残念系天才魔術師と禁忌教典   作:ヒトでなし筆者

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運動不足の人!
腕を前に出した状態で膝を曲げながら腰を落としてみましょう!
これを60秒やるだけでも全然違いますよ!


ダメ人間の狂騒

「はーい、『飛行競走』の種目に出たい人、いませんかー?」

 

 沈黙。反応するものは誰一人として存在しない。

 

「…じゃあ、『変身』の種目に出たい人ー?」

 

 またしても沈黙。システィーナの声には誰も応えない。

 

「はぁ…」

 

 溜め息がこぼれる。ここまで反応がないと張り合い甲斐がない。

 

「無駄だよ。皆、気後れしてるんだよ。

 そりゃそうさ。他のクラスは例年通り、クラスの成績上位陣だけが出場してくるに決まってるんだ。

 最初から負けるとわかっている戦いは誰だってしたくない。そうだろ?

 おまけに今回、僕達二年次生の魔術競技祭には、あの女王陛下が賓客として御尊来なさるんだ。みんな、陛下の前で無様を晒したくないのさ」

 

 別にそんなもの気にしないやつが約一名いるが、惰眠をむさぼるために競技には一切参加しないだろう。

 

「エアは参加しないの?本気出せば一位になれるのに…」

 

「出さない本気は無いのと一緒だよー。それに何度も言ってるけどー、そもそも僕は夜型なんだ。昼間は寝たいんだー」

 

「もし優勝したら昼間寝ていいように交渉するわ」

 

「詳しく聞かせてもらおうか」

 

「釣れたよ…」

 

 こんなあっさり釣れてしまいました。なんて現金な奴なんだ。

 

「話は聞かせてもらった!ここは俺に任せろ!この!グレン=レーダス大先生様になッ!」

 

 何の前触れもなく扉が勢いよく開け放たれ、謎のポーズを決めながら非常勤講師、グレンが現れた。

 

「ややこしいのが来たぁ…」

 

 システィーナは頭痛を覚え、頭に手を当てる。

 

「喧嘩は止めるんだ、お前たち。争いは何も生まない。

 そして何より俺たちは優勝と言う一つの目標を目指して、ともに戦う仲間じゃないか」

 

 キモい。

 この時生徒の心の声は完全に一致した。

 

「おい白猫。リストよこせ」

 

「だから人を猫扱いしないでください!」

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「じゃあこの1番配点が高い『決闘戦』は白猫とギイブル、そんでエア。お前ら三人が出ろ」

 

「納得いきませんわ!どうして私が決闘戦の選抜から漏れているんですの!」

 

「お前、確かに呪文の数も魔術知識も魔力容量もスゲェけど、ちょっとどん臭ェところあるからなー。突発的な事故に弱ぇし、たまに呪文噛むし」

 

 魔術師同士の戦闘で詠唱を噛むのは致命的だ。向いていないと言ってもいいかもしれない。

 

「せんせー。どうして僕も出るんですかー?」

 

「お前が強いからに決まってるだろ。前の事件でも敵の魔術の軌道を変えてたしな。

 不測の事態にも対応できるし、頭の回転も速い。

 これ以上の適役はいないと思うぞ」

 

「こんなことなら先生の前であんなことしなきゃよかった…」

 

「優勝したら俺の授業で寝てもいいと言ったら?」

 

「詳しく聞かせてもらいましょう」

 

 やはりあっさり釣れる。

 

「じゃあ次だ―――」

 

 その後も的確に、余る生徒がいないように出場競技を決めていく。その的確さに生徒は舌を巻く。が、

 

「やれやれ、先生いい加減にしてくれませんか?

 なにが全力で勝ちに行くですか。こんな編成で勝てるわけないじゃないですか」

 

 異論を唱える者がいた。みなさんご存知ギイブルだ。

 

「ほう?ギイブル。ということはお前、俺が考えた以上に勝てる編成ができるのか?よし言ってみてくれ」

 

「そんなの決まってるじゃないですか!成績上位者だけで全種目を固めるんですよ!それが毎年の恒例で、他の全クラスがやっていることじゃないですか!」

 

「…え?」

 

 ここでグレンは自分がやらかしたんじゃないかと思い始めた。

 そしてエアも自分の役目がなくなる可能性を見た。内心そうなってくれと願う。

 

「何を言ってるのギイブル!せっかく先生が考えてくれた編成にケチつける気!?」

 

 しかしなんとシスティーナはギイブルの意見に真正面からぶつかっていった。

 おいバカヤメロォ!?(心の声)

 

「皆見て!先生の考えてくれたこの編成を!皆の得て不得手をきちんと考えて、皆が活躍できるようにしてくれているのよ!?」

 

 それはシスティーナが思い描いていたものにとても近かった。

 

「先生がここまで考えてくれたのに、皆、まだ尻込みするの!?

 女王陛下の前で無様を晒したくないとか、そんな情けない理由で参加しないの!?

 それこそ無様じゃない!陛下に顔向け出来ないじゃない!」

 

 グレンは思った。頼むからこれ以上余計なこと言わないでくれと。

 

「大体成績上位者だけに競わせての勝利なんて、なんの意味があるの?

 先生は全力で勝ちに行く、俺がこのクラスを優勝に導いてやるって言ってくれたわ!

 それは、皆でやるからこそ意味があるのよ!」

 

 グレン先生そこまで考えてないと思うよ。というよりほんとにそんなことは考えていない。

 

「まぁいい。それがクラスの総意だというなら好きにすればいいさ」

 

 神は死んだ!(心の声)

 

 

 

◇◇◇

 

 

「エア、頼む!昼飯おごってくれ!」

 

 なんとグレンは自分の教え子(ただしいつも寝てるやつ)に頭を下げるという暴挙に出た。

 

「お金ないんですかー?」

 

「未来に先行投資したんだ」

 

 今もおぼつかないのに未来に投資しないでくれ。

 

「生徒に頭下げて恥ずかしくないんですかー?」

 

「ふっ…いいことを教えてやる。プライドで腹は膨れないんだよ!」

 

 かっこつけていっているが、少なくとも胸を張って言えるようなことではない。

 

「仕方ないですねー。授業中に寝ることを許可することを条件にー、大会まで昼食をおごりますよー?どうです?悪い話じゃないでしょー?」

 

「ああ、交渉成立だ!」

 

 この日、ダメ人間とダメ人間の間に条約が結ばれた。誰でもいいからこいつらを止めてくれ。

 

 

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