セントシュタインの黒騎士問題を、フィオーネ姫の協力のもと解決したフィリスたち。
息ぴったりで事件を解決させた4人は、やがてある決断を迫られる。
それにたいし、4人はどうこたえるのか……
フィリスと仲間達はフィオーネ姫を兵士とともに護衛しながら、セントシュタイン城に戻ってきて、一連の流れを国王に全てはなした。 さすがにここまでくれば、セントシュタイン王もわかってくれた。
「………わしも、流石に頭に血がのぼってしまっておったわい……。 このことは反省しておる。 わしも……このことは無駄にしないようにせねばな………」
「ようやく、何事にもおびえず、この国でゆっくり過ごせるのですね。 ………うっ……うっ………。 ああ………ごめんなさい………安心したらうれし涙が………」
「貴女達には感謝しております…。 もし今後も旅を続けられる中で困ったことがあれば、今度は私達が力になりましょう」
そう言ってくれたフィオーネ姫に、フィリスはあの黒騎士のことを思いながら告げる。
「彼のこと、忘れないであげてくださいね」
「はい」
決して彼のことは忘れない、とフィオーネ姫はフィリスとも堅く約束し、そしてこの国をさらに美しい国にして、守るのだと彼女は誓う。 その決意の強さは、フィオーネ姫の満面の笑顔に現れていた。
「貴女達のこれからの旅の無事を祈りますわ」
そう言葉を交わした後、フィリス達は王城をあとにした。 彼らはもう時間もいいところだし、ということで一晩休むために宿屋に向かうと、ちょうど彼らを泊める準備ができていると教えてくれた。
「じゃあ、早速泊まる?」
「うん、お願いするよ」
そう言って4人は男女に分かれて泊まることになり、今は酒場の席で会食をしている。 ちなみに新しい装備品や今後の旅の資金は、今回の件を解決してくれたお礼としてセントシュタイン王が出してくれた。 これなら今後の旅も大丈夫だろうと彼らは思っていた。
「そういえばさ」
「ん?」
ふとそこで、イアンは一度酒を置いて思い出したことをそのまま口に出した。
「ルイーダさんが言っていただろ、このメンバーで今後も旅をするかは、黒騎士の一件が終わってから改めて考えてみたらどうだって」
「あ」
そういわれていたことを、思い出した。 奥にいるルイーダも、そういえばそうだったわねと言っている。 どうやら彼らに一緒にいるように進めた張本人も、そのことをすっかり忘れていたらしい。 そんなルイーダのリアクションをみたイアンは、からっと笑う。
「忘れちまってたってことは、あの短い時間でオレ達、すんなりとなじんじゃったというわけだな!」
「そうですね、戦っている間もこれといって違和感を覚えたことはありませんし」
「みんな割と息ピッタリだったな」
パーティーをくむことになってから解決するまでの、今回の一件の流れすべてを思い出す。 互いに得意分野を生かして、まるで長年チームを組んでいたかのように戦っていたし事件の解決にも努めた。 それに、なんとなくではあるが、それぞれがどういう人間なのかもわかった気がする。
「もう少し、一緒に旅を続けてみてもいいかもしれないね」
「ああ、そうかもな」
「今後の目的はとくに決まってはないですけどね」
確かに、いくら息があっていてもうしばらくともに旅を続けることになったとはいえ、今後の旅の目的も決まらない。 これからどうしようか、という話になったとき、イアンがある提案をする。
「とりあえず、今日はこのまま、この宿屋で眠って休もうぜ。 みんな、クッタクタだろ?」
「そうだな…リッカ、今晩はお世話になるね」
「あ、うん!」
フィリスの言葉に応じてリッカは、フィリスとクルーヤを女性用の部屋に、イアンとセルフィスを男性用の部屋に案内する。
「あたしは別に男と一緒の部屋でも平気なんだけど……別々の部屋を用意してもらっちゃっていいの?」
「いいの、いいの! だってフィリス達大活躍だったんだもん。 このままゆっくり休んで」
「ああ、さんきゅ」
「じゃあ、おやすみなさい」
「うん、おやすみ」
そう言葉を交わして、リッカは部屋を出ていった。 フィリスとリッカのやりとりを見ていたクルーヤはふふっと笑う。
「仲がいいのね」
「ああ、リッカはあたしにとっては、命の恩人ってところなんだよ。 そして…あたしはその恩返しとして…あの子の背中を押したって感じかな」
「そうだったんだ、じゃあ特別な友達なのね」
「そうだな…」
その後フィリスとクルーヤは、他愛のない話で盛り上がった。 正直フィリスは女の子らしいことを苦手としているため、彼女と話をして楽しめるのかと心配もしたが、クルーヤもそれはどことなく理解していたようであり、フィリスと話の波長を合わせてくれた。 そのおかげで、フィリスもクルーヤも会話を楽しむことができた。
「じゃあ、もう時間もいいところだし…寝ましょう。 おやすみなさい」
「ああ、おやすみ」
そして、そう会話を交わした後で2人はベッドに潜り、眠りにつくのであった。
早朝、フィリスはサンディに起こされて、仲間達より先に目を覚まし、2人きりでとある場所に向かっていった。 天の箱船がどうなったかを、確認するために。
「ふぁぁぁ~~~……」
「チョーでっかい欠伸とか、うけるんですケド」
「うっせーな」
そう会話をしながら、サンディは昨日のことを話す。
「グッジョブだったね、フィリス! あのとき、みーんなアンタに感謝して、星のオーラが国の周りにあふれていたんだヨッ!」
「え、ホントに!?」
「あ、そういえばアンタ、星のオーラ見えないんだっけ! 超うける!」
「…………」
サンディはあくまでからかうためにそう言ったのだが、フィリスはそれが気に入らないようであり、すっと剣を抜いた。 それにたいしサンディは身の危険を感じて慌てて彼女を止める。
「………あ……じょ、冗談だよ…冗談…。 だから…そうやって剣を抜かないで、ネ……?」
「…………ッチ」
フィリスは舌打ちをしながら剣を鞘におさめる。 そんなやりとりがあったものの、とりあえず天の箱船のある峠の道にたどりついた。
「うーん………パッと見、変化ナシかも」
「みたいだな」
「とりあえず開けちゃおう!」
そう言ってサンディは天の箱船の扉を開け、一足先にその中に入って様子を確かめる。 中の様子に変化がなく、スイッチを押したりしてみたようだが、それでも変化は起こらない。 それにたいしサンディがなんでなのーと頭を抱えてうなっていると、フィリスがその天の箱船に乗る。 すると、天の箱船全体がガコンという音を鳴らして大きく揺れた。
「おっ!?」
「あ、今アンタが乗ったら動いたヨッ!」
「うん、確かに今ガコン、て言ったよな」
それにはフィリスも気付いていた。 最初は彼女が乗っただけではなにも起こらなかったのに、今回は揺れたのだ。 その揺れは一度きりの一瞬のものではあるのだが、それでもサンディにはひとつの希望が見えた気がした。 そして、サンディはとある結論に至る。
「もしかして、星のオーラが出てきたことによって、アンタに天使の力が戻ってきているんじゃないの!?」
「え、ホントに!?」
見えない星のオーラが、こんなところに影響しているなんて。 だがその説が有力であり、そこに賭けるしかないのもまた事実である。
「もっと人助けをしたら、星のオーラをいっぱいゲットできて、アンタに天使の力が戻ってくるかもしれないヨ!」
「そっか、それでいこうぜ!」
サンディのその後押しの言葉を受けて、フィリスはその作戦に乗ることを決めた。 だがそこでふと、フィリスはあることを思い出し呟く。
「でも、人助け…の旅か………」
「ン?」
「みんな、納得してくれるかな……?」
フィリスが気にしているのは、この旅に付き合わせることになるであろう、イアン達のことだった。 とにもかくにも、このまま仲間を放置したままでいる方がダメだろうなと思い、フィリスとサンディは急いでセントシュタイン城に戻ってきた。 時刻はすでに、完全に日が昇っている頃なのだ。
「あ、いたいた!」
「イアン」
戻ってきたフィリス達に、宿屋の外にいたイアンが気付いた。 達、といっても、イアンにはサンディの姿は見えていないためフィリスが一人で外にでて一人で戻ってきたようにしか思えないのだが。
「探したぜ、他のみんなはもう起きてるぞ」
「あはは…ゴメンゴメン…」
その後もイアンはフィリスになにをしていたのかを聞くものの、あまり事情を知られたくないフィリスは適当にはぐらかす。
「なんだってんだ?」
いつかは聞き出してやる、とイアンはそう胸に強く誓いながらも、この場は身を引いた。
宿屋に戻ってみると、イアンの言っていたとおりセルフィスとクルーヤの姿があり、戻ってきたフィリスを見て彼女に駆け寄ってきた。 どうやらフィリスのことを心配していたようだ。 彼らに軽く謝罪を告げてから、これから自分がどうしたいのかを正直に彼らに打ち明けた。
「人助けをするための旅をしたい?」
「うん」
詳しいことはいえないが、大まかに間違っていない事実を告げる。 今回の事件を通して、同じような事がほかの場所でも起きているんじゃないかと思ったこと、そしてそれにより困っている人がいるのなら放っておけないこと、そんな人々を助けたいということ。
「なーるほどなぁ…」
「え、なにが…なるほどなんだ?」
全ての話を聞いたイアンは、どこか納得したような顔になり、それにたいしフィリスは戸惑う。
「お前ってどっか、お人好しって顔してるもんな」
「え、あたし…そんな顔してた!?」
「おー、してるしてる」
イアンのその言葉に対しフィリスは驚き自分の顔をペタペタとさわる。 そんな様子をサンディが苦笑しながら見つめると、同じようにフィリスの様子をみていたクルーヤがクスクスと笑いながら彼女に声をかけてきた。
「けど、いいんじゃないかしら、人助けをしまくる旅っていうのも」
「クルーヤ……」
「あなたの言っていること、間違っていないもの……私はあなたを信じるわ」
そうクルーヤが言うと、イアンとセルフィスもそれに続く。
「……確かに、前の大地震以降、おかしいこと続きだしな…………」
「…このセントシュタイン城の、黒騎士の一件のように……困っている人が多いんではないでしょうか………」
「それを一つ一つ解明していき、解決する旅うん、悪くないかもしれないわね!」
「………あたしの提案、というか……やりたいことに、協力してくれるのか……?」
フィリスの言葉に対し、全員はうなずく。 その反応に対しフィリスは胸の内が熱くなるのを感じて、3人に笑いかけながらありがとうと告げる。
「そうと決まれば、とりあえずここを旅だって進みましょう! 丁度塞がっていた関所があいたって話だもの!」
「いつの間にそんな情報を!?」
驚くフィリスに、ルイーダが話しかけてきた。
「ふふん、ここは酒場でもあるという情報を忘れていたのかしら?」
「ルイーダさん」
「実は私とセルフィスで、ここであなたとイアンを待っている間にルイーダさんが教えてくれたの」
「情報収集は、いろんな人が集まる酒場が鉄板。 覚えておきなさい」
「は、はい」
なにはともあれ、次の目的地は決まった。 新たに開いたという関所の向こうの地だ。 そこにいけば、なにか手がかりが見つかるかもしれない。 そう決めたフィリスは、その酒場で朝食を食べ、準備を整えた後にセントシュタインをあとにするのであった。
「じゃあまたねフィリス、みんな!」
「いつでもいらっしゃい!」
「いってきまーす!」
リッカやルイーダに、見送られて、4人は先へ進む。
セントシュタインの東の関所は、先の一件によりしばらく閉鎖されていたのだが、事件が解決して安全が確認されたことにより再びその道が開かれた。 早速4人はその関所を通り抜け、先へと進んでいった。
「ちょっと、やってみちゃうよー!」
途中でもみじこぞうの群におそわれたが、そこでクルーヤは派手にイオの魔法を放って一気に吹っ飛ばして倒す。 同時に出現したしにがみも、セルフィスは槍を振るい対応していく。 そしてがいこつもフィリスとイアンがそれぞれ直接攻撃をして倒した。
「軽いな」
「ああ」
セントシュタインで初めて会ってから、約一週間と少しが経過しているものの、その中でフィリスは仲間達がどのような人間であるかを知っていった。
イアンは最初にあったときから思っていたが、武術に優れていて竹を割ったような人間であり、とても面倒見が良い。
セルフィスは礼儀正しく、とても優しい性格なのだが、見かけによらず体力があり、先程のように槍を扱っては魔物と互角に戦える。
クルーヤは明るくハキハキとしており、大胆な一面を持っているが、魔法の腕はピカイチであり、攻撃魔法で敵を豪快に吹っ飛ばす。
そして、全員困っている人を放っておかず、皆を仲間として友好的に接してくれる。
それが、フィリスが仲間達に抱いた印象である。
「このまま行けば…ベクセリアの町にたどり着きますよ」
「ベクセリア、かぁ…」
その地名を聞いて、フィリスは初めてセルフィスと会ったときのことを思い出してその話題を切り出す。
「そういえば、セルフィスはベクセリアの町の出身だったよな」
「はい、半年ほど前………僕は様々な天使の伝説や言い伝えを中心に調べながら行う、巡礼の旅に出たのです。 両親は僕のことが心配だったようで……反対していたのですが………唯一姉だけが、僕を応援してくれました」
「お姉さんがいるのね」
「はい」
セルフィスは懐かしそうに笑みを浮かべながら、故郷や家族についての話を続ける。
「姉上は、僕が旅立つ少し前に結婚したんですよ」
「え、ということはまだ新婚さんの段階?」
「はい。 ちょっと色々あったのですが…今はどうなっているのでしょうね。 このまま町につくことができたら、みんなにも紹介しますね」
「楽しみだな」
そう会話をしながら、セルフィスの案内の元、ベクセリアの町がある方向へ向かう。 その途中でセルフィスの動きがどこかせわしないので、その様子が気になったフィリスはセルフィスに声をかける。
「セルフィス?」
「ふふ、まだ旅の途中であるとはいえ……故郷に帰るのは緊張しますね……」
「故郷、か……」
その単語に対しフィリスは目を少し細める。 脳裏に浮かぶのはやはり、どうあがいても今はまだ戻れそうもない、雲の上の遙か高い空にある自分の故郷だった。
「……あ、見えてきました! あそこがベクセリアです!」
「え、ああ!」
セルフィスの声で我に返ったフィリスは、彼の指さす先にある町を見つめ、そこへ向かってまっすぐ歩いていく。
「………これは………!?」
だが、その町についた瞬間、全員の顔は驚きの色に染まった。 町は全体的に薄暗く、歩く人々の顔にも陰がさしている。 空気も、とても重い。
「おい、この町って……もとからこんな………」
「ち、違いますよ! ホントはもっと明るい町なんです、ベクセリアは!!」
イアンの言葉に対しセルフィスは強く反発したのち、改めて町を見渡す。
「町全体が暗く、そして重い空気に包まれている……。 僕がいない間に、なにがあったんだろう………?」
そう考えていると、偶然通りがかった一人の荒くれがセルフィスに気付いて近づき、声をかけてきた。
「あ、セルフィス坊ちゃん!?」
「へっ?」
その単語を聞き、3人はセルフィスの方をゆっくりむき、同時に声を上げるのであった。
「「「坊ちゃん!!?」」」
次回予告。
4人で人助けの旅をすることを決めたフィリス一行は次の目的地・ベクセリアにやってきた。
そこはセルフィスの故郷であるのだが、その街は陰湿な空気に包まれていた。
その陰湿な空気の原因は、この町を襲っている病魔とのことだ。
自体を解決させるには、とある考古学者の協力が必要らしいのだが…?