どーも、青い灰でございます。
今回は東方、茨木華扇の物語です。
東方茨歌仙で華扇の仙道を目指す理由が
なかったと思うので思い付きで。
※この作品は「東方project」の二次創作です。
実在の団体、個人とは一切関係ございません。
ではでは、どーぞ。
この世は……………地獄だ。
「…………ぁ……あ……」
満たされない。
腹が。思考が。欲が。失った、腕が。
こんなにも、非情なのか。
鬼だというだけで、迫害され、
追い回され、殺されるのか。
食事をとることも許されないのか。
何を満たすことも、赦されないのか………
「………ぅ………ぁっ………」
薄れゆく意識の中、
鬼、茨木童子は助けを求めた。
「…………たすけて……ください……」
かつて殺し、奪い、非道の限りを尽くした人間に、
助けを乞い、倒れ込んだ。
それを偶然にも眺めていた、とある男がいた。
「……………?」
鬼の耳に、音が聞こえた。
カッ、カッ、という、何かを削るような音。
意識を取り戻した鬼は起き上がる。
…………布団に寝かされていたようだ。
「んぁ…………やっと起きやがったか、
もう夕刻だが、まだ寝ていろ」
「…………あなたは……」
音の出る方を向くと、そこには若い男がおり、
男は座って仏を彫っているようだった。
月のように真白な結われた長髪、
燃えるような深紅の瞳の男だ。
「しがない仏彫りよ、名なんざ捨てた」
見向きもせずにそう言った仏彫りの男は
手の彫刻刀を置き、鬼へと仏の彫刻を投げ渡す。
…………仮にも仏彫りが仏を投げていいのだろうか。
そんなことを思いながら、鬼はそれを取る。
見てみると、その仏は
穏やかな、優しそうな顔をしていた。
「…………」
「そろそろ
「……………」
「名乗れ」
「……………」
「チッ、頑固なことだ。それとも名無しか?
……………まぁ、どうでもいいことかね………」
男は舌打ちして立ち上がり、
襖の奥へと歩いて行った。
周囲を見渡すと、どうやらここは寺のようだ。
あの仏彫りが彫ったのか、凄まじい数の仏がある。
そして、鬼が一瞬見えた男の顔の右側には、
黒く、焼け爛れた後があった。
5分足らずで戻ってきた男は、
鬼の布団の傍に箸と米の入った茶碗と味噌汁の椀、
そして薄い緑がかった液体の入った盃を置く。
「食え」
「……ぇ………?」
「食え。食ったらその水を飲め」
「あ、あの………」
「何だ鬱陶しい、食えと言っている。
三度も聞けば分かるだろう、阿呆が」
男は心底鬱陶しそうな顔をして先程仏を
彫っていた所へ再び座り、彫刻刀を手にして
木を彫り始める。
鬼は仏を置き箸を取って手を合わせ食事を口にする。
……………美味しかった。
いや、何よりも………暖かかった。
「………っく……っ……ぇ…」
「…………」
涙を流す鬼を横目で見て、男は深い溜め息をつく。
(また、面倒なモンを拾っちまったか………)
先日出家させた姉弟もだったが、
どうしてこう、
頭の角を見れば分かる。鬼だ。
近頃はこの寺に雷獣まで住み着く始末。
…………僕が一体何をしたというのだ。
その時、仏彫りが彫った仏は怒り顔だったとか。
それから一晩が経過した。
鬼は寝たきりを男に強いられており、
立ち上がろうものなら布団へ投げ飛ばされた。
曰く、
「薬水は飲ませたのだ一晩は寝ていろ阿呆!!」
と、鬼は怒鳴られたのだった。
そして、翌朝。
再び木を彫る音で目覚めた鬼は起き上がる。
窓を見ると、まだ日も昇りきらぬ早朝だ。
「……………」
「……………」
「……………」
「何の用だ、そう見られては手元が狂う」
彫るのを止め、こちらを見てそう言う男。
どうやら寝起き、無意識で見ていたようだ。
「………いえ、すみません…………つい」
「………ふん、口は利けたか。
顔色も大分マシになったようだな」
「あ………」
昨日は声を出すのもやっとな気力だったと
いうのに、もう普通通りに喋ることが
できるようになっていた。
身体も軽く、倦怠感もない。
…………流石に、腕はないままだが。
「名前は言えるか、まずはそこからだ」
「………茨木童子、です」
「やはりか………
チッ、面倒な拾いモンをしちまったな」
「ごめんなさい、今すぐ──」
出ていきます、そう言おうと
立ち上がろうとした瞬間だった。
「待たんか阿呆が!!」
「ひっ!?」
「まだ傷が完治しておらんぞ!
しかもその薄い服で外に出ようと思うな阿呆!」
怒鳴られ、彫刻刀を投げつけられる。
鼻先を掠めたそれは寺の扉に突き刺さる。
「え………えぇ?」
「まだ寝ていろ、外には雷獣も彷徨いている。
お前が早死にしたいのなら別だがな」
こうして、男と鬼の
おかしな生活が始まったのだった。
仏彫りの男、
モチーフはSEKIROの仏師殿です。
あ、怨嗟の鬼になったりしないのでご安心を。
多分。きっと。おそらく。めいびー。