残念系天才魔術師と禁忌教典   作:ヒトでなし筆者

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今回の人類の敵はCOVID-19
コロナと名のつくものすべてが敵と言うわけではないんです。


月夜ばかりと思うなよ

 グレン=レーダスの不在。これは2組の士気に大いにかかわっていた。

 現在2組は勢いが落ち、1組に順位を抜かれてしまっている。クラスの中には早くも諦めてしまっている生徒もちらほら。

 

「お前たちが二組の連中だな?」

 

「そうですけど…あなたたちは?」

 

「俺たちはグレン=レーダスの古い友人だ。

 魔術競技祭の後、旧交を温めようとグレンに招待されたのだが、奴は突然の用事が入ってしまい立て込んでいる」

 

 どうやらグレンは来れないらしい。だがそんなことはエアには関係ない。

 やるべきこと自体は変わらないし、もともとやる気なんて有って無いようなものだ。

 監督が変わろうとも、彼のやるべきことは変わらない。

 

「ぐぅ…」

 

 変わらないのだ(迫真)

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

「《大いなる…」

 

「《えい》」

 

 圧倒的な速度。まさしく神速。

 エアの【ゲイル・ブロウ】は相手に一切魔術を使わせることなく場外に吹き飛ばした。

 

「悪いけど時間とられちゃかなわんのだよねー」

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 結局そのあとギイブルがゴーレムで選手を捕まえて撃つ抜くという策を使ったことで、二組の優勝が決定した。

 そんな後の勝敗が関係ない大将戦(エアだったら間違いなく手を抜くであろう状況)だったが、システィーナは全く手を抜くことは無く、相手を風魔術で場外まで吹き飛ばした。その精神は称賛に値するだろう。

 

「それでは、今大会で優秀な成績を収めたクラスに女王陛下からの勲章が下賜されます。二組の代表者は前へお願いします」

 

「貴方たちは…アルベルトとリィエル?」

 

 そこに本来なら勲章を受け取るはずであるグレンの姿は無く、代わりに帝国宮廷魔導士であるアルベルトとリィエルの姿があった。

 

「申し訳ありません女王陛下。此度はもろもろの事情により、例年とは違う形になっていますが…」

 

「なあ、おっさん」

 

 アルベルトが割り込む形で口を開いた…が、明らかにアルベルトの声ではない。

 

「いい加減、バカ騒ぎは終いにしようぜ?」

 

 その言葉と同時に彼らの姿が歪み、そこには親衛隊に追われているはずのグレンとルミアの姿があった。

 

「貴様ら、なぜここに!?」

 

 答えは簡単、【セルフ・イリュージョン】だ。

 この魔術でグレンとルミア、アルベルトとリィエルを入れ替えたのだ。

 

「親衛隊、賊を捕らえろ!」

 

 ゼーロスの号令により兵が殺到する。しかし…

 

「《すっこんでろ》」

 

 セリカの結界に弾き飛ばされた。

 

「なんだ、何が起こったんだ!?」

 

 蚊帳の外になった生徒たちは騒ぎ出す。

 それもそうだ。なんせ目の前で二人の姿が変わって親衛隊が襲い掛かったと思えば結界に弾き飛ばされ見えなくなったのだから。

 

「…」

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「まったく、結界とはなかなかに意地が悪い。まあ、こちらの行動に一切の影響はないんだけどさ。

 あとはアレを持ってくればいい。あのグレン=レーダスもきっといい反応をしてくれるだろう。

 ああ、その時が楽しみだ!待っていろよグレン=レーダス!アハハハハハハ!」

 

 街に響く悪魔の声は、透き通る月夜に掻き消えた。

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「あれ、エア君?」

 

「やあルミア。先生も」

 

「エア君がシャキッとしてる…」

 

「いつもならずっと眠そうにしてるのにな」

 

「夜ならこんな感じですよ。なんせ僕は夜型ですから」

 

 眠そうな昼間のエアしか見たことがないルミアとグレンからすれば、ちゃんと目が開かれたその姿は異質に感じるようだ。相変わらず死んだ目をしているが。

 

「それよりどうして今来たんだ?」

 

「学園に忘れ物をして、探すのに少々手間取りました」

 

「忘れ物ってイヤーマフか?」

 

「いえいえこれですよ」

 

 だからといっていきなり耳を出されても困るのだが。

 

「うおっ、なんじゃこりゃ!」

 

「僕の耳を模した義体です」

 

「なんつーモン作ってんだお前!」

 

「腕とかもありますよ?」

 

「わかったわかっただから出すな!」

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

「どーん!」

 

「おわっ」

 

 扉を開けた途端、何かがエアに飛びついて来た。

 

「えへへ、えあー♪」

 

 顔を赤く染めたシスティーナが突撃してきたのだ。

 どうやらずっと待っていたようだ。

 

「君、酒臭いぞ…」

 

「システィがこんな素直に…」

 

「いやいやこれは明らかに酔って正常な判断が出来なくなってるだけでしょ」

 

 割と周知の事実だが、システィーナは酒に弱い。具体的には酒の入ったお菓子程度で酔うほどだ。

 

「誰だシスティーナにこんなになるまで飲ませたのは」

 

「わたくしですわ!」

 

「君だったのか」

 

 暇を持て余した学園生徒の遊び。

 犯人はウェンディだった。

 

「えあー!」

 

「はいはいなんだいシスティーナ?」

 

「むー…」

 

 名前を読んだ途端、頬を膨らませた。

 

「いやなんでそんな顔してるんだ?」

 

「しすてぃってよんで」

 

「え?」

 

「しすてぃってよんでってばー!」

 

「わかったわかった。システィ」

 

「むふふ。えあー!」

 

「はいはい、なんだいシスティ?」

 

「だいしゅきー!」

 

「…は?」

 

 システィーナの 爆弾発言 ! 効果は 抜群だ !

 当然ながら周囲は沸き立つ。

 

「いやいや違うでしょ」

 

「あいしてるー!」

 

「違うってそういうことじゃないんだけど…」

 

「えあはわたしのこときらい?」

 

 上目使いで彼の顔を覗く瞳には涙が浮かんでいる。これでキライなんて言ったら、もはやただの大悪党だ。

 

「嫌いじゃないよ」

 

「じゃあしゅきー?」

 

「ぐむむ…」

 

「しゅきっていってよぉ…」

 

 泣きそうだ。こんなところで泣かれたら最低の男として学園中の噂になってしまう。それだけは避けなくてはならない。

 

「…好きだよ」

 

「わたしもしゅきー!だいしゅきー!」

 

 ヒューヒューと囃し立てる群集。抱きついたままのシスティーナ。どうしようもないエア。

 何と言うことでしょう。賑やかだった宴会が、一瞬にして別の意味で賑やかになったではありませんか。

 

「あいしてるっていってー!」

 

「…愛してる」

 

「わたしもー!」

 

「…誰か助けてー」

 

 

 

 




システィかわいいと思いませんか?
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