途中で賢者に触れておきますね。
天の箱船に乗り、ついにガナン帝国領のガナン城の前に降り立ったフィリス達。
「ここがガナン帝国城だ…。 城だけでなく、この地全体が禍々しい気に満ちてやがるから、気をつけろよ。 城を覆っていた邪悪な結界は、あの女神様が消してくれたから、入れると思うぜ」
「うん、送ってくれてありがとうアギロさん。 あたし、行ってくるよ」
「おう、必ず……生きてかえってこいよ」
「ダイジョーブ! フィリスにはアタシがついてるんだから!」
アギロに見送られながら城に足を進めた4人は、その城門から城をみあげる。 ここに、世界に脅威を与える元凶がいるという情報を入手しているからだろう。 彼らは身を引き締める。
「あのときは、カデスの牢獄しか目に入っていなかったけど……でけぇ城だな。 しかも……なんか悪趣味だ……王様がどんな人か、よくわかるな…………」
「さっすがは悪の帝国というだけのことはあるな。 その天下を、これからオレ達がぶっ壊すってワケだ………へへ、腕がなるぜ」
城をみあげながら、イアンは口角をあげて拳をバキバキとならす。 隣にいるフィリスもにたような表情を浮かべていたが、その一方でセルフィスは城門に見えた恐らく国章であろう紋章に目を向けていた。
「……………?」
「どうかしたの、セルフィス?」
「あ……いいえ、なんでもありません……」
クルーヤに声をかけられ、セルフィスは我に返る。 そして、彼らとともにガナン帝国へ足を踏み入れようとした。
「うわっ!」
「きゃあ!」
だが、そのとき。 何発かの闇の攻撃魔法、ドルマが飛んできてフィリス達に襲いかかってきた。 彼らはその攻撃に何とか耐えたものの、突然の不意打ちにたいし戸惑っていた。
「何者だっ!!」
「ホッホッホッホ………!」
だがすぐに体制を立て直し、攻撃の正体を探す。 すると、上空の方から聞き覚えのある笑い声が聞こえて、直後に多くの兵士を連れた鳥の頭を持つ人型の魔物ゲルニック将軍が現れた。
「お前は、ゲルニック将軍!?」
敵の正体を知ったフィリスは、敵の名を口に出しながらその魔物をにらみつけた。 側にいたイアンも、あいつかと呟きつつ拳を握りしめる。
「またお会いしましたね、フィリスさん。 まさかあなた如きがカデスの牢獄を解放するとは、思いもよりませんでしたよ……」
「……………」
「それにしても………ゴレオン将軍も迂闊な………。 囚人に逃げ出す隙を与え反乱を起こさせてしまっただけではなく、飼い犬に手を噛まれるとは…………。 おかげで私まで、皇帝陛下に大目玉を食らいましたよ…………」
「へぇ? そいつは残念だったな……まぁそこは人選ミスってことで、あきらめるこったな」
イアンはゲルニック将軍の言葉に対し、挑発するようにそう言った。 それもそのはず、イアンはガナンにさらわれてカデスの牢獄で働かされていたものの、アギロが兵士から奪った鎧でその身を隠しながらまんまと脱獄し、フィリス達と合流することができたのだから。 それを許したのは、管理の甘いゴレオン将軍の業だ。 そのことも思い出しながら、ゲルニック将軍は梟の如く首を回す。
「ホッホッホ…………こう見えて私、相当怒っているんですよ。 全身の血が煮えたぎるほどにね…………」
「へぇ、それで?」
「この憤りをおさめるため…………精魂こめて、ブチ殺してさしあげましょう!!」
そう言ってゲルニック将軍は自分の魔力を解放する。 同時にてっこうまじんが数体、彼の背後から現れる。
「その言葉、そっくりそのまま、お返ししてやるぜ!」
「てめぇなんかに負けるかよ、クソがっ!」
フィリスは剣の切っ先をゲルニック将軍に向けて、そう叫んだ。
ゲルニック将軍が開幕早々にバギマを放ちフィリス達に攻撃をし、その直後にてっこうまじんが攻撃にでる。 バギマに耐えたイアンがそれを迎え撃ち、棍で受け止め受け流しながらはじき返した。 天地のかまえの技を使ったのだ。
「ハッ!」
フィリスも盾でてっこうまじんの攻撃を受け止めつつ、剣で切りかかる。 その一撃は会心の一撃のようであったため、てっこうまじんはその一撃の前に倒れた。 直後にクルーヤはイオナズンを放ってゲルニック将軍を攻撃し、セルフィスが槍でつく。
「ぐっ……バギマ!」
その二人の連続攻撃を受けたゲルニック将軍が、バギマの魔法を放って4人を同時に攻撃する。
「うあっ!」
「クッ!」
その魔法攻撃は先程より威力を増しており、大ダメージを受けてしまう。 その隙にゲルニック将軍は援軍として再びてっこうまじんを数体呼び出し、一斉に攻撃させる。
「じゃまったらしいわね! はぁぁ……マヒャド!」
そこでクルーヤは再び現れたてっこうまじんを一掃すべく、己の魔力を覚醒させ強力な氷の魔法であるマヒャドを放った。 てっこうまじんは魔法により現れた巨大な氷の刃に貫かれ、一撃で倒される。
「今よ、メラミッ!」
直後にクルーヤは隙あり、といわんばかりに炎の魔法を放ち、ゲルニック将軍に攻撃することを試みる。
「マホカンタ」
「しま………きゃああ!!」
だが、その炎の玉が当たる直前、ゲルニック将軍は魔法を反射させる効果を持つ光の壁を生み出す魔法、マホカンタを唱える。 それを唱えた瞬間にクルーヤは自分の誤りに気づいたものの、時はすでに遅く、自分にその炎の魔法がかえってきて、大ダメージを受けてしまう。
「クルーヤッ」
「ほっほっほ、仲間がいたぶられるのはいかがですか?」
「なっ……」
「ご心配なく……あなた達にも同じ傷を与えてあげますよ……バギマッ!」
「うわぁぁっ!!」
そのバギマも、大きな威力を持っていたらしい。 それにより、4人とも大ダメージを受けてしまう。 そこでゲルニック将軍は高笑いをしていたが、そこで4人の体が光につつまれ、その傷が消えたことでその笑い声はとまる。
「ホッホ………!?」
「誰一人として、死なせません………! 大いなる癒しを……ベホマラー!」
セルフィスは仲間達の傷を一瞬のうちで消し去ったのだ。 その回復の力は並のものではなかった。 これにより、ゲルニック将軍の与えたダメージは無のものへと変えられる。
「あのときといい、つくづく邪魔な……っ!」
その回復の力をみたゲルニック将軍は、以前に自分の行動を妨害されたときのことを思い出したようであり、セルフィスに怒りの感情を向ける。 だがセルフィスは表情をいっさい変えず、彼に対しさみだれ突きを放った。
「魔法の攻撃は無理でも………まだ完全に負けた訳じゃない! それを証明するためにも……あなた達に力をたくすわ! バイキルトッ!」
ゲルニック将軍がセルフィスに対し怒りの矛先を向けているのをみたクルーヤは、イアンとフィリスにバイキルトをかける。
「ドルクマッ!」
「おおっと、そっちばかりでいいのか!?」
「なっ……」
変わらずセルフィスに集中攻撃を繰り返していたゲルニック将軍にたいし、イアンは突っ込んでいき氷結らんげきを食らわせた。 それに気付いたゲルニック将軍はそのダメージをまともに受けてしまい、さらに自分に高速で向かってくるフィリスに対する反応にも遅れた。
「そこだ、はやぶさ斬りッ!」
「グァァッ………!」
それ故に、フィリスのバイキルト込みのはやぶさ斬りをも、まともに受けた。 その攻撃により、ゲルニック将軍の体は大きく切り裂かれ、ひざをつく。
「グァッ……ガ………」
「あたし達を侮辱した、天罰だ!」
もうゲルニック将軍の息は長くはない。 それを確信したフィリスはゲルニック将軍に向かって叫ぶ。 そんな中、ゲルニック将軍は意識も絶え絶えの中で語る。
「……………ホ………ホホ…………ど、どうやら…………あなたに関わると、私の計算は狂わされるようですね…………」
「それを成し遂げたのは、あたしだけじゃない……みんながいるからだ。 それに………てめぇは所詮、全部自分の思い通りになるかと思いこんでる………そんな、自己中なあまったれにすぎない。 それが、てめぇの計略を狂わせた、もっともな誤算だよ」
そうしてゲルニック将軍の弱点を指摘するフィリス。 その一方でゲルニック将軍は、ある男について語る。
「しかし、私が倒れたところで………まだ帝国三将…最後の一人、ギュメイ将軍がいます………」
「ギュメイ将軍?」
「…………彼さえいれば、帝国城の守りは…………万全。 実に、腹立たしいこと…………ですがね………ホッホッホッホ………!」
そう言い残して、ゲルニック将軍は黒い霧となって消滅した。 残された4人は最後の一人について語る。
「最後の一人………ギュメイ将軍って奴がいるみてぇだな…………」
「あの最後の言葉を聞く限り………きっとこの国で一番強い人に違いないわ」
「対峙した際には、心してかかりましょう」
「ああ」
こうして、ゲルニック将軍との戦いを終わらせた。 彼との因縁との終わりを告げ、4人はさらに激しい戦いを予感しつつ、城の中に入っていった。
そうして4人はガナン帝国の内部を進む。 そこは魔物の巣窟となっており、一歩歩くだけでも魔物が現れて、フィリス達に対し容赦なく攻撃を加えてくる。
「メラミッ!」
「黄泉送り!」
クルーヤの炎の魔法がボストロールを焼いた後フィリスとセルフィスの攻撃がとどめを刺し、そのボストロールを撃破する。 その隣ではイアンがゾンビナイトに棍の技をたたき込んでいた。
「さぁ、先へ進もうぜ」
「ええ………ん?」
魔物を退け、次の攻撃がくる前に仲間とともに先へ進もうとしたセルフィスだったが、そこでふと自分の足下に一冊の本が落ちていることに気づいて、それをひろう。 隣にある本棚に置かれている本は、流石に数百年放っておかれていただけあってボロボロなものばかりなのに、この本は古くはあるがここに似つかわしくないほどにしっかりとしたものだった。 その違いにたいしセルフィスは違和感を抱いて、本をまじまじとみつめる。
「なんか、ほかの本はボロボロなのに…これだけ綺麗な状態ですね………」
「おい、なにやってんだよ? 本なんてどうでも………」
いいじゃねぇか、とイアンが言葉を続けようとしたそのとき。
「うーん………むにゃむにゃ……なになに? せっかく眠っていたのにぃ」
セルフィスの持っている本から声がしたので、4人は一斉に驚く。
「うわぁ!!」
「本がしゃべった!」
「なになに、新種の魔物!?」
「魔物だなんて………失礼だなぁ………」
そんな不満を口にしつつ、本は言葉を続ける。
「僕は賢者だよ。 本の中にいる賢者さ」
「け、賢者ぁ!?」
「そう。 この本に入って眠る毎日を送っているんだけど…………これでもすっごい賢者なんだよ。 ああ、今も眠いや………」
「いやいや、眠りすぎジャネ!?」
「だって退屈だし……うぅん……?」
今も眠そうな声を上げていた本の賢者は、ふと自分を持っているセルフィスに気付いて、声をかけてきた。
「あれ、きみは………」
「なんですか?」
「ふむふむ………うん! やっぱりきみは、賢者の素質がありそうだねぇ!」
「え?」
唐突に、セルフィスには賢者の資格があると言ってきた本にたいし、セルフィス自身はきょとんとしていた。 だがやがて、ダーマ神殿の大神官の話を思い出す。 本を見つけることができたら、賢者になれるという話を。
「ま、まさか…………大神官様の仰っていた本って……まさか………」
「このしゃべる本…………ってわけか?」
「あー……もしかして、賢者になる資格とかの話?」
「は、はい」
セルフィスも賢者になるのが夢だったので、資格が得られる本を探していた身だ。 だがそんな重要な本が、このようなところにあるとは思っていなかった。 それ故にセルフィスは戸惑っていたが、賢者の本は気にする様子もなくセルフィスに言う。
「うん、いいよー。 僕が君を認めて、賢者の資格を与えるよー」
「あ、い、いいのですか?」
「うん。 君は魔法の勉強に長けていて、そのうえ信仰心も強いしねー。 賢者にしても問題はなさそうだものねー」
「はぁ……ありがとうございます………」
セルフィスがそうやって本と対話をしているのを、フィリス達は呆然と見ていた。
「なにこれ?」
「さ、さぁ」
「本と対話って、シュールね……」
微妙な空気が流れている間、セルフィスは仲間達に報告をする。
「え、えと…………どうやら僕は、あとは大神官様とお話しすれば、このまま賢者になれるようです」
「あら、よかったじゃない!」
「こんな方法になってしまいましたが………ついに賢者の資格を得られました。 ここでの戦いが終わったら、いってみるとしましょう」
「そうだな!」
そのためにも、まずはガナン帝国城を攻略しようと、妙な形ではあるものの決意を固める。 ここをクリアしてダーマ神殿にいけば、セルフィスの夢が叶うのだから。
「…………みんな…………おもしろい人たちだなぁ…………ぐぅ………」
「「「「って、寝たっ!!」」」」
再び眠りについた賢者の本にたいし、全員で一斉にツッコミを入れた。
「………とりあえず、その本を持っておいた方がよくネ? ここに置いておいたら、魔物の餌食になりかねないし」
「………そうですね。 では、僕が持っておきます」
そうしてセルフィスは賢者の本を自分のバッグに入れた。
賢者の本を発見した後も、フィリス達はガナン帝国城を進む。 途中でボストロールが一気に現れて攻撃を仕掛けてきたものの、彼らはそれすらも退ける。
「…………はぁっ……」
「ここまで、厳しい戦いの連続だな……初っぱなからあの鳥野郎にでくわしたのが、不運だったかもしれねぇな………」
「もう、面倒なことをしてくれるわね、あいつってば!」
「………嘆いていても仕方ありません……。 今回復します」
そう、城の入り口で攻撃を仕掛けてきたゲルニック将軍に対しての不満を今になって口に出している仲間達に、セルフィスは回復魔法をかける。
「………」
「フィリス? どうしたの?」
「………いや、なんでもない………」
その中でフィリスが一番険しい顔をして、前線にたって誰よりも魔物を倒し、そして誰よりも魔物から傷を与えられていた。 隣にいるサンディがフィリスを気にしているものの、フィリスはそんなサンディに対しても大丈夫としか言わない。
「もしかして、お前………お師匠さんを?」
「……………」
そこでイアンは、フィリスがこの戦いの中であの人物の安否を気にし、捜しているのだと気付き、そのまま口に出す。 すると図星だったようだ、フィリスは黙って彼らから目線をそらした。
「………あの人も、助けるのがお前の目標だったよな。 そりゃ、この城の中で探したくもなる……」
「…………」
「……見つけて、彼を助けてあげましょ。 きっと、どこかにいるはず……そして、話し合いましょうよ」
「僕達は、そのために動いているといっても誤りはないのですから」
「………ああ……」
仲間に励まされ、フィリスは少しだけ笑みを浮かべた。 彼女はとりあえず大丈夫だと思った彼らは、先へ進むよう促す。 その途中で、ガナン帝国兵が会議室のような部屋に集まっているところを発見し、物陰からその様子をうかがう。 その中で、彼らはなにか話をしているようだった。
「なに………女神の果実を?」
「ああ、たった今持って行かれたらしいぜ………あのイザヤールって天使が」
「なに!?」
その二つの単語に、4人は反応をした。 女神の果実は一度イザヤールに奪われたものの、実際に天使界に届けられており、神の国に持って行ったのだ。 その果実がここにもあるというとことは。
「もしかして………その女神の果実って………」
「………たぶん………そうかもしれねぇな………」
それについてある仮説を立てる4人は、さらに聞き耳を立てる。
「でも、今この城には侵入者がいるって話だぜ? 皇帝陛下もその話は聞いているはず……。 こんなタイミングでもってこいだなんて……そんなことして大丈夫なのか?」
「皇帝陛下のいらっしゃる玉座の間へ続く道には、ギュメイ将軍がいるんだろう? あの方がいれば、問題はないさ……」
そう話をしながら兵士は、チャリっとひとつの鍵を見せる。
「この鍵があれば、その玉座の間へ続く道への扉も開かないしな。 ほかにもこういう役目を与えられている」
「それじゃあ、その鍵が全部そろって先へ進まれる前に………」
「オレ達で奇襲でもしかけて、その侵入者を倒しちまえば……!」
「ああ、昇格も夢じゃねーな! じゃあ計画を練って……」
こうしてガナン帝国兵が、一斉にフィリス達に攻撃を仕掛ける作戦を練ろうとしたとき。
「その心配はねぇぜ」
という声とともに、フィリス達が兵士達の前に現れた。 いつの間に、と驚き戸惑っている間に、フィリス達は武器を手に取り、それぞれで攻撃を繰り出す。
「氷結らんげきっ!」
「はやぶさ斬りっ!」
「マヒャドッ!」
「さみだれ突きっ!」
その4人の攻撃を一斉に受けたガナン帝国兵…もとい、魔物達は一掃された。 魔物は消滅し、あとには鍵が残っていたので、それを拾い上げる。
「これが、次の階へのカギってところか」
「きっと、あの扉ね」
クルーヤが指を指した先には、確かに扉があった。 その扉についていた鍵穴に、さきほどの鍵をさして回してみると、カチャリという音が鳴る。 扉を押してみると、その扉はあっさりと開く。
「扉が開いたネ! これを繰り返していけば、玉座の間へたどりつけるはず!」
「急ごうぜ」
「うん!」
こうしていけば、必ず玉座へたどり着ける。 そう信じて彼らは、扉をくぐる。
次回は最強の将軍の登場です。
このガナン帝国編は地味にテンション上げながらかいてましたね。