あのBGMにあうように、激しくかいたつもりです。
いかがでしょうか?
堕天使エルギオスとの、決戦が始まった。 この戦いが終われば、フィリスは天使の生涯を捨て人間となる。 すべてに終止符を打つための戦いなのである。
「バイキルト!」
「スクルト!」
「はやぶさ斬り!」
「氷結らんげき!」
その戦いに負けるわけにはいかない、と4人は全力を出す。 まずはクルーヤがバイキルト、セルフィスがスクルトをかけて仲間達を強化し、その強化を受けたフィリスとイアンがエルギオスに直接攻撃を仕掛ける。
「メラゾーマ!」
その攻撃を受けたエルギオスは反撃でメラゾーマを放ち、イアンをひだるまにする。 すぐにイアンはセルフィスのベホイムを受けて回復し反撃にでようとするが、エルギオスの超高速の連続攻撃により妨げられる。 さらにエルギオスは黒い炎を放ちフィリス達を追いつめていく。
「ウォォオッ!」
「させるかっ!」
フィリスは黒い炎の中で突っ込んできたエルギオスにたいし、光の力をまといながらはやぶさ斬りで対抗しようと立ち向かっていく。 エルギオスの爪とフィリスの剣が激しい金属音をたてて衝突しあう。 やがてエルギオスが押し切りフィリスをふっとばすが、フィリスは追撃にでようとしていたエルギオスにかえん斬りを繰り出し迎え撃つ。 そのとき、炎に包まれた星屑の剣をみて、エルギオスは目を見開かせる。
「その剣は……!?」
「今更気付いたのか、ウスノロッ!」
フィリスは立ち上がりつつ、その刀身を剣のかつての所有者…エルギオスに見せつける。
「この剣は特別の中の特別! あたしの………大事な人から受け継いだ…とっておきの宝物さ! あたしはこの剣で………お前をぶった斬る!」
「おもしろい、その剣………へし折ってくれる!」
そういいエルギオスはフィリスにあの連続攻撃をたたき込もうとしたが、そこで強烈な吹雪が襲いかかり刃が突き刺さる。
「………ちょっと! 私達を忘れてもらったら困るんだけどっ!」
「クルーヤ!」
「人間風情に用はない、死ね!!」
自分を攻撃したのが正真正銘の人間であることがエルギオスの元々の怒りの炎に油を注いだらしい、エルギオスはクルーヤに向かってメラゾーマを放った。
「魔結界!」
そこでクルーヤは魔結界を張って自分の身をメラゾーマから守るが、その火力は高く、押し切られそうになる。 それにたいしクルーヤは歯を食いしばりつつ、すぐに別の魔法を使った方がいいかもと杖を握る手に力を込める。
「オレを無視すんなよなっ!」
「グァッ!」
エルギオスがこのままクルーヤを押し切ろうとしたとき、イアンが飛びかかってきて拳の一撃をたたき込む。
「ちょっとした修行で身につけた………とうこん討ちだっ! どうだ!」
「貴様……」
自分に重い一撃をたたき込んできたイアンをエルギオスはにらみつけるが、すぐに翼に衝撃を受ける。 翼をみると、矢が数本刺さっていた。
「僕とて………貴方にたいし手は抜きません。 攻撃をさせていただきます」
そこには、弓矢を構えているセルフィスの姿があった。
エルギオスは再び黒い炎を放ち、4人の動きを制限しつつ高速連打を見境なく放ってくる。 4人はそれにたいし防御の姿勢をとって守ったが、彼らが守りの体制を解除する瞬間をエルギオスは見逃さず、まずはクルーヤに拳をたたき込み吹っ飛ばす。
「きゃぁぁ!」
「クルーヤ……うあぁぁっ!!?」
「イアンさん!」
続けてイアンがメラゾーマを受けて、その身を焼かれる。 エルギオスは攻撃の手を止めることをせず、セルフィスにたいしてもメラゾーマを放ってくる。 セルフィスはそれをドルモーアで防ごうとしたが、メラゾーマとドルモーアが衝突し、弾け飛んだところでエルギオスが目の前まで迫ってきた。
「グァッ!」
「セルフィスー!」
その直後にエルギオスはセルフィスに拳をたたき込み、彼を背後の柱にたたきつける。
「よくも………よくも、みんなを傷つけてくれたなっ! はぁぁぁっ!!」
目の前で次々にエルギオスの攻撃により大ダメージを受けていく仲間達を見て、フィリスは怒りの矛先をエルギオスに向ける。 彼女は剣を振るいエルギオスを攻撃するが、エルギオスは自分の四肢でそれを受け止めてはじいていく。
「お前、あたしを無視してわざと、みんなを倒していったんだろう!! あたしを………打ちのめすために!」
「フハハハハ!!」
フィリスはエルギオスを攻撃しながら、エルギオスの策に気付いていたことを口に出す。 それにたいしエルギオスは大きく笑った。 その笑い声こそが答えだと気づいたフィリスは、さらに怒りの力を込めて、刀身に稲妻を宿らせる。
「ギガ・スラッシュ!!」
「グォォッ!」
その剣の大技を受けたエルギオスは吹っ飛ばされ、フィリスは着地をした。 直後、エルギオスに受けた傷だらけの体を、あたたかい光が包み込む。
「フィリスさん!」
「みんな、大丈夫か!?」
「ああ………すぐにセルフィスが回復させてくれたからな!」
そこに仲間達が駆けつけ、彼女に合流をしてくる。 仲間が無事だと一瞬だけ笑みを見せたフィリスだったが、背後からすさまじい力の気配を感じ、すぐにそちらをむく。
「あの力は!!」
そこでは、エルギオスが瞑想で自分の体の傷をいやしつつ、魔力を集めていた。 その魔力から何かを感じ取ったセルフィスは急いで、呪文を唱える。
「マジックバリアッ!!」
それは、魔法攻撃軽減の力を仲間達にかける補助魔法、マジックバリアだった。 直後、エルギオスはその魔力をとき放つ。
「マダンテッ!!」
「な、マダンテですって………!?」
それは、己の中の魔力をすべて使って、その魔力のだけ周囲を破壊する究極攻撃魔法、マダンテだった。 その魔力はフィリス達に容赦なく襲いかかる。
「「「うわぁぁぁ!!」」」
「きゃぁぁぁ!!」
強力な魔力におそわれた4人は吹っ飛ばされ、全身が傷だらけになる。 体力も、想像以上に消費していた。 辛うじて全員生き残ったのが、不幸中の幸いといえよう。
「くっ……」
「うぅ……」
「………マジックバリアを使っても、これほどの威力を…………持っているとは…………」
しかし、マダンテは己の魔力をすべて使わなければ発動できない魔法。 これを使ったエルギオスにはもう、魔力はないはずだと思ったセルフィスは立ち上がりつつ、回復の詠唱に入ろうとする。
「なに!?」
「自分の魔力を回復させた!?」
だがそのとき、エルギオスは集中力を高めて己の魔力を回復させた。 そんなことが可能だったとは、と4人は呆然とし、魔力がつきたと思っていた彼らに対しエルギオスは告げる。
「無策であのような力を使うと思ったか………愚かな………」
「………ッ!」
しかし、ここで負けるわけにはいかないと思い、セルフィスは仲間達全員の傷を回復させることにした。
「ベホマラー!」
そうしてセルフィスは全員に回復の魔法をかけた、直後のことであった。
「くらえっ!」
「ぐはっ……」
エルギオスはフィリスに接近し、彼女に高速連打をたたき込んできた。 それによりフィリスの体は打ちのめされ、地面に強くたたきつけられる。 目の前でフィリスが痛めつけられる様子を見たイアン達は、叫ぶ。
「フィリスーッ!」
「………死んだか………」
エルギオスはたたきつけられ地面に伏せたフィリスを見て、そうつぶやいた。 だが、直後にフィリスの体は動き出す。
「し………んで、たまるか! くそがっ…!!」
そう口の中に溜まった血とともに吐き捨て、フィリスは立ち上がり、エルギオスをにらみつける。
「まけ、られない………絶対に、生きて、帰るんだ………!!」
「人に堕ちた天使が………そのまま倒れていれば、これ以上傷つかずにすんだものを………自ら、死ぬ道を選ぶか………」
「人とか、天使とか………んなもん、クッソどうでもいいわっ………!」
フィリスは剣を支えにしていたが、やがてそれを地面からはなし、構え直す。
「人になろうとも………天使の力を失っても………あたしは………あたしの、大切なもののために戦う! そして………戦って………生きる! あたしは、あたしに生きてほしいと願ってくれた人………そして、あたしを信じる人を信じるために、あたしは………生き続ける!」
荒い呼吸を交えながらも、この戦いに望んだ……もとい、女神の果実を口にしたときに決めたことをそのまま口に出す。
「その気持ちも………天使としての思い出も………人としての思い出も………! なにも、かわらないっ!!」
そんなフィリスを、暖かい光が包んだ。
「………貴女についてきて、よかったです………フィリスさん」
「セルフィス………!」
「………あなたがいなきゃ、私達もまとまらないよ」
「まったくだ」
「クルーヤ、イアン……!」
フィリスが立ち上がる姿に、再び勇気をもらったらしい、イアンとセルフィスとクルーヤも彼女に笑みを見せる。 それにたいし、フィリスも笑みを返した。
フィリス達がまだ倒れず、再び戦おうとしていること。 そのまばゆさは、よりエルギオスの心に陰を落としていた。
「生意気を……早々にしねっ!!」
「やなこった!」
エルギオスはそう叫び飛びかかってきたが、それにたいしイアンは天地の構えを使って迎え撃つ。
「貴様からも………多くの、罪を感じるぞ!」
「………ああ、感じるだろうよ………オレ自身もわかってることだぜ!」
自分の過去を感じ取ったらしい、エルギオスの言葉に対しイアンは動じずそう返事をし、エルギオスを跳ね返しながら告げる。
「オレは今まで、多くの憎しみを買ってきた………オレの身勝手のせいで! だからオレは………死ぬまで自分の罪を背負うだろうよ………!」
再びエルギオスがメラゾーマで攻撃を仕掛けてきたが、イアンはそれを氷結らんげきで打ち消しつつエルギオスに一撃をたたき込む。
「だからこそ、オレはここでくたばるわけにはいかねぇ!! こんなオレを受け入れてくれた、助けてくれた人達のためにも!! …………こいつらのためにもこいつらとともに、戦い続ける! それが、オレの贖罪だっ!!」
そう言い放ちつつ、とうこん討ちを放ってエルギオスを攻撃する。 その一撃によりエルギオスは苦しげな声を上げつつ吐き出す。
「グォォッ………!」
「まだまだ、いくわよっ!」
相手に回復する隙など与えるものか、と、続けてクルーヤがマヒャドを放ちエルギオスを攻撃する。 そして、そのまま攻撃の手を休めず今度はイオナズンを放ってエルギオスを追いつめていく。
「………私も絶対に負けない……! …みんなが大好きだから………あの世界にも好きなものがいっぱいあるから………! フィリスと一緒にいたから………私は………この力を得た理由を………この才能を持って生まれてきた理由を、見つけたんだもの! そのためにも、あんたなんかに負けないわっ!!」
そんなクルーヤにエルギオスは黒い炎を放とうとしたが、それは別方向から飛んできた爆発によって妨げられる。
「この戦いで貴方を打ち破ること………それもまた、試練であり………救済なのでしょう………」
そういいつつ、セルフィスは皆の傷を再び癒しつつ、弓矢を手に取る。
「………守るべきものがある………信じるべきものがある………そして、如何なるものであろうとも、逸らしてはいけない真実もある! 僕は、そのために………修行をし守る力を得たのです! 悲しみを知るからこそ、一つでも多くの悲しみを癒し……防ぐ! それを……これからも貫いて見せます!」
そう告げると同時に、セルフィスは連続で矢を放つ。 その矢はエルギオスの翼を射抜きバランスを崩す。
「クゥゥ……!」
「どうだ!」
「貴様等っ!」
そう叫びエルギオスは反撃にでようとしたが、その直前にフィリスが稲妻をまとった剣で切りかかってきた。
「ギガスラッシュ!」
「グウウウォォオオ!!」
その一撃だけでも強力なものではあるのだが、それではエルギオスは倒れない。 そこでフィリスは、さらに強い技が必要だと悟る。
「もっと………もう一度………さらに、強い一撃をっ!!」
そのフィリスの思いに応えるかのように、星屑の剣が光を放った。 その光は明るい色を宿した稲妻へとかわり、剣自身だけでなくフィリスの体に電撃をまとわせる。
「これで、決める!」
その状態でフィリスはカッと目を見開かせ、両手に持った剣を大きく振りかざす。 一方は星屑の剣、もう一方は電撃でできた剣。
「ギガ・ブレイクゥゥゥゥッ!」
「グガァァァーーーーッ!!」
∞の軌道を描きながら放たれたその稲光の斬撃は、エルギオスを大きく切り裂いた。
「ぐ………は………!」
「どうだっ!」
エルギオスはすでに虫の息だ。 これで自分達の勝ちだと、フィリス達は信じて疑わない。 そんな中、この現状に対しエルギオスは荒い呼吸を繰り返しながら、戸惑っている。
「………ばか………な………神をも超える力を手に入れた………この私が貴様らに人間如きに………敗れるというのか…………!?」
「今さらいいわけすんな、たった今証明されただろ………あたし達の勝ちだと!」
フィリスはエルギオスにたいしそう言い切り、そばにいたイアン達も鋭くエルギオスをにらみつける。
「…………クックックック…………あーっはっはっはっは………!」
「何が可笑しい!?」
突如として狂ったように笑い出したエルギオスに、今度はフィリス達が戸惑う。
「よかろう。 今は一時の勝利に酔いしれるがよい。 だが………」
「!?」
「この世界は消滅するのだ! 私の憎悪の力で! 愚かな貴様らもろともな!!」
そういい、エルギオスはさらに自らの力を解き放とうとする。
「チクショウが、まだ懲りてねぇのか!」
イアンはエルギオスにたいし舌打ちをしつつそう吐き捨てる。 こうなればもう一度戦い、本気で息の根を止めるしかないと思いフィリスが再び星屑の剣を構えようとしていた、その時だった。
「…………やっと、見つけたわ…………」
女性の声が聞こえて、エルギオスの前に青い光が舞い上がる。 その光の中からは、一人の女性が姿を現した。
「!?」
「ラテーナさん!」
「…………ラテーナ………なの……か…………?」
己の目の前にいる女性の姿を見て、エルギオスも驚いているようだ。 目の前に現れた、かつて想いを寄せていた女性をみて狼狽えたが、すぐに我に返り憎悪の感情を思い出すと、彼女に吐き捨てる。
「…………私を裏切った人間の娘が、今更何用だ!!」
「……………エルギオス…………あなたを…………ずっとずっと………探していた…………!」
その姿と怒声、そして彼の周囲を覆う強力な波長に物怖じすることなく、ラテーナはエルギオスに近付く。 すると彼女が持っていた星空のペンダントが強い光を放ち、ラテーナはかつての記憶を告げ彼に見せながら、彼に語りかけていく。
「……………あの日、私は………あなたを守れなかった…………。 あなたにつらい思いをさせてしまった………… だからずっと探し続けていたの。 今度こそ…………あなたを…………あなたを救いたい…………。 絶望の闇の中で迷う……あなたを……………」
そう語りかけながら、ラテーナはエルギオスを抱きしめる。 その瞬間、2人は強い光に包まれた。
「うっ!」
「………!」
そのあまりの眩しさに4人は目を閉じるが、次に目を開けた瞬間にはその目が丸くなる。
「あれは………!」
「白い翼………そしてこの神々しい光…………あそこにいるのは紛れもなく……………」
「天使・エルギオス…………!」
エルギオスは、先程までの悪魔の姿ではなく、美しい天使の姿になっていたのだ。
「…………ああ………ラテーナ…………」
そこにいるエルギオスは、目の前にいる女性の手を取り、彼女の顔を見つめて語りかけている。
「君は………私を裏切るはずなど……なかったのだ。 それに気付かなかった………己の未熟さが…………恥ずかしい………」
エルギオスは、自分が憎悪の感情に飲まれてすべてを滅ぼそうとしていた過ちを悔いていた。 自分よりも彼女のほうが、後悔し苦しみ続けていたことも知り、彼女を慰めるように言う。
「ラテーナ、辛かっただろう。 こんなにも長い年月を………愚かな私のために使い、それにより君はずっと………さまよってしまった…………。 それなのに、あの頃と変わらず、こんな私のために微笑みを返してくれるというのか……………」
そのほほえみをみて、醜い堕天使となってもなお、彼女は自分を想ってくれていたことを知る。 自分が知るよりずっと、ラテーナは慈悲深くそして自分を愛していたとエルギオスは悟った。
「…………フィリスよ、そして彼女と道を歩みし人よ………」
「!」
「もしお前が止めてくれなければ、怒りと憎しみに我を忘れ………私は全世界を滅ぼしていただろう…………」
そんな2人を暖かく見守っていたフィリス達に、エルギオスは語りかけてきた。
「我が愚かなる行いの数々………償っても償いきれぬが………せめて罪を重ねずにすんでよかった…………」
そう語りながら、エルギオスはフィリスが持っていた星屑の剣に目を配る。 それは、かつて自分が所持し、弟子に受け渡したものだから。
「…………そして、お前は………その剣も受け継いでくれていた…………」
「…………あたしは先に言ったはずです。 この剣は大事な宝物。 そしてこの剣に誓った…………世界を、この手で守ると…………」
フィリスは迷いなく、エルギオスにもう一度己の意志を伝える。 その言葉でフィリスの強さと優しさを知ったエルギオスは、もう生きていないあの男について、語る。
「…………我が弟子イザヤールよ、お前は、よき弟子を育てた…………ふがいない師を許してくれ…………」
「…………行きましょう、エルギオス………」
「……ああ……」
エルギオスとラテーナは、互いに見つめ合いうなずきあうと、光となって夜空にのぼっていった。 その二つの光はやがて、夜空のとても強い光を放つ星となる。
「昇っていっちゃったな………」
「ええ………」
「これで、すべて解決かしら………」
その様子を見ていたイアン、セルフィス、クルーヤはこの結末でよかっただろうかと語り合う。
「そうなんだよ」
その結末に対し、フィリスが答えを出した。
「これでいいんだ、これで!」
フィリスは、星空を見つめてそう口にした。 そこには、二つの大きな星が、輝いている。
次回が最終回です。
最後までおつきあい、おねがいいたします。