DQ9の山場とも取れる展開かもしれないです。
「他愛もないな………」
暗雲のたちこめるガナン帝国城、玉座の間にて。 暗黒皇帝ガナサダイは目の前に倒れている者をみて、そう呟いた。 その者は先ほど、己が致命傷を負わせたもの。 彼により深手を負い虫の息となっている、大きな翼を持つ男性だった。
「さぁ、とどめといこうか」
その者がかすかにだが息をしていることに気付いた、ガナサダイ皇帝は、その者にとどめをさすべく、手に持っていた杖を大きく掲げる。
「ギガ・スラーッシュ!!」
「むっ!?」
だがそこに、雷の一閃がガナサダイ皇帝に襲いかかった。 雷はガナサダイ皇帝の動きを妨げ、直後に彼の前に一人の戦士が舞い降りる。
「これ以上、イザヤール師匠に……手出しはさせないっ!」
その戦士の正体は、空色の髪を束ねた少女だった。 その少女は背後に倒れている人物をそう呼びながら、剣を構えて目の前の敵をにらみつける。
「………これは…………」
知っている声が聞こえて、瞼を動かしてイザヤールは、目の前にいる少女の姿を見る。 そこにいるのは、自分の愛弟子だ。 イザヤールは、彼女がここにいる理由に対する理解が追いついておらず、自分は幻影でもみているのではと疑う。
「………まぼ、ろし………? お前…………フィリス、なの…………か………?」
「はい! 正真正銘、天使イザヤールの弟子で、ウォルロ村の守護天使のフィリスです!! 幻なんかじゃないですよっ! ここに生きてますよ!」
そう言って、フィリスは剣の切っ先をガナサダイ皇帝に向けた。 直後に、彼女とともにきていた人間達が姿を現していく。
「こいつのきったねぇケツを、ぶったたいてやるためにね!」
彼女の後ろでも、イアンが拳をバキバキと鳴らしており、クルーヤも杖を握りしめ、セルフィスも槍の石突きを地面にたたきつけていつでも戦える体制に入る。
「ほう…………そこの死に損ない以外にも……ネズミが入り込んでこようとは……」
「ああ、帝国の3人の将軍ならあたし達で倒したからな! もうお前を守るものなどいない!」
残る帝国のものは、ここにいる暗黒皇帝のみだと、フィリスは告げる。 ガナサダイ皇帝は、背後で倒れているイザヤールをみて、フィリスに告げる。
「そのような、味方を裏切ったフリをして余の命をねらうなどという、身の程知らずな戯けのために………その命を使うというか………」
「…………」
「まぁよかろう………かかってくるがよいネズミども。 魔帝国ガナンの皇帝が威光……その身に刻んでくれようぞ!」
そう声を上げ、ガナサダイ皇帝は杖の玉をとばしてフィリス達に攻撃を仕掛けてきた。 フィリスはその玉を剣で勢いよくはじき返して、彼に告げる。
「じゃ、ネズミらしく…きっつく噛みつかせてもらうまでだぜ!」
「おうよ、ここが年貢の納め時だ!」
「覚悟しなさい!」
フィリスに次いでイアンも力をため、クルーヤも己の魔力を覚醒させる。 その一方でフィリスは、背後にいたセルフィスにイザヤールのことを託す。
「セルフィス、師匠を頼むよ!」
「はいっ!」
セルフィスはそれにしっかりと頷いて答え、イザヤールを少し離れたところに連れて行き、回復の体制に入る。 それに気付いたガナサダイ皇帝はセルフィスに攻撃を仕掛けようとするが、それはクルーヤの攻撃魔法で防がれた。
「通さないわよ!」
「あたし達がいる限り、お前はあの人を攻撃できないぜ!」
「こしゃくな、であれば……一掃するまでだ!!」
そう叫びガナサダイ皇帝はしんくうはを放って、3人を攻撃する。 その風の中には刃が混じっており、3人とも傷は負うが持ちこたえ、イアンがばくれつけんを放って反撃にでた。
「しんくうはっ!」
「グッ!」
そこに、再びしんくうはが飛んできてフィリス達に襲いかかる。
「みんな、大丈夫か!?」
「ああっ!」
「問題ないわ!」
フィリスが仲間の無事を確認すると、2人はそれにこたえる。 それをみたフィリスは、ガナサダイ皇帝に向かってはやぶさ斬りを繰り出した。
「なんてヒドい傷だ………回復が全然進まない! あのまがまがしい力のせいなのか…………?」
セルフィスは必死に回復魔法をかけるものの、イザヤールの体の傷はまともに消すことができない。 こうしている間にもフィリス達は前線でガナサダイ皇帝を相手に戦い続けているというのに、自分は彼を助けられない。 そうしてセルフィスが焦りを募らせていると、自分達に向かってガナサダイ皇帝が放つメラゾーマが襲いかかってきていることに気付いた。
「クッ……!」
「させねーよっ!」
自分を盾にすることで、セルフィスはイザヤールを守ろうとしたが、そこにイアンが飛び込んで、その身を挺して彼らを守り抜いた。
「イアンさん!」
「……へへ、心頭滅却すればなんとやら、だぜ……」
そういってイアンは、体にやけどを作りながらも笑って見せた。 彼はあらかじめ心頭滅却という自己防衛の技を使うことで炎に打ち勝っていたのだ。 そんな彼にセルフィスは素早くベホイムをかけてイアンの傷を癒す。 するとこちらは、あっさりと回復した。
「………お前は………」
「お師匠さんよ……あんたの謝罪を込めた遺言の伝言なんて、ごめんだぜ」
そのときイアンは、イザヤールに告げた。
「あんたの口から謝れよ。 大事な弟子なら……あいつのことを本当に大切に思うなら……ちゃんと自分で謝れ!」
そうイアンはイザヤールに対し強く言い切った後、棍を大きく振るい自分に攻撃をしかけてきたガナサダイ皇帝に反撃をした。 ガナサダイ皇帝は再びメラゾーマを放つが、フィリスはそれを盾で防ぎきり、そのままガナサダイ皇帝を切り裂くために剣を片手に突っ込んでいく。
「フンッ!」
「クッ……!」
その剣はガナサダイ皇帝の手により妨げられるものの、フィリスは一歩もひくことなく、力で押し切ろうとする。
「こうまでして、皇帝たる余に逆らい、もがくとは………! 貴様は何様のつもりだ!」
「お前の身分なんて、しったこっちゃないね! あたしは、守りたいものも、やるべきこともあるんだ……だから!」
ガナサダイ皇帝の言葉にそう返し、フィリスは足に力を入れて剣を握る手に力を込めて、勢いをつけていく。
「お前なんかに、負けて…たまるかぁーっ!!」
そう叫び、フィリスはガナサダイ皇帝を押し切り、そのまま腹部を切り裂く。
「グァッ!!」
「もういっちょ!」
「キサマァ!」
フィリスが追撃を与えようとするが、そんな彼女をガナサダイ皇帝は弾き飛ばす。 フィリスは床に強くたたきつけられるが、その顔には笑みが浮かんでいる。
「チャンスだぜ、クルーヤ!」
「むっ!?」
「オッケー!」
フィリスはそこでクルーヤの名前を呼ぶと、クルーヤはその手に今にも破裂しそうなほどの魔力をため込んでいたようであり、それを一気にガナサダイ皇帝に向かって解き放った。
「いくわよ………イオナズンッ!」
「グォォォオアッ!」
その爆裂の攻撃魔法は今までよりずっと高い攻撃力を持っていた。 その攻撃魔法は先ほどフィリスがつけた傷に命中して、その傷口を広げより一層大きなダメージを与えた。
「イアン!」
「おう! ……ハァッ!」
そこでクルーヤはイアンに声をかけ、イアンはそれに答えてガナサダイ皇帝の懐に飛び込み、せいけん突きを放つ。
「グァァァア!!」
そのせいけん突きによって、ガナサダイ皇帝は玉座にたたきつけられた。
「ふふ、いい感じに魔力が暴走してくれてよかったわ!」
「ナイスだったぜ!」
「お前もな!」
連携プレーが決まり、全員でそれを喜び合う。
「………」
「……みんなが、決めてくれたようです………」
その様子をイザヤールは見ており、彼を治療していたセルフィスもその顔に笑みを浮かべる。
「………ぐっほぉ………」
「あんだよ、まだやるのか!?」
だがそれではガナサダイ皇帝は倒れないらしい、ガナサダイ皇帝は血が流れている腹部を押さえながら起き上がり、フィリス達をにらみつける。
「余を………魔帝国ガナンを……! ここまで愚弄するとは…………どれほどのことか! 我が全力の姿を持って、その身に思い知らせてくれるぞぉぉ!!」
そう叫ぶと、ガナサダイの体から黒い煙が立ち上がり、その煙がガナサダイを包み込んでいく。 その煙は徐々に大きくなっていき、変化をもたらしていく。
「!?」
その煙の中から、骨のような翼が現れ、鋭い槍と堅い盾が現れる。 そして骨でできた3本の足のような尾のようなものがあらわれ、やがて骨と毛と装飾のみの顔や胴体が現れた。
「姿が……変わった………!」
これが、このガナサダイの真の姿なのだろうか。 ガナサダイは、フィリス達に向かってほえる。
「ガァァァゴォォォオォ!!」
「クッ……このまま戦うぞ!」
「当然!」
フィリスは仲間達にそう呼びかけ、仲間に光の属性の力を与える。
「うわ!」
「きゃあ!」
「みん……な……! ………このぉぉっ!!」
だがその直後、ガナサダイはフィリス達に対してはげしい炎をはいて攻撃をしてきた。 その炎は強い熱量を持っており、イアンもクルーヤもフィリスも大ダメージを受ける。 それに耐えたフィリスはガナサダイに斬りかかるが、相手はそれを盾で防ぎ直後に槍でフィリスを突き飛ばす。
「うわぁぁっ!」
それによりフィリスの体は壁にたたきつけられ、ガナサダイはメラゾーマで追撃をしようとする。 それはクルーヤのマヒャドによって相殺され、イアンがガナサダイにばくれつけんを放つ。 しかし、イアンはガナサダイの次の一撃を受けてしまった。
「みなさんっ………」
「いけ」
「えっ?」
背後で、傷ついている仲間達を苦痛に満ちた顔で見ていたセルフィスにたいし、イザヤールは彼らの元に向かうことを勧めた。 それをききセルフィスは戸惑う。 彼の体の傷はまだ癒えていないのだから。 そんなセルフィスの迷いを断ち切らせようと、イザヤールは自分の願いを告げる。
「お前がいなくては、フィリス達を守れぬ。 私は後回しでいい………フィリスを……助けてくれ………」
一瞬躊躇ったセルフィスだったが、イザヤールのその言葉を聞き、意を決して頷く。
「………すぐに、貴方の傷を治しに戻ります!」
必ず彼の治療に復帰すると約束し、セルフィスは仲間達に向かって回復の魔法をかける。
「ベホマラーッ!」
その回復魔法はフィリス達を包み込み、ガナサダイにより受けた傷が消え去っていく。 それにたいしフィリスは目を丸くし、自分達に合流してきたセルフィスを見る。
「セルフィス……どうして………!」
「………貴女の師匠の望みは、貴女の生還です……フィリスさん! 彼のために、僕はこれより…貴女達を助けます!」
「………!」
セルフィスの選択を受け止めたフィリスは迷わず頷き、彼に後方から支援をするように指揮し、自分は前線での戦いに入る。
「メラミ、メラミッ!」
クルーヤはメラミを連発してガナサダイを攻撃したが、その反撃としてガナサダイはその上位の魔法であるメラゾーマを放ちクルーヤに反撃をする。
「クッ……魔結界を使ってなかったらまずかったかも……」
「クルーヤ、無理をすんな!」
そう言ってフィリスは、はやぶさ斬りを繰り出した。 元々クルーヤにバイキルトをかけてもらっていたので、威力は高いのだ。
「フン、小賢しいことをしても無駄だッ!!」
「なっ……!」
そこでガナサダイはいてつく波動を放ち、フィリス達にかかっていた特別な補助の効果を打ち消す。 直後にフィリスを槍で吹っ飛ばし、クルーヤにメラゾーマを放ち、全員に炎をはいて攻撃を繰り出す。
「く……ぅ!」
「まずは、邪魔な貴様から殺してくれよう!」
「フィリスさん!」
ガナサダイは、最初にもっとも邪魔な存在としてフィリスを殺しにかかる。 それにたいし身構えたフィリスだったが、そこにセルフィスが入り込んで彼女をかばい、盾で相手の槍を防いだ。
「セルフィス!」
「………例え、力を消されても………僕達はこの戦いに背を向けることはしません……! 悪しき者を断つまでは!」
そう言ってセルフィスはさみだれ突きを放って、ガナサダイを攻撃する。 その攻撃を受けながらもガナサダイは耐え抜き、セルフィスの槍を己の槍でへし折った。
「うわぁぁ!」
「セルフィス!」
「問題ありません………攻撃手段が断たれても、皆を助けることはできます!」
そう言ってセルフィスは仲間を一人ずつ、確実に回復をしていく。 その回復の隙をつかんと、ガナサダイが攻撃を加えようとするが、それを鋭い氷が妨げる。
「絶対に、攻撃の手を止めるもんですか!」
そう言ってクルーヤは立て続けにイオナズンを放って、ガナサダイを攻撃する。 それを耐え抜いたガナサダイは爆裂の中でイアンを攻撃するが、そのときのイアンはある構えをとっていたことを見落としていた。
「グガッ……」
「天地の、かまえだ!」
そのかまえから繰り出される反撃を、ガナサダイはもろに受けた。 それによりひるんだガナサダイにイアンはせいけん突きを放ち攻撃をすると、ガナサダイは反撃で痛恨の一撃を放つ。
「フィリス!」
「ああ!」
だがそれでイアンは倒れず、フィリスの名前を呼ぶ。
「お前の身勝手で傷ついた人々の痛み……思い知れっ!」
そう言って、フィリスはその刀身に雷の力を宿して構えをとり、一気に剣を振るい解き放つ。
「ギガ…スラァァァッシュッ!」
それは戦いが始まるときに放った技だった。 再びその技はガナサダイにヒットし、その体を大きく切り裂き、電撃がその体に伝わる。
「グヌォォォオオッ!!」
それによりガナサダイは、崩れ落ちていった。
「……勝てた………」
ガナサダイは倒れ、ピクリとも動かない。 それをみて、自分達は勝利をしたのだとフィリスは思った。
「なんか、満身創痍だな……まじで………」
「ええ………私もほとんど、魔力ないかも………」
「僕も、少し……疲れてしまいました………」
勝利を実感して、彼らは全身の力が一気に抜けた気がした。 戦いの中で張りつめていたものが抜けたことで疲労がでたのだろう。 思えば、このガナン帝国城にきてからというもの、戦ってばかりいたせいだろう。
「強くなったな、フィリス…クッ」
「師匠!」
そこでフィリスは、イザヤールのことを思い出して彼の元に駆け寄る。 彼は体をよたつかせながら、フィリスに歩み寄りながら、彼女に胸の内や自分がなにをしていたのかを語る。
「…………捕らえられた天使達を救うため…………ガナサダイに従うフリをしてきたが………力及ばず、このザマだ……。 ……だが、私は……自分の行いが間違っていたとは思わない……」
「……………」
「思わない………が………」
そう言い、イザヤールは自分を見つめるフィリスの顔を見る。 そのとき、彼の中に再び罪悪感が芽生えてきた。 汚名を背負い彼女を失望させることも覚悟していたが、この少女がどれほどに純粋で慈愛に満ちた心を持っているかを知っているからこそ、その罪悪感は大きくなる。
「ただ、お前を欺き……傷つけてしまったことが……心残りだった。 体だけでなく………心まで………」
「………………真実を知り、憎むべき討つべき敵がいたと知って、それを果たした今………あなたを悪しきものと疑う理由など……ありません」
イザヤールの言葉を聞き、フィリスはそう返した。 そして、あの裏切りの瞬間のことを思いだし、胸に手を当てながら心の奥で思っていたことを口にする。
「あなたほどのものなら、あたしぐらいのもの………天使の掟などなくても……あの場で殺せていたはず。 でも、あたしは生きていた………それがなにを表しているか………今のあたしにはわかります。 ……この国をでたら、あたしも…あなたの罪と汚名を背負います! だから、もう苦しまないでください……!」
真相を知り、彼の行動を知ったフィリスが心の奥で決めていたこと。 それは、イザヤールが裏切り者であるという汚名を自分も背負い、そしてその罪滅ぼしをともに行うという決断。 それがどれほどの苦痛との戦いであるとしても、彼女は彼につき従うと決めていたのだ。
「…………お前は、良き人間と出会い………そして、私の想像など遥かに越えて……強くなっていたのだな…………。 たった独りで挑んでいった私と、信じる仲間を持つお前では、差ができていた…………」
そんな弟子の思いを知ったイザヤールは、自分より彼女の方がずっと優れおり、また器も大きいのだと悟る。 天使界からフィリスがいなくなったあの日から会ってなかったが、その空白の間に自分を越えるほどに強くなったのだと知る。 そして、もっともフィリスに言うべきことを思い出して、フィリスの顔をまっすぐに見つめ、その言葉をつげた。
「すまなかった、フィリス……」
「イザヤールお師匠様ッ!」
そこでフィリスはイザヤールに抱きつき、イザヤールは彼女の頭をそっとなでた。 ようやく和解をすることができて、安心したのだろう。 イザヤールは自分に抱きついている弟子をみて、彼女になら自分がこの帝国に従っていた真の目的を託せると悟っていた。 そんな二人の様子を、仲間達も見守っている。
「クォォオォオッ!!」
だがそのとき、背後から声がした。 イアン達がその声に気付いて振り返ったときには遅く、骨の尾が3人に一斉に襲いかかってきた。
「うわ!」
「きゃあ!」
「うぁ!」
「ひぇ!」
不意をつかれた3人は一斉に吹っ飛ばされてしまい、陰から様子をうかがっていたサンディもその余波により吹っ飛ばされる。
「みんなっ!?」
「!」
フィリスとイザヤールもその異変に気付いてそちらを見ると、そこには倒したはずのガナサダイが崩れかけの体を動かしていた。
「………この…ガナサダイが!魔帝国ガナンが…敗れるなど……! あってはならぬぅぅ!!」
「な、こいつ……」
「フィリス!!」
自分に攻撃を仕掛けようとつっこんできたフィリスは迎え撃とうとする。 だが、それより早くイザヤールがフィリスを突き飛ばし、剣をガナサダイに突き立てた。
「……………ぁ………!」
ガナサダイの心臓部にイザヤールの剣が刺さったが、それと同時にイザヤールにもガナサダイの槍が突き刺さっていた。 その場に白い羽根が舞い散り、フィリスは目の前の光景に呆然としていた。
「…………お………のれ…………おのれぇぇぇ………」
それにより、ガナサダイの体は砕け散り消滅した。 フィリスは急いで立ち上がり、イザヤールに駆け寄る。
「い、イザヤール様っ!!」
「無事か……フィリス…?」
「……………」
「………ああ、無事なんだな………よかった………」
フィリスの顔を見て、彼女は無事なんだと知ったイザヤールは安堵の笑みを浮かべる。 だがそれと同時に、イザヤールの体からは光がこぼれ落ちていく。 彼のその姿を見てフィリスは何かを悟り、言葉を失う。
「………!」
「どうやら………私は………ここまでの……ようだ…………」
「………そ……んな、ダメです! これから天使界で、あなたの…………」
フィリスの言葉を、イザヤールは首を横に振って遮った。 まるで、彼女のその願いは叶わないのだと告げているかのように。
「…………後のことは……頼む…………。 天使達を、そしてあの方を………我が師匠を…救い出してくれ………」
「えっ!?」
「そして………」
イザヤールはこの帝国に従っていた真の目的を彼女に託し、自分の中で最も強い願いをフィリスに告げる。
「……お前だけでも………生きろ……フィリス。 ………私の、誇れる弟子よ…………」
それを告げて、イザヤールの姿は徐々に消えていく。 そんなイザヤールにフィリスは手を伸ばすが、あとすこしでというところでイザヤールは強い光を放ち、この空間から消えた。
「イザヤール……し、しょ……」
もうそこに、彼の姿はなく、フィリスはのばしていた手を見つめる。 その手の中にあったのは、大きく美しい白さを持つ、天使の羽根だった。
「………そんな………」
ガナサダイの奇襲から立ち上がり、その一部始終を見ていた仲間達も、言葉を失ってしまった。
「あ………あぁ………」
フィリスはその手の中にある羽根を強く握りしめ、ひざを折って頭を垂れる。 今フィリスの目に浮かぶのは、消える瞬間に彼が浮かべた穏やかな笑顔。 思い出した瞬間に全身が震え、胸が強く締め付けられ、のどがあつくなっていく。
「うあぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!!」
フィリスの慟哭が、その帝国に強く響きわたった。
師匠の最期の言葉、原作より長くなったなぁ。
でも「生きろ」と言わせたかったんです。
次回もおそろしい展開に…?