フィリスがどういう意思をもって、行動を起こすのか。
そしてみんながどう思うのか、是非刮目ください。
ガナン帝国城で、長年行方不明と知らされていたエルギオスを発見したフィリス。 だがそのとき、彼はすでに闇に堕ちこの世界を滅ぼそうと画策しているところだった。 彼を止めようと立ち向かったフィリスだったが、天使の理に妨げられエルギオスにあっけなく敗れてしまう。
「なんということじゃ…」
フィリス達はせめて、と天の箱船を使い天使界へと向かい、ガナン帝国城に囚われていた天使達を送ると同時に長老オムイに帝国城でなにがあったのかをすべて語った。
「天使界を襲った邪悪な光………そして魔帝国ガナンの復活。 それがすべて………あの、天使エルギオスの仕業じゃったか………」
「そのようです」
「………人間界で消息を絶ってから数百年。 よもや魔帝国ガナンに捕らわれたまま……エルギオスが生きていたとはな。 その上……哀れなことに、エルギオスは邪悪な心に蝕まれ…………堕天使となってしまったのか……………」
長老オムイも、エルギオスが堕天使になってしまっていたことにショックを隠しきれないようだ。 エルギオスがどのような天使だったのかを、オムイは知っているからだろう。
「…………フィリスよ」
「はい」
「堕天使エルギオスは…自らが新しき神となるために、神の国へむかったそうじゃな………」
「………意識が薄れる中、かすかにそう言っているのが聞こえました……」
フィリスはエルギオスの攻撃の前に倒れてしまったものの、意識が朦朧としている中でエルギオスの言葉を聞き逃さなかった。 自分が神の国に向かい神となることで、この世界を滅ぼし天使も人間も根絶やしにするのだと。
「……本来なら、わしはお前にエルギオスを追いかけて奴を止めてほしいと……願っている…………」
「はい、あたしもそうしたいと思っています……しかし……」
「お前もわかっているようじゃな。 そう……天使は上位の天使に逆らえないのが………掟であり習わし。 もはや、エルギオスを越える天使はどこにもおらぬ…………。 このわしでさえもな…………」
「………………」
なんとも歯痒い話だ。 フィリスは本気になればエルギオスを打破することもできるはずなのに、あの習わしが忌々しくて仕方がない。 そんなフィリスの顔を見たオムイは、フィリスの報告にあったあの話を思い出して彼女に下がるようにいう。
「報告、ご苦労じゃったな。 いってもよいぞ………おまえも、辛い目にあったじゃろうて。 今はやすむがよい」
「………はい………」
フィリスはエルギオスに敗れただけでなく、最も大切な存在を失っている。 オムイはそのことを思い出したが故、彼女を下げたのだ。 そうしてオムイに言われたとおりに長老の間を去ったフィリスの前に、仲間であるイアン達がいた。
「………はぁ……倒せる手段があるなら………あたしに出来ることがあるなら………あたしはすぐにでもその手段を用いて、倒しにいくのにな」
「お前ならあいつを倒せるかもしれねぇし…オレ達も、あのヤロウをたおしてぇと思ってるぜ………けど、方法はない以上、どうしようもできねぇな………」
ため息を交えながらそう語り合って、打開策はないかと相談しあうフィリス達。 そんな4人をみて、オムイは神に祈りを捧げた。
「神よ。 いずこにおられます。 どうぞ、神よ…………我が祈りお聞きくだされ……怒りに捕らわれしエルギオスの心を、どうかお救いくだされ…………人間界をお守りくだされ…………神よ………」
そのオムイの声が届いたのか、フィリスの脳裏に声が響きわたる。
「…………フィリス…………」
「!」
「…………守護天使フィリスよ。 あなたに伝えたいことがあります………。 どうかこちらへ………世界樹の元へきてください…………」
その声は間違いなく世界樹…もとい、女神セレシアの声だった。
「世界樹が呼んでる………」
「あの不思議な声とやら、お前……また聞こえたのか?」
イアンの問いにフィリスはうなずき、彼らとともに世界樹の元へ向かうのだった。
世界樹にたどり着くと、その世界樹は黄金の光を宿していた。 世界樹はフィリス達がここにたどり着いたことを感じ取ると、4人に語りかける。
「…………フィリス、そして彼女とともに在りし人間よ…………」
「女神様……」
「……………悲しみが空を覆っています。 堕天使エルギオスの悲しみと怒りが、世界を染めようとしている…………この上、堕天使エルギオスに、罪を重ねてはいけません。 …………あの者の心は汚れきってはいない…………」
「……………」
それは、フィリスも重々理解していることだった。 だが、どうすることもできずもどかしい思いを抱えているのも、また事実。 そんな彼女の心情に気づいているらしい、世界樹は語りかけてくる。
「……………フィリス………あなたがこれまで助けてきた人間達を………覚えていますか………?」
「えっ?」
「あなたが翼と輪を失ってから、その身で地上を渡り歩き………それにより、あなたが出会い……悲しき運命から逃れることができた………たくさんの人間達を今、思い出せますか…………?」
「……………」
フィリスはその声に従うがまま、自分が旅をして出会ってきた人々を思いだしていた。 天使界から落ちた日に出会った人達、天使界に戻るまでに助けてきた人達。 女神の果実を集めるために旅をしていった人達。 ガナン帝国に立ち向かうまで出会ってきた人達。 皆の顔をフィリスが忘れるはずなどなかった。
「…………彼らはあなたに……心から感謝を捧げています。 ………清き心を持つ人間達が………あなたが助けた人間達が、今度はあなたの………フィリスの力となる…………」
その声に従うかのように、地上の各地…フィリスが旅をしている間に通ってきた場所から光が立ち上り、世界樹に集まっていき、そうして世界樹から一個の果実が舞い降りてきた。 それは、女神の果実だった。
「それって………」
「女神の果実…?」
「…………その果実は………あなたが助けた人間達の心が結実して、たった今生まれたものです………」
そして、世界樹はどこか哀しげな声でフィリスにある事実を告げる。
「……フィリスよ………その果実を食べれば、恐らくあなたは天使としての生を捨てて………人間になってしまうでしょう…………」
「えっ……」
「…………けれど………人間になれば…天使の理に縛られることなく、堕天使エルギオスと戦えるでしょう…………」
それをきき、フィリスと彼女の仲間達は果実を見つめて呆然とする。 その様子から世界樹は辛そうに彼女に、それ以外の方法はないと告げた。
「つらい選択を強いていることは、わかっています。 ですが、もうこの方法しか………。 …………どうか、フィリス………神の国へ行きエルギオスを止めて………人間を…………」
そこで、世界樹の声は聞こえなくなった。 やはり女神はまだ本調子ではないのだと感じたフィリスは首を傾げる。
「女神様の声、聞こえなくなった…また、眠ったのかな………?」
「「「……………」」」
「みんな?」
仲間達が黙りになっていたことに気付いたフィリスは、仲間に声をかける。 すると、イアンが最初に口を開いた。
「フィリス……お前……エルギオスを倒すためとはいえ、ホントにその方法を実行していいのかよ?」
「えっ?」
「僕は貴女とともにならば、あの邪悪な力にも立ち向かえると思っています。 ですが、そのために貴女が犠牲になるなど……あってはなりません……」
「そうしたら、もうここには帰ってこられないし………あなたは仲間の姿も見えなくなるってことなのでしょう…………?」
イアン、セルフィス、クルーヤはそれぞれでフィリスがとらねばならない選択にたいして告げてきた。 皆、とてもつらそうな顔をして。
「オレ達は今まで、お前についていってた。 道に迷ったり途中で困ったことがあったら…アドバイスを送っていた。 お前を信じてたから、お前の選択を許してた……だけどよ………」
そこでイアンは、首を横に振る。
「………わりぃが、オレはお前が天使から人間になるのは賛成できねぇ……もしも許したら、お前は帰る場所を失っちまう。 そっちのほうが………オレは耐えられねぇんだ。 今までお前がなにをやっていて、一緒に進んできたから………尚更だ」
「僕も………貴女は十分に苦労と悲しみを背負い、多くの人のためにそれを打ち払いました。 先も貴女は大事な人を失ったばかり……その心の傷口を広げたくはありません。 ……僕は、貴女が果実を食すのを反対します」
「ごめんなさい………私も、あなたが故郷や仲間とあえなくなっちゃうのは辛い。 あなたには無理をさせたくない………だから、果実を食べないで……エルギオスは、私達がかわりに戦うから………だから、もう抱えないで」
「……………」
仲間達は口々に、フィリスが女神の果実を食べるのを止めようとする。 フィリスは自分の手元にある果実と仲間の顔を交互に見る。 そして、そっかという短い返事だけをして、女神の果実をしまった。
そして、フィリスは天使達と会話をしながら、物思いに耽っていた。 天使達は皆、彼についての話をしており、その死を悼み裏切りの真相を知り、顔を曇らせていた。
「イザヤールお師匠様………」
その先でフィリスは、女神の果実を手に取りながら、かつてよくイザヤールと修行をしていた広場にきていた。 女神の果実を見つめながら、フィリスはこれまでの旅を思い出す。
「あたしが助けた人間の心が宿っているから、この果実はきれいなのでしょうか……これをみていると、これまでの冒険を思い出します。 この冒険で、あたしはいっぱい人と出会って……関わって救うことができていたんですね………」
フィリスが旅の中で出会い、助けた人間は皆、美しい心を持っている。 それは直にその人間達を助けてきたフィリスが、もっともよく知っていることだ。
「でも、もし……このままエルギオスを好きにさせていたら………その人達も危ない………だから………あたしは、あたしはもう…答えは決めている。 ………でも……」
あの話を聞いたときに、フィリスの中にすでに答えはでていた。 だが、仲間の反応を知って、フィリスは自分の答えを出すことを躊躇ってしまったのだ。
「フィリス」
「わ、アギロさん!」
そんなフィリスに、アギロが声をかけてきた。
「話は聞かせてもらったぜ。 俺にもセレシア様のお言葉、聞こえたからな…」
「…………」
「お前、天使をやめて人間になっちまうなんて……ホントにそれでいいのか? とは思うが…もしお前が決断をして、どうしてもエルギオスを追って神の国へいくっていうんなら………俺もハラァくくって、神の国でもどこへでも、お前を送っていくつもりぜ!」
「…アギロさん……」
「ちょっとテンチョー! なに無責任なことを言ってくれちゃってんのさーー!」
そこに、サンディがあわてた様子で割り込んできた。 そのときのサンディはどこか、悲しげな顔をしていた。
「人間になったら、アタシらのことも見えなくなっちゃうんだよ!? そんなのサビシーじゃん! 仲間達だって世界樹の朝露の効果を失って……もう誰も、アタシらには気付かなくなっちゃうよ!!」
「サンディ………」
「フィリス1人がそこまですることなんてないって! ねぇ、やめときなよー!」
サンディはフィリスが果実を口にすることに反対しているようだ。 サンディの言葉を聞いたことで、フィリスの目にまた迷いの色が現れる。 自分自身の本心、この選択が正しいのかがわからなくなる。 そんなとき、アギロはフィリスに告げた。
「どっちでもいい、お前はお前の答えを教えてくれ」
「……答え……」
その言葉でフィリスの中に、ある気持ちが生まれたようだ。 そして、顔を上げてサンディにある頼み事をした。
「…………サンディ……みんなを、天の箱船に集めてくれるかな? あたしはどうするのかを……その答えを……出すから」
「ふぃ、フィリス?」
「その手間はいらないぜ」
その声が聞こえたかと思うと、そこにはいつの間にいたのだろうか。 イアン達が集まっていた。 きっと3人ともフィリスを探してここまできたのだろう。 全員いると知ったフィリスは頷き、自分の決意を彼らに語る。
「………みんな、あたしのことを思ってくれて……ありがとうな。 こんなに、あたしのことを見てくれる人がいっぱいできるなんて……昔は想像できなかった。 あたしは、昔独りぼっちだったから……今こうしてみんながいるのが、嬉しいよ………」
「フィリス?」
仲間の顔を改めてみて、旅で出会った人々を思いだして、フィリスの心に芽生えた決意。 その答えをフィリスは笑顔で彼らに告げた。
「そんな、あたしを思ってくれる人を、あたしは守りたい………。 だから,
あたし、エルギオスを討つよ!」
「!」
「それって!」
フィリスの言葉の意味を知った一同は驚き、フィリスは彼らの前で女神の果実をとりだしてそれを口にした。
「フィリスッ」
それにたいし、サンディが彼女を止めようとする声が聞こえたが、直後に女神の果実は光を放ち、フィリスの中に消えていった。 その後で、サンディはおもむろにフィリスに声をかける。
「おーい、フィリス、きこえてるー?」
「ああ、バッチリ聞こえるよ」
サンディの声に対しフィリスはあきれたように笑いながら、返事をする。 フィリスが自分の存在を認識していることを確認したサンディは、からっと笑いながら言った。
「なーんだ、じゃ女神の果実は不発だったってことだネ! 輪っかも翼もないから、女神の果実もフィリスが天使だってわかんなかったんじゃない?」
「………いや……違う」
サンディの言葉を、アギロが否定する。
「俺にはわかるぞ! フィリスのまとう空気は天使じゃなく人間のものだ。 女神の果実の力でお前は人間になったんだ」
「………テンチョー……せっかく人が場を和ませようとしていたのに……」
「……きっと、まだ天使界にいて俺達の姿が見えるのは、完全な人間になるまでには、時間がかかると言うことなんだろうな」
「そういうことなんだ……じゃあ!」
「ああ、俺はすぐにでもお前を天の箱船で神の国へ連れて行ってやるぜ! そして、エルギオスをとめる手助けをするぜ!」
そういい残し、アギロは一足先に天の箱船へと向かい、サンディも少し沈んだ顔のままアギロについていった。 そんな二人を見送った後でフィリスは、自分が果実を口にしたときから黙っていた仲間達に対し頭を下げて謝罪をする。
「………みんな………あんなに止めてくれたのに、ゴメン!」
「「「…………」」」
「でも、これがあたしの気持ちなんだ。 みんなが苦しんでて、あたしだけラクするなんて…絶対にイヤだ! みんななら…人間だし、エルギオスと戦える……みんなは強いからできるかもしれない……。 でも、あたしだけ、自分の幸せだけをみて………現実から目を逸らすなんて………みんなが傷つくのをみてるだけなんて………イヤだ! みんながあたしだけ苦しむのが耐えられないみたいに………あたしも、みんなが苦しむのが耐えられないんだ…………」
フィリスは胸に手を当て、女神の果実を手にして女神の声を聞いたときから秘めていた決断を打ち明ける。
「女神の果実を手にしたときも、地上でみんなと旅したときの思い出が……よみがえっていたんだよ。 その旅の中でであった人たち……今も、あたしは、助けたいと本気で願ってる。 だから、あたしはエルギオスと戦いたい……みんなを守りたい!」
そう、フィリスは仲間達の顔を見て言った。 そのときのフィリスの真紅の瞳は、決して仲間達からそらされない。 そんな彼女の言葉を聞き、目を見た3人は沈黙を保っていたが、やがてイアンから一人ずつ口を開き始めた。
「こうなりゃ、しゃーねーな! オレも旦那みてーに腹をくくるぜ!」
「貴女の決断………無駄にしないために、この命に代えてでも貴女をお守りします……」
「大丈夫よ! 戦いに勝ってそのまま人間になっても……私達があなたの側にいてあげれば、いいだけだもんね!」
仲間達も、フィリスの決断を受け入れともに進むことを決めてくれた。 フィリスはその気持ちを喜ばしく思い、満面の笑顔を浮かべる。
「ありがとう! 絶対に、かとうな!」
彼女の言葉に対し、イアン達はうなずいて答えた。
「天の箱船にのろう」
「ああ…」
天使界にはすでに、フィリスがエルギオスと戦うために人間になったことを告げた。 あるものは嘆き、あるものはフィリスに希望を託し、あるものは応援をした。 長老であるオムイも、フィリスがエルギオスと戦うために人間になったことに衝撃を受けたものの、どうあれどフィリスは自分達の仲間だと事実を受け入れ、彼女を応援することを決めた。 であれば、自分は彼らの期待に応えねばなるまい。 その思いを胸に秘め、フィリスは仲間とともに天の箱船へと向かおうとしていた。
「行くのね」
「ラフェットさん!」
その途中で、ラフェットが声をかけてきた。
「長老様から話は聞いたわ、貴女はこれから天使から人間になって、私たちとはもう会えないって………」
「…………」
「でも、もう少し時間があるというなら………今のうちに貴女につきあってほしいことがあるの。 きてくれる?」
その言葉を聞きフィリスは首を傾げつつも、今のうちにならと思い、ラフェットについていくことにした。 彼女に導かれた先では、彼女の弟子が扉の前にたっており、フィリスにある話を打ち明けた。
「あのね、実はイザヤール様、ラフェット様に自分の大事なものを預けてたの。 そのときイザヤール様………自分の身になにかあったとき、これをフィリスに渡してほしいって………」
「師匠の大事なもの?」
フィリスの問いに対しラフェット達は頷くと、扉をあげてひとつの箱を取り出し、フィリスの前に差し出した。
「この箱の中に入っているわ」
ラフェットに言われるがまま、フィリスはその箱をあけてみると、そこには鞘に収まった一振りの剣が納められているのに気付く。
「剣?」
フィリスはその剣を手に取り、それを鞘から抜き取ってみる。 その刀身は深い青と金色の装飾が施されており、青い部分はまるで星空のように光の粒子が揺れて光っている。
「とても綺麗で、切れ味も抜群そう」
「ああ……不思議な剣だな………」
フィリスはその剣を見つめてそうつぶやき、ラフェットがその剣について説明をする。
「それは、星屑の剣」
「星屑の剣?」
「その剣はかつて、イザヤールがエルギオスにもらったものなのよ。 けど、イザヤールはエルギオスが姿をくらましてしまった事で、その剣を封印した。 その後でフィリスを弟子にすることを決めて………自分の跡を継ぎ、一人前の天使になったときには………その剣を渡そうとしていたの」
「……………」
この剣がエルギオスからイザヤールに、そしてフィリスの手に渡ろうとしていたことを知ったフィリスは目を丸くしてもう一度剣を見る。 そして、ラフェットはイザヤールから剣のことを託されたときのことを思い出しながら、フィリスに語る。
「あのとき、イザヤールは死を覚悟していたのね。 だから、自分に何かあったら………それをフィリスに渡してって……私にお願いしていたみたい……本当は、自分の手であなたに渡してあげたかったけど、かなわないと感じていたから………」
「………師匠………」
ラフェットの話を聞いたフィリスは、その星屑の剣を鞘に収め、大事そうに強く抱きしめる。 そして、顔を上げてフィリスはラフェットに告げる。
「ラフェットさん、この剣のことを教えてくれて、ありがとうございます! あたし………この剣持って行きます! 戦いが終わっても………人間になっても…………ずっとずっと大事にします!」
「ええ、それが、彼への手向けになるわ」
無事に星屑の剣がフィリスの手に渡ったことに、ラフェットは安堵の笑みを浮かべた。 これで、彼の願いを叶えることができたと思ったからだろう。 そして、立ち去っていくフィリスの後ろ姿を見送って、ラフェットは夜空を見上げてつぶやいた。
「イザヤール……どうか………フィリスを守って………」
「ラフェット様………」
そのラフェットの横顔を、彼女の弟子は寂しげに見つめていた。 役目を終えた天使は星になると言い伝えられており、イザヤールもこの星々の一つだと彼女が語っていたこと。 彼の死を知ってからラフェットはよく夜空の星々を見つめるようになったこと。 そして、彼女がそうするようになった理由を、弟子は知っているのだ。
「………きたよ、アギロさん、サンディ!」
「………」
「準備はいいな?」
「ああ!」
そしてフィリスは星屑の剣を携えて、天の箱船に乗り込んできた。 彼女がきたことに気付いたアギロは、顔を引き締めて天の箱船を起動させる。
「いくよ!」
「ああ!」
「一緒に、エルギオスを止めましょう!」
「僕達は、ついていきますから!」
フィリスとその仲間達を乗せた天の箱船は、天使界よりもさらに高く、そして遠い空へと飛んでいったのだった。
フィリスだったら女神の果実を食べるのにも躊躇わないけど、そこに事情を知った仲間が介入したらどうするのか。
そう考えながら、決断を出させてみました。
そして、あの剣も、この物語をかき始めた当初から決めていました。
次回はラストダンジョン、突入です。