続ける。

 

「天使界と人間界の運命に、巻き込んじゃったこと…………わりぃと今でも思ってる。 あたしは、その償いとして……あんた達をこの命を懸けて守りたいって思ったんだ。 そして、それは女神様より使命を受けた今。 ガナン帝国を倒して人間界を守って、天使を助けることで…………叶う気がするんだ……………」

 

 何度も覚悟をしていた。 自分の運命にこの中の誰かがかけ離れていくことを。 つきあいきれない、辛いといって、離れていくことを。 その時が訪れても、フィリスにとっては仕方のないことだと割り切っていた。

 

「みんながいたら、あたし帝国にだって勝てる。 どんな強敵にも魔物にも負けないし、立ち向かえる。 だからもう少し、つきあってくれ」

 

 だが、そのときはここまできてもいっさい訪れない。 イアンもセルフィスもクルーヤも、自分の運命を知って、敵の強大さを知って、どこまでもついてくるつもりだ。 だからこそ、フィリスはそう皆に頼んだのだ。

 

「お前が答えを決めてるというなら、いこうぜ」

「………………!」

 

 その頼みに最初に答えたのは、イアンだった。

 

「絶対に、ガナン帝国をぶっとばそうぜ! あんな暴君軍団、野ざらしにさせない! このオレの技で一匹残らず蹴散らしてやるぜ!」

「あのようなものを放っておいたら、より多くの人が傷ついてしまうでしょう。 それはなんとしてでも…妨げねばなりません。 僕の力で皆を守ります…」

「私も同じ。 ここにいる仲間も、今まで会ってきた人たちみんな好きよ。 私にどこまでできるかわからないけど……みんなを守るために、今まで培った力発揮するわ」

 

 続けてセルフィス、クルーヤも言葉を続けていく。

 

「うん、ありがとう! 必ずガナン帝国を打ち破ろう……みんなで」

「ああ!」

「ええ!」

「はい!」

 

 そう決意を固め、4人はシャワーを浴び、眠りについた。

 そして、翌日。

 

「じゃあ、いってくる!」

「うん、いってらっしゃい! またいつでも泊まりにきてね!」

「ああ!」

 

 装備を調え、体調も万全なのを確認した4人は、リッカの宿屋を出て行った。 そして、すぐに天の箱船を呼ぶ。

 

「じゃ、ガナン帝国へ出発するぜ!」

「お願いします!」

 

 天の箱船に乗って、中にいるアギロにガナンに向かうことを告げると、アギロもそれを了承して、ガナン帝国へと天の箱船を動かしていった。

 

「待ってて……お師匠様……!」

 




次回はいよいよ、ガナン帝国にケンカ売ります(言い方)
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