にしても、この真実もなかなかの胸糞悪さがめだつな…。
激しい戦いの末に暗黒皇帝ガナサダイは倒された。 フィリス達の手によって。
「もう、大丈夫か…?」
だが、その戦いは一つの大きな犠牲を生んだ。 それは、フィリスにとって最も大事な存在である、天使イザヤール。 彼は彼女を守るためにその身を挺し、命を落としたのだ。
「行かなきゃ……体を、ひきずってでも………! あたしは、立ち止まるわけには………いかないんだ……絶対に!」
その光景を目の当たりにしたフィリスは絶望に落とされるが、すぐにイザヤールの言葉を思い出し、彼の願いを叶えるために立ち上がった。 イアン達が彼女を心配して声をかけると、フィリスは毅然とした態度で歩き出す。
「フィリス………」
「サンディ」
「………急いで、ほかの天使……たすけよっか……」
「うん」
そんな彼女に、サンディもどうしたらいいのかと困惑しているようだ。 だから、これからの目的だけをフィリスに伝えた。
「……クルーヤ……」
「このとき、なんて言ってあげれば……どうしてあげればいいの……? 私、どうしたらいいか……わかんないよっ……!」
「………僕も、同じ気持ちです………この時のために僧というのは存在しているはずなのに………どのような言葉を与えればいいのか………」
「セルフィス」
先ほどの現場、そして今のフィリスの姿を見て、クルーヤはその大きな双眼から涙をボロボロとこぼし、セルフィスも眉を下げてうつむく。 そんな2人をみたイアンは、2人を同時に自分の方に抱き寄せて彼らに告げる。
「これは、あいつの問題だ…………オレ達部外者が首を突っ込んでいい問題なんかじゃねぇ。 だから今は、どれだけ辛くても耐えようぜ、クルーヤ、セルフィス。 あいつがオレ達を頼るときまで……」
イアンの言葉を聞いて、自分達がフィリスにしてあげられることはそれしかないのだと悟り、2人は頷いた。
「せめて、祈りそしてフィリスさんを支えましょう。 イザヤール様の願いを叶えましょう」
「うん」
途中で出会った神父の幽霊が言うには、既にこの帝国は皇帝が亡き者となったことで邪悪な呪縛からは解き放たれたようだ。 だが城の地下にある牢獄にはまだ深い闇の力が残っているらしい。 そこにはまだ、天使が捕まっているのだろうと知ったフィリス達は急いで地下へ向かい、牢獄へはいる。
「………やっぱり………」
「………ああ………何度みても、結構きついぜ………」
「急いで助けましょう。 魔物もいるようですし……」
そう話し合って、フィリス達は牢屋を一つずつあけて、繭の中から次々に天使の姿を現していく。 解放していった天使達は疲弊こそしているが、命に別状はないようだ。
「とらわれていた天使は、これだけか?」
「うん、天使の気配は感じないなぁ……」
「じゃあ、急いでアギロさんのところへ連れて行きましょう」
助け出した天使を、連れて行こうと提案に同意したフィリスだったが、そこでふとある気配に気がつく。
「………!」
「どうした?」
「………いる……ここよりもっと深いところ………とっても強い力を感じる……!」
そうフィリスが口にした瞬間、兵士の幽霊が現れる。
「うわっ!」
「お前が………皇帝を倒したものか……」
「だ、だからなんだよ!?」
この国に仕えていたのであれば、この兵士の幽霊は主君の仇討ちにでるのではと思い、4人は警戒した。 だが兵士の幽霊には、攻撃の気配が見受けられない。
「攻撃はせぬ………私はこの帝国の兵士だったが、皇帝の命令に背いたことで投獄されたものだからな………。 お前を恨む理由はない」
「そうです……」
続けて姿を現したのは、学者の幽霊だった。
「あれは300年も前のこと………皇帝は捕らえた天使の力を使って、様々な実験を行っていました。 あるときは兵士を強化し、またあるときは闇竜バルボロスにそそぎ込んだ……」
「なに?」
「この閉ざされし地底の牢獄は、そんな恐ろしい行いが繰り返される………地獄だったのです」
この牢獄が存在する意味を聞き、4人はこれまでの帝国の行動を思い出しながら、奥にいるという、大昔に捕らえられた強い力の天使の正体を推理した。
「じゃ、じゃあ………今復活して、天使を捕まえたのも………帝国を強化するため………?」
「その帝国を強化させるために捕まえて……そしてずっと力を奪っていた天使というのが………おそらく…………」
フィリスは、その天使の正体を口に出す。
「きっとその人が、師匠の師匠………エルギオス様だよ」
天使の正体がエルギオスだと推理したフィリスは、仲間達に呼びかける。
「みんなは、天使のみんなを…天の箱船へ連れて行ってくれ」
「フィリス!?」
「………ここからは、あたしが…エルギオス様を助けにいく」
フィリスが単独で挑もうとしているのを、クルーヤが止めようとする。
「そんなっ! あなたを一人でいかせるわけにはいかないわよ!」
「………大丈夫、ムチャはしないさ。 それに、助けるだけなんだし………」
「…………わかりました」
フィリスの頼みを聞いたのは、セルフィスだった。 その手にある槍は、ガナサダイと戦ったときのものとは別のものだ。
「僕は武器をおられ、護身用で別の槍を持っているにすぎません。 そんな僕がいっても、魔物から貴女を守れないでしょう………」
「……しゃーね、お前に従ってやるよ。 それに、天使を一刻も早く安全な場所につれていかなきゃな」
「………」
「サンディは、みんなと一緒に」
「オッケー!」
イアンも同意し、クルーヤは黙り込み、サンディもイアン達とともに天の箱船へ戻ることになった。 全員を見送った後、フィリスは単身で地下へと走っていく。
「…………この奥だな………」
やがて彼女がたどり着いたのは、もっとも深くもっとも広い部屋。 最後の鍵で扉を開けると、その部屋の床には大きな文様が描かれていた。 そしてそこにいたのは、鎖で繋がれた一人の、大きな翼を持つ存在。 彼こそが、エルギオスなのだとフィリスは悟り、彼に声をかける。
「あなたは…………まさか…………エルギオス様?」
「…………」
その声に、エルギオスらしき男は答えない。 きっとほかの天使と同じように疲弊しているのだと悟ったフィリスは、鎖を壊していく。 これで彼も助かるのだと思ったのだ。
「よし……これで………」
「……………罪……………」
「へっ?」
唐突にエルギオスが口を開いたので、フィリスは思わず間抜けな声を出してしまった。
「………ここを訪れる者がいようとは………ガナサダイが……倒れたのか?」
「は、はい! あたしが倒しました……だから、もう大丈夫です!」
フィリスは正直にそう答え、彼を助けようとする。 だが、次に聞こえてきたのは不気味な笑い声。
「クククッ……クッ…ク………そうか。 また私一人を残して、ガナサダイは逝ったか………」
「え?」
「野望を果たせぬまま………さまよう奴の魂に力を与え、手ゴマとしてやったというのに…………つくづく勝手な男だ…………」
それをきき、フィリスは目を丸くした。 そんな彼女の目の前でエルギオスは言葉を続ける。
「いや、そもそも人間とは皆、自分勝手なもの………存在すること自体が罪………それが…人間だ………。 人間を守ろうとするセレシア………滅ぼそうとしながら放置した………グランゼニスも………同罪…………」
ブツブツとそう言いながら、その者は鎖を自らといていく。
「犯した罪は裁かねば……。 誰もやらぬというなら、この私が手を下そう…」
そういってエルギオスは体をゴキゴキとならしながら立ち上がり、その血の色の鋭くさせて、名乗りを上げた。 金色の髪も身にまとう布もぼろぼろで、天使の羽はほぼなく別の翼に変わっている。 肌も、毒々しい深緑色だ。
「我が名は…エルギオス。 かつては……大いなる天使と呼ばれし者……」
「そ、そんな!」
エルギオスの変貌ぶりに、フィリスは愕然とした。 彼を救おうとしていたイザヤールの思いが、水の泡になったと思ったからだ。 そんなフィリスに対し、エルギオスは問いかける。
「とおう、翼なき天使よ。 お前は人間に守る価値があると思っているのか……?」
その問いに対しフィリスは一度は戸惑うものの、すぐに首を横に振り、顔を上げてエルギオスを見る。
「……その答えは、あたしの中に決まっている…………! 絶対に揺るがない!」
そのときのフィリスの瞳をみて、エルギオスはなにかを悟ったらしい。 自らに力をため、紫電をまとう。
「ならばお前も我が敵! 人も神もすべて皆、滅びるがいい!!」
「!」
自分につっこんでこようとするエルギオスをむかえうとうとするフィリスだったが、そこで動けなくなる。 こんなときに、と歯を食いしばった直後、彼女の意識は闇の中に落ちた。
「…………300年もとらわれていた私の憎しみがどれほどのものか………お前にはわかるまい………」
自分の攻撃の前に倒れたフィリスを見下しつつ、エルギオスは告げる。 そして自らに再び紫電と闇のオーラをまとい、翼をはばたかせる。
「………しかし、その憎悪の念こそが、私に力を与えたのだ。 今や私の存在は………神をもこえた……私のはなった閃光により……神は死んだのだ! あの志向の玉座に、今度は私がつこう!!」
そう叫び、エルギオスは高く飛び上がり、帝国城の真上にでた。 そしてバルボロスを呼び寄せる。
「こい、バルボロス! これより私は神の国へ向かい……神となる!!」
エルギオスは、バルボロスとともに神の国へと向かったのだった。
「………うぐ…………」
「気が付いたのね、よかった」
フィリスは徐々に自分の意識が戻るのを感じ、声を漏らしながら目を開ける。 そして、自分の側にあの幽霊の女性がいることに気付いた。 フィリスの意識が戻ったことで、女性は安堵の笑みを浮かべていた。
「ラ、テーナ……さん………」
「………ここにくる途中で…せかいじゅの葉があったから、急いで使ったのだけど………間に合ったのね」
「………そうか、あたし…………」
あのとき、天使の掟に縛られ動けなくなったところにエルギオスの一撃がささったのだと、フィリスは思い出す。 そんな彼女に対し、ラテーナは涙を流して謝罪をする。
「ごめんなさい…」
「え、どうしたの?!」
「ごめんなさい……今度こそ、今度こそ会えると思ったのに……また、手が届かなかった。 そのせいで、あなたも………」
「あなたは、エルギオス様を知ってたんだね?」
その言葉に対しラテーナは頷き、昔のことを思い出して語り聞かせる。
それは、はるか昔300年も前の記憶。 ナザム村で傷ついた天使エルギオスは、自分の名前が付けられた天使像を見つめていた。
「もうっ! エルギオスったら……ケガがまだ治りきっていないのに勝手に抜け出したりして!」
そんなエルギオスを見つけ、ラテーナは叱るようにして注意する。 そして、以前にこの村が帝国におそわれ、その危機を彼が救ったときの話をした。
「……この前の戦いで貴方の傷は悪化しているのよ。 もっと自分を大事にして!」
「………ナザムはいい村だな。 ここで暮らすようになって……改めてそう思うようになった」
そんなラテーナの言葉を聞き、エルギオスは彼女と向かい合い、自分の誓いを告げる。
「ラテーナ。 私はこれからも…この村を守り続けることを誓おう……」
「えっ?」
「これはその約束の証だ。 受け取ってくれ」
そういってエルギオスはラテーナに、美しい首飾りを渡した。 その首飾りを手にしたラテーナは、その首飾りが美しく輝いているのを見て、きれい…と呟く。
「エルギオス、これは?」
「この星空の首飾りは、天使が近づくとその力に反応して輝き出すという特別なものだ。 ………願わくばこの首飾りが常に、輝きとともにあらんことを…………」
「それって貴方が……これからもずっとそばにいてくれるってこと………?」
ラテーナの問いかけに対し、エルギオスは穏やかに笑って頷いた。 それを聞いてラテーナは頬を桃色に染め上げ、頬がほころぶ。 そんなとき、ラテーナの父である村長が2人の元に駆け込んできた。
「ここにおられましたか…天使様!」
「お…お父さん、どうしたの?」
「実はさきほど……」
そこで長老は、エルギオスをねらってガナンの帝国の兵士達が大軍で迫ってきていることを告げる。 その事実を知ったエルギオスは、眉をつり上げた。
「帝国が私をねらっているだと……? 懲りない奴らだ……再び蹴散らしてくれる!」
「お、お待ちくだされ…! 帝国の奴らこの間とは比べものにならぬ大軍ですぞ。 いくら守護天使様でも、傷を負った身体で奴らと戦っては無事では済みますまい………」
「ではどうするというのだ? 戦わねば……村は守れぬぞ」
そこで長老は、エルギオスに裏山の東の洞穴に隠れていてほしいと告げる。 帝国兵には天使は既に天使の国に帰ったのだと言い聞かせると言って。 エルギオスはそれに反発しようとした、この村を守れないのではと思ったから。 だが、ラテーナからも頼まれてしまい、苦しくもうなずいた。 そうしてエルギオスはラテーナとともに、隠れていてほしいという場所へ向かった。 その際に、目立つからと言って首飾りはある場所に隠した。
「うん………ここなら、見つかりっこないわ………」
「………………」
「エルギオス?」
ラテーナはその洞穴にはいり安堵するが、一方でエルギオスは辛そうな顔をしていた。 そして、彼女に自分が考えていたことをそのまま伝える。
「ラテーナ。 やはり私は村に戻ろうと思う」
「……え……」
「守るべき村から逃げ出し……敵に背を向けるなど、守護天使として許されることではない………」
「そう………そうよね………貴方なら、そういうと思ったわ」
「すまない………」
ラテーナの気持ちも分かってはいるが、自分の気持ちや天使としての性分が許してはくれない。 ラテーナは彼の言葉を聞き、ある薬が入ったビンをエルギオスに差し出す。
「………でも、せめて……これを飲んでいって。 村に伝わる秘伝の飲み薬よ。 傷によくきくから、お父さんが使ってくれ……って言っていたの」
「…………人間の薬が私の身体に、どれほど効くかはわからぬが………ありがたく使わせてもらおう」
そう言ってエルギオスはその薬を飲んだ。 だが飲み干した直後に強力な眠気におそわれ、エルギオスは倒れてしまった。
「うぅ!? ………どう……して………ラテ……ーナ……」
「ごめんなさい、ごめんなさい………エルギオス………貴方を守るには…こうするしか…………」
ラテーナは、エルギオスが戦えばさらに深く傷つくと思ったのだ。 それは避けたかったから、ここで彼を眠らせる選択をとった。 だがそれには、エルギオスをだますしかない。 それがラテーナには苦痛だった。
「………貴方を裏切ることになっても………私は、貴方が傷つくのは耐えられない……」
「おお、ここに翼の男がいるぞ!!」
だが直後、誰かの声が聞こえた。 そこに入ってきたのは、ガナン帝国の兵士たちだった。 彼らがここに来るはずがないと思っていたラテーナは、愕然とする。
「て………帝国なんかに、エルギオスは渡さないわ……!」
「なんだぁ、この女は?」
だがそれでも、ラテーナはエルギオスからはなれるわけにはいかなかった。 帝国兵はそんな彼女を払いのけようとしたが、そこに老人の声が聞こえてきた。
「む、娘にひどいことをしないでくだされ…!」
「お父さん!?」
「天使を差し出せば、村人には手を出さないと言う約束だったはずですぞ!」
そこに父である村長が割り込んできて、帝国兵達を止め、そう言った。 その言葉でラテーナは、自分とエルギオスはまんまと村長の罠にかかってしまったのだと悟る。
「ひ、ひどいわ……だましたのね……!」
「これも、村を守る為じゃ………わかってくれラテーナ」
「村のために…守護天使様を帝国に売るっていうの!? そんなこと……許されないわ!」
そう父に怒鳴り、ラテーナは急いでエルギオスを起こそうとする。
「エルギオス、目を覚ましてエルギオス!」
「………うぅ、ラテーナ……?」
ラテーナの声が聞こえ、エルギオスは少し目を覚ました。 必死に呼び起こそうとするラテーナに、帝国兵は手を挙げようとする。
「貴様!」
「お……お、お待ちくだされ………この娘は、翼の男をまんまと誘き出し…眠らせた協力者なのです! ど、どうかその手柄に免じて……無礼はお許しくだされ………!」
「ら、ラテーナ…………まさか……キミが………?」
「そうじゃない、そうじゃないわ……エルギオス……!」
エルギオスには、長老の言い分しか聞こえていなかったらしい。 長老の声だけ聞いて、ラテーナの弁解を聞く前に再び意識を手放してしまった。 必死に誤解を解こうとするラテーナだったが、その声は届かない。
「まぁいい、翼の男さえ手にはいるのなら、後はどうでもいいことだ。 お前達! その男を鎖につないで運び出しておけ!」
「ハッ!」
兵士はラテーナをはねのけて、エルギオスを捕まえて鎖で縛り付け、連れ去ろうとする。
「いや、いや! エルギオス…エルギオスッ!」
ラテーナは涙ながらにエルギオスに手を伸ばして彼の名前を口にするが、村長に妨げられてそこへ向かうことができなかった。 そうしてエルギオスは連れ去られ、ラテーナは呆然とする。 そして、絶望にくれる彼女や村長に対し、帝国兵は冷酷な言葉をつげる。
「さて、目的のものは手に入った……あとは、残った二人を始末するぞ!」
「な、や……約束が違う………!」
「言っただろう? 翼の男さえ手に入れば……後のことはどうでもいいと………」
そういって帝国兵はにやりと笑った。 村長は娘だけでも苦そうとして飛びかかっていったものの、兵士の剣の前に倒れ、そのまま命を落とした。
「待ってて………エルギオス………」
そこでラテーナは、もう自分は助からないと悟り、死を覚悟した。 その中で、エルギオスにたいする誓いをたてて、帝国に殺されることを受け入れた。
「ここで死んでも、私はきっと貴方を見つけだす………。 貴方がどこにいても…………例え……何年……何十年……かかっても………必ず……!」
直後、帝国の兵士の剣が、ラテーナを切り捨てた。
「そんなことが、あったなんて………」
すべてを知ったフィリスは、呆然とした。 自分も迷い込んだあのナザム村が抱えてきた戒めと、その真相を知り、そしてエルギオスの変貌の真実を知ってしまったのだ。
「でも、それって……今もエルギオス様は、ラテーナさんを裏切り者と思っているってこと………?」
フィリスは言いにくそうにしながらも、確認のためにラテーナに問いかける。 ラテーナはそれにたいし迷いなく頷いて、答える。
「……だからこそ………私はもう一度彼にあって、あのときのことを……ちゃんと謝らないといけないの。 そのために、今日までこうして……地上をさまよってきたのだもの………」
「ラテーナさん……」
「あの人が去っていったのなら………私は彼を追いかけるだけ………!」
そう語るラテーナの決意の瞳は堅い。 彼女にそういい残して、ラテーナは立ち去っていった。
「おお、フィリスここにいたか!」
「フィリス!!」
「アギロさん、サンディ…みんな!」
ラテーナと入れ替わるようにして、そこにアギロやサンディ、そしてイアン達が合流してきた。 別行動をとるという判断を下されたときから彼女の身を案じていたクルーヤが、フィリスに抱きついてくる。
「わぁ、フィリス無事だったのね!?」
「ああ………ぶっちゃけ死にかけたけど………ラテーナさんが助けてくれたんだ」
「死にかけてたのに助かった……?」
どういう意味なのか、とイアンが首を傾げていると、セルフィスは変色した一枚の葉に気付く。 そして、その葉の正体を見破る。
「せかいじゅの葉……ですね。 …死者を寸前で御霊を呼び止めその体に戻してくれるという奇跡の葉………間に合ってよかったです」
「てか、なにがあったわけ? さっきあの女のユーレーとすれ違ったんだけど………」
「確かにな。 帝国城の真上にバルボロスが飛んでいったから………なにがあったんだと、心配しちまったぜ」
「ああ………実は………」
フィリスはイアン達と別れてからなにがあったのかを、一部始終すべて隠さず打ち明けた。
「そんなことがあったのかよ……クソッ、胸くそわりぃぜ!」
「………あの村は、村にあった悲劇をエルギオス様にすべてを押しつけて……長年それで村の人々をしばっていたということなのでしょうか………」
イアンはかつてエルギオスが受けた仕打ちにたいし、腹を立てているようだ。 セルフィスも、ナザム村がどのようなところだったのかを知り、複雑な顔になっている。 その一方でクルーヤは、立ち去っていったというラテーナの安否を気にしていた。
「彼女だけだと心配だわ。 でも、どこにいっちゃったのかしら………その天使も………」
「きっと、神の国にいったんじゃないかな………自分が神になるって言っていた気がするし………。 でも、また鉢合わせになっても……」
そこでフィリスはあの瞬間、エルギオスに歯が立たなかった根本的な原因について口にする。
「また、この掟がはたらいてしまう………。 上位の天使に逆らえないと言う習わし………まさにこの掟は呪いだよ! 相手はもはや……天使じゃないというのに…………!」
「……………」
そう語るフィリスから感じられるのは、悔しさだった。 そんな彼女を仲間達は見ているしかできず、かわりにサンディが、これからすべきことを言ってくれた。
「なにはともあれ、一度天使界に戻ろうヨ。 天使達を連れて行ってあげないとダメでしょ……?」
「ああ……報告しなきゃ。 ……………エルギオス様のことも………イザヤール様のことも…………」
「そうだな。 とりあえず、いこうぜ」
そう言って彼らは、ガナン帝国城をあとにしたのだった。 その跡地には、なにか光る不思議なものが落ちていたが、誰もそれには気付かなかった。 今は、その余裕が誰にもないから。
根本的に悪いのはガナン帝国なのは間違いないけど、ナザム村の不幸って自分達で招いた種ですよね結局のところ。
主人公もとんだとばっちりですよ、これ。
まぁ後で気にしてもしょうがないので、話は進めていきます。
次回はあの選択が出てきます。
果たしてフィリスはどうするのか、ご注目を。