残念系天才魔術師と禁忌教典   作:ヒトでなし筆者

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暇つぶしに、部屋を掃除したり模様替えしてみてはどうでしょう


傍観者

 現在エアは吹き飛ばされたグレンの元に足を運んでいた。

 

「なーにやってるんですかー」

 

「いや俺は悪くねェ!間が悪かったんだ、間が!」

 

「いやーどっちにしろ勝手に食べたのは事実でしょー?後でルミアとシスティーナに謝った方がいいんじゃないですかー?」

 

「…そうだな」

 

「僕も弁当ほっぽって来ちゃいましたしー。一緒に頭下げますよー」

 

 エアもグレンも長時間説教されるのは御免蒙りたい。この二人の思惑は一つだった。

 

「あっ!グレン先生、差し入れ持ってきました!エア君にもあるよ!」

 

「まじか!」

 

「はい!サンドイッチなんですけど…」

 

「天使様だ、天使様がここに降臨なさった…」

 

 グレンは涙を流し、両手を組んで、誠心誠意全身全霊で拝んだ。

 

「崇拝してる場合じゃないでしょーが。それよりシスティーナ怒ってなかったー?」

 

「怒ってたよ、すっごく」

 

「あはは…」

 

「あはは…」

 

 笑うしかなかった。

 

「それよりこれルミアが作ったのか?」

 

「いえ、私不器用なので料理とかは苦手で…」

 

「じゃあ誰?」

 

「それは秘密です。本人たっての希望なので。

 ただある男性のために早起きして作ったらしいんですが、渡しそびれちゃったらしくて」

 

「へー…」

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「そこのあなたはグレン=レーダスですよね?少しよろしいでしょうか?」

 

「よろしくありませーん。今忙しいデース」

 

「いや先生、そーゆーのは顔見てから言いましょーよ」

 

「顔?…ってアイエエエエ!?女王陛下!?女王陛下ナンデ!?」

 

「先生落ち着いて。変な電波拾ってますよー?」

 

 ニンジャソウルでも宿ったのだろうか。

 一応の落ち着きを取り戻したグレンは頭を垂れる。

 

「お久しぶりですね、グレン。今日の私は帝国女王ではなく帝国の一市民、アリシアなんですから。ほら、面を上げて立ってください」

 

「…失礼します」

 

 アリシアの一声でエアやグレンは頭をあげる。

 

「私は貴方に謝りたいとおもっていました。

 この国のために必死に尽くしてくださったのにあのような形で帝国宮廷魔道師団を除隊させることになってしまって…」

 

 王女が民に頭を下げるなど前代未聞だ。

 

「いやいや陛下が俺みたいな社会不適合者に頭を下げちゃダメですって!

 俺なんて仕事が嫌になって辞めただけのゴミクズなんで!」

 

「そんな簡単に頭を下げないでくださいよ陛下。誰かに見られてたらこっちが悪者にされちゃいますよー」

 

 グレンは両手をブンブンと振って、エアはキョロキョロと周りに誰かいないか見回している。

 

「それにしても陛下、護衛も付けずにどういった御用向きで…」

 

 グレンの言葉に視線をずらすことで答えた。

 

「久しぶりですねエルミアナ」

 

「え…」

 

「元気でしたか?ずいぶんと背が伸びましたね。

 フィーベル家の皆様との生活はどうですか?何か不自由はありませんか?

 食事はちゃんと食べていますか?育ち盛りなんだから無理な減量とかしちゃだめですよ?

 それと、いくら忙しくても、お風呂はちゃんと毎日入らないとだめよ?

 貴女は嫁入り前の娘なのですから、きちんとしておかないと」

 

「あ、あう…」

 

 うつむくルミアに気が付いているだろうが、それでも喜びが隠し切れないのか、語り続けるアリシア。

 

「夢みたい…またこうしてあなたと…」

 

 アリシアは彼女の頬に触れようと手を伸ばす…が、その手は空を切ることとなった。

 

「陛下は失礼ながら勘違いをされております。私はルミア=ティンジェルと申します。

 恐らくですが、陛下は三年前にご崩御なされたエルミアナ=イェル=ケル=アルザーノ王女殿下とご混同なされているかと」

 

 ルミアは跪き、そう言った。言ってしまった。

 

「…」

 

 どうやらひと波乱ありそうだ。

 

 

◇◇◇

 

 

 

「ちょっとエア!お弁当放っておいてどこ行ってたのよ!」

 

 競技場に戻ってきたが、ごらんのとおりシスティーナはカンカンだ。

 

「いやー、グレンせんせー追いかけるついでにいいお昼寝ポイントがないか探してたんだよねー。

 あ、もしかしてお弁当捨てちゃった?」

 

「もったいないからほかの人にあげちゃったわよ!もう一回作ってって頼んでもダメよ!」

 

「はーい。申し訳ありませんでした…」

 

「謝っても許さな…え?」

 

「だから申し訳なかったって…」

 

「あ、あなたが謝るなんて…槍でも降るのかしら」

 

「失敬な、僕だって謝るときは謝るよー…」

 

「そ、そう…それよりルミア見なかった?」

 

 気まずくなったシスティーナ。突然話題をすり替える。もちろんエアにはばれているが。

 

「いや見てないよ。もしかして戻ってきてないの?」

 

「そうなのよ!もうすぐ競技が再開するのに…」

 

「それなら、たぶんグレン先生が探してくれるでしょー。僕らは『決闘戦』の準備しないといけないから探してるヒマないしー。

 まー、ギイブルがしくじらない限り君の出番はないと思うけどねー」

 

「そんなこと言って、あなたが負けたらどうするの?」

 

「負けるわけないだろー?だって僕の方が速いんだから」

 

 事実詠唱なしでも魔術の行使が可能なほどに、暗示がうまい。詠唱が必要になる生徒が相手ならば、負ける可能性は無いに等しい。それに加えてエアには切り札がある。勝てないはずがないのだ。

 

 

 

◇◇◇

 

 

「さて、彼らはどう出るかな?楽しみだなぁ!」

 

 悪魔は嗤う。 

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