ドラゴンクエスト9 AngelsTale   作:彩波風衣

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ラストダンジョン編その1。
いつの間にかセルフィスが賢者になってます(おいおい)


43「憎しみを晴らさん」

 

 フィリスはエルギオスをおい、戦うために女神の果実を口にした。 それによりフィリスは人間となり、彼女の決意を聞いたアギロ達の支援の元、エルギオスが向かったとされる神の国に向かう。

 

「な、なんだありゃあ!?」

 

 後少しで神の国にたどり着こうとしたところで、その神の国に大きな異変が生じる。 突如としてその国全体が黒いオーラに包まれたかと思えば、その真下からまるで触手のような黒い根が這い上がってきて、神の国の随所に浮かんでいた神殿を突き上げ、貫いていく。 神の宮殿はさらに高いところへ突き上げられ、中心には禍々しい力が渦巻く。 這いずり回っていた触手の間からは、どくんどくんと脈打つ肉塊が見える。

 

「か、神の国が…!」

「………なんと、おぞましい姿に………!」

 

 その変貌ぶりに、変貌していく様子を見ていた全員が呆然としていた。

 

「うっわぁ………キッモ………」

「あのエルギオスって天使、堕天使になったことで…力だけじゃなくてセンスも悪くなっちまったのか……?」

「……お二人とも……」

 

 正直すぎる感想を口にするサンディとイアンに、セルフィスはジト目を向ける。 その横ではアギロが、今の神の国から伝わってくる気配などから、ポツリとその姿に対する言葉をつぶやく。

 

「さしずめ、絶望と憎悪の魔宮………とでもいったところか?」

「テンチョーのセンスも、イミフっすね」

「うっせぇ」

 

 サンディがアギロのネーミングセンスにツッコミを入れていると、フィリスはその魔宮を見て、呟く。 アギロが名付けたその名前の意味を、感じ取りながら。

 

「………絶望と憎悪………」

 

 その感情を持っているものが、神の国を変貌させ、今もなおあそこにいる。 そして、その感情の持ち主をフィリスは知っている。

 

「…………みんな、ここからは苦戦を強いられるよ」

「ああ……わかってる」

「………おめぇら、気を引き締めていけよ。 俺は………死体をこの箱船に乗せる気はねぇからな」

「もちっ! みんな、いこう!」

 

 フィリスの言葉に応えるように、イアンとセルフィスとクルーヤは頷き、アギロに見送られながら、その魔宮に足を踏み入れた。

 

「………サンディも、くるのか?」

「だってどうせ、戦いが終わったらアタシのことが分からなくなるんでしょ! だったら……戦えなくても………少しでも長く、アタシはアンタといたいよ!」

「………そっか」

 

 ほぼ強引な形ではあるものの、サンディもその決戦の場までフィリスについて行くことを決めた。

 ちなみに、事前にこっそりダーマ神殿に行って、セルフィスは賢者となりそこそこの修行を積んだのだが、それは内緒の話である。

 

 

「ハァッ!」

「せいっ!」

 

 魔宮の中には、エルギオスが召喚したのであろう魔物が無数に住み着いていた。 その魔物達はフィリス達の姿を見かけるたびに襲いかかってくるので、フィリス達は全力でその魔物をむかえうっていく。

 

「一掃するわよ……イオナズンッ!」

 

 今も、自分達に襲いかかってきたトロルキング数体を相手に戦っているところである。 まずはイアンが棍を大きく振り回して薙払い、フィリスがそのうちの一体にはやぶさ斬りを繰り出す。 そして、体力を大幅に削るため、クルーヤがイオナズンを放ったのだ。 それによりトロルキングは致命傷を負い、イアンが再び薙払いを繰り出したことでトロルキングは殲滅される。

 

「ふっ」

 

 真上を飛んでいたマポレーナも、セルフィスが弓矢で正確に射抜いて打ち落としていく。 そうして活路を開き、4人はほかの魔物に見つかる前に進む。 その最中で、イアンはセルフィスの新しい武器についてふれた。

 

「にしてもセルフィス、槍の腕も達者だったけど、弓矢の腕もなかなかだな」

「ええ、僕も不思議と手になじみます」

 

 セルフィスは槍を新しく調達しようと考えていたのだが、ふと弓矢を発見しそれに興味を持ったことで、それを手にすることを選んだ。 最初ははじめて使う武器なだけあって戸惑ってはいたものの、少し練習しただけでセルフィスはそれを難なく使いこなすことができた。 先程の戦いからもわかるように、その腕前はまさに百発百中…セルフィスは次々に魔物を射抜いてみせたのである。

 

「あたしも、負けられねーな」

 

 そういってフィリスは、自分の手の中にあるほしくずの剣を見た。 この剣の切れ味はかなりのものであるが、同時にこれ振るうにはかなりの熟練度が必要とされることも、振るっていてわかってくる。 こうしてフィリスが手に持ち振り回せるだけでも奇跡といえるかもしれない。 自分はまだ完全にはこの剣を手に馴染ませられていないことに、フィリスは気付いている。

 

「………でも、あたしはこの剣で……戦うって決めたんだ。 だから、離したりするもんか」

 

 そう言って、フィリスはほしくずの剣を握りしめる手に力を込めた。

 

「うわぁ!?」

 

 と、その時だった。 彼らの目の前に鉄球が飛んできた。 人ほどの大きさのある鉄球からは鎖がのびており、その鎖を辿っていった先には、かつて自分達が討ち取ったあの魔物の姿があった。

 

「グヘヘヘヘヘ……!」

「お前は……ゴレオン将軍!?」

 

 それは、かつてカデスの牢獄で対峙したガナンの三将軍の一人、ゴレオン将軍だった。 ゴレオン将軍は鎖を操り鉄球を自分の方に引き寄せると、笑い声をあげた。

 

「グハハハハッ!!! 俺様は今、エルギオス様の力で復活をしたのだ! こうして、俺様をコケにしたお前達に……復讐するためになぁ!」

「お前、皇帝からあいつに履き替えるつもりかよ?」

「皇帝はもう死んじまったからな………今、俺様が生きているのは、あの方のおかげよ! まさに、エルギオス様々ってヤツだ!!」

 

 そう高々に笑い声をあげるゴレオン将軍に対して、イアンはため息をついた。

 

「…………やれやれ、しょーもねぇ小物だな。 こんなヤツが管理していたトコロに閉じこめられてたなんて………オレも一生の不覚な気がしちまったぜ………」

 

 イアンは頭をかきつつ棍を握りしめ、そしてゴレオン将軍をにらみつけた。

 

「でも、オレ達が同じ敵に負けるわけがねぇな!」

「あったりまえじゃないか! 今度もあたし達でぶっ飛ばしてやろうぜ!」

「道を妨げるのであれば、罰します!」

「当然でしょ!」

 

 そう声を掛け合い、フィリス達はゴレオン将軍と向かい合う。

 

「エルギオス様に逆らう奴は……皆殺しだぁぁっ!!」

 

 ゴレオン将軍は、今戦わんといわんばかりに鉄球を振り回して、フィリス達に攻撃を仕掛けてきた。

 

 

 

「ドルクマッ!」

「メラゾーマッ!」

 

 まずはセルフィスがドルクマを放ち、続けてクルーヤがメラゾーマを放ってゴレオン将軍を攻撃する。 ゴレオン将軍はその連続魔法攻撃に耐えると、鉄球を振るい奥にいるフィリスを攻撃した。

 

「くぅっ…!」

 

 フィリスはそれを盾で防ぐが、その威力はすさまじく後方に吹っ飛ばされてしまった。

 

「前より、攻撃力が増してる!」

「当たり前だっ!!」

「ぐぅっ!」

 

 再びゴレオン将軍はフィリスに向かって鉄球をぶつけてきた。 それをフィリスは再び盾で受けるものの、やはり敵の攻撃力は高く、フィリスの体は壁にたたきつけられた。

 

「クゥ……ゥ………」

「フィリスッ」

「うぉおおらぁぁっ!!」

 

 フィリスの身を気にするイアン達全員に、ゴレオン将軍の攻撃が命中した。 それにより瓦礫がいくつも崩れ落ち、土埃も舞い上がる。

 

「ハハハハハッ! この俺様のパワーに圧倒されたかっ!!」

 

 フィリス達の姿が見えなくなったことで勝ったのだと思いこんだゴレオン将軍は、そう言って高笑いをする。 だが直後に、強烈な吹雪が襲いかかり巨大な氷の刃が突き刺さった。

 

「なっ!?」

「残念だったわね、みんな無事よっ!」

 

 ゴレオン将軍に襲いかかった冷気の正体は、クルーヤの放った攻撃魔法・マヒャドだった。 ゴレオン将軍は自分の攻撃で4人全員が耐えたことに驚いており、セルフィスが自分の手に魔力をためながら説明をする。

 

「大いなる守りの力……スクルトですよ」

 

 セルフィスはあの攻撃の直前でスクルトを使ったことで、全員耐え抜くことが出来たのだ。 そしてすぐに、セルフィスは広範囲に届く回復魔法・ベホマラーを使ったことで、全員の傷が癒える。

 

「メラミッ!」

 

 そして、クルーヤは今度は炎の攻撃魔法である、メラミを放ってゴレオン将軍を攻撃し、直後にフィリスとイアンをみる。

 

「フィリス、イアン! あなた達に任せるわ………バイキルト!」

「おう! いくぜっ!」

 

 自分の攻撃力があがったところで、イアンはゴレオン将軍に向かって氷結らんげきを放つ。 それによる連続攻撃を受けたゴレオン将軍は、なんとか耐えてイアンにたいし反撃をしようとするが、イアンはそれを身軽に回避した。

 

「フィリス!」

「うぉぉぉっ!!」

 

 その直後、イアンはフィリスに声をかける。 声をかけられたフィリスは素早くゴレオン将軍に接近し、渾身のはやぶさ斬りを繰り出した。

 

「グォォォオオッ!」

 

 それにより体を大きく切り裂かれたゴレオン将軍は、断末魔をあげながら、消滅した。

 

「言っただろ、同じ敵に負けるわけがねぇ………って」

 

 イアンは消え去ったゴレオン将軍にたいしそう言い切る横では、セルフィスがうつむいて考え事をしていた。

 

「…………にしても……まさか、帝国の三将軍が復活しているとは………」

「ああ、そこは油断できねぇな………」

 

 帝国の三将軍はどれも手強いものばかりだ。 あと二人の将軍も復活しているとみて間違いない。 気を引き締めていかねばならない。 そう感じ取ったフィリスが声をかけて歩き出そうとしたが、そのときフィリスは、自分の体に異変が起きていることに気付いて膝をついた。

 

「ッ!」

「フィリス?!」

 

 4人は一斉にフィリスに駆け寄った。 彼女は胸に手を当てつつ大丈夫だと返す。 しかし、そんなフィリスをみてサンディはあることに感づき、フィリスに問いかける。

 

「もしかして、アンタ………また人間に一歩………?」

「…………みたいだな」

 

 どうやら、女神の果実の力が進行しているらしい。 フィリスが天使の力を保っていられるのは、あと残り僅かのようだ。 そして人間に近づけば近づくほど、フィリスの精神に異変が生じている。

 

「…………それまでに………この戦いに、決着をつけなくちゃな」

「わかってるさ」

 

 フィリスはそう口にして、ほしくずの剣を握る手に力を込めながら、立ち上がった。 そうやって立ち上がるフィリスを見て、イアン達は顔を見合わせてうなずきあい、彼女について行く。

 

「この剣で、奴をぶった斬るまで………あたしは、止まれねーんだっ……!」

 

 

 

「ホーホッホ…………ここまできましたか………」

「ゲルニック将軍!」

 

 ゴレオン将軍を破り、先へ進んだフィリス達を待っていたのは、ゲルニック将軍だった。 彼はガナン帝国城に攻め行ったときに倒したはずだ、となれば……。 フィリスは前例があったことを瞬時に思い出す。

 

「まさか、お前もゴレオン将軍と同じように……エルギオスに………?」

「ええ、この通り……この私もかの堕天使の力によって、復活を遂げましたよ………」

 

 そう言ってゲルニック将軍は顔を回した。 やはりこの動きは気味が悪く、それをみたフィリス達に悪寒が走る。

 

「エルギオスのヤツはどうやら、この私を手駒として使うつもりのようです………」

「ほぼゴレオン将軍がそうなってたな」

「………ですが、そうは行きませんよ……ホッホッホッホ………。 いずれ、ヤツの寝首をかいて差し上げましょう………」

 

 ゲルニック将軍はその大きな目を光らせ、フィリスを見た。

 

「なにはともあれ………まずはあなたが優先ですよ、フィリスさん。 さぁ………今度こそ、殺して差し上げます!」

「させるものかっ!」

 

 フィリスは剣をつきだし、仲間達もそれぞれで武器を手に取る。 まずはクルーヤがピオリム、セルフィスがマジックバリアを使い仲間を助ける体制に入る。 イアンは前線にでて、素早くゲルニック将軍に接近して攻撃を試みる。

 

「うぉぉぉっ!」

「バギマ!」

「ぐぁぁ!」

 

 そのバギマをイアンは正面からくらうが、それを力ずくで突破してゲルニック将軍の腹部にせいけん突きを決める。

 

「ぐっほぉぁ……!」

 

 その一撃を受けたゲルニック将軍は崩れ落ちて、吐いた。 直後にフィリスが自らにバイキルトをかけてゲルニック将軍にかえん斬りを食らわす。

 

「おのれ………よくもっ……!」

 

 攻撃を受けて嘔吐する、という屈辱を受けたゲルニック将軍はその目から不気味な閃光を放ち、マジックバリアの強化をなかったことにする。

 

「バギクロスッ!」

「うわぁぁぁっ!!」

 

 直後に風系の強力な魔法をぶつけて、フィリス達全員に大ダメージを与えた。 それに4人は耐えたが、ゲルニック将軍は攻撃の手を止めず、再び不気味な閃光を放ってからのバギマで攻撃を仕掛けてくる。

 

「皆さんっ」

 

 すぐにセルフィスはベホマラーを使い、全員の体力を回復させた。 それにより傷は癒え、クルーヤがメラゾーマを放ってゲルニック将軍を火だるまにする。

 

「グホォォ!」

「この前みたいにはいかないわよ!」

 

 そう言い放ち、クルーヤはイアンにバイキルトをかける。 攻撃が強化されたフィリスとイアンは、同時に攻撃を繰り出した。

 

「いくぞっ!」

「ああ!」

 

 まずはイアンが氷結らんげきを繰り出し、直後にフィリスがはやぶさ斬りを繰り出してゲルニック将軍を追いつめる。

 

「セルフィス!」

「はい!」

 

 その背後で、己の魔力を覚醒させたクルーヤとセルフィスが顔を見合わせて、同時に強力な爆発の攻撃魔法を繰り出した。

 

「「イオナズンッ!」」

「グォオォアオアアッ!!」

 

 その二つの攻撃がゲルニック将軍にささり、ゲルニック将軍はその爆発に飲まれた。

 

「マホカンタを使う隙を、いっさい与えなかったのがよかったわね」

「ああ……つかわせるつもりなんかなかったさ。 お前達がいるんだからよ。 活躍の場を与えたかったしな!」

 

 そういってイアンは、魔法が主体である二人をみた。 それにたいしクルーヤもセルフィスも笑みを浮かべている。

 

「ま………た………やぶれる………の、ですか………ホホホ………!」

 

 爆発の光の中に、ゲルニック将軍は散っていった。

 




次回もラスダンの話をお届けします。
にしてもここにまたきて、またラスボスと戦えるなんて10年くらい知らなかったですね…。
なんか悔しい。
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